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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
南アジアのエネルギー連携は,話題的には東南アジアに比べて遅れているが,しかし,インドのブータンからの電力輸入などを見ると,非常に大きなスケールになってきている。ラオスとタイの関係よりも,エネルギー的にはもっと進んでいるという感じである。ネパールとインドの関係が,このように早く始まるとは想像していなかった。自分の世代の中で,これだけ大きな変化は,珍しいだろう。
そう言えば,メコン流域でも変化は早かった。1990年代はじめの,私自身が関わり始めた頃は,ベトナムはまだ経済制裁の真っ最中だったし,カンボジアの人の顔を見たこともなかった。和平工作が進んで初めてカンボジア人のスタッフがメコン委員会に現れたときは,何か怖いものを見るような気持ちであった。この地域の,また南アジアでも,20年の動きは早い。この分では,私の世代でもっと素晴らしい変化が見られそうだ。
ASEANと南アジアのSAACの中で,生きているうちにどうしても見せて欲しいのは何だろうか。メコン流域の送電網,タイのカンボジアからの大規模石炭火力の電力輸入,メコン上流の中国のダムと下流の水利用の連携,ベトナムの原子力発電,南アジアでは,パキスタンとインドの敢然和解によるインダス河総合開発計画の確定,それとネパールの大規模水力のインドへの輸入,などだろうか。
ASEANを見ていて思ったことだが,送電網計画というのは,何でもよいから直線を引けばよいから,誰でもすぐに書けるし夢がある。ASEANの閣僚会議の資料を見ると,よく書いたなあ,と思うような送電線が一杯引いてある。マレーシアからタイはおろか,インドネシアからタイまで送電線が書いて,セミナーなどでプレゼンをやっているから驚いてしまう。
そう言う意味で,今日の南アジアの話の中にも,地域内の送電網の話がある部分を占めている。私は,南アジアのエネルギー連携の鍵の一つは,インドとパキスタンの関係だと思う。あれだけ密接に国境を接しながら,共同開発が出来ない関係は,全く残念である。特にインダス河の開発は,もう少し合理的な進め方が可能なはずだ。送電線に至っては,どちらも困っているが,イスラマバードとニューデリーは目と鼻の先だ。
今日の記事の中で,南アジア域内エネルギー協力の中で重要なのは,貯水池式水力の開発がないと,域内協力は非常に難しい,と言っている点だ。貯水池は,メコン河でもそうだが,中国領内のダムを敵視することから始まるが,貯水池というのは基本的に下流に便益をもたらすものだから,環境問題さへ真摯に解決できれば,協議の場があれば,幾らでも有効な使い方があるはずだ。特に,インダス,ガンジス,ブラマプトラなど。
本文
●インドなどの南アジアエネルギーへの提案
South Asia is a region not only with low per capita GNP but also with extremely low per capita energy consumption. Low access to commercial energy is another feature in the region, particularly among the rural poor which has far-reaching implications for productivity, environmental degradation, poor health and poverty. (冒頭原文引用注18)
南アジアのエネルギー問題を,国際的な協力の必要性にの観点から論じた長文の記事である。やや具体性に欠けるとして,網羅的であり,政治抜くでの地域のエネルギー協力を訴えているところは,大いに共感が持てる。ただ,私から見た場合は,地域周辺のエネルギーを,如何にしてインドの成長に役立たせるか,人類的に見ればその一点であり,後は地域の貧困層へのエネルギー支援がそれによって補完される,と言うことだろう。
南アジア地域は,一人当たりGNPが低いというばかりでなく,一人当たりのエネルギー消費が極端に少ない。また,商業的なエネルギー供給が,特に農村部に低く,これは,生産性,環境悪化,貧弱な医療,貧困,などへの対策が遅れていることを意味する。皮肉にも,豊富な資源と言う財産を持ちながら,エネルギー政策が十分でなく,開発されずに取り残されている現状である。
南アジア地域は,豊富な石炭,ガス,水力の資源を持っていて,エネルギー分野での補完関係が可能な地域である。このこととは別に,地域が協力することによって便益がでる要素,エネルギー需給の季節変動,需要中心地の近接,エネルギー産業の技術的ベース,などの共通性がある。南アジアの地域エネルギー市場(注20)の確立は,電力供給の効率化と供給信頼性に大いに貢献できる。共同開発こそが,便益の共有に資する。
貧困層へのエネルギー確保は,また別の意味で重要な問題である。経験は適正であり,その経験を各地で反復模倣して適用することが,どの地区でも必要となったときに適用できる。地域の各地で電力分野改革が行われており,実施はいろいろな段階にある。この改革は,投資と資産の所有の変化を目指し,従来の単一買電制度(注21)から複数買電複数売電制度(注22)に変わるが,そこで重要なのは,規制機関の存在である。
この改革にはスピードが必要だが,各国の電力セクターの改善ばかりでなく,国と国の間のエネルギーのトレードを高める必要がある。この国際間の融通有において,特に,ブータンとネパールは,未開発水力を抱え,特にインドへ,また場合によってはバングラデシュへの重要な電力輸出国になる。バングラデシュのガスは,インドへ輸出が可能であり,量は少ないが,ネパールやブータンへの輸出も考えられる。
地域エネルギー市場(注20)の創成には多くの条件があるが,その一つは,市場に容易にアクセスすることの出来る法律制度の設定である。インドではこの面で大きな発展を遂げており,2003年電力法(注23)は,他の国も模倣する価値がある。2003年電力法(注23)中で特に注目すべきは,余裕度別料金ABT(注24)と,電力取引に於ける系統周波数支援(注25)で,これはネパールが買電するときに,貢献する制度だ。
南アジアのエネルギー協力を阻害している要素は,政治的思想,制度的制限,事業体の貧弱な運転効率,電力改革の遅れ,などである。しかし,これらを克服して数十年に亘り反映している世界の他の地域のように,南アジアでもそれを実施すべきだ,と言う気運が生まれている。今,域内で生まれている共通の願望,域内協力の必要性を高めたい,という点は確実な前進である。
南アジア同盟SAAC(注26)のここ2,3年のいろいろなレベルでの会合は,地域を勇気づけている。政治家の間でも,一つの国のエネルギー確保を目指すよりは,地域で多様化していく必要が理解されてきている。これが国境を越えた開発の機運に繋がっている。特に,インドとネパール間,またインドとブータン間の高圧送電網の構築は,明確な協力の現象で,これが,企業間の合弁や公共と民間の協力を生み出している。
