フィリッピンの水力IPPA入札スタート
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
今日はスリランカのエネルギー大臣が,中国の石炭火力や日本の水力を話題にしている談話を主題にしたかったのだが,昨日,測量作業のため一日休んでしまって,どうしてもフィリッピンのゼロサムゲームに付き合わざるを得ず,それで時間がなくなってしまった。このサイトでは,ゼロサムゲームには付き合いたくない,という精神なのだが,日本の有力企業,丸紅,東電,関電が関連しており,省略できなかった。
最近問題となっているのは,フィリッピンのIPPAである。私のサイトへのアクセスも,IPPAとは,と言うキーワードが結構多い。私もよく分からないが,このIPPAの仕組みを不思議に思っている読者も多いようだ。確かに,相当古くからIPPAというワードは出てきているが,余り気にとめていなかった。しかし,フィリッピンの電力の保守の牙城に食い込む最後の自由化の関門,とも言える大きな変革である,正しいかどうかは別にして。
先日も友人と電話で話していたのだが,電力一斉の自由化の声の中で,最後の土壇場で,インドネシアのPLNとタイのEGATが,憲法裁判所の抵抗で民営化への道をストップした。私たちも,これから発展する途上国のエンジンである電力を,完全民営化することは不適切,と考えている。自由化によって必要に応じ発電所も民間資本で建設されて行く,というのは間違いで,発電所建設のスパンが,経済競争の中では長すぎるのが理由。
さて,一方で完全民営化自由化に向かって走っているフィリッピンのIPPAとは,と言うことだが,それは,現在IPPが運営している発電所の電力を引き取り売りさばく役割で,それがBOTプロジェクトの場合は,BOT終了後,その発電所を引き取る,と言う役割を持った企業をIPPAと呼ぶのだ,と理解している。PSALMの英文の定義は難しいが,役割として5点が具体的に書いてある。
現在動いているIPPの発電所は,殆どが電力公社NPCとの間で,テーク・オア・ペイ,即ち電力の一括定額引き取り,みたいな契約をしていて,極めて安泰である。これは,電力不足が心配されて,IPP開発を促すための措置だった。しかし問題は,電力自由化の線に沿って,NPCが30%以上の電力を占有してはいけない,という原則論の中で,はじき飛ばされて,IPPAがNPCに替わって,IPPの電力を引き取ることになる。
そのIPPAの入札が始まり,丸紅,東京電力が運転している,スワルやパグビラオの石炭火力の電力は,NPCに替わって,サンミゲールとアボイテスがIPPAとして引き取り,2025年後は,所有権もそこに移ることになる方向で,手続きが進んでいる。なぜ丸紅と東京電力が,自分たち自身でIPPAとなる選択はないのか,というと,それはあるようで,ただ,丸紅,東京電力側がその選択を避けた,というようなニュアンスが感じられる。
このIPPAという制度は,IPP側から見ると誠に不条理で,NPCに引き取って貰うつもりで経営しているのに,突然NPCが買うのを止めてしまった,と言うことも言えるような制度である。しかしそのきっかっけは,憲法にも匹敵する電気事業法の問題なので,IPPとして泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれている。東京電力と関西電力の間で,お互いにお互いのIPPのIPPAになったらどうか,と私も提案していた。
丸紅と東京電力は,今日の報道では,丸紅と関西電力が運転するサンロケ水力発電所の電力の引き取り手,即ちIPPAの入札に参入する意思を表明した。自分たちの持つ石炭火力よりは,再生可能エネルギーである水力の引き取り手になる方が有利,と踏んでいる節がある。この9月30日に現場説明が行われ,11月11日に入札が締め切られる。
これからの売電や買電の仕組みは,私にはよく分からないが,どうも入札時には買電価格は決まらないのではないか,と思われる。それはIPPAがIPPの電力を引き取るというのだから,予め売電単価はある程度,入札時に入っていなければおかしいことになるが,それなら入札時に,IPPも交渉の中にはいるのか,と言うと,そうでもなさそうだ。自由化の波に押されて,IPP受難の時代の訪れ,という懸念もある。
今日の日本語エネルギー関連資料
温暖化ガス主要排出17カ国が9月17,18日にワシントンで会合
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090915AT2M1500T15092009.html
IAEA年次総会が天野事務局長を承認
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200909150001.html
豪のLNG事業で欧米石油3社がCO2地下貯留に挑む
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090914NT002Y87314092009.html
ベネズエラが「代替エネルギー必要」と核開発を表明
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=120528&servcode=A00§code=A00
日立・住友商事がエジプト初の超臨界圧火力発電所向発電設備2台を受注
http://www.news1st.jp/index.php?s=28&item=785
三菱電機が中国で原子力発電所向けデジタル計装制御システムを受注
http://www.ecool.jp/press/2009/09/post-332.html
旅行用品の大型ショップ旅の雑貨店
http://hb.afl.rakuten.co.jp/hsc/09ee30fe.7cd4d7ec.09ee30ff.03ee8b2a/
本文
●フィリッピンのサンロケ水力のIPPAに東電グループが関心
TEAM ENERGY PHILIPPINES plans to bid for the management of the independent power producer contract of the 345-megawatt San Roque multi-purpose hydroelectric power plant in Pangasinan. At the sidelines of the PowerTrends 2009, Team Energy president Federico E. Puno said the company was interested in the hydropower facility as it was “a good fit with our coal plant.”
