2009年1月31日土曜日

インドの石炭火力は燃料不足に


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

お金さへあれば発電所はすぐ出来る,幾らでも出来る,問題は発電所の燃料だ,燃料の話を抜きにして発電所は語れない,と言い続けてきた。丁度中国が,もの凄い勢いで発電所を建設している頃で,設備はあれども石炭が届かず,全国で電力不足に陥っていた頃,数年前の話である。一方のインドも,中国と似たり寄ったり,石炭供給に苦しんでいる。

今日取り上げた記事では,インドが進める,4,000MWクラス大規模石炭火力計画UMPPの第3番目に当たるティラヤ石炭火力のIPP入札で,リライアンス電力が最低札,KWh当たり2.77ルピア,約3.63セント相当,で開発の権利をとりそうだ,という記事の傍で,国家火力発電公社NTPCが,既設の石炭火力で,石炭不足のために稼働率が極端に落ちてきている,というニュースが並んでいる。

インドについては,原子力と北辺の水力を重視する方向に転換して欲しい,と言っても,人類は今しばらく,安価で豊富な石炭に頼らざるを得ない,特に中国とインドにはそれが言える。石炭の総量問題だが,世界で現時点,可採埋蔵量は98,457億トンと言われていて,石油が41年で枯渇するのに,石炭は192年,約200年といわれている。

インドはこのうち,米国(25.4%),ロシア(15.9%),中国(11.6%)に続いて世界第4位の包蔵量を有し,推定で2,480億トン,確認埋蔵量は930億トンと言われている。これに対して,2006年~2007年の総使用量は11.1億トン,このうち243百万トンを輸入している。インドが輸入先としているのは,インドネシア,オーストラリア,南アメリカである。電力供給に石炭の占める割合は70%で,中国と殆ど同じだ。

インドでも中国でも,石炭と電力の行政が一本化出来ていない。中国は,2007年の石炭供給不足に懲りて,行政の一本化を打ちだしている。中国はおそらくやるであろうが,既得権に絡むインドでは,一本化は無理であろう。石炭火力を造るときに,この石炭供給契約,コールリンク,がいつも大きな問題になっている。これも日本の電力企業のインド進出を阻んでいる一つの原因だろう。

本文

●インド,リライアンス,大規模火力ティラヤ地点,獲得へ

インドの野心的な大規模石炭火力計画UMPP(注1),プロジェクトの規模,4,000MW,全国で10地点ぐらいをとりあえず想定しているが,世界的いな金融危機の折から,なかなか進展せず,ADB(注2)も,少しプロジェクトの規模を縮小したら,と提言していた。この第3弾のティラヤ石炭火力(注3)についても,一度入札が延期され,その行くへが心配されていたところだ。

今日の記事。インド財閥の一つ,アニルアンバニグループADAG(注4)の旗艦企業,リライアンス電力(注5)が,水曜日,2009年1月28日,驚異的な積極的入札を行った,それは,4,000MW,ティラヤ石炭火力(注3)で,マディアプラデシュのササーン石炭火力(注6),アンデラプラデシュのクリシュナパットム石炭火力(注7)に次ぐ,3番目の大規模石炭火力計画UMPP(注1)である。

リライアンス電力(注5)は,最低価格KWh当たり1.77ルピー,約3.63セント相当,の最安値で,2番札はNTPC(注8)であった。これらのプロジェクトを取り仕切る電力融資公社PFC(注9)の一人が語ったものである。公式発表はまだなされていない。他の入札企業と価格は,NTPC(注8)が2.30ルピア,ジンダール電力(注11)が269ルピア,スターライト(注12)が2.90ルピーで,ランコ(注10)は資金調達難から,撤退した。

リライアンス電力(注5)は,ササーン石炭火力(注6)も落札しているが,ティラヤ石炭火力(注3)の入札価格は,ササーン石炭火力(注6)と同じ4,000MW,石炭も地元炭坑と条件は同じであるにもかかわらず,金融情勢から,ササーン石炭火力(注6)を,57パイサ,上回った。このティラヤ石炭火力(注3)では,石炭は地元炭坑で同じ発電企業が運営することになっている。埋蔵量は,972百万トンである。必要量の186%である。

ティラヤ石炭火力(注3)の建設費は,1,800億ルピー,約36億ドル相当,で,資本比率(注13)は,70対30である。リライアンス電力(注5)に対する契約内示書L/I(注14)は2,3日内に出される予定で,それから60日以内に必要な手続きをとる。PFC(注9)によると,入札開示は,高位のレベルの委員会で行われ,この中には,ビハール州(注15)とジャッカンド州(注16)も参加,正式契約は,1ヶ月内,とされている。

この入札は,企業側から,資金調達の困難と石炭供給システムの不明確とで,入札延期が申請されて伸びていた。政府の最初の予定は,2007年7月であったが,水供給,規制問題,など地点の立地条件確定のため遅れた。政府は,更に5つのUMPP(注1)の入札を,この先5ヶ月内に行う予定だが,このティラヤ石炭火力(注3)の入札遅れが,影響を及ぼすかも知れない。

(注) (1) ultra mega power project (UMPP),(2) Asian Dvelopment Bank,(3) Tilaiya ultra mega power project (UMPP),(4) Anil Dhirubhai Ambani Group (ADAG),(5) Reliance Power,(6) Sasan (Madhya Pradesh),(7) Krishnapatnam (Andhra Pradesh),(8) National Thermal Power Corp (NTPC),(9) Power Finance Corp (PFC),(10) Lanco Infratech,(11) Jindal Power,(12) Sterlite Energy,(13) debt-equity ratio,(14) letter of intent,(15) Bihar,(16) Jharkhand,(17) 

●インド,石炭供給不足,NTPCの発電所運転休止

お金があれば発電所は幾らでも出来るが,問題は燃料である,と言い続けている。中国もインドも,石炭供給が大きな問題になっている。厳しい石炭不足が,NTPC(注17)の幾つかの発電所を襲っているが,このことは,発電所の停止という事態にまで発展しそうだ。各所の発電所で稼働率PLF(注18)が,通常の100%を20%も下回る80%に落ちてきている。

ビハール州(注19)のカハルガオン発電所(注20)のパニ所長(注21)が語る,我々は全く一時しのぎの(注22)の状態で,この3週間,予備の石炭は全くない状態,日34,000トンの石炭が必要なところ,24,000トンが精一杯である,と。NTPC(注17)のファラッカ(注23),タルチャール(注24),シングラウリ(注25)各発電所も,同じような状態である。この状況は,NTPC(注17)だけではないようだ。

電力情報の頂点にあるCEA(注26)の情報によると,多くの発電所が石炭不足の影響を受けており,備蓄7日以下の発電所が39カ所,4日以下が26発電所に及んでいる。また幾つかは,石炭が来れば発電,という状況だ。普通は,15日の備蓄が必要である。例えば,NTPC(注17)のカハルガオン発電所(注20)は,210MW機4台,500MW機2台,合計6台,1,840MWの石炭火力発電所である。

ここで訪ねた日の稼働率PLF(注18)は70%であったが,普段の発電状況は,PLF(注18)が,80~85%である。月のPLF(注18)は75.9%に落ち込んでいるが,パニ所長(注21)は,月80%は確保している,と言っている。NTPC(注17)は,80%を割れば,経営は難しい,給料も払えない,NTPC(注17)の失策でないのに,どうしてこうなるのか,と嘆いている。

実際,この年度内で500MWが運転開始するが,何処から石炭が入ってくるのか,全く分からない,と言っている。NTPC(注17)は,設備出力,29,844MWで,26発電所のうち,19発電所が石炭火力で,残りの7発電所がガス焚きである。

(注) (17) National Thermal Power Corporation (NTPC),(18) Plant load factor (PLF),(19) Bihar,(20) Kahalgaon plant,(21) UP Pani, general manager of Kahalgaon plant in Bihar,(22) hand-to-mouth,(23) Farakka plant,(24) Talchar plant,(25) Singrauli plant, (26) Central Electricity Authority (CEA),(27) 

参考資料

インド

●090131A India, Economic Times
インド,リライアンス,大規模火力ティラヤ地点,獲得へ
Reliance Power bags Tilaiya project
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Reliance_Power_bags_Tilaiya_project/articleshow/4044538.cms
●090131B India, Economic Times
インド,石炭供給不足,NTPCの発電所運転休止
NTPC goes for temporary plant shutdown
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/NTPC_goes_for_temporary_plant_shutdown/articleshow/4049637.cms

2009年1月30日金曜日

インド北辺でのインド企業の奮戦


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日本の国内で,地球温暖化問題に政府としてどの様に対応して行くか,議論が続いている。スイス東部ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は,もう地球温暖化は忘れ去って,経済危機に対する米国への非難が続いている。地球温暖化は,私はやはり量の問題で議論して行くべきだと思っている。日本の国内で幾ら精緻なアプローチをしても,地球温暖化には殆ど影響がないと思う。

日本が出来ることは,自動車を如何にして効率化して電力に渡すか,などの問題はあるが,結局,電力がどの様に温暖化に対処するか,に帰結してくる。温暖化は地球の問題だから,地球上でそれなりの量をこなせばよいのだから,日本の中で細かい対策を打ち出すよりは,やはり量的に効果のある地域に,日本の専門家が打って出る,と言うことが地球に効いてくると思う。

太陽光や風力は,あくまで2次的な対策で,量的に主流にはならないだろう。水力と原子力の組み合わせをエネルギーの基本に持って行くより方法はないのではないか。しかし水力は限られてくる。大きく言って,ヒマラヤ周辺にしか地球に効くような水力はないだろう。その周辺に,偶々新興国であるインドと中国が位置していたことは,人類にとって僥倖であった。

ADB,アジア開発銀行が,インドのヒマチャルプラデシュ州に,8億ドルを供与して水力開発を助ける。ADBの専門家8人からなる調査団が,山岳地帯に入って,一週間を過ごした。昨日,デリーに帰っていった。今回,ADBが対象としているのは,4地点,808MWである。ADBにも限界がある。下流にインダスのパキスタンが控えているだけに,流れ込み式に限る,と言う厳しい条件下である。

流れ込み式開発でも,808MWあるから,規模もかなり大きな開発である。ヒマラヤの麓は,流砂に悩まされているから,どうしてもどこかに巨大な貯水池が必要になるだろう。それに対しては,ADBもJBICも世界銀行も,国際的な問題と共に,物理的な流砂の問題から,なかなか手が出せない。今のところ,インドは民間資金に頼っているが,民間資金だけでは,ヒマラヤの水力は開発困難だろう。

インドの北辺の水力開発,それは,パキスタンの北西辺境州,カシミール,ヒマチャルプラデシュ,ネパール,アッサム,ブータン,アルンチャルプラデシュ,更には中国のチベットにかけて,ぐるりとヒマラヤを取り巻く人類最後の挑戦が始まろうとしている。それは,インドや中国だけの問題でなく,日本も含めた世界のすべての人々に影響してくる,壮大な挑戦である。

本文

●インド,ヒマチャルプラデシュ,ADBローン支払いへ

水力開発,インド北辺,地球温暖化への人類の最後の戦いの最前線,ヒマチャルプラデシュ(注3)州の水力開発に,ADB(注3)が8億ドルの融資を持って応える,という記事は,2008年11月10日付本HP(注1)でも伝えたとおりである。しかしADB(注3)は,流れ込み式水力(注4)にこだわった。ヒマチャルプラデシュ(注3)州の河川は,すべてパキスタンの上流に当たることから,国際河川に気を遣ったわけである。

今日の記事は,いよいよこの融資が実行に移される,と言うものである。木曜日,2009年1月29日,HP州電力公社HPPCLのカプール総裁(注5)の話として,ADB(注3)は,ヒマチャルプラデシュ(注3)州,4つの大規模流れ込み式水力(注4)プロジェクトの建設に対して,一連の8億ドルの最初の支出を,まもなく実施する,と語った。カプール総裁(注5)によると,ADB(注3)の8人の調査団は,一週間滞在,デリーに向かった,と。

ADB(注3)の調査団は,プロジェクトが期限内に完成するための,プロジェクトの財務,運営,モニタリングの手法について,州政府スタッフを訓練したが,プロジェクトの完成時期を2014年に設定している。ADB(注3)と州政府は,2008年11月に融資に合意しており,合計出力808MWの4つの水力プロジェクトに,ADB(注3)が融資する,としている。

プロジェクトは,シムラ地区(注6)の,111MW,サワラ-クドウ水力(注7),キナウル地区(注8)の,195MW,カシャン水力(注9),クル地区(注10)の,100MW,サインジ水力(注11),同じくクル地区(注10)の,402MW,ショントン-カルチャム水力(注12)である。全部の工事費は15億ドルで,このうち8億ドルをADB(注3)が,多国籍債権(注13)の形で,プロジェクトの準備状況に従って,供与する。25年返済である。

建設工事は,既に,サワラ-クドウ水力(注7)とカシャン水力(注9)で始まっている。サワラ-クドウ水力(注7)の,15億ルピーの土木工事契約は,ムンバイ籍のパテルエンジニアリング(注14)となされている。また,チェンナイのキルロスカ建設(注15)とハイデラバードの合弁(注16)は,2006年以来,このプロジェクトに関わってきている。サワラ-クドウ水力(注7)の完成時期は,2011年である。

カシャン水力(注9)の,30億ルピーの土木工事契約は,まもなくヒンドウスタン建設(注17)に発注される。この4つのプロジェクトの他,州電力公社(注5)は,270億ルピーのレヌカダムプロジェクト(注18)など3つの大規模水力プロジェクトを抱えている。レヌカダムプロジェクト(注18)は,デリーに水を供給するほか,水力発電40MWの計画である。現在,土地取得中である。

ヒマチャルプラデシュ(注3)州は,ヒマラヤ(注19)から発する5つの河川を持って,水資源が豊富で,その水力ポテンシャルは,20,415MWに達し,インド全部の25%に相当する。そのうち,既開発分は,6,370MWである。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081110D.htm,(2) Himachal Pradesh,(3) Asian Development Bank (ADB),(4) run-of-river hydropower,(5) Himachal Pradesh Power Corp (HPPCL) managing director Tarun Kapoor,(6) Shimla district,(7) Sawara-Kuddu project,(8) Kinnaur district,(9) Kashang project,(10) Kullu district,(11) Sainj project,(12) Shongtong-Karchham project,(13) multi-tranche financing facility,(14) Patel Engineering,(15) Kirloskar Construction of Chennai,(16) Coastal Joint Venture of Hyderabad,(17) Hindustan Construction Co.,(18) Renuka Dam project,(19) Himalayas,(20) 

●ブータンのダガチュ水力開発,インド企業へ

この問題は,既に,2009年1月8日付本HP(注20)でも取り上げられている。ニューヨークの金融危機が,このヒマラヤの小国,山深いブータンまで及んできたと言うことか。今年,2009年3月に着工する予定であった,114MW,ダガチュウ水力発電所公社DHPA(注21)の工事は,遅れる見込みだ。8,000万ヌー(注22)のダガチュウ水力発電所の土木工事を落札したインド企業マイタス(注23)が,経営危機に陥っているという。

今日の記事。ブータンのダガチュウ水力プロジェクト(注24)の入札に関して,インドの建設会社マイタスインフラ(注23)が,最低の札となった。マイタスインフラ(注23)は,創始者ラジュ氏のサッチャムコンピューター(注25)の同族会社である。2007年7月に入札に付されたプロジェクトで,土木工事部分の入札で,問題視されているマイタスインフラ(注23)が,勝者である可能性が高くなった。

プロジェクトの担当者は,工事は,2009年2月にも開始される予定であったが,2,3ヶ月遅れる可能性がある,と言っている。同族会社の汚点が囁かれる中,ブータン政府はその決定に慎重になっている。ダガチュウ水力プロジェクト(注24)の出力は,114MWである。入札状況は,マイタスインフラ(注23)が,38億ヌー,約38億ルピー相当。

これに対して,ヒンドウスタン建設(注18)が,42億ヌー,パテルエンジニアリング(注14)が,60億ヌー,で,ガモンインディア(注26)は不適格とされた。もしマイタスインフラ(注23)に決定すれば,完全な契約書がマイタスインフラ(注23)に手交されるが,その文書には,どの様な汚職にも関与していない,という誓約書を書かされることになる。

(注) (20) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090108B.htm,(21) Dagachu hydroelectric power authority (DHPA),(22) Nu 80 million,(23) Maytas Infra,(24) Dagachu Hydropower Plant,(25) Satyam Computers' founder B Ramalinga Raju,(26) Gammon India,(27) 

参考資料

インド

●090130A India, thaindian
インド,ヒマチャルプラデシュ,ADBローン支払いへ
ADB to release first tranche of loan to Himachal soon
http://www.thaindian.com/newsportal/uncategorized/adb-to-release-first-tranche-of-loan-to-himachal-soon_100148523.html

ブータン

●090130B Bhutan, Economic Times
ブータンのダガチュ水力開発,インド企業へ
Maytas lowest bidder for Bhutan hydropower project
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Services/Property__Cstruction/Maytas_lowest_bidder_for_Bhutan_hydropower_project/articleshow/4034813.cms

2009年1月29日木曜日

ミャンマー首相がアラカンを視察


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ミャンマーの西部,アラカンが騒がしい。中国が沖合天然ガスの基地として港を建設中の,バングラデシュとの国境に近いシットウエイに,2009年1月23日,ミャンマーの首都ネピドーからヘリコプターで,テインセイン首相一行が降り立った。全然報道はなかったが,首相のヘリコプターが,バングラデシュとの国境の町に着陸しようとして,霧に阻まれたため,大きなニュースになった。

この町はモーングドウ(注25)と言う町だが,大勢の人が待ちかまえる中,着陸を諦めた首相機は,近くのアンという町に降りて,西部軍司令部の建物に入ったという。また首相は来るだろうか,という声に,モーングドウ(注25)の古老は,首相はもう来ないよ,という。それは,この日はこの地方で日食の日で,日食が起こると悪い前兆,と言われており,首相が怖じ気づいたという。

それはとにかく,テインセイン首相が一週間近くに亘って,ミャンマー政府のアラカン地方に,ヘリコプターを飛ばしながら歩き回ると言うことは,今やアラカン地方が,ミャンマーにとって如何に大切かを意味している。最大の関心は,沖合天然ガスを本国へパイプラインで持ち帰ろうと考えている中国の思惑であり,それは更に発展して,中東のガスや石油を,この港に上げて運ぼうとしていることだ。

バングラデシュも,この地方の水力開発に重大な関心を持っており,何度か調査団を派遣してきていることは,このHPでも見たとおりである。更に,後れをとるまいと,インドのラメッシュ副大臣が,自らこの河を遡り,インドへの交易路を開くべく,模索している。テインセイン首相は,アラカン一の水力プロジェクトの現場も見る予定だという。誰か行ける人,アラカンに言ってきてくれませんかね。

今日も,フィリッピンのカラカ石炭火力を落札した仏企業スエズエナージが,夜逃げして,契約履行保証金を没収された記事で賑わっている。聞けば聞くほど,カラカ発電所の状態は悪いらしい。既にAESが買収しているマシンロック石炭火力も,状態が悪く,苦労しているようだ。電気料金の問題もあるらしい。フィリッピンの電源資産売却は困ったもの。オープンアクセスの開始もこれで遅れるようだ。傷物を売りつけるフィリッピン政府。

本文

●フィリッピン,カラカ問題,スエズの前渡金を没収

カラカ石炭火力のフランス企業の夜逃げ問題については,既に2009年1月26日付本HP(注1)で伝えたとおりであるが,今日の記事でフィリッピン政府の処置が明らかになり,それはまた,フィリッピン政府が,現実の発電所の状況から見て,如何に適切でない方法で民営化を進めているか,を物語っている。フィリッピン政府は,PSALM(注2)を通じて,スエズエナージ(注3)に銃を向けることになる。

銀行筋が確認したところによると,PSALM(注2)はスエズエナージ(注3)による契約履行保証(注4),14百万ドルを没収した。最終的にカラカ石炭火力(注6)民営化を進めていた787百万ドルの取引失敗で,契約履行保証(注4)没収を,2009年1月26日,フランス-ベルギー籍のスエズエナージ(注3)の信用状L/C(注6)を提出している銀行,カイロン(注7)に対して実行した。

前の記事から,スエズエナージ(注3)の契約履行保証(注4)放棄は,カラカ石炭火力(注6)の運転環境の劣悪の結果とされている。カラカ石炭火力(注6)の運転を担当することになっていたスエズエナージ(注3)の現地企業エメラルド(注8)は,先週,マニラ事務所を閉鎖している。今回の中止のいきさつは,発電所の状況が劣悪であることと,NPC(注9)の引き取り価格が低いことが要因である,とされている。

