HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
今日は旧友を訪ねて話し込んで遅くなった。フィリッピンの国家送電公社の運営権を,どうして中国国家電網に委譲しなければならないのか,よく分からないし,特に全国送電網など,外国の手に渡すべきでないと思うが,2009年1月15日付で譲渡完了である。ところで,フィリッピンの電源が気になるところだが,K後輩が,同窓会誌に載せた文書,同窓会だけではもったいなので,本人の許可なく転載,読んでやってください。
電力を退職して5年,突然A先輩から「フィリッピンへダムの調査に行くぞ,」と声が掛かった。自分の会社を立ち上げて以来,電力については発電所建設工事事例の調査等の仕事をさせてもらっていたが,「海外へ行って水力発電所の計画を3ヶ月かけてやる」,など,あまりにも唐突な話であった。そもそも私は水力・火力・原子力・変電といった電力土木全般にわたる関西電力28年間の"輝かしい?"経歴の中で,「電力土木の王道」である水力計画だけはやったことがなかった。
「僕やったことがないのですが・・」,と言う私に,先輩は,「お前の会社の名前,"国際"って書いてあるじゃないか。行こう!」,と仰る。この先輩は大学も先輩で,後に海外でで活躍された"水力開発の神様"と呼ばれる方である。「いや~,"国際"の社名は海外旅行も含む方便で・・」,などと本音の話しもできず,「まあ,神様と一緒ならなんとかなるだろう」,と軽率にも,「はい」,と言ってしまった。しかも「国内の仕事があるので,3ヶ月のオッファーは1.5ヶ月にして下さい」,とも付け加えた。これが後々とんでもないハードワークに繋がることなど,軽率な私は気付くはずもなかった。
フィリッピンは,およそ7,100の島からなる国で,日本の80%の面積の国土に約8,800万人が暮らしている。メトロ・マニラ(1,000万人)のあるルソン島は人口4,000万人といわれ,その発電設備の規模は我が国の中国電力に相当し,最大電力では四国電力程度である。しかし,その電力料金は日本・カンボジアに次ぐアジア第3位の高額料金であるため,アメリカを始めとする海外企業はタイやベトナムに工場を移設しているのが実状である。そのような状況において,発電事業に可能性を見出しフィリピンの経済発展に寄与することを目指して,今回の事業は企画された。
押っ取り刀でマニラに乗り込んだまでは良かったが,神様は,「3ヶ月のはずの概略検討を1.5ヶ月でやらねばならないから,忙しいぞ」,と,のたまった。どうやら,業務量は変わらないのに,工期と報酬をオッファーの半分で請け負ったことになったらしい。その結果,滞在中,現地踏査以外は1日15~16時間パソコンに向かってAUTO CADで設計図を描くこととなり,帰国までに仕上げた図面は44枚に達した。前後3回敢行した現地踏査は、雨期に入ったジャングルをかき分け,川を渡り,ぬかるみに転びという悲惨な行軍で,崖から川に落ちたのが1回,坂道や川中で転んだのが10数回という結果を残した。膝から下の打ち身と傷は帰国後約2週間の治療を要した。
やはり電源開発に未練があるのか、この仕事には結構入れ込んで、よく働いた。このプロジェクトが今後どのように進展するかは"神のみぞ知る"であるが,フィリッピンのためにもぜひ順調に進捗することを祈っている。と。
本文
●フィリッピン,送電公社引き受け企業,3億ドルの注入が必要
先日から前渡金が問題になっていたフィリッピン,国家送電公社の運営権の譲渡,この記事では無事に完了して引き渡しが終わったようだ。これからが正念場だ。国家送電公社TRANSCO(注1)の運営権譲渡を受けたNGCP(注2)は,全国の送電網増強のために,さし当たって3億ドルを調達する必要がある。アギラTRANSCO総裁(注3)によると,必要な875百万ドルのうち半分はODA(注4)で調達済みと言っている。
この資金は,2011年までの拡張計画をカバーしているが,25年に亘るNGCP(注2)の送電網整備計画TDP(注5)は,NGCP(注2)により実施されなければならない。TRANSCO(注1)とPSALM(注6)は,750万ドルの前渡金の処理が終わって,昨日,2009年1月14日,正式に国家送電網の運営権を委譲した。前渡金を支援したのは,BDO(注7),HSBC(注8),中国銀行(注9)である。
NGCP(注2)のブラウン社長(注10)は,NGCP(注2)は,中国国家電網(注11),モンオロ(注12),カラカ(注13)の合弁で,2009年1月15日より運営を開始する,としている。中国国家電網(注11)のドウジガン会長(注14)は,その運用技術と効率化技術を注ぎ込むことが出来る,と語っている。中国国家電網(注11)は,1億世帯の需要家を持ち,年間70億ドルの売り上げを誇る。
アギラTRANSCO総裁(注3)は,TRANSCO(注1)の残留部分は,運営権者をモニターする権限を持ち,ODAプロジェクトを含めた合意事項の監督に当たる,と。TRANSCO(注1)の従業員数は5,000人であるが,TRANSCO(注1)の残留部分に残るのは200人で,将来は250人に拡張する計画,残りの従業員は,ハネムーン期間(注15)165日間は,新しい運営権者の元で働く。
