2009年4月1日水曜日

ミャンマーの北辺水力に中国が着手


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

中国が,オーストラリア籍の世界最大の鉱山企業,リオテントを買収しようとして,オーストラリア政府から拒否された報道は,既に目に入っている。中国資金の世界の資産買収へは,いろいろ警戒も出ているが,しかし,この金融情勢では中国頼り,と言うのが世界の実情だ。オバマ大統領が初の海外舞台で,G20の準備会合で,仏のサルコジ大統領が,役に立たなければ退席する,と,世界が厳しい神経戦を展開している。

昨日,2009年3月31日(注)には,中国の激しいダム開発攻勢に乗って,カンボジア政府が,2016年には電力海外輸出へ,と豪語する。さて今日は,ミャンマーの水力開発で独断場にある中国が,遂に,北部国境近く,イラワジ河(注5)の最上流,カチン州(注6)の州都ミッチーナ(注9)の上流32km,マリカ川(注7)とマイカ川(注8)の合流点に,ダムを開発し,3,600MWを発電する。第2次大戦で有名なミッチーナである。

古い資料にあたっていると,2007年11月23日に,このダムサイトで,中国人の地質専門家が川に流され行方不明になっている。当時は,ミャンマー政府,軍隊を動員して大捜索を展開し,最後は報奨金50万チャットを出して遺体の発見に努めたようだが,見つけられなかったのか。2007年から既に中国人はここを歩いていたのだ。私もビルマにいた当時は,綺麗な雪山を想像し,行きたいと思ったが,当時は無理だった。

このプロジェクトは,地図を見ると当然ながら,相当の水没移住が生ずるようで,過去の記事から見ると,5万世帯,と言っているから,30万人以上が移住することになる。記事でも,中国は移住問題と環境調査に,相当の規模の調査を投入した,と言っている。この地点は,ミートソーネ水力地点(注17)だと思うが,雲南省との国境から80kmで,まさしく中国への供給を主目的にしているのだろう。

今日の記事では,中国へのパイプラインの年内着工を報じている。総延長2,000km,90兆立方フィートと言われる天然ガスの埋蔵の他,中東やアフリカの原油も,ミャンマー,ラキン州のチャウピュ町(注12)の深海港湾から,パイプラインを通じて中国へ輸送する。雲南省の西の国境の町,瑞麗を通って昆明まで運び,更にこれを重慶まで延長するという。まさに中国の生命線となるわけである。

私は思うのだが,このような大事な輸送ラインを,国際的に見て政情不安定なミャンマーのど真ん中を通過させる,その中国の度胸に感嘆する。中国はどんなことをしてもミャンマー軍事政権の維持に動くだろう,と考えられる,そのためにはどの様な外交手段も駆使するだろう。それと,中国が進める35のダムサイトは,考えてみればミャンマーの治安確保の上で抑えておかなければならないポイントなのだ,ダムは中国にとって手段だろう。

今日は再び,ノルウエーのオスロに滞在する,ネパールのプラチャンダー首相のニュースを取り上げている。2020年までに10,000MW水力を開発するプラチャンダーの政治的公約を果たすために,ノルウエー企業の協力を得る。プラチャンダーは,インドの電力市場がネパールの鍵を握っている,と言っているが,10,000MWを輸入するインドも,ネパールの治安と政治が気になるだろう。

(注) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090331.htm

本文

●ミャンマーのイラワジ川の水力とパイプラインに中国が支援へ

China is to help Myanmar build a big hydropower plant on the River Irawaddy in the north of the country, adding to a string of joint hydropower projects, and a huge gas pipeline to China is also planned, officials in Myanmar said. The latest hydropower project, under a deal reached with a Chinese delegation last week, involves a plant in northern Kachin State, at the confluence of the Malikha and Maykha rivers on the upper reaches of the Irawaddy.(冒頭原文引用)