カラカ石炭火力(注6)取引における買い取り価格は,市場価格より低いと言われるNPC(注9)の時間別価格TOU(注10)に固定されている。この結果,投資企業は,その損失をいつ取り返すことが出来るか,判断できない状態である。このことはフィリッピンの電力産業すべてに言えることで,最初に被害を受けたのは,600MWのマシンロック石炭火力(注11)を買い取ったAES(注12)であった。

カラカ石炭火力(注6)について,PSALM(注2)は再入札を行うことを表明しているが,その時期や条件は確定していない。IPP連合PIPPA(注13)に所属する企業は,カラカ石炭火力(注6)の民営化が,改革の鍵となるオープンアクセスの時期に関係してくるので,早期の再入札をすべきだ,と言っている。多くの企業が,カラカ石炭火力(注6)は,もはや,787百万ドルでは売れないだろうと見ている。誰もが,条件悪し,と知っているから。

スエズエナージ(注3)が落札した頃の状況では,280百万ドルをちょっと超える程度で,その値は,PSALM(注2)の役員会がセットしていた値段よりも,まだ安かった。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090126C.htm,(2) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(3) Suez Energy,(4) performance bond,(5) Calaca coal plant,(6) letter of credit (L/C),(7) Calyon,(8) Emerald Energy Corporation,(9) National Power Corporation (NPC),(10) time-of-use (TOU) rates,(11) Masinloc plant,(12) AES Corporation,(13) Philippine Independent Power Producers Association (PIPPA),(14) 

●ネパール,アッパータマコシ水力を,計画拡大

水力発電所の規模を何処まで持って行くか,と言うのは水力計画にとって基本的な問題で,増分の設備費が増分の便益を越さないところまで,限界まで挙げることが合計便益を最大にする,と言うのが,理論的には正しい。ダムの高さの制限などで支配される場合もあるが,一般にはそこまで検討されていなければ,基本的な調査が終わっているとは言い難い。

309MW,アッパータマコシ水力プロジェクトUTHEP(注14)を開発することになっている企業は,更に30億ルピーを超える投資を行って,設備出力を,456MWとすることに決定した。以前は,300億ルピーで,309MWの計画であった。ネパールの投資企業は,既に210億ルピーを約束している。シュレスタ・プロジェクトマネージャー(注15)は,このプロジェクトは極めて安価である,普通は,MW当たり1.5億ルピーは必要である,と。

シュレスタ(注15)によると,UTHEP(注14)の委員会は,30億ルピーを加えて,増分出力,147MWを得ることで合意した。新規規模の電力量は,年間2,247GWhに対して,元の309MWの計画では,1,777GWhであった。30億ドルを追加するだけで,20年前に完成した,360百万ドル,69MWのマルシャンディ下流水力(注16)より大きな電力が得られる。360百万ドル追加で4基の水車を追加できる。30百万ドルは土木関連。

設計変更で,近くのロルワリング川(注17)の水を導水する,これが計画の鍵で,日145百万KWhを追加できる。この変更で,KW当たり,1,300ドルとなり,ネパールの一般的な水力,KW当たり2,000ドル,約78,000ルピー相当に比べ安い。資金完成したマルシャンディ中流水力(注18)は,KW5,000ドル,約39万ルピー相当,であった。

増分の費用については,電力債(注19)発行やその他の方法を考えている。被雇用準備基金EPF(注20)は,追加資金100億ルピーを約束しており,一方,既に120億ルピーが投資済みである。2年前に,ネパール電力庁NEA(注21)は,マルシャンディ中流水力(注18)とクリカニ第3水力(注22)の不足分として,15億ルピーの電力債(注19)を発行したことがある。

今回の件で,NEA(注21)は,電力債(注19)発行の可能性について,水資源省(注23)と財務省(注24)に協議を行う。UTHEP(注14)の委員会は,水曜日,2009年1月28日,会議を持って,プロジェクトの拡大について協議を行う。シュレスタ・プロジェクトマネージャー(注15)は,ネパールにとって十分に価値のある提案だ,と言っている。

(注) (14) Upper Tamakoshi Hydro Electric Project (UTHEP),(15) Mrigendra Shrestha, project manager, UTHEP,(16) Lower Marshyangdi Hydro Electric Project,(17) Rolwaling River,(18) Mid-Marshyangdi Hydro Electric Project,(19) power bonds,(20) Employees' Provident Fund (EPF) ,(21) Nepal Electricity Authority (NEA),(22) Kulekhani-3 project,(23) Ministry of Water Resources,(24) Ministry of Finance,(25) 

●ミャンマー,アラカンで首相のヘリコプター,濃霧で着陸できず

ミャンマーのアラカン地方が騒がしい。テインセイン首相(注27)がアラカンを訪問し,モーングドウ(注25)にヘリコプターで着陸しようとして,濃霧に阻まれ,アン(注26)に緊急着陸して,そこの西部軍司令部(注28)に留まっているという。首相(注27)が長期に亘ってアラカンにある,と言うことが,如何に今やアラカン地方がミャンマー軍事政権にとって重要な地域か,と言うことを意味すると思う。

テインセイン首相(注27)は,2009年1月23日に軍政権の首都ネピドー(注29)を発って,アラカンの主要都市,中国などが天然ガス基地として開発中のシットウエイ(注30)に到着しているから,滞在は一週間近くに及んでいる。目的は,バングラデシュ国境の視察で,通商関係のより緊密な二国間関係構築のため,と見られている。

モーングドウ(注25)では,多くの人が待っていたが,もう首相は来ないだろう,と言っている。それは,飛来して霧に阻まれた日は,この地方で日直が見られ,ミャンマーでは日食は悪い予兆,という言い伝えが残っており,首相はもう二度と来ないだろう,と言っている,何ともミャンマーらしい藩士ではある。

またテインセイン首相(注27)は,ブティドーン地区(注31)のサイディン滝(注32)を視察する予定であるが,この地点は,アラカン地方最大の水力プロジェクトの地点であり,首相のアラカン訪問を機に,昨夜のテレビでは,近い将来,アラカンの人々は電気を得ることが出来,生活レベルが一挙に向上する,と放送している。

(注) (25) Maungdaw,(26) Ann Town,(27) Prime Minister Lt. General Thein Sein,(28) Western Command,(29) Naypyidaw,(30) Sittwe,(31) Buthidaung Township,(32) Sai Din Waterfall,(33) 

参考資料

フィリッピン

●090129A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,カラカ問題,スエズの前渡金を没収
PSALM forfeits $ 14-M bond on Calaca
http://www.mb.com.ph/BSNS20090128146735.html

ネパール

●090129B Nepal, kantipuronline
ネパール,アッパータマコシ水力を,計画拡大
Rs 3 billion to generate 147 MW
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?&nid=177510

ミャンマー

●090129C Myanmar, narinjara
ミャンマー,アラカンで首相のヘリコプター,濃霧で着陸できず
Dense Fog Prevents Helicopter of PM Landing in Maungdaw
http://www.narinjara.com/details.asp?id=2047

ミャンマー首相がアラカンを視察

2009年1月28日水曜日

フィリッピンのバターン原発再稼働問題


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

あれは1984年だったのだろうか,インドネシアのダム建設現場の宿舎で,テレビを見ながらフィリッピンの混乱を遠くから眺めていた。いよいよマルコスが,マラカニアン宮殿からヘリコプターで米軍基地に向かうシーンも覚えている。フィリッピンはもの凄い熱気の中にあって,テレビに登場するアキノ新大統領を見ながら,案外美人だね,などと無責任な会話をやっていた。マルコス末期は,フィリッピンは東南アジアの先進国だった。

600MWの,殆ど完成している原子力発電所を放棄するなど,今から考えるととんでもないことだが,あのアキノ大統領の熱気の中で,この5億ドルの施設の放棄に,殆どの人が異議を唱えなかった。我々でさへ,マルコスの造った物か,仕方がないな,と言う感情も入り込んできていた。この5億ドル近い借金を返すのに,2007年4月までかかったという,つい先日ではないか,放棄から23年かかったわけだ。

東南アジアでこれから始まろうとしている原子力開発,地球温暖化対策の決め手として,インドネシア,タイ,ベトナムなどが,初めての原子力発電所の建設に駒を進めている中で,今しか知らない人には,あのフィリッピンが1980年代初期に,既に原子力発電所を稼働寸前まで持っていっていたなど,想像も出来ないだろう。23年間,風雨に曝されてきた原子力発電設備を,真剣に再稼働させようとしている人々がいるわけである。

世界原子力機関IAEAの専門家達が,2008年の初めに現地を訪れている。私も記事は覚えているが,彼等の結論がどうであったか,よく知らなかったが,今日の記事によると,再稼働可能,との意見を,フィリッピン政府に挙げたようだ。これに対して,同型機の経験を持つ韓国電力KEPCOが,これを買って出て,再稼働開始に向けてロビー活動を行っているという。

私も,再稼働出来るならやるべきだ,と思うが,それにかかる費用は,おそらく最初の建設費,5億ドルを越すのではないか,新規発電所を造るのと同じぐらいいるだろう。カンボジアの和平後,プレクトノットダム再建の雰囲気の時,昔の日本の無償,水車発電機を倉庫で点検したら,その再稼働の費用は,最初の費用の倍ほどかかった,修理というものはそう言うものだ。

まあそれでも,そこに原子力発電所が立地していた,という事実はもの凄く貴重で,国民に何処に造るかまだ発表も出来ないタイやベトナムに比べれば,旧施設を一度ぶっ壊しても,バターンに原子力発電所を造る価値は,十分にあるだろう。今日の科学者グループは,慎重な意見を述べている,当然だろう,23年前の空き家の中で原子力発電所を動かそうと言うのだから。

でも今日の記事を良く読んでみると,科学者代表,AGHAM(注4)のタパン総裁(注5)は,電気料金を安くする運動のグループの主宰者でもあるらしいが,彼は,電源資産を売却に走る政府を厳しく批判しており,基本的には,電力民営化に対して強い反対意見を持っているようだ,私も同感であるが,特にこのバターンの原子力発電所を,韓国に渡すことに,大きな抵抗を持っているようだ。送電線が中国に売られ時の感情と同じように。

本文

●フィリッピンのバターン原子力,議会の動きに注意喚起

ヤフーの掲示板に,中途で放棄されたフィリッピンのバターン原子力発電所BNPP(注1)のことが,匿名で書かれている。1973年の石油危機でマルコス大統領が,2基のBNPP(注1)の建設を指示,バターン-1(621MWeのウエスティングハウス加圧水型原子炉 )の建設 が,1976年4.6億ドルで1984年完成,1984年,アキノ大統領の手で原発は燃料を装荷されず,2007年4月までかかって,支払い完了。

2008年前半,国際原子力機関IAEA(注2)の調査団が現地を訪問,その継続性について調査,IAEA(注2)の結論は,BNPP(注1)のバターン-1が更新されることができて,30年の間,経済的に,そして問題なく維持管理運転されることができる,政府に報告している。その後の動きでは,韓国電力KEPCO(注3)が,この作業を行うべく,フィリッピン政府と折衝している,と言う経緯のようだ。国内科学者の意見が記事なっている。

最近のニュースによると,バターン原子力発電所BNPP(注1)の再稼働について,安全,経済性,持続性,などについて議論が行われている。AGHAM(注4)の科学者グループが,議会や政治家達に,意志決定の前に,十分に疑問に答えるよう要求している。AGHAM(注4)のタパン総裁(注5)の意思表明だが,プラントの稼働に際しては,経済性,技術的問題点,社会的要素,を十分に解明せよ,としている。

パイプなども含めたすべての施設を点検しなければならないが,現在関心を持っているKEPCO(注3)の調査団だけでは十分でない,と。IAEA(注2)の調査団は,単なる商業的な関心だけで進めるのは危険,と忠告している。この原子力発電所,BNPP(注1)の再稼働は,予想される電力不足への対応と料金の抑制が意識されている。

タパン総裁(注5)は,議会とアロヨ政権が,電気事業法EPIRA(注6)の元で電源資産を民間へ売却しながら,なぜこのBNPP(注1)の再稼働の資金調達を考えているのか,理解できないと言っている。また,地球温暖化対策といいながら,原子燃料精製過程で炭酸ガス封じ込めを議論していることも,疑問の一つだ,と言っている。アロヨ大統領が売却している発電所は,十分に原子力発電の代替が出来るではないか,と。

フィリッピンは,水力,地熱,天然ガス,風力,太陽光など,多くのエネルギー資源を持ちながら,それらを民間のIPPに売却しようとしている,政府は原子力発電所BNPP(注1)までも,外国企業に売ろうとしているのか,とタパン総裁(注5)は疑問を呈している。タパン総裁(注5)はまた,電気料金運動のPOWER(注7)の主宰者でもあるが,EPIRA(注6)の改正問題にも言及している。

ちょっと過激だが,タパン総裁(注5)は,政府が真剣に電気料金を安くしようと思っているならば,付加価値税(注8)を止め,やっかいな買電契約PPA(注9)を破棄し,EPIRA(注6)も廃案にすべきだ,と言っている。要するに彼は,民営化を止めるべきだと言っているのか。また,供給力を心配しているならば,既設の改修にお金を回すべきだ,新規発電所の建設を,外国資本から取り上げろ,と息巻いている。

最後に本題の原子力発電所BNPP(注1)について,危険は付き物なので,その運転について,国内世論を良く見極め,経済,技術,社会的観点について,国民の立場から評価を行ってくれ,と提言している。なお,BNPP(注1)の経緯についてまとめると,1960年代に研究開始,1976年に建設開始,1985年に完成,1986年に操業停止,となっている。

(注) (1) Bataan Nuclear Power Plant (BNPP),(2) International Atomic Energy Agency (IAEA),(3) KEPCO,(4) AGHAM or the Samahan ng Nagtataguyod ng Agham at Teknolohiya para sa Sambayanan,(5) Dr. Giovanni Tapang, AGHAM National Chairperson,(6) Electric Power Industry Reform Act (EPIRA),(7) POWER or People Opposed to Warrantless Electricity Rates,(8) value-added tax,(9) PPA contract,(10) 

●フィリッピン,マニラ配電の社長人事,イエスス氏

先週のフランシスコ社長(注13)の退任に続いて,マニラ電力MERALCO(注10)の役員人事について,2009年1月26日の取締役会で,社長などの選任が行われた。社長に選ばれたのは,下馬評通り,ロペス財閥(注11)の技術的幹部,イエスス氏(注12)で,2月1日に就任する。イエスス氏(注12)は,マニラ北鉄道MNTC(注14)の社長である。

また,27%の株式取得に成功したサンミゲールSMC(注15)からは,4人が役員会入りした。コンジュアンコSMC会長(注16),アンSMC社長(注17),メンドーサ元法務長官(注18),カルデロン氏(注19)の4氏である。SMC(注15)の株式27%は,政府系保険機構GSIS(注20)から買い取ったもである。ロペス会長(注21)は,十分な経験を持つ役員達で,マニラ電力MERALCO(注10)の発展が期待される,と述べた。

(注) (10) Manila Electric Company (Meralco),(11) Lopez group,(12) Jose "Ping" de Jesus as its new president and chief operating officer,(13) Jesus P. Francisco,(14) Manila North Tollways Corporation (MNTC),(15) San Miguel Corporation (SMC),(16) SMC Chairman Ambassador Eduardo CojuangcoJr.,(17) SMC President Ramon Ang,elected Vice Chairman,(18) former Minister of Justice Estelito Mendoza,(19) Aurora Calderon,(20) Government Service Insurance System (GSIS),(21) Meralco chairman and chief executive officer Manuel M. Lopez,(22) 

参考資料

フィリッピン

●090128A Philippines, pinoypress
フィリッピンのバターン原子力,議会の動きに注意喚起
Scientists Caution Solons on Move to Reopen Bataan Nuclear Plant
http://www.pinoypress.net/2009/01/27/scientists-caution-solons-on-move-to-reopen-nuclear-energy-plant/
●090128B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,マニラ配電の社長人事,イエスス氏
As SMC takes 4 board seats De Jesus named Meralco President
http://www.mb.com.ph/BSNS20090127146659.html

2009年1月27日火曜日

ネパールの開発との戦い


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
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オバマ大統領が,気候変動問題担当特使に,トッド・スターン元大統領補佐官を起用,彼が京都議定書当時の政権の代表だったことを考えると,京都議定書をボイコットしたブッシュ政権への立場が明らかになる。また,自動車の排ガス規制の強化を表明,GMなどが,困難だが,これに従う,トヨタも同様の声明を発表した。オバマ政権は自動車を助けねばならない,助ける前に厳しい基準を飲む姿勢を求めた,と言うことか。

私の好きなインドのシン首相,心臓のパイプ手術は5カ所にも及び大変らしい。2月の選挙までの復帰を宣言しているが,76歳だけに心配。シン首相と抱き合って,インドとネパールの新しい関係を内外に宣言した,アジアの開発男,ネパールのプラチャンダーが苦しんでいる。アジアの開発群像の中でも,この二人は私から見て,インド北辺人類最後の戦いになくてはならない人物だ。

プラチャンダーには私はその純粋さを見る。元々,ネパールを支援する米国の農業の専門家としてスタートした彼は,農村運動の中でネパールの矛盾に憤慨して,マオイストに入り,ゲリラ活動で王制を打倒する運動に参加,この間に農村の人々に浸透して,遂にその目標である,王制打倒,共和制施行,そうしてその最初の首相の座についたのだ,その目指すネパールの再生を夢見ながら。

10年間で10,000MW水力開発,この目標を掲げて,走り始めたが,ある人は言っていた,まもなくプラチャンダーはゲリラ戦争が政治に比べてどれだけ易しい仕事か,に気づくに違いない,と。まさに彼はその事態に直面している。毎日停電に苦しむネパールの人々に,10年間10,000MW開発,を掲げてみても,一向に解決する目処は立たない。それはそうでしょう,水力は10年かかるから。

彼は,これで駄目だ,とりあえず石油火力で当面凌ごう,と決意して200MWの火力建設を提案したが,連立与党の一部から反対されて,万事窮していた。そこで,昨日の国会に於ける,血涙を絞る演説となったわけである。批判ばかりしている連立与党や,約束が果たせていない,と首相を攻撃するメディアに対して,批判しても前に進まない,国を挙げて私の政策に協力してくれと。

プラチャンダーは,民主主義というものが如何に難しい仕事なのか,やっと分かり始めた,皆が自分の開発政策に協力してくれる,とばかり思っていたのに,おもしろおかしく首相の行動の批判に終始している,これが政治なのか,と彼は怒り狂っている。また悪いのは,インド企業など,ライセンスを得ながら一向に着工の兆しを見せない,プラチャンダーが机を叩いて悔しがっても,彼等を動かすのは容易ではない。

先日も,一向に着工の意志を見せない国内企業の中小水力の免許を,一気に12企業から取り上げて見せた。今日の彼は,どうしても停電を解決する,あらゆる手段を使う,水力が駄目なら太陽でも風力でもバイオでも良い,と叫んでいる。プラチャンダーよ,決して短気を起こすなよ,君は正しい,マオイストの軍隊を温存しているが,冷静になって欲しい。極東日本の一極で,君の一挙手一投足を見ながら応援している人がいる,忘れるな。

本文

●ネパール,ダハール首相,議会に対して幅広い理解を要請

私の愛する,また期待するプラチャンダー,ことネパール首相のダハール(注1),いつかの記事にも書いてあった,彼,ネパールの荒くれ男,プラチャンダーは,しばらく経ったら,ネパールを治めるよりは,戦争の方がどれだけたやすい仕事か,分かって来るに違いない,と。王制を打倒し,無血で共和国最初の政権,その首相の座に就いたプラチャンダーは,5ヶ月経って,議会で吼えた。

ダハール(注1)首相は,彼が政権を取って5ヶ月を経た今日,第2のメッセージを政治家達に伝えた,すべての政党は,新しい広範な政治的理解をしてくれと。この5ヶ月の苦しい経験は,今までの伝統的な働き方では国家的な約束は果たすことが出来ないと。すべての政党に,かって提案した12の約束(注2)を再びここで訴えたいと。政府が国民の期待に応えていないことの理解の上,彼は連立与党の限界を非難した。

彼,プラチャンダーは,特に政治家の中の若者グループに奮起を促した。まず悪い風習である結婚持参金制度(注3)を一週間以内に禁止すると。息子と娘は,この国に於いて同等の権利を有すると。エネルギー危機の問題について,プラチャンダーは,この年度内に一定の成果を出す,と約束した,手段は,火力,太陽光,バイオ燃料など,あらゆる手段を動員する,と。

またプラチャンダーは,水力発電所開発のライセンスについて,それが欲しいなら,ライセンスを守りきるという精神で,6ヶ月以内にプロジェクト着工への行動をとれ,と。世界の金融危機のための,海外にあって働く同胞が危機にさらされている,それに対処するには,失業を極力避けるために,国内の産業を立ち上げなければならないと。そのために彼,プラチャンダーは,必要な改革を行うと。

