2009年4月24日金曜日

インドの4,000MWのササン火力が資金調達完了

インドの4,000MWのササン火力が資金調達完了
HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

世界の金融危機の中,インドの経済は強い,と言うコメントをよく耳にする。ササン石炭火力,実に4,000億円相当のプロジェクトの,この時期での資金調達の完了,の記事を見て,ネットを覗いてみたが,少し古く昨年の11月のコメントで,早稲田大学のインド研究所の講演会を聞きに行った若い大学院生の方がメモっておられるのを拝見(注1)。

中国と比べてインドの強みは,人口構造が将来極めて有望である,と言うことが一つあるようだ。インド企業の強みが,外需よりも内需に依存していることと,その内需の先行き見通しを明るくする人口構造にあるという,この点に大いに着目したい。中国は折角の経済環境を,人口制限で手を加えてしまったために,歪みが出てきてしまっている。この問題は,将来厳しく効いてくるだろう。

4,000億円相当と言う巨大な石炭火力プロジェクトの資金調達を,この時期に終えると言うことに,インド紙も,画期的なこと,と自賛している。それも殆どはインドの銀行,国有企業の金融支援で終えている。プロジェクトの債務資本比率は75対25であるから,約3,000億円を銀行がコミットしたことになる。なお,資本部分には,機器輸出を狙う各国の輸出入銀行の支援が当然あるわけで,日本企業も健闘していることだろう。

この問題とも関係するが,中国政府が,中国で生産販売するデジタル家電などの情報技術の公開を5月より強制する,とのニュースがある(注2)。日本政府も慌てているようだ。国際的にも例を見ない強硬手段で,影響が大きいことが,我々にもよく分かる。日本にとっても重要な市場であるからこそ,中国も強気だが,これは相当の紛争に繋がるだろう。

今日は,インドの他,フィリッピンの電力料金の問題を取り上げている。電力料金を抑えようとするアロヨ大統領に意に反して,じわじわと自由化の影響が出てきて,電気料金が上がって行く。その他,スリランカ北部に追いつめられた反政府ゲリラのLTTEに関して,まだ続報がない。一般の人が10万人脱出した,と報じられている。

(注1) http://d.hatena.ne.jp/Hash/20081117/1227807699
(注2)http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090424AT3S2400K24042009.html

本文

●フィリッピンのマニラ配電の値上げが5月より認可

After more than six years, the Energy Regulatory Commission (ERC) has allowed utility giant Manila Electric Company (Meralco) to finally raise its distribution charges by P0.2429 per kilowatt hour (kWh) to P1.2227 per kWh from P0.9798 per kWh, on account of the performance-based ratesetting (PBR) scheme.

フィリッピンの電気料金は東南アジアで一番高い,と言われて久しく,アロヨ政権も電力改革による電気料金の提言が大きな目標になっていて,事業体からの相次ぐ値上げ申請を抑えている状況だ。ルソンの6,000MWの約7割の需要を握っているマニラ配電MERALCO(注6)も例外ではないが,その巨大な需要規模ゆえに,政治の中でも何度もやり玉に挙がってきた。

6年間据え置かれてきたマニラ配電(注6)の配電料金について,電力規制委員会ERC(注5)は,実績ベース調整PBR(注7)の名の下に,KWh当たり0.2429ペソ,約0.505セント相当,値上げして,0.9798ペソ,約2.038セント相当,であった配電コストを,1.227ペソ,約2.552セント相当,とすることを認可した。約25%の値上げである。NPCからの買電を5.5ペソとすると,需要家は,約8ペソ,約16.7セント,と言うことになる。

申請よりも若干和らげられているが,この1.227ペソ,約2.552セント相当,と言うのは,配電コスト,メータリング,供給経費を含んでいる。このPBR(注7)方式というのは,長く配電企業などのよって主張されていたもので,MERALCO(注6)の配電料金値上げは,2003年以来である。MERALCO(注6)は需要家に対して,5月からの料金変更を通知するが,実質的には値下げになる,としている。

それは,送電コストを反映する送電料金調整方式TRAM(注8)と,為替レート調整CERA(注9)が下がるからである。MERALCO(注6)のペナ経済担当副社長(注10)は,実質的に下がる,と明言している。クラス別の値上げ幅は,0~200KWhが0.5729から0.6917ペソへ,201~300KWhが0.8765から~0.9953ペソへ,301~400KWhが1.1628から1.2816ペソへ,401KWh以上が1.6615から1.7803ペソへ,となる。

(注)A (1) 090424A Philippines, Manila Bulletin,(2) title: Meralco charges up P0.24/kWh in May,(3) http://mb.com.ph/articles/203430/meralco-charges-p024kwh-may,(4) By MYRNA M. VELASCO,April 23, 2009, 5:21pm,(5) Energy Regulatory Commission (ERC),(6) Manila Electric Company (Meralco),(7) performance-based ratesetting (PBR) scheme,(8) Transmission Rate Adjustment Mechanism (TRAM),(9) Currency Exchange Rate Adjustment,(10) Meralco vice president and utility economics head Ivanna G. dela Pena,(11) 1 Peso = 0.0208 US$,(12) 

参考資料

●090424A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのマニラ配電の値上げが5月より認可
Meralco charges up P0.24/kWh in May
http://mb.com.ph/articles/203430/meralco-charges-p024kwh-may