ミャンマーのイラワジ河(注5)上流のダム開発に,いよいよ中国が乗り出した。中国領は目と鼻の先である。ガスパイプラインを通すための調査の前哨戦とも見て取れる。先週,2009年3月末,最新の協力プロジェクトとして,ミャンマー北部のカチン州(注6),イラワジ河(注5)の最上流,カチン州(注6)の州都ミッチーナ(注9)の上流32km,マリカ川(注7)とマイカ川(注8)の合流点に,ダムを開発する。

おそらく今まで,ミートソーネ水力地点(注17)として知られてきた地点で,2007年11月23日(注16)に,中国人の地質技術者が川に流されて死亡している。その記事を参照すると,発電所の出力は,3,600MWと言う大規模なもので,5万世帯が水没するという。この地点は,中国との国境から僅かに80kmの地点である。昨年調査が行われ,水没移住と環境影響に重点を置いて,報告がなされたという。

中国がミャンマーにとっては唯一のダム支援国,と言っても良く,15のダムプロジェクトが現在も推進中である。これらが全部完成すれば,10400MWと言われており,現在の,1,690MWに比べて,大変な数字である。また,ガスと石油のパイプラインの問題であるが,中国側によると,国境横断のルートで両国が合意し,署名が行われた,と報じている。

このパイプラインは,全延長2,000kmで,国境を越え,雲南省の瑞麗(注10)から昆明に達し,更に中国南西部の重慶(注10)まで繋ぐという。これは,マラッカ海峡(注11)を通らずに,原油ガスを輸送できることから,中国にとっても,ミャンマーにとっても重要なプロジェクト,としている。ミャンマー側のパイプラインの始点は,南西部のラキン州のチャウピュ(注12)の深海港湾である。工事は,2009年前半にスタートする。

このラキン州沖合のA1ブロック(注13)に位置するシュエ天然ガス田(注19)のガス包蔵は,4~6兆立方フィートTCFと見られている。ミャンマー全体では,ガス包蔵が90兆立方フィート,原油が32億バレル,これが19の内陸部と主要3カ所のガス田に分布している。タイへの輸出統計では,2007年度が,25.3億ドル,2006年度が,20.3億ドルとなっている。今年度の9ヶ月で既に,17.8億ドルに達している。

(注)A (1) 090401A Myanmar, news.alibaba,(2) title: Myanmar gets China's help for hydropower project,(3) 
http://news.alibaba.com/article/detail/energy/100077635-1-myanmar-gets-china%2527s-help-hydropower.html,(4) YANGON, March 30 -,(5) River Irawaddy,(6) Kachin State,(7) Malikha river,(8) Maykha river,(9) Myitkyina,(10) Ruili 瑞麗 and Kunming 昆明 in Yunnan province to Chongqing 重慶 municipality in southwestern China,(11) Strait of Malacca,(12) Kyaukphyu Township in Rakhine State,(13) A-1 block off Rakhine,(14) http://bnionline.net/feature/narinjara/3106-chinese-inspector-dies-in-myitsone-hydro-power-project-site.html,(15) photo source: Malikha and Maykha rivers,www.tourismmyanmar.com/myitkyina.htm,(16) map source,off Rakine gas field,mprlexp.com/Offshore-Detail.htm,(17) Myitosone hydro,(18) Shwe gas field,(20) 

●ネパールの水力開発でダハール首相がインドが鍵を握っている

Nepal aims to boost its hydropower generation capacity more than 15-fold in 10 years, and the government is working to gain access to the vast Indian market for electricity exports, its premier said on Tuesday. The Himalayan nation's goal is to build 10,000 megawatts of hydropower plants by 2020, from around 630 MW now, as part of the ruling Maoists' pledge to create a "new Nepal." (冒頭原文引用)

