2009年3月21日土曜日

電気自動車は汚れた電力を使うのか


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

電気自動車,プラグインカー,オバマ大統領がグリーンニューディールの目玉と考え,それが波及して,日本の自動車メーカーも次の目標として競争が激化している。電気自動車のもとのエネルギーを考えながら推進しているのか,と何度もこのHPで念を押してきたが,今日は初めて,米国のその疑問に対する記事を見つけてきた。ただ,大規模に実施しなければ効果がないし,大規模なら大規模で,電源の話が入ってこなければおかしい。

今日はまた,ビジネスアイが,この電気自動車を巡って二つの記事を出している。一つは,「エコカー減税,業界の期待,購入促す値引き10万円」(注60),もう一つは,「レンタカーもエコ新サービス」(注61)である。前者は,現在市販されているHVのほか,電気自動車,燃料電池車などは,重量税,取得税ともに100%免税される。また,後者は,「プリウス」,ホンダの「シビックハイブリッド」のレンタル料を,割引するというもの。

電気自動車の電源のことを考えていますか,と言う問題には三つあって,一つは利用者にとって燃費はどうなのか,と言う問題と,電源は量的に対応出来るか,という問題と,最後に,電気自動車の電源は本当にクリーンなのか,と言う問題である。燃費の問題は,米国の具体的な例を挙げて,KWh当たり8.5セントの電気を使うなら,ガソリン等価のリッター換算で,19.8セントと出している。夜間の電力は,2~3セントだと言っている。

まあ,利用者のランニングコストは安いというわけだ。でも日本の電気料金はその2倍ぐらいしているから,日本で試算するときには,もう少し高くなるだろう。電源は,米国の場合,今の普通車の4分の3が電気自動車になっても,需給上は問題ない,としている。また,米国の場合は,電源の半分が石炭火力なので,地域的にはこれが問題となり,大気汚染の立場から,更なる再生可能エネルギー拡大の方針が必要,と書いている。

私としては,二つの論点が足りないと見ている。一つは,ガソリン自動車の効率の問題で,最近勉強したところでは,自動車のガソリンの熱量に対する効率は10%ぐらいだそうだ。発電所と比べると,まるでガソリンをぼたぼたと道路に撒きながら走っているようなものだ。発電所は50%ぐらいの効率だから,自動車のバッテリーの効率が往復72%と言っているので,総合で37%ぐらいはある,この差が問題のポイントになる。

また,電気料金はKWh当たり8セント,と言う前提で電気自動車の話を進めているが,これは現状の米国の電気料金であって,オバマ大統領の電気自動車は,クリーンニューディールの一環であり,他の重要な太陽光と風力の話が入ってくると,電気料金はとんでもなく跳ね上がる。だから,自動車の利用者を安くなると言って説得しながら,また後ろで料金,または税金が上がってくることも計算の中に入れる必要がある。

勿論私は,ガソリン自動車を電気自動車の変えて行くことは,大賛成である。しかし,再生可能エネルギーと絡んでくる電気料金の問題と,この電気自動車が大量に採用された場合の,電力設備に与える質的影響を,議論の中に持ち込んでおくべきだ,と主張している。

(注) (60) http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200903210017a.nwc,(61) http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200903210044a.nwc,(62) 

本文

●クリーンカーと言われるが実際は汚れた電力を使っているのではないか

Q: If you have an electric or plug-in hybrid car, you’re paying for electricity rather than gasoline all or most of the time. How does that cost compare with a gasoline-powered car’s cost per mile? And since the electricity may be generated from some other polluting source, does it really work out to be better for the environment?

この記事は,ある読者がこのCSMONITOR(注1)に質問をぶっつけたもので,それに丁寧に答えている。すべて米国の例であるが,電気自動車を使うときに発電所はどうなるのか,という記述は,これが初めてかどうかは分からないが,少なくとも私の目に止まったのは初めて。自分が言い続けてきただけに関心あり。本気で電気自動車を考えるならば,ここまで議論する必要があるだろう。

まず質問だが,プラグイン・ハイブリッド・カーPHEV(注5)の場合は,ガソリン代に変わって電気料金を払うことになる。マイル当たりのコストは,ガソリンと電気とどちらが安いのか?また,電気は他の汚れた手段で発電されるが,本当に電気自動車は,環境によいといえるのかどうか?この質問はまさに我々が,考える必要がある,と言ってきた問題で,個人の財布の話と,地球環境の二つの問題を取り上げている。

