2008年9月26日金曜日

ベトナムの電力不足の原因

あれほどの快進撃を続けてきたベトナムのエネルギー問題,電力問題が,どうしてここに来て混沌としてきたのか?一つのヒントを与えるのが今日の記事だと思う。ベトナムは,2010~2015年の間に,30,000MWを開発する計画を持っており,そのうち26,000MWが石炭火力である。インドネシアと同じ考えで,原油ガスの高騰を考えれば,当然の計画であろう。

Vietnam National Oil and Gas Group (PetroVietnam) は,この計画の一環として,13の石炭プロジェクトを計画し,首相へ直接手紙を書いて提案した。この提案に対して,EVNが拒否の姿勢を明らかにした。理由は,資金難,技術的困難,石炭確保困難,の三つである。現在のベトナムの電力セクターが,如何に混乱していて,中途半端かがよく分かる経緯である。

Tran Viet Ngai, Chairman of the Vietnam Energy Association が,このEVNの態度を,‘wise move’な措置だと,皮肉を込めて語っている。EVNのエンジニアーは水力開発に異常な執着心を持っていて,火力開発に不熱心だ。外国資本に委ねればよいが,嘗ては東京電力など,火力開発に大いに貢献したものの,今では,ベトナムの投資手続きの面倒さと買電交渉の難しさから,完全に腰が引けている。

問題は,硬直化してきたEVNそのものの組織にある。しかし,もっと基本的な問題は,ベトナム経済の先行きである。インフレの恐れが政府を悩ましており,電力料金値上げを許さない。EVNはIPPから高く買って需要家に安く売らなければならない仕組みが,改善されない。もう一つは,水力が電力不足を解決してくれると信じていることだ。

水力はあくまでピーク供給力であって,ベースとなる電源の開発をおろそかにしては,システムは成り立たない。原子力のあるところは,原子力と水力または揚水の組み合わせが主要な電源の基本であり,原子力のないところは,当面,石炭火力の開発をおろそかにすべきではない。石炭火力と水力ピーク,水力のないところ,例えばインドネシアやフィリッピンは,揚水で対処することになる。再生可能エネルギーや国内エネルギー資源の開発などは,あくまで補完的なものである。

タイの原子力が動き始めた。米国コンサルタントが,約5億円で,20ヶ月,2020年を目指してのタイの原子力開発に関する20ヶ月の予定で feasibility study を実施する。タイも,ラオスの水力開発の1年延期や,カタールからのLNG輸入が,10 million トン予定のところ,1 million だけが契約されただけで,需給に難問を抱えている。

本文

●ベトナム,EVN,13発電プロジェクト開発を拒否,なぜ?

あれほど快進撃を遂げたベトナムの電力が,なぜここに来て問題を起こしているのか,なぜ電力危機回避の見通しが立たないのか,少し理解できるような今日の記事である。Tran Viet Ngai, Chairman of the Vietnam Energy Association が記者に語った内容が中心である。彼は,今回の大規模13石炭火力プロジェクト,13,000MWを,EVNが拒否したことについて,‘wise move’な措置だと,皮肉を込めて語っている。

ベトナムは,2010~2015年の間に30,000MWの新規電源開発を計画しており,そのうち26,000MWを石炭火力と考えている。Vietnam National Oil and Gas Group (PetroVietnam) は,直接首相に手紙を書き,13石炭プロジェクト,13,000MWの開発を提案したが,これをEVNが拒否したという。理由は,三つ,一つは莫大な予算確保の問題,二つは技術的困難,三つは石炭供給の見通し。

EVNのエンジニアー達は,水力は巧みだが,火力は全然駄目だという。外国資本は,手続きと買電交渉が困難で出てこない。今回の13プロジェクトは次の通り。

1,200 MW Duyen Hai 2 thermopower; Duyen Hai 3.1; Duyen Hai 3.2; Soc Trang 3.1; Soc Trang 3.2; Vinh Tan 3.1; Vinh Tan 3.2 (1,000 MW for each); Vung Ang 3.1; Vung Ang 3.2; Hai Phong 3.2; Hai PHong 3.3; Quang Trach (1,200 MW for each); and 600 MW Hai Phong 3.1.