注意すべきは,送電網の施設そのものは国有として残る,ただ,運転維持管理と拡張が運営権者の業務である。アギラTRANSCO総裁(注3)は,NGCP(注2)がすべての資格を満たしているが,これから困難な問題にも当たらなければならない。それは,ミンダナオの爆弾事件の処理や,スキャット-アラネタ線の紛争の問題(注16)である,と。
(注) (1) National Transmission Corporation (TransCo),(2) National Grid Corporation of the Philippines (NGCP),(3) TransCo president Arthur N. Aguilar,(4) official development assistance (ODA),(5) Transmission Development Plan (TDP),(6) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(7) Banco de Oro (BDO),(8) Hongkong and Shanghai Banking Corporation (HSBC),(9) Bank of China,(10) NGCP president Walter W. Brown,(11) State Grid Corporation of China,(12) Monte Oro Grid Resources Corporation,(13) Calaca High Power,(14) State Grid chairman Du Zhigang,(15) "honeymoon period",(16) on-going legal battle over the Sucat-Araneta line,(17)
●インド,再生可能エネルギー開発のための企業組織へ
インド中央政府の再生可能エネルギー省MNRE(注17)は,再生可能エネルギーRE(注18)の発電企業を設立すべく検討中である。すべて政府所有の公社とし,太陽光,地熱,風力,バイオ燃料及びバイオマスによる発電を扱う。発電公社PSUとして現在,それぞれ石炭火力と水力発電を扱うNTPC(注19)とNHPC(注20)があり,新しい公社は,再生可能エネルギーを扱う最初の公社となる。グプタ次官(注21)の話である。
この考えは,再生可能エネルギーに専心する公社を,政府の直接管理下に置く,と言うものである。政府は,インド再生可能エネルギー開発庁IREDA(注22)設立を推進中であるが,これはRE(注18)のプロジェクトに対する融資を目的としている。エネルギー常任委員会(注23)と公社事業委員会(注24)は,この案を承認している。独立したRE(注18)開発の公社設立は,大きな効果があると期待されている。
この公社は,再生可能エネルギー源の調査に大きな力を発揮し,気候変動の問題への対処と同時に,経済成長を助ける役割もある。インドは,温暖化ガス排出の基準を設定していないので,化石燃料を抑制して再生可能エネルギーを増大する努力をする必要があると考えている。しかし政府は,再生可能エネルギーの経済性について,注意深く対処する必要がある。現在は民間に頼っているが,政府の場合,再検討が必要。
現在のインドの,系統に繋がっている再生可能エネルギー源による電源は,11,273MWで,これは全発電設備の8%である。第11次五カ年計画(注25)の終わりには,設備は,200,000MWに達するので,再生可能エネルギーの開発目標は,24,000MWである。中国は大規模水力を再生可能エネルギーと計算しているが,インドはこれを入れていないようである。
(注) (17) ministry of new and renewable energy (MNRE),(18) renewable energy,(19) National Thermal Power Corp (NTPC),(20) National Hydro Power Corp (NHPC),(21) MNRE secretary Deepak Gupta,(22) Indian Renewable Energy Development Agency (Ireda),(23) Standing Committee on Energy,(24) Committee on Public Undertaking,(25) 11th Plan,(26)
参考資料
フィリッピン
●090116A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,送電公社引き受け企業,3億ドルの注入が必要
NGCP needs $ 300-M capital infusion
http://www.mb.com.ph/BSNS20090115145654.html
インド
●090116B India, Economic Times
インド,再生可能エネルギー開発のための企業組織へ
PSU push soon for renewable energy
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/PSU_push_soon_for_renewable_energy/articleshow/3980474.cms
0 件のコメント:
コメントを投稿