これにこのネットが答えている。一言で言えば,例えそれが石炭火力発電としても,電気自動車は,ガソリン自動車よりはクリーンで,かつ個人には経済的であると。バッテリーとガソリンを比べれば,当然,電気が勝つ。2007年に,電力研究所EPRI(注9)が調査した結果では,ハイブリッド・カーPHEVは,ガソリンの1ガロンが75セントした計算だ。リッターで換算すると,19.8セントとなる。スタンドで30年も見たことがない数字だ。

この計算の前提は,電力価格が,KWh当たり8.5セント,ガソリン1ガロンで25マイル走行可能,即ち,1リッターで6.6マイル,10.6km,でガソリンの値段は,ガロン当たり3ドル,即ち,リッター当たり78.3セント,である。また,夜間に風力や水力の電気が捨てられている状況では,電気料金は,2~3セントとなり,更にPHEV(注5)が安くなる。電力の量は大丈夫か?

それについては,エネルギー省(注10)の実験所(注11)の調査では,普通車の4分の3が同時に動いても大丈夫。また,もし自動車の全部がPHEV(注5)に転換したとしたら,日65億バレル,全米の現在の使用量の52%の石油が節約できる。環境の面でも勿論,PHEV(注5)が有利だ。2007年のEPRI(注9)とNRDC(注12)の試算は,勿論,どの様なスピードでPHEV(注5)が普及するかにかかってくる。

2010~2050年の温暖化ガス排出量の削減は,34億~103億トンと計算している。米国の電力系統では半分が石炭だが,NRDC(注12)は,石炭火力を主体にPHEV(注5)に電力を供給した場合,地域的には煤煙と水銀の問題が発生するだろうと。風力や太陽光発電が増えれば,罪の意識は減るだろう。ハイブリッド・サイト(注13)では,もっと温暖化ガス排出の少ない電源を開発する必要がある,と主張している。


(注) (1) 090321A Power, features.csmonitor,(2) March 20, 2009 edition,(3) When ‘clean’ cars charge up on ‘dirty’ electricity,(4)
http://features.csmonitor.com/environment/2009/03/20/when-‘clean’-cars-charge-up-on-‘dirty’-electricity/,(5) plug-in hybrid electric vehicle (PHEV),(6) gasoline-powered car,(7) 1 litter = 0.264172 gallon,(8) 1km = 0.621371 miles,(9) Electric Power Research Institute (EPRI),(10) US Department of Energy,(11) Pacific Northwest National Laboratory,(12) Natural Resources Defense Council (NRDC),(13) HybridCars.com,(14)

●ミャンマーのヤンゴンでは水力を止めて燃料で発電している

Myanmar is using fuel as an alternative way to generate electricity for distribution to the former capital city of Yangon when water resources, which create hydropower, are reducing in the present summer. The reduction in water resources has led to the generation of only 300 megawatts (mw) of electricity, which include that from four gas-run power plants, to feed Yangon against the city's demand of over 500 mw for daily power consumption, (冒頭注17引用)

ミャンマーの旧首都ヤンゴン,4月になると水祭りで騒いだことが思い出される。最後のありったけの水を掛け合って遊ぶわけだが,その次の日から雨が降る,と言う計算になっている。今は水のない時期だ,水力発電所が多く,このような場合に毎年問題となる。水力発電が減って,燃料を使っての発電が増えている。4つのガスタービンも含めて,ヤンゴン(注19)への供給は,300MWだけになっている。

一般家庭需要家と45万の産業需要に,少なくとも一日5時間は供給出来るよう,ミャウンタカ工業団地(注21)の鉄鋼プラントなど,電力を多く必要とする工場は,暫定的に送電を止めている。経済活動に大きな影響が出ている。今年初めから,この状態が続いている。ヤンゴンの本来のピーク需要は,全国の60%,約530MWを必要としている。

停電のときに,工場は自家用のディーゼル発電機を動かすが,この電気は高価で,また騒音や排気ガスで,市内の環境を害している。

(注) (15) 090321B Myanmar, istockanalyst,(16) Myanmar uses alternative way to generate electricity in water-scare summer for supplying Yangon,(17) http://www.istockanalyst.com/article/viewiStockNews/articleid/3133960,(18) Thursday, March 19, 2009 11:03 PM,YANGON, Mar. 20, 2009 (Xinhua News Agency) --,(Source: iStockAnalyst ),(19) Yangon,(20) Biweekly Eleven,(21) Myaungtaka Industrial Zone,(22) 

