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お金さへあれば発電所はすぐ出来る,幾らでも出来る,問題は発電所の燃料だ,燃料の話を抜きにして発電所は語れない,と言い続けてきた。丁度中国が,もの凄い勢いで発電所を建設している頃で,設備はあれども石炭が届かず,全国で電力不足に陥っていた頃,数年前の話である。一方のインドも,中国と似たり寄ったり,石炭供給に苦しんでいる。
今日取り上げた記事では,インドが進める,4,000MWクラス大規模石炭火力計画UMPPの第3番目に当たるティラヤ石炭火力のIPP入札で,リライアンス電力が最低札,KWh当たり2.77ルピア,約3.63セント相当,で開発の権利をとりそうだ,という記事の傍で,国家火力発電公社NTPCが,既設の石炭火力で,石炭不足のために稼働率が極端に落ちてきている,というニュースが並んでいる。
インドについては,原子力と北辺の水力を重視する方向に転換して欲しい,と言っても,人類は今しばらく,安価で豊富な石炭に頼らざるを得ない,特に中国とインドにはそれが言える。石炭の総量問題だが,世界で現時点,可採埋蔵量は98,457億トンと言われていて,石油が41年で枯渇するのに,石炭は192年,約200年といわれている。
インドはこのうち,米国(25.4%),ロシア(15.9%),中国(11.6%)に続いて世界第4位の包蔵量を有し,推定で2,480億トン,確認埋蔵量は930億トンと言われている。これに対して,2006年~2007年の総使用量は11.1億トン,このうち243百万トンを輸入している。インドが輸入先としているのは,インドネシア,オーストラリア,南アメリカである。電力供給に石炭の占める割合は70%で,中国と殆ど同じだ。
インドでも中国でも,石炭と電力の行政が一本化出来ていない。中国は,2007年の石炭供給不足に懲りて,行政の一本化を打ちだしている。中国はおそらくやるであろうが,既得権に絡むインドでは,一本化は無理であろう。石炭火力を造るときに,この石炭供給契約,コールリンク,がいつも大きな問題になっている。これも日本の電力企業のインド進出を阻んでいる一つの原因だろう。
本文
●インド,リライアンス,大規模火力ティラヤ地点,獲得へ
インドの野心的な大規模石炭火力計画UMPP(注1),プロジェクトの規模,4,000MW,全国で10地点ぐらいをとりあえず想定しているが,世界的いな金融危機の折から,なかなか進展せず,ADB(注2)も,少しプロジェクトの規模を縮小したら,と提言していた。この第3弾のティラヤ石炭火力(注3)についても,一度入札が延期され,その行くへが心配されていたところだ。
今日の記事。インド財閥の一つ,アニルアンバニグループADAG(注4)の旗艦企業,リライアンス電力(注5)が,水曜日,2009年1月28日,驚異的な積極的入札を行った,それは,4,000MW,ティラヤ石炭火力(注3)で,マディアプラデシュのササーン石炭火力(注6),アンデラプラデシュのクリシュナパットム石炭火力(注7)に次ぐ,3番目の大規模石炭火力計画UMPP(注1)である。
リライアンス電力(注5)は,最低価格KWh当たり1.77ルピー,約3.63セント相当,の最安値で,2番札はNTPC(注8)であった。これらのプロジェクトを取り仕切る電力融資公社PFC(注9)の一人が語ったものである。公式発表はまだなされていない。他の入札企業と価格は,NTPC(注8)が2.30ルピア,ジンダール電力(注11)が269ルピア,スターライト(注12)が2.90ルピーで,ランコ(注10)は資金調達難から,撤退した。
リライアンス電力(注5)は,ササーン石炭火力(注6)も落札しているが,ティラヤ石炭火力(注3)の入札価格は,ササーン石炭火力(注6)と同じ4,000MW,石炭も地元炭坑と条件は同じであるにもかかわらず,金融情勢から,ササーン石炭火力(注6)を,57パイサ,上回った。このティラヤ石炭火力(注3)では,石炭は地元炭坑で同じ発電企業が運営することになっている。埋蔵量は,972百万トンである。必要量の186%である。
ティラヤ石炭火力(注3)の建設費は,1,800億ルピー,約36億ドル相当,で,資本比率(注13)は,70対30である。リライアンス電力(注5)に対する契約内示書L/I(注14)は2,3日内に出される予定で,それから60日以内に必要な手続きをとる。PFC(注9)によると,入札開示は,高位のレベルの委員会で行われ,この中には,ビハール州(注15)とジャッカンド州(注16)も参加,正式契約は,1ヶ月内,とされている。
この入札は,企業側から,資金調達の困難と石炭供給システムの不明確とで,入札延期が申請されて伸びていた。政府の最初の予定は,2007年7月であったが,水供給,規制問題,など地点の立地条件確定のため遅れた。政府は,更に5つのUMPP(注1)の入札を,この先5ヶ月内に行う予定だが,このティラヤ石炭火力(注3)の入札遅れが,影響を及ぼすかも知れない。
