2008年9月26日金曜日

インドとネパールの電力サミット

すさまじいニュースの洪水である。ヒマラヤの辺境がエネルギー開発で,お祭り騒ぎである。私にとって面白かったのは,早くから目を付けた,「アジア開発3人男」,の二人,インドの Ramesh とネパールの Prachanda が直接ぶつかりあって,この旋風を巻き起こしていることである。

でも,今日の一連の記事で私の関心を引いたのは次の点である。インド企業は大挙してネパールの水力開発に押しかけているが,インドの銀行はその資金調達に極めて冷淡であること,とそれに対して中国企業が,政府系ファンドの全面的な協力を得て,それをバックにネパールに押し出そうとしている。そのことに,インド人が言いようのない苛立ちに襲われている。

中国企業,China National Machinery and Equipment Import and Export Corp., or CMEC と Sinohydro Corp が,中国の公的銀行 Bank of China and China Exim Bank の裏書きのあるクレジットをひらめかしながら,West Seti や Marsiangri の水力開発の乗り込んでくる。一方でインド企業は,自国の Punjab National Bank and Canara Bank などにアクセスするも,銀行は無関心で,中国の金融の方に目を向け見ざるを得ない,と言うのである。中国の手法はまさしく,アフリカの資源を狙った方法と同じである。

インドの Ramesh の電力サミット開会式での演説が,このような状態の中でのインドの割り切りを表現している。曰く,「資金調達は,取り立てて難しい仕事ではない。しかし,民間市場はこれを全額負担する気はない。どうしても官民の協力が欠かせない。そのためには,ネパール政府も一定の役割を果たす必要がある。はっきりしていることは,インドは発生する電力の買い取り手だ。遠隔操作のスイッチはネパール政府が握っている。ネパール政府が動けば我々も動く。しかし,ネパール政府が停まれば我々も停まる。私は,ネパールが再び元に時計を巻き戻すとことはない,と信じている。」。

それでも,インド人の苛立ちは隠しきれない。カトマンズーに駐在するインド政府高官は言っている「中国のネパールでの競争は,やや大袈裟に伝えられている。それは余りにこちらが神経質であり,中
国が余りにも巨大であるからだ。ネパールはインドの直接の隣人であるからこそ,我々インド人は,余計にいらいら神経質になっているのだ。'we get jittery'。」。

本文

●中国企業,ネパールの水力獲得のために資金活動

ネパールの新首相 Prachanda は,ニューデリー訪問の前に北京を訪れている。今日の記事は,ネパールの水力開発を真ん中に置いて,インドと中国がどの様な駆け引きを行っているか,誠に興味ある内容である。インドは,既に3つの企業をネパールに送り込んで水力開発の準備に余念がない。ネパール新政府も,中規模水力についての開発は,インド企業がマジョリティを取ることを許容して,積極的に支援する。

ところが,インドの銀行は,これらのネパール進出のインド企業に対する資金の支援には全く関心がないと言うのだ。そこで出てくるのが,豊富な資金の裏付けを持つ中国企業である。China National Machinery and Equipment Import and Export Corp., or CMEC は,750MW West Seti Hydro Project に,また,Sinohydro Corp は,50MW Marsiangri project に,それぞれ Bank of China and China Exim Bank の裏書きを持ったクレジットを手に,インド企業を尻目に乗り込んできている。アフリカで経験した中国の戦略である。

カマンズーに駐在するインド政府高官,その言葉が,インドの苛立ちを端的に表している。「中国のネパールでの競争は,やや大袈裟に伝えられている。それは余りにこちらが神経質であり,中国が余りにも巨大であるからだ。ネパールはインドの直接の隣人であるからこそ,我々インド人は,余計にいらいら神経質になっているのだ。'we get jittery'。

●インド,ネパールの水力開発のために,20 billion ドル準備

第3回インドネパール電力サミットが,この火曜日にカトマンズーで開会した。300以上のインド企業を中心とした参加者を引き連れたのは,我らが,「アジア開発3人男」,の一人,Indian Minister of State for Commerce and Power Jairam Ramesh である。ネパールの new Maoist Prime Minister Pushpa Kamal Dahal Prachanda が,この10年で10000MW開発を示唆して,その必要資金が20 billion ドルであることを頭の中に置いての,Ramesh の演説は興味深い。