またプラチャンダーは,メディアにも要求を突きつけた。メディアはもっと,新しい建設の時代の先導役として,楽観的で勇気を与えるような宣伝をすべきだ,と。また,企業は,博愛の精神で仕事に突き進めと。また国民に対して,批判ばかりしていないで,自分たちがネパールのために何が出来るか,考えよと。また,閣僚や官僚には,もっと効率的な仕事をやれと。

プラチャンダーは,軍隊の統合と憲法の書き下ろし,これが今後の和平促進の鍵だ,と述べて,国内世論のみでなく,国際社会も,ネパールの張ってのために,力を貸して欲しいと。苦しんでいる我がプラチャンダーの心の叫びである。

(注) (1) Prime Minister Pushpa Kamal Dahal 'Prachanda',(2) 12-point pact of the past,(3) dowry,(4) 

●ネパール,100MW水力開発で,新基準を適用

首相プラチャンダーの開発への焦りが,電力開発にも伝わってくる。ネパール水資源省MOWR(注4)は,100MWを越す水力プロジェクト開発のライセンスの発行について,新たな手続きを取り決めた。この動きは,現政権下で決定したプロジェクト以外のもので,プロジェクト地域内の調査を行いたいという希望が増えたことに対応するものである。

ネパールは今や,電力不足の直面しており,需要の急激な伸びに供給力がついていけない。この新しいガイドラインでライセンスが与えられるが,現状に鑑みて,セプタガンダキ水力(注5),コシ水力(注6),カルナリ/マハカリ水力(注7)は別扱いとなる。プロジェクト推進企業は,1992年制定の電力法(注8)に合致するプロジェクトの詳細資料を添付して,財務,技術,環境に関する報告書を提出する必要がある。

しかしまた,現在進行中の,パンチェスバール水力(注9),カルナリ-チスパニ(注10),サプタコシ大規模多目的ダム(注11)は別扱いとなる。MOWR(注4)のアパディアイ報道官(注12)は,新しい基準は,推進する企業の財務的技術的能力を評価すすためだ,としている。このことから,まず参入企業は,設備出力を評価する必要がある。この設備出力を,電力開発局(注13)が審査することになる。

もし設備出力が,当初のライセンスより増えるようであれば,新たなライセンス料を追加することになる。それは,MW当たり100百万ルピーである。また保証金として,プロジェクトコストの1%を預けなければならない。技術的能力の実証も必要である。また推進企業は,FS(注14)を実施したコンサルタントの署名入りの覚書(注15)を提出する。

外国企業の場合は,地元企業との連携が義務である。ライセンス応募者は,その技術的財務的な能力を示す書面を,2ヶ月内に提出する。ライセンスは2年間に限定して与えられる。2年内の進捗に関する条件については,別途規則に条件(注16)に照らして確認される。

(注) (4) Ministry of Water Resources,Nepal, (5) Saptagandaki,(6) Koshi,(7) Karnali/Mahakali,(8) Electricity Act, 1992,(9) Pancheshwor,(10) Karnali Chispani,(11) Saptakoshi High Dam Multi-purpose project,(12) Anup Kumar Upadhyay, spokesperson, MoWR,(13) Department of Electricity Development,(14) feasibility study,(15) memorandum of understanding,(16) terms and conditions,(17) 

参考資料

ネパール

●090127A Nepal, mediaforfreedom
ネパール,ダハール首相,議会に対して幅広い理解を要請
PM Dahal calls for comprehensive political understanding
http://www.mediaforfreedom.com/ReadArticle.asp?ArticleID=14033
●090127B Nepal, thehimalayantimes
ネパール,100MW水力開発で,新基準を適用
New guidelines in place for 100 MW hydel project licences
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=aFanata0scqzpla7Sa9pa.axamal&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20090126

2009年1月26日月曜日

フィリッピンの電力改革に黄色信号

【日刊 アジアのエネルギー最前線】フィリッピンの電力改革に黄色信号
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今日の日経の社説は,「排出削減目標の内向き議論の危うさ」,というタイトルであるが,最後の方に,「国際交渉の場では国別総量目標にはふさわしくないと何回も明確に否定されたセクターごとの削減可能量の積み上げが,いまだに日本の選択肢として検討対象になっているのは,不可解というしかない。」,と書かれている。セクター毎,と国別との対立,と読む。

私は日本のセクター別の考え方の方が正しいと思う。国別に集まっても,何もまとまらない,それは国という単位が,地球温暖化とは何の関係もないからだ。オリンピックでも,必ず弱い国と強い国は同じように決勝にでなければならない,としたら,オリンピックにならないだろう。今の日本の癒し教育みたいになってしまって,何の意味もなくなるだろう。

国別の競争は止めて,石油,電力,鉄鋼,鉄道,自動車,などが個別に集まって,自分たちの分野で何をやればよいか,技術的に議論すべきだろう。それを総合的にまとめる主体はいるが,セクター別が本当だと思う。だから,今日の日経の激しい批判は,私はおかしいと思う。どうせまとまらないのだから,あくまで日本政府は,今の考え方を貫くべきだ。

フィリッピンは,エネルギー問題で,どうしてこのような政治的な話しかないのであろう。追っかける方も嫌になってしまう。300MWのカラカ石炭火力の話である。この発電所は,1984年頃,私たちがインドネシアでダムを造っていた頃,ニュージェックのメンバーがその建設の関わった,古い発電所である。まだ情報が確かでないが,これを買い取ったスエズエナージが,どうも夜逃げをしたような感じである。

元々,フィリッピンの電源資産売却は,電源の分散による競争市場の創出,と言う高い理想で出発したはずだが,売りに出される品物は傷物が多く,アンボクラオの水力でも,砂で埋まってしまって動かないものを修理費も含めて売却,BROOTとか言って,まず改修してから使ってくれ,というもので,壊れた時計を店先で売っている時計屋さん,と言う感じなのだ。日本企業の買ったCBKプロジェクトも,修理込みである。

インドで,アンデラプラデッシュで配電の民営化を進めるときに,まずやらなければならなかったことは,売却する前に配電網の物理的修理であった。それもやらないで資産売却を行うフィリッピンは,少し電力への真剣度が足りないと思う。その辺のゴルフ道具の中古屋の感覚しかないのではないか。中国に売り飛ばした送電網も,改修はこれからである。全くいい加減。何とか言ってやって下さい。

本文

●スリランカ,大統領,全発電所の完成を指示

私としては久しぶりのスリランカである。日本政府や私の友人達がスリランカについては頑張っていたが,中国の石炭火力が入ってきてからは,少し力が抜けた感じ。でも,今日の報道でも,反政府軍のLTTEを追いつめて,政府がやっと全土を制圧できるか,と言うところまで来ている。あの内戦状態の中を,良く日本政府が支えてきたと思う。日本とスリランカの特殊な関係がそうさせていたのだろうが。今日の記事。

ラジャパクセ大統領(注1)は,電力エネルギー省(注2)に対して,すべての新規電源は計画通り完成させるよう,指示した。大統領(注1)の指示は,現在工事中の電源プロジェクトの進捗を検討する会議が,トリーズ寺院(注3)で行われた席上で,行われた。ケラワラピティヤ発電所(注4)の完成で,170MWが国家送電網に投入されたところである。このプロジェクトの継続で,更に,85MWが追加される予定である。

現在工事中のノロチチョライ石炭火力(注6)は,第1期工事が,2010年及び2011年に完成し,その時点で,300MWが発電する。更に,第2期,第3期工事により,400MWが追加される予定である。アッパーコトマレ水力(注5),150MWも投入される予定である。また,電力エネルギー省(注2)は,150に上るミニ発電所の推進について,承認を与えている。

大統領(注1)は,多くの発電所が,計画では既に運転を開始していなければならないのに,いろいろな政治的事情で遅れてきた,しかし,ノロチチョライ石炭火力(注5)と,アッパーコトマレ水力(注5)は,現在の政府の強い決断の元で,軌道に乗ったものである,と語った。

(注) (1) President Rajapakse,(2) Ministry of Power and Energy,(3) Temple Trees,(4) Kerawalapitiya power plant,source: colombo page,(5) Upper Kotmale Hydropower Plant,flickr.com/photos/shehal/855130096,(6) Norochcholai thermal power plant,(7)

●フィリッピン,マニラ配電,サンミゲールの役員まだ

マニラ配電MERLCO(注7)の役員人事,2009年1月19日のフランシスコ社長(注8)の辞任,サンミゲールSMC(注9)の株式取得,などを背景に,憶測が流れている。1月26日にも,役員会が開かれる模様である。電力分割民営化の中,唯一巨大企業として生き残っているMERLCO(注7)だけに,その電力セクターへの影響は大きい。

MERLCO(注7)は,率直に,来週の役員会までは,人事については何も分からない,としている。ある高い情報筋では,26日の役員会で,SMC(注9)から,4人の役員が選任される,という情報を流している。フランシスコ社長(注8)の後任には,2つのグループがそれぞれ候補者を立てて争う形勢である。ロペスグループ(注10)の候補はイエスス氏(注11)であり,SMC(注9)は電力のベテランを候補にする,とされている。

SMC(注9)は,MERLCO(注7)の経営を行うために,社長を自派から立てるものと見られている。SMC(注9)の代表が役員に入ると言うことは,今まで占めていた政府系GSIS(注12)の席を,SMC(注9)に渡すということである。SMC(注9)からの社長候補は,コンユアンコSMC会長(注13)か,メンドサSMC社長(注14)と言われている。SMC(注9)は,2008年11月,GSIS(注12)の株取得,27%持ち分となっている。

(注) (7) Manila Electric Company (Meralco),(8) Jesus "Chito" P. Francisco,(9) San Miguel Corporation (SMC),(10) Lopez’s group,(11) Jose "Ping" de Jesus,(12) Government Service Insurance System,(13) SMC chairman Eduardo Cojuangco,(14) SMC president Ramon Ang and Director Estelito Mendoza,(15) 

●フィリッピン,スエズ,カラカ火力から手を引く

ふと目に止まった記事だが,これはフィリッピンの電力改革を根底から揺すぶる大事件ですね。高い情報筋によると,仏ベルギー籍企業スエズエナージ(注15)は,マニラ事務所を閉鎖し,その結果として,787百万ドルのカラカ火力案件(注16)から手を引いてしまったようだ。今週に始まったこの縮小活動は,2,3ヶ月かけて,その義務や事務所閉鎖を実施するはずであった,と実業界の情報筋が語っている。

スエズエナージ(注15)がマニラで雇用した人員は,各国の事務所へ分散配置されるはず,とされている。PSALM(注17)は,カラカ火力案件(注16)の行く末についても明確な声明を出していない,スエズエナージ(注15)がマニラ事務所を閉鎖したことは,認めているようだ。もしスエズエナージ(注15)が手を引く場合は,PSALM(注17)は,14百万ドルの契約履行保証金(注18)を剥奪することになる。

スエズエナージ(注15)の地元企業エメラルドエナージ(注19)がカラカ火力案件(注16)の資金調達を確認した時点で,WESM(注20)で活動するための何人かのスタッフを雇用しており,この人員はの多くは,PSALM(注17)と既に連関し動いている。総合すると,このNPC(注21)の中古の発電所の入札で,買電価格をKWh0.37ペソ調整,4.26ペソとして,昨年12月,ERC(注22)がカラカ火力案件(注16)の取引を決定している。

しかしその取引の直後,スエズエナージ(注15)は,カラカ火力案件(注16)の発電所の状態について,NPC(注21)が,100%国内産セミララ石炭(注23)を使ってきたため,状況が極めて悪い,と述べていた。PSALM(注17)とスエズエナージ(注15)は,270日間,最終引き渡しまで調整を行うこととなっていた。一般に,一定期間内に代金支払いを行わなければならないが,カラカ火力案件(注16)は特別扱いであった。

実際,カラカ火力案件(注16)は,2008年8月がその支払日であったが,6ヶ月以上遅れていた。入札に付されたのは,2007年10月で,契約は,2007年11月9日まで有効のはずだった。発電所の引き取りは,「そのままの状態(注24)」,が原則であるが,発電機の改修のための現金を渡していた。このカラカ火力案件(注16)の事件は,フィリッピンの民営化に暗い影を投げかけている。

(注) (15) Suez Energy,(16) Calaca deal,(17) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(18) performance bond,(19) Emerald Energy Corporation,(20) Wholesale Electricity Spot Market,(21) National Power Corporation (NPC),(22) Energy Regulatory Commission (ERC),(23) Semirara coal,(24) "as is, where is",(25) 

●ネパールの水力開発には外国資本が必須

ネパールは大きな水力包蔵を持ちながら,外国直接投資を有効に利用できていないので,問題だ,と言う趣旨で,長文の記事が書かれているが,内容は余り変わった提案は含まれていない。包蔵水力は,83,000MWで,経済的開発可能量は,43,000MWである。開発されたのは,僅かに,561MWである。ここでこの長い記事が言っている部分で,ブータンを見てみろ,と言う言葉がある。

ブータンは,二つの大規模水力,合計1,380MWを開発することによって,一人当たりのGDPを760ドルから一気に1,320ドルに上げている,と言うことだ。私の見るところだが,果たしてブータンと同じことが,ネパール人に出来るか,と聞いてみたい。ブータンは,外交権,軍事権,そのすべてをインドに与えて,ここまで来たのである。

ネパールは,インドと反目しあって今日まで来てしまった。ネパール人が,ブータン人と同じことをして,インドにすべての外交権を預ければ,瞬く間にネパールの水力は開発されるであろう。でもネパール人にはそれが出来ない。私だって,ネパールの人に,ブータン人と同じようにやりなさい,などと言うことは出来ない。地球とは難しいものである。長文,誰か読んでみて下さい。

参考資料

スリランカ

●090126A Srilanka, itn.lk/news
スリランカ,大統領,全発電所の完成を指示
President instructs to complete work on power plants
http://www.itn.lk/news_02_20090124.html 

フィリッピン

●090126B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,マニラ配電,サンミゲールの役員まだ
Meralco says it’s ‘unaware’ of SMC board entry
http://www.mb.com.ph/BSNS20090125146515.html
●090126C Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,スエズ,カラカ火力から手を引く
Calaca buyer Suez Energy gives up deal, closes office
http://www.mb.com.ph/BSNS20090125146511.html

ネパール

●090126D Nepal, nepalmonitor
ネパールの水力開発には外国資本が必須
FDI in Nepal’s Hydropower Sector: A Focus on the Product
http://www.nepalmonitor.com/2009/01/fdi_in_nepals_hydropower.html

2009年1月25日日曜日

中国雲南のダムが景気刺激策で動く



HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm



私はインドのシン首相が好きである。人格者で国民からも尊敬されていると思う。もう76歳だが,今のインドを支えて行くためにはまだ元気でいて貰わねばならない。24日に,ニューデリーの病院で心臓のバイパス手術を受けた,との記事。インドは,ガスや核燃料など,エネルギー外交が正念場を迎えている。医師団は,「手術は成功し,容体も安定している」,と述べている。元気でいて欲しい。



中国は今,莫大な景気刺激策を発表して地方の開発を進めることになっている。私もかって雲南省に行って驚いたのは,雲南省が中央と余り相談しないで,どんどんプロジェクトを進めていることである。中国人の特質で,儲かるとなれば,中央がどう言おうと地方が進めてしまう。数年前にも,発電所がどんどん出来てしまって,石炭供給の目処も立たず,動けない発電所が沢山出てきた。



雲南省が進めているダムプロジェクトで,私たちは一緒になって協力しようとしている,日本から北京に入って中央政府に挨拶に行くと,あのダムは中央は認めていない,と言っている。雲南省に行って,中央は駄目だと行っているよ,と言うと,日本側から中央政府を説得してくれ,と言う。全くおかしな立場に立たされるが,かくのごとく,地方は中央の命令通りには動かないのである。



今日の中国科学学術院(注11)の蒋高明教授(注12)の話も面白い。中央の科学アカデミーから派遣された環境専門の先生が,現地を見ると,金融刺激策が発表されると同時に,雲南省が勝手にダム計画を進めている。記事に出てくる虎跳峡(注19)は,温家宝首相が自ら現地を訪れて,環境上よろしくない,と中止を命じた。



蒋高明教授(注12)が現地を訪れて驚いたのは,ダムサイトを少し上流にずらして,地質調査を行い,もう道路などの準備工事を行っているという,10万人の水没を伴うが,あれより上流に行くと,余り人も行かないところで,中央からは目立たない。私も,測水所を見に上流に行ったことがあるが,4人の老婆が道ばたで麻雀をやっている,のどかな村だった。諸葛亮孔明が渡河して攻め込んだところがあった。



「単なるビジネスを行うための費用」(注16)と言う教授の話も面白い。考えてみれば我々も,1980年代は環境は単なる邪魔になるお荷物だった。調査に入っても環境やさんはほったらかしておいて,技術に打ち込んだものだ。環境専門家がコストをはじいても,誰もそのコストを工事費に反映させようとしない。日本の水力屋で,真剣に環境コストをインドネシアのプロジェクトで見たのは,私が日本の水力屋で最初のエンジニアーだろう。



本文



●パキスタン,国会で水力開発について,糾弾



全土に亘って厳しい電力制限が続くパキスタン,担当大臣であるアシュラフ水資源電力大臣(注1)が国会に呼び出されて,厳しく糾弾されている。いるもの苦しい答弁で,代わり映えがしないが,2010年には良くなります,の繰り返しである。今回は,カラバーダム(注2)の進捗について,1953年から2004年8月にかけて,既に123億ルピーが消費され,2005年に見直しを行った費用が2.2百万ルピーであることが報告された。



質問に答えてアシュラフ水資源電力大臣(注1)は,今年,2009年末までにはいろいろなプロジェクトが完成し,新たに3,500MWの新規電源が運転を開始する,と答えている。現在不足の電力は,1,700MWであるが,これを克服するために政府は,新規の火力,水力,借り上げ発電所,石炭火力計画など,国によるもの及び民間セクターによるものなど,努力を進めている。



2010年について,パキスタンは現在,6000MWの能力があるが,2010年時点の需要は,11,000MWになるだろう。しかし,国全体で2010年末には発電能力は,25,473MWとなり,必要量を超えるはずである。また,代替エネルギー開発にも努力しており,来月,2009年2月には,パキスタン初めての風力発電が運転開始する。



ディアマー-バシャダム(注3)の進捗について,出力,4,500MW,2018年の完成を目指している,この2009年度内には着工の予定である。またUAE(注4)が13のガスタービン,合計出力320MWの供与を申し出ている。また,各河川で18の水力プロジェクト,合計出力18,848MWが,政府で着工準備中であり,民間企業によって20の水力プロジェクト,合計出力4,809MWが提案されている。



また,カラチのうち続く停電問題について,移動発電機(注5)を準備して,問題を6ヶ月以内に解決したい,としている。アシュラフ水資源電力大臣(注1)は,国会に呼ばれて誠に苦しい答弁に終始しているが,これで国会は納得しているのであろうか。



(注) (1) Water and Power Minister Raja Pervaiz Ashraf,(2) Kalabagh Dam,(3) Diamer-Basha Dam,(4) United Arab Emirates,(5) mobile power generators,(6) 



●インドネシア,PLN,設立以来,初めて黒字に



インドネシアの国有電力公社PLN(注6)が,高々と設立以来の黒字経営を謳い挙げた,もっとも補助金の元ではあるが。この水曜日,2009年1月21日,PLN(注6)は,今年,2009年の純利益(注7)が,1.7兆ルピア,約151.3百万ドル相当,で,公社設立以来初めての純利益(注7)を掲げることになった,と発表した。政府との年度計画討議の会議を終わって,モクタール総裁(注8)が発表した。



2008年,PLN(注6)は,売り上げ収入が,83.8兆ルピアで,営業利益(注9)を,3.57兆ルピアと計上した。この数字は,年初の目標であった79兆ルピアの売り上げと,5,360億ルピアの営業利益(注9)を超えるものである。5.6兆ルピアの純損失(注10)にもかかわらず,年初見込みの6兆ルピアの純損失(注10)を下回った。補助金制度のもとでの,長い歴史であった。



現在PLN(注6)は,平均単価KWh当たり650ルピア,約5.72セント相当,でで販売しているが,この値は平均生産単価KWh当たり1,300ルピア,約11.45セント相当,より低い。しかし今年,2009年は,売り上げ7%増を目指し,純利益(注7)を記録する予定だ。モクタール総裁(注8)は,今年は画期的な年で,原油価格の低迷と石油燃料節約で,生産単価を,1,011ルピアに下げる,と言っている。



2009年のPLN(注6)の計画では,2008年の発電実績,127,600GWhを超えて,136,000GWhとなる。この17.8%が石油燃料であるが,これは2008年の実績,23%より少なくなっている。石油燃料を石炭とガスに切り替え,2008年に石油使用量11百万キロリッターを,7.9百万キロリッターに改善する。これによって,補助金の88兆ルピアを,46兆ルピアに削減する予定である。



PLN(注6)は,政府主導の,10,000MW発電所建設を進めている。これらの30の発電所を2010年までに完成するために,17.33兆ルピア,約15.5億ドル相当,と,送電線建設費用8.58兆ルピアが必要である。モクタール総裁(注8)によると,ジャワ島以外の銀行も資金調達に支援をしてくれており,その額は,4兆ルピアに達する,としている。



(注) (6) PT PLN,(7) net profits,(8) PLN president director Fahmi Mochtar,(9) operating profits,(10) net loss,(11) 




●中国の雲南,蒋高明教授が視察,環境が足らないと



中国雲南省,地元の新聞の報道である。世界金融危機に際して,中国政府が発した景気刺激策が,雲南省のダムプロジェクトを推進の方向へ向けている。中国科学学術院(注11)の蒋高明教授(注12)が,最近,雲南省の幾つかの水力プロジェクトを視察し,北京の景気刺激策が,雲南省(注13)と四川省(注14)のダム建設をの速度を早めている,と見ている。



ダムプロジェクトには義務である環境影響評価EIA(注15)が,企業や地方政府によって,真剣に行われているとは思えない,と各地を回った蒋高明教授(注12)はコメントしている。EIA(注15)は,ダム調査の流れの中で,まさに主流からはずれお飾りとなり,ビジネスを行うための一部の費用,という感じである。企業や地方政府にとって,EIA(注15)がプロジェクトそのものを支配するとは思っていない。



この蒋高明教授(注12)の言葉,単なるビジネスを行うための費用(注16),と言う言葉から想起させられるのは,雲南企業(注17)が地方の省令を無視して出し続けた粉塵が,ヤンゴンザイ湖(注18)にヒ素の公害をもたらした事件である。また,蒋高明教授(注12)は,一旦中止が命令された虎跳峡(注19)のダムが,上流に移されて名前を変えて,ロンパンダム(注20)として復活している点である。



この新しいダム計画は,金沙江(注21)に沿って,10万人の移住が必要で,もう既に,ボーリングはおろか,インフラの一部の建設も始まっている。



(注) (11) Chinese Academy of Sciences' Institute of Botany,(12) Professor Jiang Gaoming (蒋高明),(13) Yunnan,(14) Sichuan,(15) environmental impact assessments (EIAs),(16) cost of doing business,(17) Yunnan Chengjiang Jinye Industrial and Trade Co,(18) Yangzonghai Lake,(19) Tiger Leaping Gorge,(20) Longpan Dam Project,(21) Jinsha River,(22) 



参考資料



パキスタン



●090125A Pakistan, 

パキスタン,国会で水力開発について,糾弾

Planning, inspections of Kalabagh Dam cost Rs 1.23 billion

http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2009%5C01%5C24%5Cstory_24-1-2009_pg7_19



インドネシア




●090125B Indonesia, The Jakarta Post

インドネシア,PLN,設立以来,初めて黒字に

PLN state power utility targets first-ever net profit this year

http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/22/pln-state-power-utility-targets-firstever-net-profit-year.html



中国



●090125C China, gokunming.