フィリッピンのIPPA(注10)は分かりにくい制度だが,PSALMのサイトでは英文で明確に役割を定めている(注10参照)。しかしこれだけでは,なぜIPPの上にまたIPPA(注10)が必要なのか,簡単には理解できない。私のサイトへのアクセスを見ていても,IPPAとは何だ,という感じのキーワードで検索してくる人が結構いる。このIPPA入札が,石炭火力から始まって,サンロケ(注6)などの水力にも及ぼうとしている。
今日,突然に出てきたのは,IPPA化される石炭火力のIPP企業であるTEAMエナージ(注5)が,丸紅,関西電力,米国のシエテなどが合同で所有する345MWのサンロケ水力発電所(注6)のIPPA契約(注10)に関心がある,と報道されたことである。TEAMエナージ(注5)の社長を務めるプノ氏(注7)が,先日行われたセミナーの別会見で,その抱負を述べたことに,この報道は発している。
TEAMエナージ(注5)のプノ社長(注7)は,石炭火力を有するTEAMエナージ(注5)にとって水力との組み合わせは適切な選択,と語ったことだ。この丸紅,東京電力などが資本を分け合うTEAMエナージ(注5)は,パンガシーナの345MWのサンロケ水力発電所のIPPA(注9)の入札に参入することを計画している。TEAMエナージ(注5)の所有する二つの石炭火力は,IPPA入札が行われたところだ。
1,000MWのスワル石炭火力(注8)のIPPA(注10)は,サンミゲールが,700MWのパグビラオ石炭火力(注9)は,アボイテスが,それぞれ入札では権利を得ている。プノ社長(注7)は,TEAMエナージ(注5)は,この石炭火力二つのIPPA(注10)入札には参加しない,水力のような,より関心のあるIPPA入札が待っているからだ,と説明している。再生可能エネルギー法(注13)の税優遇に関心があるようだ。
プノ社長(注7)はこれから,小水力太陽光風力などの再生可能エネルギー・プロジェクトに参戦したい,としている。しかし問題は,NPC(注14)が買ってくれないので,自分たちで供給先を捜さなければならないことが問題だ,と。また,重要な発言は,水力のIPPAを勝ち得た暁は,設備の拡張を考えている,と言っていることだ。勿論それは,所有者の意志に関わることだが。二つの石炭火力は,BOT(注15)が,2024年,2025年に切れる。
(注)B (1) 090914B Philippines, business.inquirer,(2) title: Team Energy eyes San Roque IPPA contract,(3) http://business.inquirer.net/money/breakingnews/view/20090913-225070/Team-Energy-eyes-San-Roque-IPPA-contract,(4) By Amy R. Remo,Philippine Daily Inquirer,First Posted 22:49:00 09/13/2009,(5) TEAM ENERGY PHILIPPINES,(6) 345-megawatt San Roque multi-purpose hydroelectric power plant in Pangasinan,(7) Team Energy president Federico E. Puno,(8) 1,000-MW Sual coal-fired power plant,(9) 700-MW Pagbilao coal-fired power plant,(10) IPP Administrator contracts,(11) San Miguel Corp.,(12) Aboitiz,(13) Renewable Energy Act of 2008,(14) National Power Corp.,(15) build-operate-transfer contracts,(16) photo source; http://www.psalm.gov.ph/privatization/IPPA%20Plant%20Profile/profile_san%20roque.html,(17)
今日の参考資料
●090914B Philippines, business.inquirer
フィリッピンのサンロケ水力のIPPAに東電グループが関心
Team Energy eyes San Roque IPPA contract
http://my.reset.jp/adachihayao/index090914B.htm
http://business.inquirer.net/money/breakingnews/view/20090913-225070/Team-Energy-eyes-San-Roque-IPPA-contract
最近の関連資料
○090910G Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの電力分野の関係機関が一堂に
Power Trends 2009
http://www.mb.com.ph/articles/219765/power-trends-2009
○090910I Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのPSALMがサンロケなどのIPPAで入札企業を増やしたい
PSALM puts more IPPAs for bidding
http://www.mb.com.ph/articles/219830/psalm-puts-more-ippas-bidding
○090908D Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのアボイテスが735MWパグビラオ石炭火力の燃料供給を行う
Aboitiz Power plots strategy on coal procurement for Pagbilao plant
http://www.mb.com.ph/articles/219410/aboitiz-power-plots-strategy-coal-procurement-pagbilao-plant
○090902E Philippines, pepei.pennnet
フィリッピンの石炭火力のIPPAで英国コンサルタントが活躍
Pinsent Masons closes $1.763bn privatization for PSALM in the Philippines