過去の関連事項

●090319A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのマニラ配電の資本増強競争白熱
First Pacific-Lopez alliance to control Meralco board
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090319A.htm
●090310C Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのマニラ配電の2009年は伸びフラット
Meralco sees flat growth in 2009 electricity sales
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090310C.htm
●090213B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのNPC,発電契約の見直しを迫られる
Review of NPC contracts pushed
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090213B.htm
●081228A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,ERCが,NPC料金自動調整のルール
ERC set to rule on automatic adjustment for Napocor rates
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090319A.htm
●081224B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,NPCが発電単価を全国で上げるよう申請
NPC seeks generation rate hikes for all grids
http://my.reset.jp/~adachihayao/index081224B.htm
●081221B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,規制委員会,料金自動調整で公式提示
ERC sets formula on automatic recovery of NPC’s purchased power, forex costs 
http://my.reset.jp/~adachihayao/index081221B.htm
●081216C Philippines, Manila Bulletin
マニラ配電,大規模ユーザーが,貧困層料金負担
Bigger consumers to shoulder costs of subsidy for Meralco lifeline users 
http://my.reset.jp/~adachihayao/index081216C.htm


●インドのリライアンスがササンUMPPの資金調達完了と

MUMBAI: Reliance Power (R-Power), part of the Reliance Anil Dhirubhai Ambani Group (R-ADAG), on Tuesday announced the financial closure for its Rs 19,400-crore ultra mega power project at Sasan in Madhya Pradesh, making it India’s largest debt raising plan at a time when the global liquidity market is just emerging from tight conditions following the recession worldwide. 

火曜日,2009年4月21日,リライアンス・グループRADAG(注6)のリライアンス電力RPOWER(注5)は,総事業費1,940億ルピー,約4,000億円相当,のマディアプラデシュ州(注8)の大規模石炭火力ササン・プロジェクト(注7),4,000MWの,インド最大の資金プロジェクトが,世界的な金融危機の中にあるにもかかわらず,資金調達を完了したことが発表された。

ササン・プロジェクト(注7)の債務資本比率は,75対25で,債務の殆どは,12の国有銀行によるコンソーシアム,インド中央銀行SBI(注10)主導の融資グループ及びその他の金融機関によって供与される。債務額1,455億ルピーの85%以上は,国有の金融機関が賄った,と言うことである。インド・インフラ融資公社(注11)の海外関連企業が,5億ドル,約250億ルピー相当を供与とリライアンスのチャラサニ社長(注12)は語っている。

コンソーシアムの中には,民間銀行アクシス(注13)が含まれている。また,中央銀行SBI(注10)と電力融資公社PFC(注14)はそれぞれ,350億ルピー,160億ルピーを融資している。資本部分の485億ドルは既に固まっているが,そのうち100億ルピーは,土地の手当てと準備工事に既に投資されている。2機1,320MWを含む第1期分は,現在の第11次五カ年計画の間に完成する,とチャラサニ社長(注12)は言っている。

またチャラサニ社長(注12)によると,借り入れ条件は,利率12~12.5%,償還期間15~20年である。また,RPOWER(注5)は,世界の機器輸出を視野に入れている各国輸出入銀行からの借り入れも行っている。スタンダード・チャータッド(注16)が幹事を引き受けている。資金調達は時期的にもっとも困難な中で行われ,その達成は,目立っている。インドの金融界は余り流動性への影響を受けなかったと言える。

この資金調達を完了するまでは,RPOWER(注5)が落札してから,21ヶ月を要している。タタ電力(注18)の厳しい競争があり,一時は石炭供給の問題で訴訟が起こり,関連閣僚会議(注19)の決定に従って,デリー高裁が裁くという難しく困難な局面を乗り越えての,資金調達完了であった。

(注)B (1) 090424B India, Economic Times,(2) title: R-Power announces financial closure for Sasan power plant,(3) http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/R-Power-announces-financial-closure-for-Sasan-power-plant/articleshow/4432239.cms,(4) 22 Apr 2009, 0103 hrs IST, ET Bureau,MUMBAI: ,(5) Reliance Power (R-Power),'6) Reliance Anil Dhirubhai Ambani Group (R-ADAG),(7) ultra mega power project at Sasan,(8) Madhya Pradesh,(9) Sasan power project,(10) SBI,(11) India Infrastructure Finance Co,(12) CEO JP Chalasani,(13) Axis Bank,(14) Power Finance Corporation,(15) 11th Five Year Plan,(16) Standard Chartered Bank,(17) Dun & Bradstreet COO Kausal Sampat,(18) Tata Power,(19) Empowered Group of Minister,(20) 

参考資料

●090424B India, Economic Times
インドのリライアンスがササンUMPPの資金調達完了と
R-Power announces financial closure for Sasan power plant
http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/R-Power-announces-financial-closure-for-Sasan-power-plant/articleshow/4432239.cms

過去の関連事項

●090420A India, Economic Times
インドの国家送電網が電源を睨み2000億ルピー投資へ
PowerGrid to spend about 20,000 cr in UMPPs by 2012
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090420A.htm
●090321C India, Economic Times
インドで4つの大規模発電プロジェクトが再び発進する
Work resumes at four large power plants
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090321C.htm
●090309C India, Economic Times
インドのリライアンスがササーン火力で資金調達完了へ
Financial closure for Sasan UMPP by March end
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090309C.htm
●090114B India, Economic Times
インド政府,発電プロジェクトに対する石炭供給基準緩和
Power projects will get to share captive coal
http://my.reset.jp/~adachihayao/index090114B.htm
●081230B India, Economic Times
インド,大規模火力プロジェクトUMPP,5社が応札
5 power cos submitted bids for UMPP
http://my.reset.jp/~adachihayao/index081230B.htm
●081229B India, Economic Times
インド,大規模火力,ティラヤ,入札へ
Bids for the Tilaiya ultra mega power project on Monday
http://my.reset.jp/~adachihayao/index081229B.htm

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