中国の雲南,蒋高明教授が視察,環境が足らないと

Yunnan news roundup

http://gokunming.com/en/blog/item/783/yunnan_news_roundup

2009年1月24日土曜日

インドネシアのガス供給は国内優先

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原油価格が上昇気味である。原因は,石油輸出国機構(OPEC)加盟国が先に決めた減産の協定を遵守しているところにあるという。米国産標準油種WTIの中心限月3月物が,バレル46.47ドルと報じている。つい先日は40ドルを切るか,と言われていたが,どの程度で今後安定するのか。今日の記事の天然ガス価格にも響いてくるし,私の車のガソリン代にも響いてくる。

天然ガスの総量を抑えておく。2006年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約181.46兆立方メートルといわれており,国別には旧ソ連が一番多く,イラン,カタールなどがそれに続く。 今後採鉱が盛んになることで,確認可採埋蔵量の増加が期待されている。可採年数は66.7年である。単位が変わるので読みにくいが,1立方mは353立方フィートである。

天然ガス,と言われると,どうしても天然ガス無機説を言わなければならない。アジアの経済的勃興と共に,彼方此方で天然ガスが出ている。ミャンマー沖,タイ沖,カンボジア沖,インドのKG流域,インドネシアのリアウ諸島やスラウエシ沖,フィリッピンの西の海域,更には日本海やサハリンなど,日本周辺でも騒がしい。可採埋蔵量は年と共に増えて行くのではないか。原油30年,ガス70年,石炭200年,化石燃料が随分ある。

これだけ化石燃料がありながら,人類は化石燃料から離れなければならないのか。米国議会も,再生可能エネルギーへの優遇税制を決めたようだ。フィリッピンの方が寧ろ,その道を整備しながら確実に進めたような気がする。オバマ政権が誕生してまだ時間もなく,再生可能エネルギーへの基本政策も出来ていないのに,早々と税制を持ち出してきた。後で読んでまたメールを書きます。

インドネシアの天然ガスについては,このHPでも最近騒がしい。2009年1月21日付本HP(注24)では,リアウ諸島沖のガス田でのエクソンとインドネシア政府の紛争を取り上げており,2009年1月23日付本HP(注25)では,三菱商事やINPEXなど,日本企業の大活躍を報じている。中国の構成が少しゆるんだか,と言う感じがしないわけでもない。

インドネシア,BPミガス(注19)によれば,国内需要急増の傾向から,2002年には29.6%であったものが,2008年では49.5%と上がっている。インドネシアは,世界第3位のLNG輸出国であり,増産に努めているが,皮肉にも,ガス田の老朽化で生産が落ちている。2009年の生産予想は,日73億立方フィートであるが,2008年は,日79億立方フィートを生産している。

(注) (24) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090121E.htm,(25) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090123B.htm,(26)

本文

●インド,イランのパイプラインなければガス危機

インドの電力が,偏りすぎた石炭依存を修正しようと,ガス火力を考えていることは伝えられているが,ガスを原料とする肥料部門との均衡の問題で苦しんでいる。その状況は,2008年11月5日付本HP(注7)でも詳しく伝えたが,更にパキスタンとの関係悪化で,パイプラインを諦めて,トルコからイスラエル経由の,手品みたいな構想も,2008年11月25日付本HP(注6)で伝えているところである。今日の記事。

インド商工会議所ASSOCHAM(注1)の調査結果によれば,パキスタンとの関係悪化により,イラン及びトルクメニスタン(注2)からのガスパイプライン計画が撤退を余儀なくされれば,インドは厳しい天然ガス不足の危機に立ち至るであろう,と警告している。その調査では,インドのクリーンエネルギー構想に於けるガスの需給ギャップが広がり,5.7%の不足に陥る,としている。

インド,このエネルギー不足の危機に立ち向かう国は,国産のガスの生産目標量年422.8億立方mが達成できそうにないので,イラン-パキスタン-インド及びトルクメニスタン(注2)-アフガニスタン(注3)-パキスタン-インドの二つのガスパイプラインは,必要である,としている。パキスタンを通過する2つのパイプラインの放棄は,既に危機にあるガス需要を,更に悪化させる,と言うのである。長期的視野から,日450億立方フィート不足だ。

インドの現在のガス可能供給量,日104百万立方mは産業分野での需要の60%でしかない。この需給ギャップは,2011~2012年にかけて更に広がる。需要を押し上げるのは,都市ガス供給システムに沿っている電力と肥料の分野である。インドの高度経済成長を支えるために,一次と二次のエネルギー需要として,電力と肥料を支えるガス需要を,確実に支える必要がある。

(注) (1) Associated Chambers of Commerce and Industry of India (Assocham),(2) Turkmenistan,(3) Afghanistan,(4) billion cubic feet per day (bcfd),(5) million standard cubic meters per day (mmscmd),(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081125D.htm,(7) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081105B.htm,(8)

●インドネシア,エクソンとシェブロンが地元ガス需要へ対応

世界的な巨大エネルギー企業,エクソンモビル(注8)とシェブロン(注9)は,木曜日,2009年1月22日,67.6億ドルに上る国内企業へ逃す今日旧協定に署名した。署名は,ジャカルタで行われた第4次国際ガス見本市(注10)の場で行われた。この案件では,エクソンモビル(注8)が,肥料関連でプルタミナグレシック(注11)と電力公社のPLN(注12)にそれぞれ,14億ドル及び17億ドル相当の供給となる。

エクソンモビル(注8)のガス供給は,エクソンモビル(注8)がプルタミナ(注13)と共同運営するセプブロック(注14)から行われるが,その供給量はまだ不明確である。シェブロン(注9)と東カリマンタン(注15)での協力グループで,ここから同じ地域にある肥料企業ププックカルティム(注16)へ,16億ドル分の供給を行う。今回の署名は,海外ガス企業の,国内需要支持への強いメッセージと考えられる。

この前に,ムリヤニ財務相(注17)は,インドネシアのガス生産は,将来的に海外輸出よりも国内需要を優先する,との政府のメッセージを発している。ムリヤニ財務相(注17)は,これは国内産業の成長と中流階級の急速な勃興により,国内需要が急激に増えるからだ,と説明している。ガス企業にとっては,海外企業の需要が強いというジレンマがあるが,ムリヤニ財務相(注17)は,国内優先を明確に打ちだしている。

また経済調整相代理(注18)も兼ねるムリヤニ財務相(注17)は,国内にも海外にも応えられるよう,ガス生産増大の維持を指示している。ガス規制を担当するBPミガス(注19)によれば,ガスの国内需要は確実に伸びており,2020年には,日60億立方フィートに達すると見ている。2007年の需要は,日42億立方フィートであった。もっとも工業化しているジャワでは,年率4.9%伸びで,2020年には,日41億立方フィートとなる。

BPミガス(注19)によれば,国内需要急増の傾向から,2002年には29.6%であったものが,2008年では49.5%と上がっている。インドネシアは,世界第3位のLNG輸出国であり,増産に努めているが,皮肉にも,ガス田の老朽化で生産が落ちている。2009年の生産予想は,日73億立方フィートであるが,2008年は,日79億立方フィートを生産している。

BPミガス(注19)のプリヨノ会長(注20)によれば,天然ガス生産増強のため,大規模LNGプロジェクトにを頼りにしており,パプアのタングーLNGプラント(注21),中央スラウエシのセノロLNGプラント(注22),ティモール海のマセラガスブロック(注23)に重点を置いている。

(注) (8) ExxonMobil Corp,(9) Chevron Corp,(10) fourth international gas exhibition and conference,(11) PT Petrokimia Gresik,(12) PT PLN,(13) PT Pertamina,(14) Cepu block,(15) East Kalimantan,(16) PT Pupuk Kaltim,(17) Finance Minister Sri Mulyani Indrawati,(18) acting coordinating minister for the economy,(19) BPMigas,(20) BPMigas chairman Raden Priyono,(21) Tangguh LNG plant in Papua,(22) Senoro LNG plant in Central Sulawesi,(23) Masela gas block in the Timor Sea,(24)

参考資料

インド

●090124A India, Economic Times
インド,イランのパイプラインなければガス危機
'India to face gas crisis if Iran pipeline is scrapped'
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_to_face_gas_crisis_if_Iran_pipeline_is_scrapped/articleshow/4022792.cms

インドネシア

●090124B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシア,エクソンとシェブロンが地元ガス需要へ対応
Exxon, Chevron in $6.76b deal to feed gas-hungry local market
http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/23/exxon-chevron-676b-deal-feed-gashungry-local-market.html

インドネシアのLNGに三菱160億ドル

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今日は外に出ていて,遅くなってしまった。深夜の経済ニュースを見ながら書いているが,オバマ大統領誕生に,市場は冷たい反応。アメリカ国民に,あなた方も責任を持って対処してくれ,と地味な演説をした故か。或いは,余りにも企業の業績の悪さに,オバマだけでは,市場はどうしようもない,と言うことか。特に原油の下げから,これに連動しないとされていたLNGが,相当に下げてきた。

今日のインドネシアの記事は,そのLNG市場のあらましを把握するに,格好の記事だ。インドネシアは現在3つのLNGプラントを持っているが,第4のプラントを三菱商事主導で,中部スラウエシに,2013年に運転開始し,5番目は,日本帝国石油主導で,チモール海(32)のマセラプロジェクト(注33)が計画中だ。

日本の石油企業の活躍が目立つ記事であるが,中国経済の影響もあるのであろうか。価格については,日本に対するガス価格は,日本の原油価格標準JCC(注36)に連動しており,原油価格がバレル100ドルとすれば,ガス価格は,百万Btu当たり(注37)9~10ドル,としている。米国ガス先物は,現時点,百万Btu当たり4.676ドルである。中部電力のガス需要の見通しは,今年度と変わらないとしている。

本文

●ネパール,13の水力開発のライセンスを破棄へ

マオイスト主導のネパール新政府が,試される状況にある。ネパール政府は,不人気の原因となりそうな電力不足を乗り切るために,強硬な手段を講じてきた。批判が増えてきて傷つきつつある連立政権は,全国に亘って,発電計画の調査に関して発した,少なくとも12のライセンスを取り消した。理由は,推進の遅れ,である。取り消されたプロジェクトの出力合計は,246.161MWである。これは週108時間停電から見て厳しい数字。

2つのプロジェクト,シンドパルチョック(注1)のラワーバレヒ(注2)水力とダディン(注3)のコルフコ0-ラ(注4)水力は,2001年にライセンスが出されたが,5年で保有の権利が失効,取り消しとなった。2005年のドラカ(注5)のキムティ第2(注6),27MWと,2006年のカスキ(注7)のマドキュコーラ(注8)水力,5MW,は,時間切れ,取り消しとなった。他の6プロジェクトも,進捗がはかばかしくなかったものである。

この中には,ミャジ(注9)のリクウ(注10)水力,1.5MW,また規模の大きい,67.7MW,カリガンダキベッグコーラ(注11)水力,がある。治安悪化を理由にしていたが,実際はひどい遅れがあった。電力開発局DOED(注12)のラクール局長(注13)によると,第2次ジャンアンドラン(注14)の後の内閣で,民間企業に調査を2006年を期限に要請したが,出来なかったので失効した,と語っている。

今回の一連のライセンス取り消しは,連立与党7党の会合が行われた席で決定した。一般に,電力開発局DOED(注12)は,ライセンスの種別を,発電,送電,配電の3種類に分けている。

(注) (1) Sindhupalchowk,(2) Lower Balephi,(3) Dhading,(4) Kolphu Khola,(5) Dolakha,(6) Khimti-2,(7) Kaski,(8) Madkyu Khola,(9) Myagdi,(10) Likhu,(11) Kaligandaki Begkhola,(12) Department of Electricity Development (DoED),(13) Sri Ranjan Lacoul, director general, Department of Electricity Development (DoED),(14) Jana Andolan II,(15)

●インドネシアのプルタミナ,三菱とガス160億ドル取引

中国が接近しているため,インドネシアから日本へのガス輸出にブレーキがかかる,と言われている中,これは大きなニュースではないか。国有原油ガス公社プルタミナ(注15)とMEDECO(注16)は,三菱商事(注17)主導のコンソーシアム(注19)と,160億ドルに上るガス案件に署名した。コンソーシアムはセネロLNGプラント(注18)でLNGに変換して,日本へ輸出する。

コンソーシアムの組成は,三菱商事(注17)が51%,プルタミナ(注15)が29%,MEDECO(注16)が20%である。プルタミナ(注15)のアルフィン副社長(注20)によると,今回,2009年1月22日に行われた契約は,昨年8月の構想,プルタミナ(注15)とMEDECO(注16)が,コンソーシアムに,15年間に亘って総量17兆立方フィートのガスを供給する,この構想に従ったものである。

このガスは,プルタミナ(注15)とMEDECO(注16)が保有するセネロ-トイリ・ブロック(注21)と,全部プルタミナ(注15)が保有するドンギブロック(注22)から生産される,スラウエシ北部と思われる。LNGプラントは,年間生産容量200万トンで,2013年に運転を開始し,中部電力(注23)と関西電力(24)に輸出される。プルタミナ(注15)のアルフィン副社長(注20)は,価格は原油価格に連動する公式で決定する,と。

MEDECO(注16)のルクマン社長(注25)によると,LNGプラント建設の最終判断は,資金調達の状況を見て,遅くとも2009年2月には決定する。インドネシアは,3つのLNGプラントを持つ。年1,850万トン能力の東カリマンタン(注26)のボンタン(注27),1,250万トンのナングロアチェダルサルム(注28)のアルン(注29),760万トンのパプア(注30)のタングウ(注31)である。

セネロLNGプラント(注18)は,インドネシア第4番目であるが,第5番目と期待されているLNGプラントは,チモール海(32)のマセラプロジェクト(注33)で,日本のINPEX(注34)が運用する。今年,2009年のインドネシアのLNG生産量は,タングウ(注31)を除いて,年間2,000万トンとされている。価格について,プルタミナ(注15)のアリ総裁(注35)がブルンバーグに次のように説明している。

日本に対するガス価格は,日本の原油価格標準JCC(注36)に連動しており,原油価格がバレル100ドルとすれば,ガス価格は,百万Btu当たり(注37)9~10ドル,としている。米国ガス先物は,現時点,百万Btu当たり4.676ドルである。中部電力のガス需要の見通しは,今年度と変わらないとしている。

(注) (15) PT Pertamina,(16) PT Medco Energi Internasional,(17) Mitsubishi Corp.,(18) Senoro plant,(19) consortium,(20) Pertamina vice president Iin Arifin Takhyan,(21) Senoro-Toili block,(22) Donggi block,(23) Chubu Electric Power Co.,(24) Kansai Electric Power Co.,(25) Medco Energi president director Lukman A. Mahfoedz,(26) East Kalimantan,(27) Bontang,(28) Nangroe Aceh Darussalam,(29) Arun,(30) Papua,(31) Tangguh,(32) Timor Sea,(33) Masela project,(34) Inpex,(35) Pertamina president director Ari H. Soemarno,(36) Japan Crude Cocktail,(37) million British thermal unit,(38)

参考資料

ネパール

●090123A Nepal, thehimalayantimes
ネパール,13の水力開発のライセンスを破棄へ
Licenses of 12 hydro projects scrapped
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=aFanata0scqzpla7Ra0qa.axamal&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20090122

インドネシア

●090123B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのプルタミナ,三菱とガス160億ドル取引
Pertamina, Medco to ink $16b deal for Japan
http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/21/pertamina-medco-ink-16b-deal-japan.html

2009年1月22日木曜日

オバマ大統領の手から水が漏れた

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オバマ大統領は就任演説の中で,エネルギーは太陽と風と土地から,と言っていた。風と水とは元は太陽エネルギーだから,太陽と土地,と言えばよいのにわざわざ,太陽と風,と言ったために,水が落ちてしまった,「上手の手から水がこぼれた」,と言う諺はここから来たらしい。昨年の11月ぐらいから27歳の挨拶文のドラフターが何度も何度もオバマ氏とやりとりして描き上げたという,土地は勿論バイオのことだろう。

化石燃料は,太陽エネルギーが一度炭素を地球に閉じこめてしまったわけだから,それを解放することは地球温暖化に繋がる,と言うことだろうが,短期間にそのサイクルを繰り返すバイオは,地球温暖化の犯人ではない,という理解だろう。でも,わざわざ炭素を取り込んでくれたのだから,やはりそっと地球に埋め込むべきではなかろうか。地熱は太陽エネルギーか,長期なサイクルの太陽エネルギーか。

地熱発電は炭酸ガスを放出しないのだろうか,少しはするのでは。再生可能エネルギー法を成立させたフィリッピンは,あそこまで強気なのは,太陽光発電や風力に頼っているのではなくて,地熱と水力を頭に置いて,法案をアジア諸国に先駆けて成立させたのだ,と言うことも出来る。フィリッピンは現在のところ,地熱発電に於いて,米国に次いで第二の発電量を持つという。

フィリッピンは今,電源開発を忘れて,電力自由化を一生懸命進めているが,最初のステップは国有電力公社NPCの有する資産売却で,2009年にも予定の70%売却を完了したい,としている。この2,3年は,火力発電所の資産売却入札で,大いに揺れていたが,再生可能エネルギー法が通過してから,少し風向きが変わってきた。地熱発電所と水力発電所の買収競争に,一気に火がついた感じである,優遇措置を期待して。

余り詳しくないが,フィリッピンには2,3の有名な財閥がある。その中でも,エネルギーに熱心なのが,ロペス財閥でありアボイテス財閥である。過去に,2008年12月13日付本HP(注)で,ロペス財閥の支配するファーストジェンFGC)の関連会社であるEDCが,水力と地熱の発電所の確保に向けて動き出し,世銀のIFCから大きな資金支援を得ていることが話題になっていた。