「20 billion ドル,取り立てて難しい仕事ではない。しかし,民間市場はこれを全額負担する気はない。どうしても官民の協力が欠かせない。そのためには,ネパール政府も一定の役割を果たす必要がある。はっきりしていることは,インドは発生する電力の買い取り手だ。遠隔操作のスイッチはネパール政府が握っている。ネパール政府が動けば我々も動く。しかし,ネパール政府が停まれば我々も停まる。私は,ネパールが再び元に時計を巻き戻すとことはない,と信じている。」。

彼は当面の指標として,Australian Snowy Mountain Engineering Corporation がエンジニアリングを進め, Chinese EPC contractor が参入し,またインドの建設企業 IL&FS が建設し,インドの Power Trading Corporation of India が電気を引き取ることになっている,750MW West Seti project がこの6ヶ月ないに動き始めるかどうか,と考えている。

●インド企業3社に続いて,多くの企業がネパールへのライセンス獲得へ

何ともすごい勢いである。今まで凍てついていた氷を砕いたのは,インド企業 GMR Energy の300MW Upper Karnali project であるが,Nepal’s Department of Electricity Development に発電所建設のライセンスを申請しているのは,世界中から72企業に上り,そのうち60企業がインドからで,New Delhi, Mumbai, Karnataka and Hyderabad の各企業だという。この記事に挙げられたプロジェクト名だけ拾っておく。

500 MW Tila project,Karnali Gutu 144 MW,10,800 MW Karnali Chisapani Storage,Upper Arun, Lower Arun, Sapta Gandaki on the Narayani river,4 projects on the Dudhkoshi that range from 108 MW to 213 MW,Upper Arun, Tila, Karnali, Ande Pipal Arun, Chokan Lingam and Lunsun Pepuwa,Upper Trishuli 2A, Karnali 7A, Seti River Jal Vidyut Yojana, Karnali 4, Humla Karnali 1 and Mugu Karnali 1,3,300 MW Saptakoshi Storage。

●ラメッシュ,ネパールとの経済連携協定を締結へ奔走

カトマンズーを訪問中のインドの Minister of State for Commerce and Power Jairam Ramesh が明らかにした内容である。前回,Prime Minister Pushpakamal Dahal "Prachanda" がニューデリーを訪問したときに,ネパールインド経済連携協定 The Nepal-India Comprehensive Economic Partnership Agreement の推進について話し合われた。今回具体的に, Ramesh と Nepalese Commerce and Supplies Minister Rajendra Mahato が原則論を話し合い,10月中にも,再びインドで会議を持つ。3年を目処に締結したいと言っている。

その他
●インドとネパールので電力サミット,カトマンズで始まる
●インドネシア,プルタミナ,Cepu 油田に,来年以降500 million ドル投入

Reference

Nepal

●080924A Nepal, news.xinhuanet
インドとネパールので電力サミット,カトマンズで始まる
Indo-Nepal Power Summit 2008 begins in Kathmandu http://news.xinhuanet.com/english/2008-09/23/content_10096451.htm
●080924B Nepal, steelguru
インド企業3社に続いて,多くの企業がネパールへのライセンス獲得へ
Indian firms flood Nepal with hydropower proposals http://steelguru.com/news/index/2008/09/24/NjQxMDU%3D/Indian_firms_flood_Nepal_with_hydropower_proposals.html
●080924C Nepal, livemint
中国企業,ネパールの水力獲得のために活動Chinese cos play the credit card to win Nepal hydro projects
http://www.livemint.com/2008/09/24001233/Chinese-cos-play-the-credit-ca.html?h=B

India

●080924D India, ptinews
ラメッシュ,ネパールとの経済連携協定を締結へ奔走
India, Nepal working on comprehensive eco agreement: Ramesh
http://www.ptinews.com/pti%5Cptisite.nsf/0/0BFF2D1C37C27D88652574CD00536412?OpenDocument
●080924E India, Economic Times
インド,ネパールの水力開発のために,20 billion ドル準備
India ready to help Nepal raise $20 bn for hydropower sector
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/India_ready_to_help_Nepal_raise_20_bn_for_hydropower_sector/articleshow/3518454.cms

Indonesia

●080924F Indonesia, The Jakarta Post
プルタミナ,Cepu 油田に,来年以降500 million ドル投入Pertamina to invest $500m on Cepu project
http://www.thejakartapost.com/news/2008/09/23/pertamina-invest-500m-cepu-project.html

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