●米国企業,タイの原子力発電所の調査参入,決定

EGATによる原子力投入,4,000MW,2020~2021年開発,の計画に沿って,米国のコンサルタント企業 Burns and Roe Corporation が,180 million バーツ(5.33 million ドル),20ヶ月,2010年5月完成で,feasibility study を引き受けた。内容は,project cost, location, safety standards, environmental management and technology, as well as operation and management training issues の5項目である。

これは,Chavalit Pichalai, the acting deputy director-general of the Nuclear Power Project Development Office が語ったものである。この原子力開発構想が実現した段階で,タイの電源構成は,原子力が12.58%,ガス火力が57.25%,輸入を主体とした水力が16%となる。依然としてガスの比率は高いが,現在の70%から見れば,相当に改善されている。石炭火力には触れていない。

ただ,ラオスからの水力輸入が遅れていて,power development plan (PDP) を改訂する必要に迫られている。ラオスの2013年に予定されていた1,653MWの Hongsa Lignite,2014年に予定されていた440MW Nam Ngum 3,140MW Nam Bak がそれぞれ1年遅れる。また問題はPTTの進めるカタールよりのLNG輸入の遅れである。2012年に輸入開始を予定しているが,10 million トンの予定が,1 million しか目処が立っていない。

●ネパール,水力で方針転換,インド企業へ主導権

Nepal Prime Minister Pushpa Kamal Dahal のニューデリー訪問が,今後10年間で10000MWの水力開発を提案させた。この提案は,ネパールの水力地点がアクセスへのインフラを必要とすることから,総額1.2 trillion ルピー,約16.5 billion ドル相当の予算を必要としている。これだけの資金を集めるためには,インドなど外国企業に,majority を与えなければ不可能と判断した。

Arjun Kumar Karki, managing director at Nepal Electricity Authority は,300~500MWの中規模の水力に限り,外国企業に51%以上の Majority を与えることを決断した。既にインド企業の,Satluj Jal Vidyut Nigam Ltd, Bhilwara Energy Ltd and GMR Infrastructure Ltd. が現場に入っており,最初の具体例として,42MWの Upper Modi project が,South Korea’s Korea Electric Power Corp に70%のシェアーが認められた。

●インド,Baglihar dam,水没移住が完了せず

パキスタンとインドの間で長く紛争の続いた,インダス河上流 Chenab river の450MW Baglihar hydropower project, 総工事費335 million ドル,は湛水開始を1ヶ月後に控えて,移住住民への補償がまだ終わっていない,と住民側から不満が噴出している。移住は,ダムサイトから60kmの範囲に及んで,15,000家族が,土地か現金か,の選択を迫られている。

Reference

Vietnam

●080923A Vietnam, english.vietnamnet
EVN,13発電プロジェクト開発を拒否,なぜ?
EVN refuses 13 power plant projects, why
http://english.vietnamnet.vn/biz/2008/09/804957/

Thailand

●080923B Thailand, Bangkok Post
米国企業,タイの原子力発電所の調査参入,決定
US firm to do study on nuclear plant
http://www.bangkokpost.com/230908_Business/23Sep2008_biz38.php

Nepal
●080923C Nepal, livemint
ネパール,水力で方針転換,インド企業へ主導権
Nepal turns to Indian power firms for funding
http://www.livemint.com/2008/09/23004142/Nepal-turns-to-Indian-power-fi.html

India

●080923D India, thaindian
インド,Baglihar dam,水没移住が完了せず
Baglihar dam displaced yet to be rehabilitated
http://www.thaindian.com/newsportal/india-news/baglihar-dam-displaced-yet-to-be-rehabilitated_10098377.html

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