今日はその競争相手であるアボイテス財閥の動きが,詳細に伝えられている。アボイテス電力(注1)は,国有の発電所を買収するために,国内債券市場で,15億ペソの起債を行う予定である。フィリッピン証券市場(注2)に,昨日,2009年1月20日,より需要があるならば,予定の2倍の起債を行う可能性がある,伝えた。アボイテス電力(注1)は,この債権申し込みの件で,監督委員会(注3)に必要書類(注4)を提出した,とある。

既設発電所の買収競争もいいけれど,再生可能なら再生可能でも良いから,電源の開発にもう少し力を入れて頂きたい。ルソンには水力が残っているはずだ。治安の問題を捨てておくから,開発できない,というのは,独立国家として恥ずかしい。ルソンの北は未開発水力の宝庫である。でも,電気料金の問題になると,石炭火力を更に開発しておく必要があるはずだ。

(注) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081213A.htm
(注) (1) ABOITIZ Power Corp.,(2) Philippine Stock Exchange,(3) Securities and Commission,(4) registration statement,(5) Albay,(6) Laguna,(7) Tiwi-Makban power plants,(8) AP Renewables, Inc.,(9) Aboitiz Equity Ventures, Inc.,(10) Cebu City,(11) Erramon I. Aboitiz, new Aboitiz Equity president and chief executive officer,(12) Visayan Electric Co., Inc. (VECO),(13) Aboitiz and Garcia families,(14) 300-megawatt power plant in Subic,(15) Davao,(16) Cebu Energy Development Corp.,(17) Cebu.,(18) Toledo City,(19) Sibulan,(20) Visayas,(21) Tongonan plant,(22) Palin-pinon plant,(23) Mindanao coal plant,(24) Mindanao,(25) Energy department,(26)

本文

●フィリッピン,アボイテス,電源資産のため15億ペソ起債

フィリッピン,上場企業,アボイテス電力(注1)は,国有の発電所を買収するために,国内債券市場で,15億ペソの起債を行う予定である。アボイテス電力(注1)は,フィリッピン証券市場(注2)に,昨日,2009年1月20日,より需要があるならば,予定の2倍の起債を行う可能性がある,伝えた。アボイテス電力(注1)は,この債権申し込みの件で,監督委員会(注3)に必要書類(注4)を提出した。

この調達資金は,747MWの発電所の前渡金40%に充当する,その発電所は,アルバイ(注5)とラグナ(注6)にあるティウイ-マクバン発電所(注7)である。アボイテス電力(注1)は,その関連会社,AP再生可能(注8)を通じて,昨年,2008年7月,446.88百万ドルで,この地熱発電所の入札を行っている。昨年,2008年,39億ペソを借り入れているが,更にその運用と新規発電所買収に資金が必要である。

アボイテス電力(注1)の親会社であるアボイテス投資ベンチャー(注9)によると,まだしばらくセブ市(注10)で資本投入を行いたい,景気後退時期ではあるが,アボイテス電力(注1)は発電資産買収を考えているから,と語っている。アボイテス投資ベンチャー(注9)のアボイテス社長(注11)は,まだ金額は明確ではないが,それは2008年の実績を超えるとしている。昨年は,3つの地熱買収で,114億ペソを投入した。

アボイテス社長(注11)は,電力需要は今年も伸びる,と見ている。製造業は落ちるが,他のセクターはまだ伸びると見ている。彼によると,2008年,配電企業のビサヤ配電VECO(注12)では,KWhで4.6%の伸びを示している。VECO(注12)は,30万世帯の需要家を持つフィリッピンで2番目の配電企業で,アボイテスとガルシア一族(注13)が所有して,セブ市(注10)及びその近傍に配電している。

現在工事が遅れている,300MWスビック発電プロジェクト(注14)を除いて,他のプロジェクトは順調に推移している。アボイテス電力(注1)は,ダバオ(注15)で,42MWと34MWの水力発電所を建設中である。それは,コンソーシアム,セブエネルギー開発(注16)に参画しているもので,このコンソーシアムは,246MWの石炭火力を,セブ(注17)のトレド市(注18)で建設中である。

アボイテス社長(注11)によれば,セブ(注17)の石炭火力は,まず,82MWが2010年3月に運転開始する,また,シブラン(注19)推力発dんしょは,今年,2009年9月に完成する,としている。300MWスビック発電プロジェクト(注14)は遅れているが,まだ生きていると。他にアボイテス電力(注1)は,ルソンのティウイ-マクバン発電所(注7)とビサヤス(注20)のトンゴナン発電所(注21)とパリンピノン発電所(22)を買うと言っている。

アボイテス社長(注11)はミンダナオ石炭火力(注23)について,今評価をしているが,電気料金がプロジェクトに比べて安すぎる,と言っている。ミンダナオ(注24)は,2009年末から2010年初めにかけて,新規電源,100~200MW必要とされている。エネルギー省(注25)によれば,年率6.5%で需要が伸びるので,2006~2014年に,新たに850MWの新規電源が必要,と言っている。

(注) (1) ABOITIZ Power Corp.,(2) Philippine Stock Exchange,(3) Securities and Commission,(4) registration statement,(5) Albay,(6) Laguna,(7) Tiwi-Makban power plants,(8) AP Renewables, Inc.,(9) Aboitiz Equity Ventures, Inc.,(10) Cebu City,(11) Erramon I. Aboitiz, new Aboitiz Equity president and chief executive officer,(12) Visayan Electric Co., Inc. (VECO),(13) Aboitiz and Garcia families,(14) 300-megawatt power plant in Subic,(15) Davao,(16) Cebu Energy Development Corp.,(17) Cebu.,(18) Toledo City,(19) Sibulan,(20) Visayas,(21) Tongonan plant,(22) Palin-pinon plant,(23) Mindanao coal plant,(24) Mindanao,(25) Energy department,(26)

●インドのCERC,公社事業の資本参入,IRR15.5%へ

中央の電力セクターの公益事業体,NTPC(注26)とNHPC(注27)は,そのプロジェクトへの資本投下に於いて,今までより高い内部収益率で,収益を見積もりことが出来るべく,基準が改定になる。火曜日,2009年1月29日,中央電力規制委員会CERC(注28)は,向こう5年間に於ける料金規制で,資本内部収益率ROE(注29)を,14%から15.5%とすることで発表した。工期を守るものは,更に0.5%上げる。

これによって,この景気が悪化する中,発電や送電線部門で,より利益性が増し,投資が増えることが期待される。CERC(注28)のデオ委員長(注30)は,この基準改定は,発電企業と需要側の両者のバランスをとったものだ,と言っている。この新しい基準は,2009~2014年に適用するもので,2009年4月1日に発効する。

なおこの基準は,税引き前で,ベースのROE15.5%は,税率によって更に上がる。即ち,前に基準の21%は,23.5%となる。これは投資を有利にするが,その一方,需要家は所得税に耐えられなくなると思われる。CERC(注28)のクマール事務局長(注31)は,これが需要側の不満であったが,改訂によって需要側の所得税は,中央公共事業体から買電することで,100~120億ルピーの削減になると見ている。

また改訂の中でCERC(注28)は,電力企業の開発事業に不利であった償却繰り上げ制AAD(注32)を排除した。しかしこれは,新規プロジェクトの負債の返還を保護しいた償却率を書き直すことになった。12年間経ってしまうと,残りの償却はプロジェクトの耐用期間全体に分散されることになる。電気料金は安くなるのか,の質問にクマール事務局長(注31)は,15~20%高くなるが,これを5~10%に抑える,と言っている。

CERC(注28)の規定では,資本率が30%を超えると,残りは通常のローンとして扱われるが,30%以下であれば,料金設定で配慮される。2009年4月1日以前の発電や送電線のプロジェクトは,料金設定に当たって,2009年3月31日以前の負債資本比率(注33)で判断される。2009年4月1日以降の経費は,資本支出として,料金設定で考慮される。

水力発電所について,新規プロジェクトについては,最初の10年間の水文リスクを考えて,別個に検討することで,配慮が加えられている。またCERC(注28)は,再生可能エネルギー関連のプロジェクトについては,料金規制を,別個切り離して考えることに決定している。

(注) (26) NTPC,(27) NHPC,(28) Central Electricity Regulatory Commission (CERC),(29) rate for return on equity (RoE),(30) CERC chairman Pramod Deo,(31) CERC secretary Alok Kumar,(32) advance against depreciation (AAD),(33) debt-equity ratio,(34)

参考資料

フィリッピン

●090122A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,アボイテス,電源資産のため15億ペソ起債
Aboitiz Power to borrow P1.5B more; parent to hike spending
http://www.bworldonline.com/BW012109/content.php?id=045

インド

●090122B India, Economic Times
インドのCERC,公社事業の資本参入,IRR15.5%へ
CERC raises power returns base to 15.5% for five years
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/CERC_raises_power_returns_base_to_155_for_five_years/articleshow/4009412.cms

2009年1月21日水曜日

インドネシアは第2次電源開発に着手

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今朝早朝,2009年1月21日午前2時,オバマ大統領が就任した。彼のエネルギーへの考え方は,アジアのエネルギーを追う我々にとっても,見逃せないものである。長い間我慢して,演説をCNNで聞いたが,「送電線,太陽光,風力・・・・・」,と出たところで,眠くなって寝てしまった。この演説で一挙に景気回復,なんて考えていた人は,随分失望したのではないか,ニューヨークも300ドル以上を下げた。

この演説で,オバマ政権の先行きに,「夢を見いだせなかった」,ことを示唆,と評している新聞もある。まあ就任演説に期待しすぎるのが無理かも知れない。エネルギーについては,一歩も再生可能エネルギーから踏み出せない。送電線に言及したのは,おそらく知的送電線などという発想ではなく,高速道路や橋梁の補修,という気持ちで並べただけ,と言う印象である。これからスタッフがどの様に政策を描くか,見て行こう。

今日取り上げた記事は,フィリッピンとインドネシアである。誠に対照的,電気料金や回収できなかった費用の議論に終始しているフィリッピンに比べて,先へ先へと電源開発を進めるインドネシア。もっとも,フィリッピンは電力需給に余裕があるが,インドネシアはせっぱ詰まっている,と言う事情もある。フィリッピンも,需給逼迫が目に見えているのであるが。

国家電力公社PLN(注4)は,中部ジャワ(注5)のプマラン(注6)に,2,000MWの石炭火力を計画し,2009年2月にも入札開示を行う予定である。木曜日,2009年1月15日,PLNバンバン計画技術局長(注7)は,2014年完成予定,10,000MW電源計画の第2段階に属するインドネシア最大の発電所である,と発表した。これは,落札する企業は,IPP(注8)として国内3番目で,PLN(注4)が固定単価で引き取る。丸紅参加。

インドネシア政府は,2006年に,10,000MWを目指してクラッシュプロジェクトを発進させた,10,000MWのうち,10地点,6,800MWがジャワバリ系統(注3)に属する。その他,3200MW,20地点が,ジャワバリ系統(注3)の外である。この第1次クラッシュプログラムに続いて,第2次の先陣を切るのが,このプマラン(注6)である。

ただ,私の心配しているのは,お金さへあれば発電所は幾らでも出来る,問題は燃料をどう供給して行くか,この点はしっかり計画されているのであろうか。電源開発のペースが余りにも速いから,中国やインドの二の舞で,石炭輸送が途切れるなど,問題が起こりそうな気がする。これは,ある程度,マスタープランを見ている日本にも,若干の責任があるかも知れない,と言う気もするが。

(注) (1) crash program,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090106H.htm,(3) Java-Bali system,(4) State power company PT Perusahaan Listrik Negara (PLN),(5) Central Java,(6) Pemalang (-6.887 109.515),(7) PLN director for planning and technology Bambang Praptono,(8) independent power producer (IPP),(9) Germany's Siemens,(10) Japan's Marubeni,(11) France's Areva,(12) China's Huadian,(13) Banten province,(14) Labuan power plant,(15) Indramayu power plant,(16) Rembang power plant,(17) Muara Karang power plant,(18) Wayang Windu power plant,(19)

本文

●フィリッピンのNPC,基本電力料金を改定へ

フィリッピン,またもや電気料金の話である。国有電力公社NPC(注38)は,電気料金を大きく,KWh当たり0.8332ペソ値上げして,ルソン系統の基本卸売料金,現行のKWh当たり3.8966ペソから,4.7298ペソ,約998セント相当,とすることを視野に入れている。ビサヤス系統(注39)は,1.3815ペソ上げて,現行2.8879ペソを4.2694ペソへ,ミンダナオ系統(注40)は,2.1030ペソを3.17171ペソへ。

この値上げ案は,既に,2009年1月16日,NPC(注38)とその資産継承社であるPSALM(注41)の連名で,電力規制委員会ERC(注42)に申請されている。NPCタンピンコ社長(注43)はこれをメディアに発表して,実際の原価に近いもの,と説明している。また,マラヤ火力(注44)とCBK水力(注45)の回収すべき費用も含まれている。2008年12月に,一度ERC(注42)は値上げを拒否している。

説明書類によると,値上げの根拠は,2007年ヒートレート上限(注46)を基礎にした許容燃料価格,ERC(注42)が示した上限のIPPコスト,許容発電固定費,2007年の売り上げ実績,それに内部収益率12%,としている。この価格で,今後の発電所の増設プロジェクトや資産売却に,円滑に反映される,としている。問題は,600MWカラカ火力(注47)の売却問題で,フランスとベルギーのスエズエナージ(注48)である。

(注) (38) National Power Corporation (Napocor),(39) Visayas grid,(40) Mindanao’s grid,(41) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation,(42) Energy Regulatory Commission (ERC),(43) NPC president Froilan A. Tampinco,(44) Malaya thermal, (45) Caliraya-Botocan-Kalayaan plants,(46) heat rate caps,(47) Calaca plant,(48) Suez Energy,(49)

●フィリッピン,マニラ配電のフランシスコ社長,退任

巨大企業マニラ配電MERALCO(注49)は,昨日,2009年1月19日,フランシスコ社長(注50)の退任を発表した。彼がMERALCO(注49)に入ってから37年目の年である。後任は,現マニラ北部道路公団MNTC社長(注51),元公共事業高速道路長官(注52)のイエスス氏(注53)を軸に動いている。実際の移動は来週である。

フランシスコ社長(注50)は,2009年5月に予定されている株主総会まで役員で残り,MERALCO(注49)の関連会社であるMIESCOR(注54)の会長職には留まる。また,CEDC(注55)の社長にも留まる。

(注) (49) Manila Electric Company (Meralco),(50) president and chief operating officer (COO) Jesus "Chito" P. Francisco,(51) president of the Manila North Tollways Corporation (MNTC),(52) formerly a Secretary of the Department of Public Works and Highways,(53) Jose "Ping" de Jesus,(54) MIESCOR,(55) Clark Electric Distribution Corporation (CEDC),(56)

●フィリッピンのERC,マラヤ火力,CBKなど,費用回収を許可

フィリッピンの電力規制委員会ERC(注19)は,国有電力公社NPC(注20)に対して,650MWマラヤ火力(注21)と,792MWCBK水力(注22)の契約に関連する費用の回収を容認する決定を行った。マラヤ火力(注21)は,改修を含むROMM(注22)契約で,15年間,韓国電力KEPCO(注24)と契約している。KEPCO(注24)は,改修費用136百万ドルを,資本回収としてNPC(注20)から支払って貰う。

CBK水力(注22)については,2001年からの買電コストであるが,NPC(注20)は,一括267.8億ペソか,年間44.6億ペソか,までの支払いを制限している。NPC(注20)が,Jパワー(注25)と住友(注26)の合弁によるBROT(注27)契約で取り戻そうとしている平均費用は,改修費用KWh当たり4.1394ペソと,BOTフィーのKWh当たり11.3784ペソである。期間は,2007年5月26日から6月25日までの分である。(省略)

(注)(19) Energy Regulatory Corporation (ERC),(20) National Power Corporation (NPC),(21) Malaya thermal,(22) Caliraya-Botocan-Kalayaan hydro plants,(23) rehabilitation-operation-maintenance-and-management contract (ROMM),(24) Korea Electric Power Corporation (KEPCO),(25) JPower,(26) Sumitomo,(27) Build-Rehabilitate-Operate-Transfer (BROT),(28)

●インドネシアのPLN,プマラン2000MW,2月にも入札開示

フィリッピンの電気料金や資産売却の話と違って,インドネシアは順調に電源開発を続けている。燃料が追い付いてきているのかどうか,不安なところもあるが,10,000MWのクラッシュプログラム(注1)の最近の現状については,2009年1月6日付本HP(注2)で解説している。幾つかの地点は,年内に発電開始できるだろう,ジャワバリ系統(注3)も供給力を増大する,と政府は語っていた。今日の記事は更に先を行く。

国家電力公社PLN(注4)は,中部ジャワ(注5)のプマラン(注6)に,2,000MWの石炭火力を計画し,2009年2月にも入札開示を行う予定である。木曜日,2009年1月15日,PLNバンバン計画技術局長(注7)は,2014年完成予定,10,000MW電源計画の第2段階に属するインドネシア最大の発電所である,発表した。これは,落札する企業は,IPP(注8)として国内3番目で,PLN(注4)が固定単価で引き取る。

この国内3番目のIPP(注8)プロジェクトについて,PLNバンバン計画技術局長(注7)は,インドネシア政府が,将来とも建設を中止することはないと約束,その持続性を保証するものだ,と言っている。工事費は25.7億ドルと見られているが,ドイツのシーメンス(注9),日本の丸紅(注10),フランスのアレバ(注11),中国の華能電力(注12)が,関心表明を行っている。

インドネシア政府は,2008~2027年までの20年間に,電力整備のために,2,087億ドルが必要としており,このうち,1,722億ドルが電源開発に当てられる。更にPLN(注4)は,2009年2月にも入札開示を行うものとして,ジャワ島で18発電所,出力7,000MWと,ジャワ島以外で,65の小規模発電所,出力4,000MWを挙げている。この60%が石炭,19%が地熱,10%がガス,3%が水力,である。

今年,2009年度,PLN(注4)は,2010年に完成予定の,10,000MW石炭火力も含めて,運用経費57兆ルピアが必要としている。今年,2009年に完成する新規発電所は,ジャワ島で3発電所で,その合計出力は,1,245MWである。第1次のクラッシュプログラム(注1)を,前回記事を参照して,付け加えておく。インドネシア政府は,2006年に,10,000MWを目指してクラッシュプロジェクトを発進させた。

10,000MWのうち,10地点,6,800MWがジャワバリ系統(注3)に属する。その他,3200MW,20地点が,ジャワバリ系統(注3)の外である。なお,1月6日の記事で,新規電源として発電開始する3地点は,600MW,バンテン県(注13)のラブアン発電所(注14),330MW,西ジャワのインドラマユ発電所(注15),315MW,中部ジャワのレンバン発電所(注16)である。増設したのは,180MW,ムアラカラン発電所(注17)と,110MW,ワヤンウインドウ発電所(注18)である。

(注) (1) crash program,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090106H.htm,(3) Java-Bali system,(4) State power company PT Perusahaan Listrik Negara (PLN),(5) Central Java,(6) Pemalang (-6.887 109.515),(7) PLN director for planning and technology Bambang Praptono,(8) independent power producer (IPP),(9) Germany's Siemens,(10) Japan's Marubeni,(11) France's Areva,(12) China's Huadian,(13) Banten province,(14) Labuan power plant,(15) Indramayu power plant,(16) Rembang power plant,(17) Muara Karang power plant,(18) Wayang Windu power plant,(19)


●インドネシア,ナツナのガス田紛争,終結への見通し

インドネシア,リアウ諸島(注29)のナツナガス田(注30),インドネシア政府とエクソンモビル(注31)の長年に亘る紛争については,2009年1月14日付本HP(注28)で解説し,インドネシア政府にとって,エクソンモビル(注31)の探査権は,2005年に失効していた,との判断を示したいた。今日の記事は,概略前回の記事に沿うものだが,新しい情報も含まれている。

インドネシア政府は,正式に,ナツナガス田(注30)に関するエクソンモビル(注31)の開発計画POD(注32)を拒否した。しかし,東ジャワのセプ(注33)のような嫌になるほどの紛争を巻きおこすのではないか,と懸念されている。プルノモ大臣(注34)は,金曜日,2009年1月26日,3年間に亘った論争に終止符を打ち,政府ガス公社BPミガス(注35)が,エクソンモビル(注31)にレターを発出した。

昨年,2008年の閣議で,国有石油ガス公社プルタミナ(注36)に対して,ナツナガス田(注30)を引き取り,適切な協力企業を探すよう,指示したものである。エクソンモビル(注31)は既に4億ドルを投入していると言っており,国際調停(注37)に持ち込む可能性もある。エクソンモビル(注31)は継続を望んでいるが,プルタミナ(注36)は,調査資料にもアクセスできない,と不満である。これは国法で罰せられるべきものだ。

