2008年9月29日月曜日

インドネシアのバイオ燃料

「インドネシアのバイオ燃料」,産油国仲間から転落したインドネシアはかなりのショックで,国会でも,本当に原油生産は落ちて行くのか,と関連企業のトップが喚問されて,追求を受けている。バイオ燃料の使用義務化については,先日もフィリッピンが法制化したが,その時,ASEAN諸国の見方は冷静で,フィリッピンの成り行きを見てから決めよう,と言う姿勢であった。

ところが,不安に我慢しきれなくなったインドネシアは,Energy and Mineral Resources Minister Purnomo Yusgiantoro の省令として,2008年10月1日から発電燃料などへの一定量のバイオ燃料混入を義務化,試行し,2009年1月1日からバイオ5%混入と言う大量の義務化を伴う本格運用に入る。特に,cassava, sugarcane and sweet sorghum からとれる bioethanol は,現在,192,349キロリッターであるが,これを2010年には,大きく伸ばして,400万キロリッターとする目標の下に,今回の法制化がなされた。

現在の世界の総量の情報を当たってみると,2005年末の資料であるが,バイオエタノールが3,650万キロリッターと報告されている。今後の主流はバイオエタノールで,アメリカ,ブラジルの2カ国の生産量が突出,EU,中国,インド等で生産量は拡大している。生産されたバイオエタノールはガソリンとの直接混合で利用。アメリカの一部の州やブラジルでは,混合割合の義務化がなされている。

前にも紹介した鈴木篁氏の数字がある。マクロな数字として頭に入りやすい。「現在途上国の未開発潜在耕地は2,054MHA,今後農地として開発される1,059MHA,残りの995MHAの森林を輪作してバイオメタノール(バイオエタノールではなくてメタノール),これで石油換算年間58億トンを得る。」,としている。「2100年の総需要112億トンとして,原発水力60億トンを除いた52億トンがバイオメタノール」。

氏も,cassava, sugarcane and sweet sorghum からとれる bioethanol には否定的で,荒れ地に植生させる biomethanol,とわざわざ念を押している。私の主張は,バイオ燃料は主用燃料とはなり得ない,と言うことである。地球を面的に使ってエネルギーをかき集めて,将来の主用燃料に,と言う考え方は,地球を荒廃させる。石油燃料よりも,バイオ生産過程で節約以上の二酸化炭素を排出する,と言う研究結果もある。かけ声を掛け合って,原油価格を牽制する程度の役割しかないだろう。

インドの重電メーカーの話題がある,カトマンズから一点コルカタに飛んだインドの Ramesh は,NTPCとBHELの両公社で進もうとしていた5000MWプロジェクト関連で,他の私企業の51%参入をごり押しした。時折しも,一昨日の米国国会下院で,米印原子力協定が可決された。今回のコルカタの問題では,日本の東芝と組む Larsen & Toubro が含まれており,また,昨年,東芝は原子力で米ウェスチングハウスを買収している。インドの重電業界は風雲急である。

本文

●インドネシア,政府,バイオ燃料の推進に関して,義務づける法律

インドネシア政府が,Energy and Mineral Resources Minister Purnomo Yusgiantoro の省令として,バイオ燃料使用を義務づけることを法制化したとのニュースである。対象業種は,製造業,商業,石油卸売り,発電,などで,この2008年10月1日施行,2009年1月1日本格実施である。3ヶ月の暫定施行期間を経て本格実施に入ると,全業種に亘って石油燃料に5%のバイオ燃料を混入することを義務づけている。

現行では,castor and crude palm oil からとれる biodiesel が200万キロリッターであるが,これを2010年には500万に上げる目標である。また,cassava, sugarcane and sweet sorghum からとれる bioethanol は,現在,192,349キロリッターであるが,これを2010年には,大きく伸ばして,400万キロリッターとする目標の下に,今回の法制化がなされた。

現在の世界の総量の情報を当たってみると,2005年末の資料であるが,バイオディーゼル燃料が400万キロリッター,バイオエタノールが3,650万キロリッターと報告されている。バイオディーゼルのインドネシアの突出が分かるが,今後の主流はバイオエタノールで,アメリカ,ブラジルの2カ国の生産量が突出,EU,中国,インド等で生産量は拡大している。生産されたバイオエタノールはガソリンとの直接混合で利用。アメリカの一部の州やブラジルでは,混合割合の義務化。

バイオ燃料の地球の気候変動に与える影響については,近年,議論が多い。バイオ燃料生産に至る過程の二酸化ガス排出量が大きく,これを相殺するためには100年オーダーの日時が必要,とのサイエンス誌の二つの論文も話題になっている。何よりも,バイオ燃料を生産するために,地球上の森林が伐採されることへの拘りがある。