エネルギー分野の改革の早急な実施,それに伴う規制機関の組織化が,国と国の間の電力取引を助けることになる。必然的に,国境を越えての取引には,政府の役割を制限して行くべきだ。民間企業の役割は,投資面ばかりでなく運用や権利義務の関連でも,大きくなってきている。ある研究では(注27),ブータン,ネパール,インド,バングラデシュの4国の間の系統連携は,魅力的なテーマで,今のところは,50~500MW,9~52百万ドルの規模で,5~10年で実現させようとしている。もし経済性が明確になれば,公共民間協力PPP(注38)に相応しいものだ。
SAAC(注26)の作業部会が提案しているのは,域内連携送電網計画である。ADB(注29)の支援で,イスラマバードに,SAACエネルギー・センターSEC(注28)が設定された。このSEC(注28)が,行動計画を策定することが期待されている。事業体は,エネルギー取引の終端の買い取り者で,それが財務的に健全なことが,商業契約の基本だ。政府は,事業体の効率的な運用を注視する必要がある。
南アジアの電力事業体は,メーターや料金請求,集金などの効率が極めて低い。これが事業体の存在を危なくしている。貯水池式水力発電所の建設は,日的,季節的な変動を吸収する意味で極めて重要である。そのポテンシャルがあるが,開発は遅れている。それは環境問題であり,次持ち住民への影響である。国際河川の性格から,水や便益の配分で紛争が起こるので,この点を力点を置いて解決する必要がある。
この国際河川の一環総合開発計画で,最適化されたプロジェクトの確立と合意が必要である。世界銀行の仲介によるインドとパキスタンの間のインダス条約(注34)はこの好例だ。ネパールとインドの間のマハカリ条約(注36)による総合的な思考は,問題の解決を早めるだろう。
(注) (16) 090305A India, telegraphnepal.,(17) Regional Energy Market in South Asia: Recommendations,(18) http://www.telegraphnepal.com/news_det.php?news_id=4960,(19) Mr. Shanker Krishna Malla,(20) Regional Energy Market in South Asia,(21) single buyer model,(22) multiple buyer-multiple-seller model,(23) Electricity Act of 2003,(24) availability based-tariff (ABT),(25) system frequency support,(26) SAARC,(27) Nexant study,(28) SAARC Energy Centre (SEC),(29) Asian Development Bank,(30) South Asian Utilities,(31) International Rivers,(32) international river basin agreement,(33) integrated river basin management,(34) Indus River Treaty,(35) World Bank,(36) Mahakali Treaty,(37) (A Publication of SACEPS- South Asia Center for Policy Studies-Nepal ),2009-03-05 14:09:06,(38) public private partnership (PPP),(39)
●中国建設大手企業がチベットのブラマプトラで水力開発
China Gezhouba (Group) Corp<600068>, one of the biggest engineering and construction enterprises in China, has bid a record RMB 1.14 billion for the Zangmu Hydropower Station in Tibet Autonomous Region, according to a recent statement on its website.(原文冒頭引用注3)
チベットの河川環境保護には,中央政府は,150億元,約22億ドル相当,を注ぎ込むことになっているが,今日の記事に出てくるザンム水力プロジェクト(注7)は,別の記事(注12)によれば,ブラマプトラ河(注10)の上流になるヤールン・ザンボ川(注15)に計画されているもので,出力は,510MW,総事業費は,70億元,約10.2億ドル相当,と書かれている。
中国ゲゾウバ公社(注5),即ち,中国葛州覇水利水電工程集団有限公司(注6)は,おそらく,三峡ダムの下流に,前もって造られた葛州覇ダムを建設したグループが組織した水力建設の企業であろう。この企業の第5エンジニアリング(注9)が,11.4億元で,チベット自治区(注11)のザンム水力プロジェクト(注7)の骨材コンクリートプラントの仕事を契約したというものである。プラントの能力は,340万立方mのコンクリート生産である。
(注) (1) 090305B China, chinaknowledge,(2) Gezhouba gains a record RMB 1.14 bln hydropower contract,(3) http://www.chinaknowledge.com/Newswires/News_Detail.aspx?type=1&NewsID=21665,(4) Mar. 5, 2009 (China Knowledge) -,(5) China Gezhouba (Group) Corp<600068,(6)>
参考資料
インド
●090305A India, telegraphnepal.
インドなどの南アジアエネルギーへの提案
Regional Energy Market in South Asia: Recommendations
http://www.telegraphnepal.com/news_det.php?news_id=4960
中国
●090305B China, chinaknowledge
中国建設大手企業がチベットのブラマプトラで水力開発
Gezhouba gains a record RMB 1.14 bln hydropower contract
http://www.chinaknowledge.com/Newswires/News_Detail.aspx?type=1&NewsID=21665
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