ナツナガス田(注30)は,包蔵46兆立方フィートと言われており,アジア最大である。しかし炭酸ガスを多く含んでおり,生産には世界の先端技術が必要と言われている。プルノモ大臣(注34)は,あくまでプルタミナ(注36)が40%の資本持ち分で,協力企業を求めるよう,指示している。なお,BPミガス(注35)は,プルタミナ(注36)の資料管理のまずさを指摘して,非難している。

(注) (28) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090114D.htm,(29) Riau Islands,(30) Natuna-D Alpha block,(31) ExxonMobil,(32) plan of development (POD),(33) Cepu block,(34) Energy and Mineral Resources Minister Purnomo Yusgiantoro,(35) BPMigas,(36) PT Pertamina,(37) international arbitration court,(38)

参考資料

フィリッピン

●090121A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのNPC,基本電力料金を改定へ
Napocor seeks basic rate increases anew
http://www.mb.com.ph/BSNS20090120146097.html
●090121B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,マニラ配電のフランシスコ社長,退任
Francisco retires from Meralco after 37 years
http://www.mb.com.ph/BSNS20090120146095.html
●090121C Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのERC,マラヤ火力,CBKなど,費用回収を許可
ERC okays cost-recoveries for Malaya, CBK contracts
http://www.mb.com.ph/BSNS20090120146103.html

インドネシア

●090121D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのPLN,プマラン2000MW,2月にも入札開示
PLN to open bid for giant Pemalang plant
http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/17/pln-open-bid-giant-pemalang-plant.html
●090121E Indonesia, The Jakarta Post
インドネシア,ナツナのガス田紛争,終結への見通し
ExxonMobil’s Natuna claim ends here Minister
http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/17/exxonmobil’s-natuna-claim-ends-here-minister.html

2009年1月20日火曜日

インドの北辺水力開発は人類最後の戦い

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ヒマラヤ周辺の水力を開発してしまったら,人類は大体地球上の水力エネルギーを開発し尽くした,とも言い切れないけれども,でも一番難しい,そうしてもっとも豊富で,しかも経済新興国インドの石炭火力開発抑制に繋がる,と言う意味で,やはり人類史上に残る大事業であることには間違いない。インド水力開発公社NHPCの海外進出と,20,000MWの包蔵水力開発を急ぐHP州,これが今日の記事である。

太陽光発電ですべて賄うと,今一世帯15,000円の電気代が,60,000円に跳ね上がる,と言えば,再生可能エネルギーの開発が如何に大変か,想像出来ようというものだ。米国のオバマ大統領が,まもなく誕生する。初めての黒人大統領,と言う歴史的な意味よりも,実質的な,原子力や石油を重視するブッシュ政権から,原子力については寧ろ後ろ向きの発言をしているオバマ氏に,我々の注目が注ぐ。

今日のビジネスアイ(注)は,オバマ政権の誕生に当たって,二つの記事を配信している。その一つが,オバマ氏が原子力にどの様な政策を発出するのか,関係企業が見守っている,と言うものである。オバマ氏が原子力に関して今までに発した言葉はただ一つ,「原子力廃棄物の処理が先だ。」,と言うことは原子力は当面開発しない,と言う意味か。「グリーン・ニューディール」,には実質性に欠けるのではなかろうか。

世界の原子力開発は,東芝-米WH(ウエスチングハウス),日立-米GE(ゼネラル・エレクトリック),三菱重工-仏アレバの3陣営の争いに絞られてきているが,この3陣営が,一挙にインドに雪崩れ込もうとしている。米印原子力協定により,インドの原子力開発に一挙に火がつくものと,地元企業も,その参戦を狙って,動きを早めている。

ベトナムやネパール,パキスタンなどの水力国が,渇水で痛い目に遭っていることは,このHPの読者はよく分かっているはずだ。フランスは70%が原子力だが,揚水発電所の歴史が古く,うまく調整している。要するに,水力と原子力をうまく組み合わせなければ,安定した経済的な電力供給は出来ない,と言うことであり,地球温暖化に対処しなければならないとしたら,この組み合わせは極めて優秀,と言うことだ。

この意味から,米印原子力協定で原子力開発に火がつき始め,それと同時に,ヒマラヤ周辺の水力開発に,周辺国も巻き込んで動き始めたインド,特に大きな民間企業や,これをリードするインド水力開発公社の動きから目を離せない。東芝,日立,三菱重工は,インドに入る意気込みである。私ももう少し若ければ,ヒマラヤ周辺の,人類最後の戦いに参戦したいものだと思うこのごろである。

(注)http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200901200018a.nwc
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200901200018a.nwc

本文

●インドのNHPC,周辺海外の水力開発に大きな賭け

中国とインドの水力開発は,人類最後の挑戦だ,と言い続けてきているが,中国はともかく,インド北辺周辺の水力開発は多難である。国境を越える必要があるし,外交的な問題もある,治安もある,それ以上に資金の問題がある。インド水力開発公社NHPC(注1)は必ずしも大きな資金力に恵まれているとは言い難い。民間企業が活躍する中,それでもNHPC(注1)は,技術面に於いて,インドを担う公営企業だ。

インド最大の推力発電企業,NHPC(注1)は,ブータン,ミャンマー,ネパールを中心に,海外進出への大きな推進力がかかってきた。NHPC(注1)は,ブータンで総計3800MWに達する4つのプロジェクトで,詳細設計報告書DPR(注2)に取りかかっている。また,ミャンマーでは二つのプロジェクト,出力1,800MWの推進に合意を期待している。またネパールでも,まもなく調査を開始する手はずで,ブータンには事務所を置く。

NHPC(注1)のガルグ総裁(注3)は語る,「我々は,近隣諸国での拡大する活動の可能性を視野に入れている。ブータン政府は,既に2020年までに10,000MWの水力開発を決定しており,我々NHPC(注1)は,3,800MWの可能性調査FS(注4)を実施している。これらのプロジェクトの詳細設計報告書DPR(注2)については,NHPC(注1)自身か,二国間ルートか,いずれかの方法で実施される。」,と。

ブータン(注5)については更に業務を行うつもりで,それらに専心するため,まもなくブータンに事務所を置く,とも語っている。NHPC(注1)は既に,720MW,マンデチュー水力(注6)の詳細設計報告書DPR(注2)を提出しており,他の三つの水力,チャムカルチュー第1及び第2水力(注7)及びクリ-ゴンギ(注8),合計3,040MWの詳細設計報告書DPR(注2)が,まもなく完成の予定である。

一旦詳細設計報告書DPR(注2)が完成すれば,NHPC(注1)はその実施について全力を投入する計画である。実施については,ブータン政府(注9)に代わって,NHPC(注1)単独で行うか,合弁で行うか,まだ詳細は決まっていない。NHPC(注1)は既に,60MW規模水力で完成後ブータン政府(注9)に引き渡した事例がある。

同じように,NHPC(注1)は,小規模だが,141MWの水力をネパール(注10)で実施した経験がある。電力省筋の話では,「NHPC(注1)は,水力発電所を完成し引き渡す,と言うだけでなく,開発して自ら電気を販売することを望んでいる。」,と見ている。ミャンマー(注11)では,NHPC(注1)のガルグ総裁(注3)によると,国境に近いチンドウイン川(注12)で,二つの水力プロジェクトの詳細設計DPR(注2)の許可を求めている。

この許可は,インド政府とミャンマー政府に対する申請で,対象プロジェクトは,12000MW,タマンティ水力(注13)と,600MW,シュウザエ水力(注14)である。この二つのプロジェクトについては,外国企業が既に調査を行っているが,NHPC(注1)は,もう一度調査を行って,自分自身でその可能性を確認したいとしている。

NHPC(注1)のガルグ総裁(注3)は,ネパール(注15)について,治安が劇的に改善されたので,積極的に進出するつもりであるが,まだプロジェクトを手にしていない,と語っている。NHPC(注1)とL&T(注16)の協力で,タジキスタン(注17)の水力発電所のリハビリを実施しているが,これを中央アジアに広げたいと思っている。

NHPC(注1)は現在,5000MWの水力設備を保有しているが,第11次五カ年計画(注18)では,2012年までに新たに,5,322MWの国内水力を開発する計画となっている。

(注) (1) NHPC,(2) detailed project reports (DPR),(3) NHPC chairman SK Garg,(4) feasibility report,(5) Bhutan,(6) Mangdecchu project,(7) Chamkarchhu-I and II,(8) Kuri-Gongri,(9) Bhutanese government.,(10) Nepal,(11) Myanmar,(12) Chindwin river,(13) Tamanthi project,(14) Shwzaye project,(15) Nepal,(16) L&T,(17) Tajikistan,(18) Eleventh Plan,(19)

●インドのヒマチャルプラデシュ,13水力を認可

インドのヒマチャルプラデシュ州(注19)も,インド北辺水力開発,人類最後の戦いの重要な一環をなしている。しかし最近,少し変わった動きがあることは,何回かお伝えしてきた。環境配慮への動きで,これに呼応してADBも支援を申し出ている。森林保護の立場から,送電ルーの変更を求めたり,流れ込み式水力を重視したり,また今日は,大企業排除の動きが濃厚である。

ヒマチャルプラデシュ州(注19)政府は,IPP企業(注20)に対して,13の水力プロジェクト,合計出力1,583MW,に対して発進を指示した。州政府の電力を担当する高官によると,発進命令を受けたIPP企業(注20)は,モッサバール(注21),DCM(注22),ジンダール(注23)の各企業である。今回選定された企業は,予備実施合意(注24)の署名に招待され,MW当たり200万ルピーの保証金を求められる。

先に,HP州電力局(注25)が審査した結果で今回の推薦が行われた。モッサバール(注21)は有名なCDの企業であるが,今回は5つのプロジェクト,合計出力,1,048MWと言う最大の請負者となった。それらのプロジェクトは,420MWリヨリ-ドウガリ(注26),320MWサイリ(注27),69MWテリン(注28),90MWミヤール(注29),149MWサーチカス(注30),各プロジェクトである。

ジンダール(注23)は,60MWララ(注31),40MWクリンララ(注32),70MWマンナダン(注32)の各プロジェクト,またDCM(注22)は,90MWコクサール(注34),81MWティングレット(注35)の各プロジェクト,パテル(注36)は,236MW,チャンバ地区(注37)のドウガール(注38)プロジェクト,また,ANS建設(注39)は,7.5MW,カングラ地区(注40)のキルヒバハール(注40)プロジェクトである。

殆どのプロジェクトは,ストレジュ川(注41)とシェナブ川(注42)流域の,ラホール地区(注43)及びスピティ地区(注44)に集中している。請負方式はBOOT(注45)である。大企業群,タタ電力(注46),L&T(注47),エッサール電力(注48),ビルワラ(注49),GMR(注50)も入札に参加した。州の最近の規定で,無料電力の地元卸,を入札の争点にしたが,これにタタ電力(注46)などは抵抗したという。

今回の条件は,無料地元卸電力を,最初の12年間は12%,30年までは18%,40年までは30%,40年後は全設備を州政府に移管する,と言うものである。この入札争点は,MW当たり200万ルピーの保証金の上の条件である。地元の経験浅い企業育成のため,5MW以下は保証金免除の条件であったが,無料地元卸電力は課されている。

ヒマチャルプラデシュ州(注19)は,包蔵水力は,21000MWと言われており,そのうち,3分の1だけが調査が完了している。また,第11次五カ年計画で,2012年までに,12,000MWを開発することになっている。

(注) (19) Himachal Pradesh,(20) independent power producers,(21) Moserbaer,(22) DCM Sriram Infrastructure,(23) Jindal Steel and Power,(24) pre-implementation agreements,(25) Himachal Pradesh State Electricity Board,(26) Riyoli-Dugali,(27) Saili,(28) Teling,(29) Miyar,(30) Saach Khas,(31) Lara,(32) Kuling Lara,(33) Mane Nadang,(34) Khoksar,(35) Tingret,(36) Patel Engineering,(37) Chamba district,(38) Duggar project,(39) Kangra district,(40) Kilhi Bahal,(41) Sutlej river,(42) Chenab river,(43) Lahaul district,(44) Spiti district,(45) build-own-operate-and-transfer (BOOT),(46) Tata Power,(47) Larsen and Toubro (L&T),(48) Essar Power,(49) Bhilwara Group,(50) GMR Infrastructure,(51)

参考資料

インド

●090120A India, Economic Times
インドのNHPC,周辺海外の水力開発に大きな賭け
NHPC bets big on overseas mkts,eyes Bhutan, Myanmar & Nepal
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/NHPC_bets_big_on_overseas_mktseyes_Bhutan_Myanmar__Nepal/articleshow/3998876.cms
●090120B India, newspostonline
インドのヒマチャルプラデシュ,13水力を認可
Himachal Pradesh approves 13 hydropower projects
http://www.newspostonline.com/world-news/himachal-pradesh-approves-13-hydropower-projects-2009011826485

2009年1月19日月曜日

パキスタンのロワリ隧道完成へ

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

本当に一生に一度しか行けなかったが,パキスタン,北西辺境州の北部の山岳地帯,いつまで経っても忘れられない地域の一つである。実際には,雪の吹きすさぶ中,電灯もない小屋の中で長靴のまま丸木小屋で一晩眠ったとか,帰途の一本道で,直径2mぐらいの大きな岩が落ちてきて道をふさぎ,車を降りて運転手が片輪を浮かせながら脱出したとか,大変のことばかりであったが,良く思い出す。

今日のニュースに出てくるチットラルは,パキスタンから見れば陸の孤島で,1998年頃には,ヘリコプターの便しかなかった不便な町であったが,そこにトンネルを掘ろうとしたのが,今日のニュースであるロワリ隧道である。我々は農村電化を要請されて現地を歩いていたのだが,吹雪の中,対岸の谷の奥の村落を見て来てくれ,とカウンターパーツに頼まれて,あれで農村電化が嫌になった。

1998年当時は橋本首相の時代だが,先日暗殺された当時のブット首相が東京を訪れ,橋本首相に,ロワリ隧道への支援を要請した。1970年代にブット女史のお父さん,これも暗殺されたのだが,そのお父さんがトンネルを掘り始めたが,資金が続かず,我々が訪ねた頃は,80mを掘ったところで中断していた。

当時のOECFから,JICA調査団が入るのなら,現地を確認して欲しい,と言われて現地に足を延ばした。結局,経済効果の問題から,日本は支援しなかったが,今日の記事で見ると,韓国企業がコントラクターとなって,最近やっと貫通した模様である。8.5kmと長大で,単線しか掘ってないので,本来は鉄道を敷設する予定であったが,これが問題になっている。

スイスのゴダールトンネル,16km,はやはり単線らしいが,道路トンネルのままでいいではないか,もし鉄道にするなら50億ルピーが必要で,そのお金をチットラルの水力開発に振り向けてくれ,と地元の政治家が主張している。結局,一車線で掘ってしまったのでどうしようもなくなって,道路トンネルに転用しようとすると,排気のためのトンネルが必要,と困ってしまっている。

ただ,私の言いたいのは,これほどの奥地であるにもかかわらず,さすがにパキスタンで,何処にでも人が多く住んでいる。敬虔なモスレムなので,道ばたでは殆ど女性の顔を見ないが,どの谷筋にも多くの人が住んでいて,農村電化をやるには需要に事欠かない。でも,日本人はあそこまで入っていって農村電化をやる人はいないが,ドイツの人々はそこに入っている,そこに畏敬を覚えたことである。

それにしてもニューヨークのハドソン川に不時着した機長は,本当に聞けば聞くほど,冷静沈着ですね,驚いた。離陸してから着水するまで,僅か5分間の出来事だという。それも,地上とぐだぐだ相談せず,一言も発せずハドソン川に向かったという。それもフェリーの港近く,救出船がいることを確認して降りたという。007じゃないけれど,人間にもあれだけ冷静沈着な人種がいるのですね,感動した。

本文

●パキスタン,ロワリ道路隧道,現実味を帯びてきた

パキスタンの北西辺境州NWFP(注1)の北端,チットラル(注2),そこに繋ぐためのロワリ道路隧道(注3)については,この辺りの風景と共に,私の心に染みついている。とんでもない辺境であり,雪の中,長靴とコートを着たまま,電気のない木材小屋で寝たことがある。しかし,パキスタンの奥地というのは,人が一杯住んでいる,さすがに人口1億の国である。今日の記事が目に止まった。

総延長8.5kmのロワリトンネル(注3)が,チットラル(注2)の人々にとって,またチットラル(注2)の歴史の上で重要な里程標となることが現実味を帯びてきた。国家道路公団NHA(注4)とコントラクターである韓国のサンブー(注5)の車両が,トンネルの出口から他の出口まで走り,車両が快適に走ることが実証されたのである。次はこのトンネルに鉄道を敷くことだが,50億ルピーが必要になる。

専門家達は,車両が走るのに,果たして鉄道を敷くべきなのだろうか,考え始めている。鉄道敷設費で大騒ぎをしているが,必要なのはそれだけではない。運転維持管理費や分解点検,更に両方の出口でいちいち荷物の積み卸しをする必要が出てくる。欧州にはこのように狭いトンネルでもっと長いものがある。1980年に完成したスイスアルプスのゴタルドトンネル(注6)は,16.3kmで,しかも一車線である。

しかし,ロワリトンネル(注3)を道路トンネルとして使う場合は,空調ダクトが必要となってくる。鉄道トンネルとしても単線運転である。鉄道の50億ルピーをもっと有効に使う方法はないのか。政治家でチットラル(注2)の新聞発行者であるシャー氏(注7)は,この費用で水力発電所を造り,チットラル(注2)の生活レベルの向上,森林保護,中小産業育成に資するべきだ,と主張している。道路の次はエネルギーだ,と彼は主張している。

(注) (1) NWFP,(2) Chitral District,(3) Lowari Tunnel,(4) National Highway Authority (NHA),(5) Sambu Construction Company,(6) Gothard Tunnel,(7) Fardad Alis Shah,(8)

●インド,NHPCがオリッサ州に,300MW水力

インド水力発電公社NHPC(注8)は,オリッサ州(注9)のスバルナプール地区(注10)に発電所を建設すべく準備に入った,と発表された。この,300MW水力発電プロジェクトは,マハナディ川(注11)の下流部分,スバルナプール地区(注10)のシンドール(注12)に位置して,NHPC(注8)とオリッサ水力発電公社OHPC(注13)の合弁で実施される予定である。

オリッサ州政府エネルギー長官ジェナ氏(注15)は,昨日,2009年1月16日,デリーで中央政府エネルギー次官(注16)出席の元,NHPC(注8)のスタッフと会談,プロジェクトの最終案について協議した。これは注目すべきことで,NP州政府(注17)が2000年に政権を握って以来,NHPC(注8)がオリッサで水力を開発するのは,初めてである。最後のプロジェクトは,コラプット地区(注18)のインドラバティ(注19)である。

OHPC(注13)のパディ運用局長(注20)によると,州政府は,13のIPP(注21)と発電プロジェクトのMOUを結んでいるが,水力はこれが最初である,とし,プロジェクトは未だ初期段階だ,と語った。しかし,情報筋によると,OHPC(注13)は既に,デリーのコンサルタントに,詳細設計(注22)を実施するよう,要請しているという。

(注) (8) National Hydro-Electric Power Corporation (NHPC),(9) Orissa&aposs,(10) Subarnapur district,(11) river Mahanadi,(12) Sindhol,(13) Orissa Hydro Power Corporation (OHPC),(15) Orissa&aposs Energy secretary P K Jena,(16) Union Energy secretary,(17) Naveen Patnaik government,(18) Koraput district,(19) Indravati,(20) OHPC&aposs director (operation) J N Padhi,(21) independent power producers (IPPs),(22) detailed project report (DPR),(23)

参考資料

パキスタン

●090119A Pakistan, thenews.com
パキスタン,ロワリ道路隧道,現実味を帯びてきた
Suggestions made for Lowari Tunnel project
http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=157692

インド

●090119B India, indopia.in
インド,NHPCがオリッサ州に,300MW水力
NHPC to set up a hydro-power unit in Orissa
http://www.indopia.in/India-usa-uk-news/latest-news/480469/Business/4/20/4

2009年1月18日日曜日

ベトナムが再生可能エネルギーに悩む

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

再生可能エネルギー開発,遅れているのは,ベトナムと日本,と言っていいのかも知れない。どちらも極めて実際的な考え方に共通点があるような気がする。欧州やフィリッピン,それにオバマ大統領候補を見ていると,如何にも理想主義的で,ちょっと言い換えれば偽善的なところがある。三者とも,決して本心では,再生可能エネルギーが地球を救う,と信じている分けではなさそうに思う。

ただ,今は再生可能エネルギー開発を主張することが先進的,と誤解されやすい世の中にある。先日も中国の記事を読んでいて,中国は太陽光発電を大々的に開発することは放棄した,太陽光発電の研究は続け,それを武器に,関連機器類の輸出振興に力を注ぐという。日本もそう言う点は似ている。日本で太陽光発電をするよりは,技術と機器の海外への売り込みに努力している。