先日もこの欄で,フィリッピンがバイオ燃料の法制化を実施し,その成り行きに東南アジア諸国がなりをひそめて見守っている,と言う記事があった。そこにインドネシアが思い切った法制化に乗り出しただけに,驚きがある。米国の自動車業界の思惑など,外圧も推測されるが,一旦法制化されると,そのための土地の奪い合いなど競争によって地球が荒らされる,と言う懸念もある。

バイオ燃料の超長期の見通しについては,一度紹介しているが,鈴木篁氏の数字がある。マクロな数字として頭に入りやすい。「現在途上国の未開発潜在耕地は2,054MHA,今後農地として開発される1,059MHA,残りの995MHAの森林を輪作してバイオメタノール(バイオエタノールではなくてメタノール),これで石油換算年間58億トンを得る。」,としている。「2100年の総需要112億トンとして,原発水力60億トンを除いた52億トンがバイオメタノール」。

日本は,バイオ燃料の推進は非常に遅れている。それは日本が原子力に重点を置いているからである,と書かれた資料もある。私は,バイオ燃料はそこそこに考える,即ち,原油価格を抑える方策として声高に叫ぶのはよいが,バイオ燃料を将来の主役の一つと考えるのは行き過ぎで,このような地球分散型のエネルギーは,集約も大変だし,地球の荒廃に結びつく,と考える。インドネシアは,原油生産国から転落したショックで,このようなバイオ燃料の義務化を加速させたのだろう。もう少し冷静になるべきではないか。

関連情報サイト
http://wiredvision.jp/news/200802/2008021220.html
http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info4v.html
http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info7g.htm#Label15ttp://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20071003/1191160382
http://www.foejapan.org/news/pdf/16_tomari.pdf

●インド,3つの企業,NTPCとBHELの合弁に主導権

ラメッシュの動くところ,嵐が巻き起こる。少し動きが私には分かりがたいが,記事は次の通りである。カトマンズから帰国するとすぐ,Ramesh はコルカタに飛んだわけである。この地で活動の始まったNBPPLプロジェクト,即ち,NTPC-BHEL Power Projects (NBPPL) に手を突っ込んだ。これは,5,000MWの西ベンガル州の電源開発で,このNTPCとBHELが主導権を握って,EPCコントラクトを独占しようとしていた。

ここに割って入ったのが Ramesh で,他の有力のインフラ企業,ICICI Ventures, Larsen & Toubro and IL&FS の3社に合弁を組ませて,NBPPLプロジェクトの株式持ち分51%を取得させようというもので,この結果,NTPCとBHELの持ち分は,それぞれ25%弱に落ちるというわけである。難のためにそうするのか,Ramesh の発言を追う。

彼はこう言っている。「政府は,この私企業3社に,NBPPLの一部を分け持たせて,このプロジェクトの3段階に経験を踏ませることに決定した。」。結局私の理解は,このコルカタに発電機器生産の一大拠点を造成しようという試みで,それはNTPCやBHELなど政府系の公社だけで出来るものではない,と言っているのだろう。電源の遅れは,機器生産能力にある,とも言われている。これを突破口にしたい Ramesh の意図が読める。

昨年,2007年3月6日の日本経済新聞に,「東芝,インドに火力発電設備の合弁会社」,と題して,東芝がインドで石炭火力向け発電設備事業に参入することが報じられている。「合弁相手は民間の建設・重電エンジニアリング会社としてはインド最大手のラーセン・アンド・トウブロ(L&T)。」,とされているので,今回のラメッシュ作戦の中には,日本企業も参戦している可能性がある,期待する。

時折しも,一昨日27日,米国下院の本会議で,米印原子力協力協定を承認する法案を賛成298,反対117で可決した。後は上院本会議の可決を待つだけだが,インドの原子力開発に火がつくことになる。東芝は,インドや中国で原子力発電所の建設が増えることを見越して米ウェスチングハウスを買収するなど,インド関連事業にも積極的である,とされている。

Reference

India

●080928A India, Economic Times
3つの企業,NTPCとBHELの合弁に主導権
Three major firms eye 51% in NTPC-BHEL JV
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Three_major_firms_eye_51_in_NTPC-BHEL_JV/articleshow/3532426.cms

Indonesia

●080928B Indonesia, The Jakarta Post
政府,バイオ燃料の推進に関して,義務づける法律
Government mandates gradual phase-in of biofuel for industries
http://www.thejakartapost.com/news/2008/09/27/government-mandates-gradual-phasein-biofuel-industries.html

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