http://pepei.pennnet.com/Articles/Article_Display.cfm?Section=ARTCL&SubSection=Display&PUBLICATION_ID=6&ARTICLE_ID=368607
○090829D Philippines, business.inquirer
フィリッピンの石炭火力のIPPA入札結果でスワルはサンミゲールへ,アボイテスも
San Miguel wins Sual power deal
http://business.inquirer.net/money/topstories/view/20090828-222473/San-Miguel-wins-Sual-power-deal
●090728A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの石炭火力のIPPAでアボイテスが新提案
Aboitiz Power reviews pricing strategy for Sual, Pagbilao IPPAs
http://my.reset.jp/adachihayao/index090728A.htm
●フィリッピンの水力発電所群に東電グループが関心
THE JAPANESE consortium that took over the assets of Mirant Philippines, Inc. two years ago wants to bid for contracts to manage the state’s power supply deals with a number of hydroelectric plants. "We are still looking at the other bids, particularly the hydroelectric plants like San Roque," Federico E. Puno, president of TeaM Energy Corp., told reporters. The statement came after listed Aboitiz Power Corp. bared last week plans to bid for hydroelectric IPPAs.
丸紅,東京電力などで構成されるTEAMエナージ(注16)が,サンロケ(注38)などの水力のIPPA入札(注6)に打って出る計画であり,今後,水力などの再生可能エネルギーに参入する意向だ,という記事を,伝えているが,この記事は,更にその状況の詳細を盛り込んでいるので,重要なポイントだけを述べておく。
丸紅,東京電力などで構成されるTEAMエナージ(注16)は,今から2年前に破産したミラント(注4)を買収したものであるが,今回のプノ社長(注17)の,水力のIPPA参入の発言は,TEAMエナージ(注16)が現在所有するスワル石炭火力(注21)のIPPA(注6)入札で勝ちを収めているアボイテス(注5)が,同じく水力へのIPPA参入を宣言した先週の発言を受けて行ったものだ。
PSALM(注7)は,345MWのサンロケ水力発電所(注8),70MWのバクン水力発電所(注9),30MWのベングイット水力発電所(注10)のIPPA入札(注6)を発出したが,今月,2009年9月30日に現場説明(注11),11月11日に入札締め切り,という日程で進めている。入札の内容は,NPC(注12)が買い取っている電力の引き取りと,BOT期限後の所有権の獲得,というものだ。
345MWのサンロケ水力発電所(注8)は,丸紅(注14)と関西電力(注15,韓国と書かれているが日本の間違い)が運営し,70MWのバクン水力発電所(注9),30MWのベングイット水力発電所(注10)は,アボイテス(注5)が,現在運転している。TEAMエナージ(注16)は,これらのIPPA入札に参入するが,2007年6月に石炭火力を買収,資本をこの2社が,それぞれ50%保有している。
TEAMエナージ(注16)は,スワル(注21),パグビラオ(注22),イリジャン(注20)の発電所,合計2,127MWを所有し,ルソン系統の25%に達している。記事に出てくるファーストGEN(注24)は,今後大々的に,太陽光発電に打って出る計画である。いずれも,再々可能エネルギーにタイする関心は,強いものがある。
(注)C (1) 090914C Philippines, bworldonline,(2) title: TeaM Energy to join bids for hydropower plants,(3) http://www.bworldonline.com/BW091409/content.php?id=041,(4) Mirant Philippines, Inc.,(5) Aboitiz,(6) IPP Administrator contracts,IPPAs,(7) Power Sector Assets and Liabilities Management Corp. (PSALM),(8) 345-megawatt San Roque multi-purpose hydroelectric power plant in Pangasinan,(9) 70-MW Bakun plant in Ilocos Sur,(10) 30-MW Benguet mini-hydroelectric facility,(11) pre-bid conference,(12) National Power Corp.,(13) build-operate-transfer contracts,(14) Marubeni Corp.,(15) Kansai Electric Power Co. Ltd.,(16) TEAM ENERGY PHILIPPINES,(17) Team Energy president Federico E. Puno,(18) Renewable Energy Act of 2008,(19) Tokyo Electric Power Corp.,(20) Ilijan power plant,(21) 1,000-MW Sual coal-fired power plant,(22) 700-MW Pagbilao coal-fired power plant,(23) San Miguel Corp.,(24) First Philippine Holdings Corp.,(24) Elpidio L. Ibanez, president and chief operating officer of First Philippine Holdings,(25) First Philec Solar Corp,(26) SunPower Manufacturing Ltd.,(27) SunPower Corp.,(28) Manila Electric Co.,(29) photo source: http://www.psalm.gov.ph/privatization/IPPA%20Plant%20Profile/profile_bakun.html,(30)