(注) (1) ultra mega power project (UMPP),(2) Asian Dvelopment Bank,(3) Tilaiya ultra mega power project (UMPP),(4) Anil Dhirubhai Ambani Group (ADAG),(5) Reliance Power,(6) Sasan (Madhya Pradesh),(7) Krishnapatnam (Andhra Pradesh),(8) National Thermal Power Corp (NTPC),(9) Power Finance Corp (PFC),(10) Lanco Infratech,(11) Jindal Power,(12) Sterlite Energy,(13) debt-equity ratio,(14) letter of intent,(15) Bihar,(16) Jharkhand,(17)
●インド,石炭供給不足,NTPCの発電所運転休止
お金があれば発電所は幾らでも出来るが,問題は燃料である,と言い続けている。中国もインドも,石炭供給が大きな問題になっている。厳しい石炭不足が,NTPC(注17)の幾つかの発電所を襲っているが,このことは,発電所の停止という事態にまで発展しそうだ。各所の発電所で稼働率PLF(注18)が,通常の100%を20%も下回る80%に落ちてきている。
ビハール州(注19)のカハルガオン発電所(注20)のパニ所長(注21)が語る,我々は全く一時しのぎの(注22)の状態で,この3週間,予備の石炭は全くない状態,日34,000トンの石炭が必要なところ,24,000トンが精一杯である,と。NTPC(注17)のファラッカ(注23),タルチャール(注24),シングラウリ(注25)各発電所も,同じような状態である。この状況は,NTPC(注17)だけではないようだ。
電力情報の頂点にあるCEA(注26)の情報によると,多くの発電所が石炭不足の影響を受けており,備蓄7日以下の発電所が39カ所,4日以下が26発電所に及んでいる。また幾つかは,石炭が来れば発電,という状況だ。普通は,15日の備蓄が必要である。例えば,NTPC(注17)のカハルガオン発電所(注20)は,210MW機4台,500MW機2台,合計6台,1,840MWの石炭火力発電所である。
ここで訪ねた日の稼働率PLF(注18)は70%であったが,普段の発電状況は,PLF(注18)が,80~85%である。月のPLF(注18)は75.9%に落ち込んでいるが,パニ所長(注21)は,月80%は確保している,と言っている。NTPC(注17)は,80%を割れば,経営は難しい,給料も払えない,NTPC(注17)の失策でないのに,どうしてこうなるのか,と嘆いている。
実際,この年度内で500MWが運転開始するが,何処から石炭が入ってくるのか,全く分からない,と言っている。NTPC(注17)は,設備出力,29,844MWで,26発電所のうち,19発電所が石炭火力で,残りの7発電所がガス焚きである。
(注) (17) National Thermal Power Corporation (NTPC),(18) Plant load factor (PLF),(19) Bihar,(20) Kahalgaon plant,(21) UP Pani, general manager of Kahalgaon plant in Bihar,(22) hand-to-mouth,(23) Farakka plant,(24) Talchar plant,(25) Singrauli plant, (26) Central Electricity Authority (CEA),(27)
参考資料
インド
●090131A India, Economic Times
インド,リライアンス,大規模火力ティラヤ地点,獲得へ
Reliance Power bags Tilaiya project
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/Reliance_Power_bags_Tilaiya_project/articleshow/4044538.cms
●090131B India, Economic Times
インド,石炭供給不足,NTPCの発電所運転休止
NTPC goes for temporary plant shutdown
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/NTPC_goes_for_temporary_plant_shutdown/articleshow/4049637.cms