事実,JICAで働いているときも,海外に行って,日本は太陽光発電の機器は優れているのに,どうして日本では太陽光発電をやらないのか,と言われたことがある。日本にとって,再生可能エネルギーとは,まさにおつきあいの印象が強い。太陽光発電は,現在大体,KWh当たり45円,と言われているようだが,こんなに高いものを一生懸命開発されたのでは,経済が参ってしまうだろう。そこそこにおつきあい,と言うことか。

風力はどうだろうか,中国は風力は行けると見ているようで,かなり大々的に開発を試みている。KWh当たり25円程度,と言っているから,日本の電気料金であれば,2倍までは行かないから,太陽光に比べれば,少々入ってきても,経済的には持つかも知れない。しかし,太陽光の静に比べて余りにも動で,危ないような気がする。台風でも来たらそばに寄れないのではないか。動と言うことは維持管理が大変だ,と言うことだ。

バイオマスは,主要電源となることは出来ない,と見ている。だから,ベトナムや日本のように,非常に実務的な民族にとっては,再生可能エネルギー開発は,もっとも苦手とするところだろう。プラグマティズム,実用主義,実際主義,とでも言うのだろうか,日本も昔は水力発電が好きだったし,ベトナム人は水力が今でも大好きで,そのため渇水期には電力不足で泣いている。

プラグマティズムの民族が次に挑戦するのは原子力発電所だ。日本も原子力にはこだわっているし,原子力があるから再生可能エネルギーには余り関心を示さないのだと思う。ベトナムも,東南アジアの中では,原子力開発で先頭を走っている。今日のベトナムの記事は,我々も再生可能エネルギーの促進の法律を持たなくてよいのだろうか,と心配し始めているのである,国際社会から取り残されないかと。

実用主義の日本人は,これからのエネルギーについて,原子力発電所を頼りにしている。これ以上の新設が出来るのかどうか,大きな問題だが,世界は今,再生可能エネルギーのために知的送電網を,と言っているが,私は将来,原子力発電所を北海道とか沖縄にも造らなければならないから,中国のように,100万ボルト直流基幹送電線を,日本列島の背骨に,大動脈のように造る日が来る,と言う気がする,知的送電網で。

本文

●ベトナム,代替エネルギー開発は可能か

ベトナムの再生可能エネルギー開発については,書かれたものが少ない。彼等は水力開発に一生懸命である。私も,再生可能エネルギーでこの長文を見るのは面倒くさいが,フィリッピンの積極姿勢と絡んで,総括的な記事なので,一応追っかけてみる。ベトナム政府は,代替エネルギーとしての再生可能エネルギー開発を奨励はしているが,投資事業としては殆ど立ち上がっていない。

国全体は今や電力不足で,それは生産にまで影響してきている。2006年末に,ベトナム南部のカントー(注1)で,籾殻(注2)によるバイオマス発電を,ホーチミンのエネルギー保全センターECRDC(注3)が,外国企業の協力で,投資計画を策定し,ECRDC(注3)は大いに興奮したが,投資企業を見出すことが出来ず,挫折した。

同じ頃に,多くの投資企業がベトナムの風力発電に関心を示し,特に南部のビンディン(注4),ニントワン(注5),ビントワン(注6)の各省に注目した。しかし,ただ一つだけが着工したが,それはビンディン(注4)のプオンマイ半島(注7)である。プオンマイ第3(注8)の着工は,政府や科学者達を大いに奮い立たせた。

最近の電力不足もあって,政府は,再生可能エネルギーの開発を強く奨励している。しかし,投資企業は,火力や水力プロジェクトに集中して,再生可能エネルギー開発には,遠くに位置をとったままである。ベトナムでは,今まで再生可能エネルギーの総合的な調査は行われていないが,科学者達,例えばは,持続的エネルギーセンターののグエントワン(注9)はベトナムの再生可能エネルギーのポテンシャルは高い,と主張している。

亜赤道帯にあるベトナムは,太陽光に恵まれており,その太陽輻射は,冬季で,日平方m当たり3~4.5KWh,夏季で,日平方m当たり4.5~6.5KWhに達する。日射時間は,年間1,800~2,700時間である。専門家は,太陽光発電は,過疎地の独立系統に適合している,と言っているが,熱心なのは,ベトナム科学研究所(注10),エネルギー研究所(注11),ハノイ工科大学(注12)の,2,3に限られる。

注目すべきは,ベトナム婦人連盟(注13)と協力した太陽光発電会社(注14)の活動で,メコンデルタ(注15)を中心に,600を超えるシステムを開発しようとしている動きである。太陽光とは別に,科学者達は,ベトナムの風力のポテンシャルは大きいと主張している。東南アジア風力アトラス(注16)によると,ベトナムでは,ラオス国境山岳地帯,ダナン(注17)南部海岸,ホーチミン(注18)北部,などに注目している。

ベトナム内陸部の30%は,高度65mで風速7mで十分なポテンシャルを持っている,とし,更に8.6%は,風速毎秒7mを超え,良好と報告されている。エネルギー研究所(注11)は,9つの島で高さ10mで風速は,4.1~7.1mである,としている。バイオマスは,またベトナムで未開発の領域である。毎年,5,000万トンのバイオマスが生産され,その30~40%が,エネルギーとして使われている。しかし,商業使用には注目はない。

エネルギーセクターの第5次マスタープランによると,2010年までに,バイオマスから250~400MWの電力を得るべし,としている。このうち,籾殻(注2)から70~150MW,砂糖黍(注19)から150~200MW,ゴミなどから30~50MW,である。しかし砂糖黍(注19)について,42の工場があり,150MWが期待されるが,実際に発電と結びついているのは,3カ所だけである。

今のところ,籾殻(注2)は発電には使われていない。エネルギー研究所(注11)によると,籾殻(注2)は年間250万トンが使用可能であリ,70~150MWに匹敵する。廃棄物は各所に分散していて,使用困難である。籾殻(注2)は,10万カ所の脱穀場があり,50カ所がメコンデルタ(注15)にあり,時間当たり5トンを処理し,500KWに相当して,採算可能である。

水力発電は,再生可能エネルギーの中で唯一大々的な調査が行われている。包蔵水力は,年間300TWh(注20)で,このうち,80TWhが開発可能で,今までにその4分の1が開発された。例外を除いて,その殆どは,1,000MW以下の中小規模である。近年,中部山岳地帯が開発の中心をなしている。計画によると,2010年までに,既設合計5,000MW,2020年までに,13,000~15,000MWとすることになっている。

長く再生可能エネルギー開発を研究してきたベトナム風力会社のドウオンマンタオ会長(注21)は,石炭や水力にも限界があり,この先,再生可能エネルギーが電力不足を解決する一つの手段になる,と語っている。この会社は,プオンマイ第3(注8)風力プロジェクトの一員であり,ビンディン(注4),ニントワン(注5),ビントワン(注6)の各省でも,風力プロジェクトを計画している。

2000~2004年に,電力使用量は,年間22.4TWhから39.7TWhに増大している。1996~2004年に,電力需要世帯は,新たに3,000万増えている。これを追っかけるため,政府は,中国から融通されたり,国有企業,EVN(注22)や国家石油(注23)に開発を要請している。最近EVN(注22)が資金不足から13の火力プロジェクトに反対して以来,産業通商省(注24)は,資金調達で海外企業などに呼びかけている。

また政府は,国内の石炭火力のため,2012年より石炭の輸出を制限する。一定の電源開発は続けられているが,専門家は十分でないと見ている。一部の地方では,独立系の再生可能エネルギーで経済的な電力供給を受けているところがある。1,100地区の75万世帯はこれに当たるが,300万人が,短期的,中期的に見ても,中央系統から取り残されるだろう。VEA(注25)のガイ会長(注26)は,投資のチャンスと言っている。

再生可能ネルぎー開発の障害は,特定の政策の不足である。政府は,1999年に,再生可能エネルギー計画(注27)をスタートさせた。この10年計画を5年ごとに2期に分け,地方電化を対象とした再生可能エネルギー開発を促進してきた。しかし,企業や専門家は,政府の政策は不十分だと考えている。例えば,プオンマイ第3(注8)風力プロジェクトは,2007年9月に着工したが,完成は目処が立っていない。

VEA(注25)の担当者は,政府の再生可能エネルギーを推進するための政策が必要だと言っている。ベトナム科学技術院(注28)の科学者,ホアト(注29)は,政府はプロジェクト推進のための具体的な動きをしていない,これでは再生可能エネルギーがベトナムで十分な機能を発揮することが出来ない,と批判している。持続的エネルギーセンターののグエントワン(注9)は,再生可能エネルギー法(注30)の必要を主張している。

グエントワン(注9)は,中国は再生可能エネルギー法(注30)のもと,再生可能エネルギーが増大しているし,ドイツやスペインは非常に対赤井開発を行っている,それは彼等が再生可能エネルギー法(注30)を成立させているからである,と。ベトナムでは,再生可能エネルギー開発の技術がなく,資機材の輸入も高価についている,と。しかし,最近,明るさも見えてきた。

産業通商省MOIT(注25)のフオン・エネルギー局長(注31)は,2015年を目標とした再生可能エネルギー開発のための戦略とマスタープランを,まもなく首相に上申する予定だ,と語っている。また,2009年には,再生可能エネルギー推進のための法令を成立させる予定である,と語っている。

(注) (1) Can Tho,(2) rice-husks,(3) Ho Chi Minh City-based Energy Conservation Research and Development Centre,(4) Binh Dinh,(5) Ninh Thuan,(6) Binh Thuan,(7) Phuong Mai peninsula,(8) Phuong Mai 3,(9) Nguyen Thuong, a scientist from the Centre for Sustainable Energy Development in Vietnam,(10) Ho Chi Minh City-based Solar Laboratory of the Vietnam Science Institute,(11) Hanoi-based Institute of Energy,(12) Hanoi University of Technology’s Renewable Energy Centre,(13) Vietnamese Women’s Union,(14) Solar Electric Light Company,(15) Mekong Delta,(16) Wind Energy Resource Atlas of South East Asia, published in 2001,(17) Danang,(18) Ho Chi Minh City,(19) bagasse,(20) TWh, a thousand billion watt-hour,(21) Duong Manh Thao, chairman and general director of Vietnam Wind Power Joint Stock Company,(22) Electricity of Vietnam (EVN),(23) Vietnam National Oil and Gas Group,(24) Ministry of Industry and Trade,(25) Vietnam Energy Association,(26) Tran Viet Ngai, chairman of the Vietnam Energy Association,(27) Renewable Energy Action Plan,(28) Vietnamese Academy Science and Technology,(29) Duong Huy Hoat, scientist at Vietnamese Academy Science and Technology,(30) Law on Renewable Energy,(31) Energy Department general director Ta Van Huong,(32)

●ネパール,火力発電所案は棚上げに

電力不足に耐えられなくなったネパール政府は,2008年12月26日付け本HP(注32)にあるように,200MWの火力発電所を建設することん未決定したが,決断も早かったが,放棄の決断も早い。閣議決定によると,火力発電所の建設は,ネパール電力庁NEA(注33)かいずれかの民間企業でも良い,と言うことで,建設を決定した企業には,96億ルピーの無償資金が振り向けられる,と言うことになっていた。

今日の記事,ダハール首相(注34)が,金曜日,2009年1月16日,7つの連立与党首脳会議の直後,水資源大臣(注35)に指示して,200MW火力計画の棚上げを,急遽指示した。水資源省(注36)の担当官によると,与党のCPN-UML(注37)の反対によるもの,とされている。与党から,ダハール首相(注34)に対して,棚上げするよう,文書が届いているという。

2008年12月24日に,200MW火力プロジェクトの閣議決定を行ったところだが,ダハール首相(注34)は与党との協議で,火力計画が高価に過ぎる,との認識で一致したようだ。水力発電所の4倍のコストがかかる,と認識されている。ダハール首相(注34)は,GEA(注38)との会議の席上,火力計画を優先はしないが,電力不足対策としての代替案の検討は続ける,と語っている。

200MW火力発電所は,ネパール電力庁NEA(注33)などに資金提供の上,開発する計画であったが,年間,360億ルピーの経費が必要で,これは国家予算にとって大きすぎる,との判断である。

(注) (32) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081226A.htm,(33) Nepal Electricity Authority,(34) Prime Minister Pushpa Kamal Dahal,(35) Minister for Water Resources,(36) Ministry of Water Resources,(37) CPN-UML,(38) Grills Entrepreneurs' Association,(39)

参考資料

ベトナム

●090118A Vietnam, english.vietnamnet.vn
ベトナム,代替エネルギー開発は可能か
Alternative power not energised
http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/01/824434/

ネパール

●090118B Nepal, kantipuronline
ネパール,火力発電所案は棚上げに
Thermal plant plan shelved
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?page=kolnews.php&nid=175801

2009年1月17日土曜日

中国国家送電網の内外での大活躍

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
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オバマ大統領候補が,風力発電所の部品工場を訪ねて,日本を追い越せ,と激励したことが記事になっていた。オバマさんはやはり本気で,再生可能エネルギー開発が,米国を救うと思っているのですかね,彼にとっては,工場を見に行くのは,来週の就任式を控えて貴重な時間ですからね。送電網を解決しなければ,再生可能エネルギー問題は解決できない,と言う議論があり,それが知的送電網の発想に繋がっている。

知的送電網の条件は,今までの世界の議論を総合して,更に突っ込むと,次のようなことになるのかな。幹から枝まで統一のとれた網の目で,電力を運ぶだけでなく情報も運ぶもの,電源のあるところと電力需要のあるところを時間軸で詳細に把握しているもの,需要の中身は家庭の中の冷蔵庫などの機器類にまで侵入して情報を集めるもの,それと見た目にスマートで,テロに屈しない強い構造,これが知的送電網の定義だ。

中国国家電網は,李鵬さんの時代にスタートしたもので,彼が東京電力などを訪問して,日本はどう考えているのですか,と言う問に,確実な答えが得られず,彼が下した結論は,送電網だけは国家で一つに統合しておこう,電源はバラバラでも良い,として作り上げたものだ。中国の作品の中でも,なかなか優れた作品である。今やこの中国国家送電網が,内外の各地で活躍している。

フィリッピンの国家送電網の25年に亘る運営権を,中国国家電網が勝ち取ったこと,2009年1月15日に,完全にフィリッピンの送電網は,中国の手に移った,と言うニュースは,昨日見たとおりである。後から考えれば考えるほど,良くフィリッピンは外国企業に送電網を渡したな,と思ってしまう。中国技術陣が,日本の送電網の基幹を握った,と想像してみなさい,どういう感じがするか。

送電網は,極端に言えば日本の国家経済の血管に当たる。その血管に異物が入ればどうなることか。また,今の日本では,各電力に分かれている送電網を統一する確たる理由がないが,既にIEAなどでは,日本も送電網を統一したらどうか,と声がかかっている。エネルギー資源は国家的に偏在していないから,その必要がない,とも言えるが,日本列島を背骨のように走る基幹送電線の魅力はある。

知的送電網に変革して行くときに,日本列島縦貫の基幹送電網を造ったらどうだろう。知的な機能は,物理的には壊れやすいから,知的送電網の条件のうち,特に見た目がスマートでテロや災害に強い,と言う条件をまず考えて構想を練ったらどうだろうか。一旦災害が起こっても,この血管のうちの,大動脈が生きて居れば,日本列島は死ぬことはないのではないか。

今日の中国国家電網の記事を読むと,中国の南西部から東海岸まで走らせようとしている100万ボルト,2000kmの直流基幹送電線に,いろいろ議論があるようだ。必ずしも国論は統一されていない。4年間で1.5兆円相当の,一大投資計画だが,まだ石炭を運ぼう,という人々が残っているのか,副社長の言い回しは慎重である。

本文

●フィリッピン,アボリテス,スビック石炭火力遅れる

やっとフィリッピンの電源開発の話が出たと思ったら,また障害に乗り上げたようだ。アボイテス電力APC(注1)は,ザンブレス州(注2)のスービック湾(注3)に計画していた450百万ドルの石炭火力について,建設費の修正や需要の下方修正などを考えて,開発時期を遅らす方向で再検討することとした。APC(注1)のアボイテス社長(注4)は,2009年第2四半期までに,投入時期を再検討する,とした。

アボイテス社長(注4)は,着工延期を決定した,それは世界金融危機の影響を考慮して,工事費の変更が必要になったからだ,としている。この300MWの石炭火力は,本来,昨年,2008年,39億ペソの固定相場で資金調達を進め,2009年の第1四半期にも着工の計画であった。APC(注1)の説明によると,30億ペソの小売債権(注5)が,20億ペソに縮小した,と説明している。

ここで重要なことに言及している。意志決定の重要な鍵は,今,エネルギー企業レドノ(注6)に検討させようとしている事項,即ち,ルソン系統(注7)の需要動向と,資機材の価格変動について,であると。ルソン系統(注7)の需要動向に言及したのは,この記事が初めてで,本来,フィリッピンはもっとこの将来需要動向と,それに見合う電源開発計画を確立する必要があるのだ。

(注) (1) Aboitiz Power Corporation (APC),(2) Zambales,(3) Subic Bay,(4) APC president and chief executive officer Erramon Aboitiz,(5) retail bonds,(6) Redondo Peninsula Energy Inc.,(7) Luzon grid,(8)
●中国,チベットのヤールン水力建設へ

インドの報道である。インドは中国のチベットに於けるダム開発に神経を尖らせている。フィリッピンの送電網の運営権を勝ち取った中国国家送電網(注8)は,世界で最も高い標高を流れるチベットのヤルンツアンポ川(注9)に,長期的なエネルギー需要を睨みながら,水力発電所を開発しようとしている。予備的な調査によれば,ヤルンツアンポ川(注9)は,全国設備の10%に相当する70,000MWのポテンシャルがあるという。

ヤルンツアンポ川(注9)の標高は海抜4,000mで,中国支配のもっとも貧困な地域を流れている。ヤルンツアンポ川(注9)は,チベット南部を東方向に流れ下り,標高7,782mのナムチャバルワ(注10)付近で,ヒマラヤ(注11)を取り巻くように,大きく南に流れを変える。その後,ブラマプトラ河(注12)となってインドに入り,バングラデシュ領内を下って,ベンガル湾(注13)に注ぐ。

(注) (8) State Grid Corp. of China,(9) Yarlung Tsangpo 雅魯藏布大峡谷,(10) Namcha Barwa,(11) Himalayas,(12) Brahmaputra,(13) Bay of Bengal,(14)

●中国国家電網,超高圧送電網整備に,146億ドル

資金は,中国国家電網が話題をさらって行く。私は,強い国家送電網を作ることが,電力自由化のために必要だと思っている。日本も,将来更に自由化を目指すならば,政策としてはまずに列島の骨格を走る基幹送電線を統合して造るべきだ。フィリッピンのように,基幹送電線の運用を外国資本に売るなど,もってのほかだ。

中国の送電網を支配する中国国家送電網(注14)は,まもなく実現するパイロットプロジェクトを完成させてから,全国の超高圧送電網(注15)の拡大整備に着手する。中国国家送電網(注14)のシュインビアオ副社長(注15)は,金曜日,2009年1月16日,次の3,4年内に,1,000億元,約146.3億ドル相当を,超高圧送電網(注15)の拡大整備に投入する,と語った。しかし発改委(注17)の承認を得て後だ,と。

先週,2009年1月初旬,中国国家送電網(注14)は,2,800MW送電容量を持つ中国初めての超高圧送電線を,ジンドンナン(注18)とジンメン(注19)の間に完成し商業運転に入った。この100万ボルト交流送電線(注20)は,中央部,湖北省(注21)の水力発電の不足を補うために,石炭火力を必要としているが,この電力を,中国最大の石炭生産地を持つ北部,山西省(注22)を繋ぐものである。

中国国家送電網(注14)は更に,2,000kmに亘る2本の超高圧直流送電線(注23)を,水力発電に恵まれた中国南西部から,急成長を遂げている中国東部沿岸部まで,敷設工事中であり,その工事費は400億元である。シュインビアオ副社長(注15)は,この資金源を明らかにしていないし,新たな1,000億元の対象プロジェクトも明らかにはしなかったが,南西部から東部への線の増強と推定されている。

この超高圧送電網構想は,損失を少なくするだけでなく,エネルギー資源の偏在を解決する一つの手段と考えられている。中国では,水力の80%が南西部にあり,石炭の3分の2が北部の三省に偏在し,需要は東部に集中している。この世界最大の電力需要の5分の4は石炭に頼っており,石炭輸送のために,鉄道が大きな負担を強いられている。