今日の参考資料
●090914C Philippines, bworldonline
フィリッピンの水力発電所群に東電グループが関心
TeaM Energy to join bids for hydropower plants
http://my.reset.jp/adachihayao/index090914C.htm
http://www.bworldonline.com/BW091409/content.php?id=041
最近の参考資料
○090910G Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの電力分野の関係機関が一堂に
Power Trends 2009
http://www.mb.com.ph/articles/219765/power-trends-2009
○090910I Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのPSALMがサンロケなどのIPPAで入札企業を増やしたい
PSALM puts more IPPAs for bidding
http://www.mb.com.ph/articles/219830/psalm-puts-more-ippas-bidding
○090908D Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのアボイテスが735MWパグビラオ石炭火力の燃料供給を行う
Aboitiz Power plots strategy on coal procurement for Pagbilao plant
http://www.mb.com.ph/articles/219410/aboitiz-power-plots-strategy-coal-procurement-pagbilao-plant
○090902E Philippines, pepei.pennnet
フィリッピンの石炭火力のIPPAで英国コンサルタントが活躍
Pinsent Masons closes $1.763bn privatization for PSALM in the Philippines
http://pepei.pennnet.com/Articles/Article_Display.cfm?Section=ARTCL&SubSection=Display&PUBLICATION_ID=6&ARTICLE_ID=368607
○090829D Philippines, business.inquirer
フィリッピンの石炭火力のIPPA入札結果でスワルはサンミゲールへ,アボイテスも
San Miguel wins Sual power deal
http://business.inquirer.net/money/topstories/view/20090828-222473/San-Miguel-wins-Sual-power-deal
●090728A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの石炭火力のIPPAでアボイテスが新提案
Aboitiz Power reviews pricing strategy for Sual, Pagbilao IPPAs
http://my.reset.jp/adachihayao/index090728A.htm
その他の今日の世界のエネルギー関連資料
○090914A Srilanka, dailynews
スリランカの電力大臣が石炭火力や水力など電力需給を語る
Electricity for all to promote sustainable development - Power Minister
http://www.dailynews.lk/2009/09/14/fea01.asp
○090914D Nepal, myrepublica
ネパールの100Mクラス火力発電所にドイツが関心
Germany to help set up thermal plant Mahat
http://www.myrepublica.com/portal/index.php?action=news_details&news_id=9768
○090915A India, hydroworld
インドの灌漑開発公社が24MWのゴシクルド水力をEPC発注
Construction contract awarded for India's Gosikhurd Hydel project
http://www.hydroworld.com/index/display/article-display/7210845759/s-articles/s-hrhrw/s-hydroindustrynews/s-general/s-2009/s-09/s-construction-contract.html
○090915B Bhutan, hydroworld
ブータンの114MWのダガチュ水力でアルストムの機器発注
Alstom-led consortium wins contract for Dagachhu project
http://www.hydroworld.com/index/display/article-display/6301767520/s-articles/s-hrhrw/s-News-2/s-2009/s-09/s-alstom-led-consortium.html
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