2009年3月29日日曜日

インドのヒマチャルでルーリ水力


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

今夜のNHKは,沸騰都市何処へ,と題して,世界の都市の1年前と現状を映像で比較していた。別に,1年前に今日の世界の経済危機を予想しながら番組を造っていたわけではなかろうが,それでも1年間の対照的な状況を表現していた。おそらく殆どの人が,1年前はどうだったか,と言われれば,あの時はこうしていたのに,と思い出すに違いない。経済市況や物価が,これほど1年で違うのかと。

ドバイの映像を見ながら,日本の企業が,中東が忙しくてどうにもならない,アジアの発電所など言わないで下さいよ,とまで言われていた。今日の映像でも,ドバイに人材も建機も資材も大移動をしてしまって,中断し始めたプロジェクトに,苦悩の深まる日本企業が描かれていた。ドバイへ,とかけ声をかけた企業のトップの心情にも,深く思い至るが,それでも忙しいときに目を大きく開いて,全体を見ていないと駄目,と言うことか。

今日も私の目は,インドの西北部,ヒマチャルプラデシュ州の地図の上に釘付けになっていた。日本に居座っている私の利用出来る資料は少ないが,それでも,地図の上を這いながら,資料を追っかけ回していると,いろいろな人が世界各地を歩いて写真などをウエブ上に公開していて,それをたどると,ヒマラヤの峡谷を見たような思いになる。

しかし,今日の,インダス河上流,スティルジ川のルーリ水力の記事を読んでいると,大胆な設計をするインドのエンジニアーは,まさしくヒマラヤと富士山の違いがあるような気がする。30kmの導水トンネルを掘って,落差を200mほど得て発電する。黒四は,10kmのトンネルで,ダムの高さ180mを加えて落差は400mに達している。黒四は,300MW,ルーリ水力は,775MWである。流域面積が10倍近くあるのだろう。

壮大な地図を見ながら,大胆な計画を進めるインドのエンジニアーが羨ましくなるが,それでも,インドにも地元住民のいろいろな不満が出てきており,特に,州政府と中央政府の交渉は厳しい。おそらく日本の住民意識よりも上で,それに対する見返りも,大きいのではないか。15%近くのフリーな電力を地元に置いて行く計画である。

今日のニュースの中で,米国の提唱する新温暖化会合がある。日米欧の主要8カ国(G8)に中国,インドなど温暖化ガスの排出量の多い新興国を加えた16カ国が参加,4月27日,28日8にワシントンで準備会合,という。京都議定書をほったらかしておいて,新しい会合を招集する米国も勝手だと思うが,米国,中国,インドが動かなければどうにもならないから仕方がないのか。主要経済国フォーラム(MEF),という。

本文

●インドのヒマチャルで775MWのルーリ水力着工へ

Battle hardened Satluj Jal Vidyut Nigam Ltd (SJVNL) has drawn up plans to execute the country’s first twin tunnel hydro-power project as designs layouts emerge and the public sector generating company readies to invite civil works contract bids for the 775 MW Luhri project.
To be executed upstream of the NTPC’s Kol Dam project on Satluj river, the Himachal government awarded the Luhri project to SJVNL in October 2008 for which a detailed project report was under preparation since December 2004. (冒頭原文引用)

インド,ヒマチャルプラデシュ,その州都シムラー(注4)の傍を流れる,インダスの重要な支流,サトルジ川(注9),ヒマラヤから流れ下るこの川のダム開発は,地球温暖化抑制のための人類最後の戦いの主戦場の一つである。多くのプロジェクトが顔を出すが,ここを舞台に活躍しているのが,SJVNL(注5)の水力開発企業で,ブータンやネパールにも出ている。2008年10月14日付本HP(注22)にも顔を出している。

SJVNL(注5)は,775MWの大規模ルーリ水力プロジェクト(注6)で,長大トンネルに於ける地質問題に苦慮した結果,直径9mのトンネルを,直径5mの2本のトンネルに設計変更し,対処することにし,入札を開始することとした。NTPC(注7)が担当するコルダム水力プロジェクト(注8)の直上流のルーリ水力プロジェクト(注6)は,2004年12月から設計にかかっているが,2008年10月に州政府より,SJVNL(注5)が請けた。

直上流の,1,500MWのナトパ-ジャクリ水力が,地質問題で難航した経験から,今回の隠忍自重の設計変更で,SJVNL(注5)はルーリ水力プロジェクト(注6)の20173年運転開始に自信を得ている。このプロジェクトは,全部で100kmに亘るトンネル工事があるが,特に導水路は,長さが38kmで直径が9mという困難な計画であった。これを29m間隔をとった直径5mの2本のトンネルに変更したわけである。

ルーリ水力プロジェクト(注6)の入札は,ダム,二つの導水路トンネル,発電所の3つの工区に分けて行われる。多くのコントラクターが関心表明EOI(注14)を提示している。流れ込み式水力で,取水位置は,州都シムラー(注4)から100kmの位置にあるニラット村(注15)で,発電所は,スンニ-サインジ間道路(注17)のマロラ村(注16)に位置する。