産業界の一部では,この超高圧送電線拡張について,その公害,技術と経済効果,供給保安と競争,などの懸念があるが,シュインビアオ副社長(注15)は,この超高圧送電網構想の推進のために,関係者は,調停のために議論している,としている。なお,この記事に置いて,元の対ドルレートは,6.836である。

(注) (14) State Grid Corp of China,(15) ultra-high voltage (UHV) power transmission networks,(16) executive vice president Shu Yinbiao,(17) National Development and Reform Commission,(18) Jingdongnan,井岡山 (19) Jingmen,くさかんむり 刑門,(20) 1,000 kilovolt alternate current line,(21) Hubei province, (22) Shanxi province,(23) UHV direct current lines,(24)

参考資料

フィリッピン

●090117A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,アボリテス,スビック石炭火力遅れる
APC defers $ 450-M Subic coal-fired plant
http://www.mb.com.ph/BSNS20090116145756.html

中国

●090117B China, ndiainfoline.com
中国,チベットのヤールン水力建設へ
China may build power plants on Yarlung Tsangpo: report
http://www.indiainfoline.com/news/innernews.asp?storyId=90271&lmn=1
●090117C China, alibaba.com
中国国家電網,超高圧送電網整備に,146億ドル
China grid operator to spend $14.6 bln on UHV lines
http://news.alibaba.com/article/detail/country-grouping/100042794-1-update-1-china-grid-operator-spend.html

2009年1月16日金曜日

フィリッピンの送電譲渡で電源はどうなる

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今日は旧友を訪ねて話し込んで遅くなった。フィリッピンの国家送電公社の運営権を,どうして中国国家電網に委譲しなければならないのか,よく分からないし,特に全国送電網など,外国の手に渡すべきでないと思うが,2009年1月15日付で譲渡完了である。ところで,フィリッピンの電源が気になるところだが,K後輩が,同窓会誌に載せた文書,同窓会だけではもったいなので,本人の許可なく転載,読んでやってください。

電力を退職して5年,突然A先輩から「フィリッピンへダムの調査に行くぞ,」と声が掛かった。自分の会社を立ち上げて以来,電力については発電所建設工事事例の調査等の仕事をさせてもらっていたが,「海外へ行って水力発電所の計画を3ヶ月かけてやる」,など,あまりにも唐突な話であった。そもそも私は水力・火力・原子力・変電といった電力土木全般にわたる関西電力28年間の"輝かしい?"経歴の中で,「電力土木の王道」である水力計画だけはやったことがなかった。

「僕やったことがないのですが・・」,と言う私に,先輩は,「お前の会社の名前,"国際"って書いてあるじゃないか。行こう!」,と仰る。この先輩は大学も先輩で,後に海外でで活躍された"水力開発の神様"と呼ばれる方である。「いや~,"国際"の社名は海外旅行も含む方便で・・」,などと本音の話しもできず,「まあ,神様と一緒ならなんとかなるだろう」,と軽率にも,「はい」,と言ってしまった。しかも「国内の仕事があるので,3ヶ月のオッファーは1.5ヶ月にして下さい」,とも付け加えた。これが後々とんでもないハードワークに繋がることなど,軽率な私は気付くはずもなかった。

フィリッピンは,およそ7,100の島からなる国で,日本の80%の面積の国土に約8,800万人が暮らしている。メトロ・マニラ(1,000万人)のあるルソン島は人口4,000万人といわれ,その発電設備の規模は我が国の中国電力に相当し,最大電力では四国電力程度である。しかし,その電力料金は日本・カンボジアに次ぐアジア第3位の高額料金であるため,アメリカを始めとする海外企業はタイやベトナムに工場を移設しているのが実状である。そのような状況において,発電事業に可能性を見出しフィリピンの経済発展に寄与することを目指して,今回の事業は企画された。

押っ取り刀でマニラに乗り込んだまでは良かったが,神様は,「3ヶ月のはずの概略検討を1.5ヶ月でやらねばならないから,忙しいぞ」,と,のたまった。どうやら,業務量は変わらないのに,工期と報酬をオッファーの半分で請け負ったことになったらしい。その結果,滞在中,現地踏査以外は1日15~16時間パソコンに向かってAUTO CADで設計図を描くこととなり,帰国までに仕上げた図面は44枚に達した。前後3回敢行した現地踏査は、雨期に入ったジャングルをかき分け,川を渡り,ぬかるみに転びという悲惨な行軍で,崖から川に落ちたのが1回,坂道や川中で転んだのが10数回という結果を残した。膝から下の打ち身と傷は帰国後約2週間の治療を要した。

やはり電源開発に未練があるのか、この仕事には結構入れ込んで、よく働いた。このプロジェクトが今後どのように進展するかは"神のみぞ知る"であるが,フィリッピンのためにもぜひ順調に進捗することを祈っている。と。

本文

●フィリッピン,送電公社引き受け企業,3億ドルの注入が必要

先日から前渡金が問題になっていたフィリッピン,国家送電公社の運営権の譲渡,この記事では無事に完了して引き渡しが終わったようだ。これからが正念場だ。国家送電公社TRANSCO(注1)の運営権譲渡を受けたNGCP(注2)は,全国の送電網増強のために,さし当たって3億ドルを調達する必要がある。アギラTRANSCO総裁(注3)によると,必要な875百万ドルのうち半分はODA(注4)で調達済みと言っている。

この資金は,2011年までの拡張計画をカバーしているが,25年に亘るNGCP(注2)の送電網整備計画TDP(注5)は,NGCP(注2)により実施されなければならない。TRANSCO(注1)とPSALM(注6)は,750万ドルの前渡金の処理が終わって,昨日,2009年1月14日,正式に国家送電網の運営権を委譲した。前渡金を支援したのは,BDO(注7),HSBC(注8),中国銀行(注9)である。

NGCP(注2)のブラウン社長(注10)は,NGCP(注2)は,中国国家電網(注11),モンオロ(注12),カラカ(注13)の合弁で,2009年1月15日より運営を開始する,としている。中国国家電網(注11)のドウジガン会長(注14)は,その運用技術と効率化技術を注ぎ込むことが出来る,と語っている。中国国家電網(注11)は,1億世帯の需要家を持ち,年間70億ドルの売り上げを誇る。

アギラTRANSCO総裁(注3)は,TRANSCO(注1)の残留部分は,運営権者をモニターする権限を持ち,ODAプロジェクトを含めた合意事項の監督に当たる,と。TRANSCO(注1)の従業員数は5,000人であるが,TRANSCO(注1)の残留部分に残るのは200人で,将来は250人に拡張する計画,残りの従業員は,ハネムーン期間(注15)165日間は,新しい運営権者の元で働く。

注意すべきは,送電網の施設そのものは国有として残る,ただ,運転維持管理と拡張が運営権者の業務である。アギラTRANSCO総裁(注3)は,NGCP(注2)がすべての資格を満たしているが,これから困難な問題にも当たらなければならない。それは,ミンダナオの爆弾事件の処理や,スキャット-アラネタ線の紛争の問題(注16)である,と。

(注) (1) National Transmission Corporation (TransCo),(2) National Grid Corporation of the Philippines (NGCP),(3) TransCo president Arthur N. Aguilar,(4) official development assistance (ODA),(5) Transmission Development Plan (TDP),(6) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(7) Banco de Oro (BDO),(8) Hongkong and Shanghai Banking Corporation (HSBC),(9) Bank of China,(10) NGCP president Walter W. Brown,(11) State Grid Corporation of China,(12) Monte Oro Grid Resources Corporation,(13) Calaca High Power,(14) State Grid chairman Du Zhigang,(15) "honeymoon period",(16) on-going legal battle over the Sucat-Araneta line,(17)

●インド,再生可能エネルギー開発のための企業組織へ

インド中央政府の再生可能エネルギー省MNRE(注17)は,再生可能エネルギーRE(注18)の発電企業を設立すべく検討中である。すべて政府所有の公社とし,太陽光,地熱,風力,バイオ燃料及びバイオマスによる発電を扱う。発電公社PSUとして現在,それぞれ石炭火力と水力発電を扱うNTPC(注19)とNHPC(注20)があり,新しい公社は,再生可能エネルギーを扱う最初の公社となる。グプタ次官(注21)の話である。

この考えは,再生可能エネルギーに専心する公社を,政府の直接管理下に置く,と言うものである。政府は,インド再生可能エネルギー開発庁IREDA(注22)設立を推進中であるが,これはRE(注18)のプロジェクトに対する融資を目的としている。エネルギー常任委員会(注23)と公社事業委員会(注24)は,この案を承認している。独立したRE(注18)開発の公社設立は,大きな効果があると期待されている。

この公社は,再生可能エネルギー源の調査に大きな力を発揮し,気候変動の問題への対処と同時に,経済成長を助ける役割もある。インドは,温暖化ガス排出の基準を設定していないので,化石燃料を抑制して再生可能エネルギーを増大する努力をする必要があると考えている。しかし政府は,再生可能エネルギーの経済性について,注意深く対処する必要がある。現在は民間に頼っているが,政府の場合,再検討が必要。

現在のインドの,系統に繋がっている再生可能エネルギー源による電源は,11,273MWで,これは全発電設備の8%である。第11次五カ年計画(注25)の終わりには,設備は,200,000MWに達するので,再生可能エネルギーの開発目標は,24,000MWである。中国は大規模水力を再生可能エネルギーと計算しているが,インドはこれを入れていないようである。

(注) (17) ministry of new and renewable energy (MNRE),(18) renewable energy,(19) National Thermal Power Corp (NTPC),(20) National Hydro Power Corp (NHPC),(21) MNRE secretary Deepak Gupta,(22) Indian Renewable Energy Development Agency (Ireda),(23) Standing Committee on Energy,(24) Committee on Public Undertaking,(25) 11th Plan,(26)

参考資料

フィリッピン

●090116A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,送電公社引き受け企業,3億ドルの注入が必要
NGCP needs $ 300-M capital infusion
http://www.mb.com.ph/BSNS20090115145654.html

インド

●090116B India, Economic Times
インド,再生可能エネルギー開発のための企業組織へ
PSU push soon for renewable energy
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/PSU_push_soon_for_renewable_energy/articleshow/3980474.cms

2009年1月15日木曜日

ミャンマーのアラカンに500MWダム

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ミャンマーのアラカン州,アラカン山脈の西の地域で,今まで余り焦点が当たってこなかったが,ミャンマー沖,ベンガル湾で大規模な天然ガスの包蔵が知られてからは,日が当たってきた。それどころか,中国は既に天然ガスの基地化を狙って港の建設に走っているし,インドからは,電力省のラメッシュ副大臣が,この地域とインドのミゾラム州を繋ぐルートを視察,またバングラデシュの調査団もアラカン入りしている。

今日の記事は,軍事政権序列2位のマウンアイ将軍(注3)とゾーミン電力大臣(注4)が,アラカン入りをして,4つの水力発電所の建設について,視察している。全部で600MWと言っているが,最大は500MWのレイムロ川(注9)のダムプロジェクトで,まだ開発について十分の意志決定が出来ていないようだ。バングラデシュが近いため,開発を考えているが,ミャンマーから見て,資金不足と映っている。

このミャンマーのアラカン州も行ってみたいところの一つですね。世界の彼方此方を歩いた経験があるが,まだまだ見たいところがある。インドのヒマチャル,アルナチャル,それにアラカン,ですね。チベットは標高が高く,一度,65歳の頃にペルーの4,900m地点で吐いた経験があるので,高いところは嫌だが,この三つの地域は,行ってみたい。

ダムや水力のプロジェクトをやっていると,人生100年では少し足りないような気がする。ミャンマーの東の奥地を歩いたときに,随分立派な大木が道の傍に並んでいて,ふと,次に生まれるときには木に生まれてくるか,と言ったら,アダチさん,全然動けませんよ,と言われた。しかし,動けなくてもあの大木の幹や枝を眺めていると,随分広くて交通路が中に発展し,一つの社会が出来上がっているような気がした。

木ならおそらく500年はおろか1000年ぐらいは,軽く生きれるのではないかと思う。1000年の歴史を上から眺めていたら,テレビを見るより面白いかも知れない。そこまで行かなくても,カンボジアのキリングフィールドを訪ねたときに,一本の木があって,その傍に人骨が落ちていたが,こんなに平和であるのに,この木はあのポルポトの惨劇を目の前で見ていたのだ,と思うと,思わずその木を触って見ていた。

本文

●ミャンマーのアラカン山脈,600MW発電可能

ミャンマーのアラカン州(注1)と言うのは,以前はそれほど注目されていなかった。しかし,最近に至って,ミャンマー沖の膨大な天然ガスの包蔵が知られ,このHPでも,中国が天然ガス基地として港の工事を進めていることや,バングラデシュのミッションが訪ねて,水力開発について打診したこと,更には,インドのラメッシュ副大臣が現地を訪問して,インド,ミゾラム州(注2)へのアクセスを模索していることなど,注目を浴びている。

最近,マウンアイ将軍(注3)とゾーミン電力大臣(注4)が,アラカン州(注1)南部の水力地点を訪問したときの会議で,アラカン州(注1)で4地点の水力プロジェクトを開発すると,その出力合計が,697.5MWに達することが確認された。ミャンマー軍事政権によって,この4地点のうち,2地点は既に工事に入っており,残りの2地点は,現在着工準備中という。

ゾーミン電力大臣(注4)によると,工事中の二つのプロジェクトは,タタイチャウン(注5)とアンチャウン(注6)地点で,いずれも,2,3年内に完成の見込みという。タタイチャウン(注5)地点は,タンドウ町(注7)に位置し,出力11MW,またアンチャウン(注6)地点は,アン町(注7)に位置して,出力10MWである。後の二つは,レイムロ川(注9)とサイディン滝(注10)に位置して,合計出力576.5MW,ただし準備中である。

レイムロ川水力発電ダム(注11)は,500MW規模で,ブティダウン(注12)にあるサイディン水力プロジェクト(注13)は,76.5MWである。この二つのプロジェクトは,国境に近いだけに,前回ミャンマーを訪問したバングラデシュ調査団の関心を集めているが,果たして,バングラデシュに資金力があるかどうか,疑問視されている。

アラカン州(注1)は水力開発のポテンシャルは大きいが,ミャンマー政府は今まで余りアラカン州(注1)の水力に関心を払っていなかったので,アラカン州(注1)には殆ど通常の電気はない。一部の町が,日2時間程度の発電を行っている程度である。1988年に,政府が一度電化について宣伝を行ったことがあるが,住民は感心がなかった。20年間も電気なしで置かれたせいである。

国境近くで商業を営むマウンドー(注13)は,自分の町は比較的中心地であるが,4日間に2時間しか電気がなく,国境のすぐ真向かいのバングラデシュのテックナフ(注14)では24時間電気があり,ミャンマー軍事政権にとって非常に恥ずかしい,と語っている。水力発電所が出来ればアラカン州(注1)にも電気が来る,と政府は言うが,住民はその言葉を信じていない。

問題は,レイムロ川水力発電ダム(注11)の500MWの開発で,おそらくバングラデシュが開発できるとは思えない。今から位置を調べてみるが,現在中国が工事中の天然ガス基地なども近くにあり,インドも,国境に比較的近いことから,何らかの国際的な協力が実る可能性はなきにしもあらず。

(注) (1) Arakan State,(2) Mizoram state,(3) Senior General Maung Aye,(4) electric power minister Colonel Zaw Min,(5) Tha Htay Chaung,(6) Ann Chaung,(7) Thandwe Township,(8) Ann Township,(9) Laymro River,(10) Sai Din Waterfall,(11) Laymro River hydropower dam,(12) Buthidaung,(12) Sai Din hydropower plant,(13) Maungdaw,(14) Teknaf,(15)

●インド,送電公社が不満,発電地点の変更が頻発

電力民営化のとんだとばっちりが,このようなところに出てくるのか。IPP(注15)の度重なるプロジェクトの場所変更に苛立つ国家送電網PGCIL(注16)は,法律の対応を求めて,政策立案部門の門を叩いている。IPP(注15)の依頼に基づいて,PGCIL(注16)はその容量に見合って莫大な資本投下を行う。IPP(注15)は,初期依頼で10万ルピー,設計に1,500~2,000万ルピーを支払う。

現在の規則では,設計開始から90日以内の時点で,基幹送電協定BPTA(注17)が未署名で場所を変更する場合は,PGCIL(注16)はそれを受け入れなければならない。しかし,変更はPGCIL(注16)に損失をもたらし,IPP(注15)はそれを補填してくれない。PGCIL(注16)の説明では,オリッサ(注18)からデリーまで約1,300km,2,000MWを送るのに,建設費は500億ルピー必要となる。

例えば,需要地としてデリーよりもマハラシュトラ(注19)の方が電気料金が高いので,IPP(注15)が急に変更した場合,その損失はPGCIL(注16)が負担しなければならない。このようなことを避けるために,PGCIL(注16)はIPP(注15)の銀行の保証を求めようとしている。また,設計から90日以内にIPP(注15)が基幹送電協定BPTA(注17)に署名しない場合は,新規手続きとなるべきだ,としている。

PGCIL(注16)は現在,電力省(注20),計画委員会(注21),電力規制委員会CERC(注22)などに交渉しており,2009年1月末にも何らかの措置が執られるものと期待している。現在,70~80のIPPプロジェクトが動いており,例えば,チャティスガール(注23)は42のMOUを,オリッサ(注18)は22の,ジャークハンド(注24)は15の,それぞれIPPプロジェクトを抱えている。

企業によっては,発電プロジェクトに余り真剣に取り組まず,早急な利益だけを求めているような例があり,このような試みにPGCIL(注16)が振り回されるのは不適切であり,このような企業は除外して行くような措置も考えられている。中国などはどうなのでしょうね。やはり,問題はプロジェクトの許認可と長期契約の問題で,電源開発の基礎的な問題なのだが。

(注) (15) independent power projects (IPP),(16) PowerGrid Corporation of India,(17) bulk power transmission agreement (BPTA),(18) Orissa,(19) Maharashtra,(20) ministry of power,(21) Planning Commission,(22) Central Electricity Regulatory Commission,(23) Chattishgarh,(24) Jharkhand,(25)

●インド,ヒマチャル,森林保護で,ジャイピー水力の送電線変更

最近のヒマチャルプラデシュ(注25)は,環境への入れ込みが激しくなってきた。誰か内部で人がいるのでしょう。ADBも,流れ込み式と言うことで支援している。ヒマチャルプラデシュ(注25)州政府のナッダ森林相(注26)は,ジャイピー水力JKH(注27)に対して,森林への影響を考慮して,送電線ルートを変更するよう要請した。また,192MWのアラインドウハンガン水力(注28)に対しても同様の要請を行った。

ナッダ森林相(注26)は,JKH(注27)に対して,ストレジ川(注29)の左岸は森林は多く,右岸に送電線を持ってくれば,22,000本以上の森林も住民も救われる,としている。ジャイピー水力JKH(注27)は,キナウル地区(注29)に位置する出力,1,000MWの水力プロジェクトを推進中である。また,プロジェクト単独の送電線は許可できない,同じ川のプロジェクトは,送電ルートを一本にして貰う,としている。

その点から,ストレジ川(注29)のプロジェクトは,すべてジャイピー水力JKH(注27)の送電線に載せて貰う,と。また,アラインドウハンガン水力(注28)の単独送電線も拒否され,他のプロジェクトのラインに載せることで合意された。ヒマチャルプラデシュ(注25)は,78平方kmの森林が荒らされようとしている,送電線によるでたらめな伐採には,州政府は耐えられないと。

ヒマチャルプラデシュ(注25)では,21,000MWの水力ポテンシャルを持っているが,その3分の一が調査されただけである。2012年までに,12,000MWが開発されようとしている。州政府も多くの小水力や流れ込み式水力の開発を行うが,2~5MWは地元企業で,5MW以上は,広くオープンした入札で実施される。ナッダ森林相(注26)の言っていることは,全く賛成である,当然そうあるべきだ。

(注) (25) Himachal Pradesh,(26) Forest Minister J.P. Nadda,(27) Jaypee Karacham Hydropower,(28) Allain-Duhangan Hydro Ltd,(29) Sutlej river,(29) Kinnaur district,(30)

参考資料

ミャンマー

●090115A Myanmar, narinjara.com
ミャンマーのアラカン山脈,600MW発電可能
Over 600 Megawatts to be Produced in Arakan
http://www.narinjara.com/details.asp?id=2028

インド
●090115B India, Economic Times
インド,送電公社が不満,発電地点の変更が頻発
PowerGrid seeks new IPP norms over location shifts
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/PowerGrid_seeks_new_IPP_norms_over_location_shifts/articleshow/3978466.cms
●090115C India, thaindian.com
ヒマチャル,深林保護で,ジャイピー水力の送電線変更
Jaypee Hydropower told to move power line in Himachal to save forest
http://www.thaindian.com/newsportal/uncategorized/jaypee-hydropower-told-to-move-power-line-in-himachal-to-save-forest_100142287.html