●インドで4つの大規模発電プロジェクトが再び発進する

Project work at four large power plants has resumed with companies placing increased orders with their suppliers and vendors, raising them to pre-October levels, mainly as the companies see no point in suspending onsite work. (冒頭注35引用)

この世界金融危機の中,ひとときも休むことの出来ないインドの電力開発,2008年末に一時スローダウンしたものの,2009年に入って盛り返し始めた,と言う記事である。4つの大規模プロジェクト,それぞれの企業が動き始め,昨年,2008年10月のレベルまで進捗を伸ばしてきた。国家電網PGCIL(注37),ブッシャン(注38),トレント(注39),タタ電力(注40)の未着工のプロジェクトは,2009年1月末より動き始めている。

ブッシャン(注38)のジョハリ取締役(注42)は,オリッサ(注41)の未着工のプロジェクトで,機器メーカーと交渉中で,完成した300MWに更に増設する計画だ,と語っている。殆どの企業は,不況による流動でい悪化と需要の落ちを反射的に読んで,プロジェクトを棚上げしていた。資金調達が終了したプロジェクトも中断していたが,この2ヶ月間,電力セクターは悪くなっていないと。

電源に関しては,78,500MWの新規電源の目標があり,例え金融危機があったとしても,待てないと企業も判断しているようだ。電線企業によると,2008年10月から12月は落ちたが,この1月以降は復活,今,1,000トンの受注を抱えていると。落ちる直前までは,月3,000トンのの受注を持っていた。電力省によると,この五カ年計画分,12,000MWが完成,工事中のプロジェクトは,88,000MWに達する。

送電線も,敏感に電源の伸びを見込んで,回復の途上にある。ICSA(注43)のレディ会長(注47)は,この水曜日,総額約46億ルピーの4つの契約を行った,相手は,ビハール電力局BSEB(注44),マハラシュトラ州配電MSED(注45),MPPKVVC(注46)で,配電部門も大きな優先度をもていると。ラムサルップ(注48)も,西ベンガル州配電WBSERC(注49)から16億ルピーの契約を取っている。

KECインター(注50)は,マハラシュトラ(注51),マディアプラデシュ(注52),ビハール(注53),西ベンガル(注54)の電化プロジェクトで,100億ルピーの受注をしている。政府の大きな2つ電化計画,RGGVY(注55)とAPDRP(注56)は,工程に遅れが出ている。RGGVY(注55)の目標は,125,000村落の電化と2,300万人の貧困層と対象としている。今年度末が目標だが,まだ半分が完成したところだ。

(注) (23) 090321C India, Economic Times,(24) Work resumes at four large power plants,(35) http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Work-resumes-at-four-large-power-plants/articleshow/4289853.cms, (36) 20 Mar 2009, 0257 hrs IST, MV Ramsurya & Pradeep Pandey, ET Bureau,MUMBAI:,(37) PowerGrid,(38) Bhushan Energy,(39) Torrent Power,(40) Tata Power,(41) Orissa,(42) Bhushan group director (finance) Nitin Johari,(43) ICSA,(44) Bihar State Electricity Board,(45) Maharashtra State Electricity Distribution,(46) MP Poorv Kshetra Vidyut Vitaran Co.,(47) ICSA chairman G Bala Reddy,(48) Ramsarup Industries,(49) West Bengal State Electricity Distribution Co,(50) KEC International,(51) Maharashtra,(52) Madhya Pradesh,(53) Bihar, (54) West Bengal,(55) Rajiv Gandhi Gramin Vidyutikaran Yojana (RGGVY),(56) Accelerated Power Development and Reforms Programme,(57) 

参考資料

環境一般

●090321A Power, features.csmonitor
クリーンカーと言われるが実際は汚れた電力を使っているのではないか
When ‘clean’ cars charge up on ‘dirty’ electricity
http://features.csmonitor.com/environment/2009/03/20/when-‘clean’-cars-charge-up-on-‘dirty’-electricity/

ミャンマー

●090321B Myanmar, istockanalyst
ミャンマーのヤンゴンでは水力を止めて燃料で発電している
Myanmar uses alternative way to generate electricity in water-scare summer for supplying Yangon
http://www.istockanalyst.com/article/viewiStockNews/articleid/3133960

インド

●090321C India, Economic Times
インドで4つの大規模発電プロジェクトが再び発進する
Work resumes at four large power plants
http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Work-resumes-at-four-large-power-plants/articleshow/4289853.cms

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