長大な導水路トンネルの掘削には8つの横坑が用意され,水圧管路は長さ173.5m,直径5m,4機のフランシスタービンに繋がっている。総落差は221mで,出力は,775MWである。事業費は2006年12月レベルで,480億ルピー,約9.5億ドル相当,で,電気料金に換算すると,KWh当たり,2.53ルピー,約5セント相当,である。

この事業のため,特別チームが編成され,ヒマチャル州政府が49%,中央政府が51%の資本を分担する。発電量の12%は無料で州に供与され,1%はこの地域開発に供される。SJVNL(注5)のプロジェクトでこの川で他に,2012年運転開始の,412MWのランプール水力(注19),このプロジェクトは上流の,1,500MWのナトパ-ジャクリ水力(注12)の放水口からの流水を使用する。

(注)A (1) 090329A India, himachal.us,(2) SJVNL to execute country’s first twin tunnel hydro project in Himachal,(3) 
http://himachal.us/2009/03/25/sjvnl-to-execute-country’s-first-twin-tunnel-hydro-project-in-himachal/12128/news/ravinder,(4) Posted by Ravinder Makhaik on Mar 25th, 2009 in Business, Environment, News. Follow comments via RSS 2.0. ,Shimla:,(5) Satluj Jal Vidyut Nigam Ltd (SJVNL),(6) 775 MW Luhri project,(7) NTPC,(8) Kol Dam project,(9) Satluj river,(10) Himachal government,(11) Avinash Kumar project head,(12) 1500 MW Natpha Jhakri project,(13) Nigam,(14) expression of interest (EOI),(15) Nirath village,(16) Marola village,(17) Sunni-Sainj road,(18) levellised tariff.,(19) 412 MW Rampur project,(20) photo source: Luhri project,www.adventure-india-tour.com/himalayas-trekki..,(21) map source: http://www.masterlyinactivity.com/spiti/map.gif,(22) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024C.htm,(23) photo source: Kol dam,http://hpbilaspur.gov.in/photos/kol%20dam03.jpg,(24) 

●インドネシアの国有企業の中でPLNが最大の損失を出す

State power utility PLN is the biggest loser among state firms after more than doubling its losses to Rp 13.1 trillion (US$1.14 billion) from a year earlier. The biggest contributor to the increased losses was the company's huge foreign exchange loss amid a weakening rupiah, according to Said Didu, the secretary to the State Minister for State Enterprises. (冒頭原文引用)

インドネシアの国有電力企業PLN(注5),大赤字でも大威張りである,国鉄と一緒か。PLN(注5)の昨年当初よりの損失は,前年の倍の13.1兆ルピア,約11.4億ドル相当,であった。サイド国有企業省次官(注6)によると,大赤字の原因は主として,ルピア安による為替差損であると。2007年には6兆ルピアの損失を出しているが,今回の損失のうち,10兆ルピアが為替差損で,補助金制度に問題ありと。

ルピア部分の4分の一の減価があり,債務返済が大きな影響を与えた。サイド国有企業省次官(注6)は,それでもPLNの運営は立派だった,と言っている,PLNの運転益は1.5兆ルピアに達したと。ソフヤン副大臣(注8)も,問題は電気料金政策に発していると。PLNのモクタール総裁(注9)によると,平均売電単価は,KWh当たり650ルピア,約5.66セント相当,で,発電コストを下回っていると。

現在の発電コストは,KWh当たり1,022ルピア,約8.9セント相当だが,今年,2009年は原油が大幅に下がっており,黒字を出すことが可能だ,と。2009年,PLNは,1,360億KWhを発電する計画で,2008年の1,276億KWhの6.6%の伸びになる。このうち178%が原油ベースの発電量だが,前年の23%に比べると,相当に落ちている。2008年の石油は11百万リッターが,今年は7.9百万リッターになる。

この結果,燃料費は,昨年,2008年の111兆ルピアから,2009年は79兆ルピアとなる計画で,純利益は1.7兆ルピアとなる計画である。今年初めに発表した計画では,2008年の収入,79兆ルピアは,2009年には89兆ルピアとなり,運用益は,2008年の1.5兆ルピアから,10.1兆ルピアとなる計画である。国営企業の中では最大の損汁で,90%を占めている。

(注)B (1) 090329B Indonesia, The Jakarta Post,(2) PLN biggest SOE loss maker,(3) http://www.thejakartapost.com/news/2009/03/27/pln-biggest-soe-loss-maker.html,(4) The Jakarta Post , Jakarta | Fri, 03/27/2009 2:15 PM | Business,(5) PLN,(6) Said Didu, the secretary to the State Minister for State Enterprises,(7) debt-servicing costs,(8) State Minister for State Enterprises Sofyan Djalil,(9) PLN president director Fahmi Mochtar,(10) SOE,state of enterprises,(11) 


参考資料

●090329A India, himachal.us
インドのヒマチャルで775MWのルーリ水力着工へ
SJVNL to execute country’s first twin tunnel hydro project in Himachal
http://himachal.us/2009/03/25/sjvnl-to-execute-country’s-first-twin-tunnel-hydro-project-in-himachal/12128/news/ravinder

●090329B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの国有企業の中でPLNが最大の損失を出す
PLN biggest SOE loss maker
http://www.thejakartapost.com/news/2009/03/27/pln-biggest-soe-loss-maker.html

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