10年間で10,000MW水力開発,を打ちだしているネパールのプラチャンダー首相(注6),彼は今,ノルウエーのオスロ(注15)にある。ネパールの水力開発については,昨日,2009年3月31日(注16,17),詳しく見てきた。プラチャンダーがオスロで何をしているか,インドが大切だ,と語るプラチャンダーの言葉を載せたロイター電に引き寄せられて,この記事を読んでみた。

プラチャンダー首相(注6)はオスロで,インドの大きな市場へのアクセスを考えて,10年間で現在の15倍の水力開発に挑戦する,と語る。現在の設備は,630MWで,これを2020年には,10,000MWにする目標である。プラチャンダー首相(注6)は,ノルウエー現地,グロンマ川のソルベルグホス水力発電所(注7)を視察しながら,ネパールの水力開発について語った。

特にプラチャンダーは,「我々は現在,協議の最中だが,開発についてインドと共通の理解を目指している。」,と強調している。ネパールは最貧国だが,ノルウエーのような国から技術を学び,世界の金融界の支援を受けながら,ゴールを目指すと。インドへの電力輸出によって潤うが,国境を越える送電網が必要になると。

随行したシュレスタ・ヒマラヤ銀行頭取(注8)は,もしインドへの電力輸出が旨く行くなら,ノルウエーのように発展する可能性がある,と言っている。19世紀の終わりには欧州の最貧国であったノルウエーが,その豊かな水力資源を活用して,今や世界で5番目の水力国であり,これを近隣諸国へ輸出して今日を得た,と理解している。プラチャンダー政権の問題の一つは,1日18時間に及ぶ停電でもある。

ノルウエー籍のSNパワー(注11)は,ネパールで最初は,2,000MWの水力開発を目指していた。その中には,456MWのアッパータマコシ水力(注9),600MWのタマコシ2,3水力(注10)があり,タマコシ2,3水力(注10)は現在調査中である。SNパワー(注11)は,スタットクラフト社(注13)の子会社で,アジアや南米で活躍,ネパールでは1993年以来,水力に係わり,60MWのキミティ水力発電所(注12)の主たる所有者。

SNパワー(注11)のアンダーソン社長(注14)はプラチャンダーに,オスロに案内して,ネパールは我々の成長目標だ,と語っている。また,インドとの送電連携の重要性を念を押している。スード副社長(注16)は,15億ドルの資金調達が円滑に行けば,2011年か2012年に着工したい,と語っている。プラチャンダーに対しては,厳しく,手続きの簡素化とインドへの送電線開発が出来なければ,プロジェクトは出来ない,と。

(注)B (1) 090401B Nepal, uk.reuters,(2) title: India key to Nepali hydropower ambition, PM says,(3) http://uk.reuters.com/article/oilRpt/idUKLV71468520090331,(4) Tue Mar 31, 2009 9:08pm,By John Acher,SOLBERGFOSS, Norway (March 31),(Editing by David Gregorio),(5) Maoists,(6) Prime Minister Prachanda,(7) Solbergfoss hydroelectric plant on the River Glomma in Norway,(8) Manoj Bahadur Shrestha, chairman of Himalayan Bank,(9) 456 MW Upper Tamakoshi project,(10) 600 MW Tamakoshi 2/3,(11) SN Power,(12) 60 MW Khimiti plant,(13) Statkraft,(14) SN Power's Chief Executive Oistein Andresen,(15) Oslo,(16) Nadia Sood, SN Power's Executive Vice President for South Asia,(16) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090331B.htm,(17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090331C.htm,(18) 

参考資料

●090401A Myanmar, news.alibaba
ミャンマーのイラワジ川の水力とパイプラインに中国が支援へ
Myanmar gets China's help for hydropower project
http://news.alibaba.com/article/detail/energy/100077635-1-myanmar-gets-china%2527s-help-hydropower.html

●090401B Nepal, uk.reuters
ネパールの水力開発でダハール首相がインドが鍵を握っている
India key to Nepali hydropower ambition, PM says
http://uk.reuters.com/article/oilRpt/idUKLV71468520090331 


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