2009年1月7日水曜日

フィリッピンのエネルギー長官が回顧

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

「カーボンニュートラル」,と言う言葉がある。植物由来の油では,栽培と伐採の循環を通じて再生可能である,と言っており,植物の一生涯でみれば大気中の二酸化炭素(CO2)量を増やさないという考え方に基づく。フィリッピンは,アジア各国に先駆けて,バイオ燃料法(注43)を成立させて,自動車の燃料の10%を,ココナツバイオで走ることを義務づけている。再生可能を年間単位で捉えていいのか,と言うことが言いたい。

この,「カーボンニュートラル」,は世界で認められた原理だが,何となく怪しいなあ,と思う人はいませんか。折角苦労して取り込んだ温暖化ガスをまた排出するのだ,と言うことだから,問題はサイクルの時間で,今日温暖化ガスを吸い込んで明日出す,と言う場合と,炭焼きのように,数十年単位で吸い込んだものを吐きだしている。石油に至っては,何万年という単位で吸い込んだものを吐きだしている。時間の長さの違いだけ。

バイオ燃料を再生可能というならば,石油も再生可能だと言うことにはならないのか。この辺りは少し屁理屈としても,バイオ燃料を大々的にエネルギー源として使うことは,別の意味からも賛成できない,農業の圧迫とか,集積の困難とか。バイオをやっている人は,これからは我々の時代,と大張り切りだが,社会の隅っこでこそこそやるならともかく,日本全国の自動車をエタノールで,というような発想には賛成できない。

フィリッピンのエネルギー長官レイエス(注6)は,2009年は,フィリッピンにとって,まさに輝ける年だ,と言っている。2008年の実績,発電所の売却,再生可能エネルギー法の制定,バイオ燃料法の制定,電力取引市場の開設と運用実績,非常に良くやった,と大統領もほめているし,私も,結構新しい構想を持ち込んで,東南アジではユニーク,と言う感じである。唯一出来なかったのが,需要家へのオープンアクセスと電気料金。

一番大事なこと,目的が果たせていないのだが,フィリッピンを見てみて,以外だったのは,需要が余り伸びていなくて,供給力の余剰が現時点ではかなりある,と言うことである。ルソン系統が,4,000万人で,6,000MWと言うのは小さいし,以外に伸びていない,と言う点である。だから,エネルギー長官レイエス(注6)は,余裕を持ってその実績を誇ることが出来る。

フィリッピンの系統問題は,日本のJICAやコンサルタントも深く関係しているが,やはりこれまで需要の伸びをかなり高く見てきて,2010年には電力危機が訪れる,と言っているが,現状を見るとどうであろうか。彼等は真面目に省エネルギー活動もやっているので,ピークの伸びが抑えられてくる感じである。今のところ,新しい電源については彼等は関心がなく,ゼロサムゲームに打ち興じている。

結局,余裕がなければ何も出来ない,電力改革も出来ないし,再生可能エネルギーなどには手を出せないし,ましてや,電力取引市場の危ない綱渡りなど,もってのほかだ。アジアを見てください,インド,ベトナム,パキスタン,ネパール,また中国もそうだが,停電続きで国民生活や経済活動に大息な影響が出ている。フィリッピンを金持ちとは言わないが,電力改革,再生可能はお金持ちの道楽,と言ってしまうと,言い過ぎかな。

(注) (6) Energy Secretary Angelo Reyes,(7) President Gloria Macapagal-Arroyo,(8) Department of Energy (DoE),(9) National Power Corporation (Napocor),(10) Angat,(11) Navotas,(12) Palinpinon,(13) Tongonan,(14) Bacman,(15) Luzon grid,(16) Visayas grid,(17) National Transmission Corporation,(18) National Grid Corporation of the Philippines or NGCP,(19) barangays,(20) Wholesale Electricity Spot Market,(21) Power Summit 2009,(22) Energy Family and ERC Consultative Forum,(23) Renewable Energy Act of 2008,(24) RE (renewable energy) ,(25) Northwind Windpower Project,(26) Bangui Bay,(27) Bangui,(28) Ilocos Norte,(29) Isogoro,(30) Bugasong in Antique,(31) San Miguel in Catanduantes,(32) Caramoran,(33) Catanduanes (2 projects),(34) Impasagong,(35) Bukidnon,(36) Alternergy Philippine Holdings Corporation,(37) Caliraya,(38) Laguna,(39) Pililla,(40) Rizal,(41) Abra de Ilog,(42) Occidental Mindoro,(43) Biofuels Act,(44) Petroleum Service Contract (PSC),(45) Electric Power Industry Reform Act. Roundtable,(46)

本文

●ベトナム,電気料金値上げ案,政府へ提出

ベトナムは,電気料金に関しては,中国と似たような問題を抱えている,原価と電気料金のギャップに悩む発電側と,インフレを気にする国のマクロ経済の関係である。2008年12月3日付本HP(注1)で,ここでは,電気料金の値そのものの議論よりも,その後に出てくる市場改革を念頭に於いたものだ。今日は,現実に,いつ上げるのか,という直面の問題に話が移っている。

電力を管轄するベトナム産業通商商MOIT(注2)のブイシュアンク副大臣(注3)は,電気料金値上げ案を政府に提出した,と発表した。MOIT(注2)の提案は二つの代替案からなっており,低いシナリオでは8.3%上げ,高いシナリオでは9%となっている。ブイシュアンク副大臣(注3)は,今回の提案は,経済の現況を考慮に入れたもので,その行程表によると,2009年の第1四半期に上げる必要がある,と語っている。

記事は,記者との一問一答の形式をとっているが,今回のMOIT(注2)の提案とEVN(注4)の考えは何処が違うのか,との質問に,EVN(注4)案は,より高くより早く,だが,MOIT(注2)は,物価の動向と企業の耐えれるバランスを考えている,特に注意して欲しいのは,最近の原油価格の下落が,電力にどの様な影響を与えるか,を考えている点だ,と。

需要が落ち込んできている状況下では,どう考えるか,の質問に対して,ベトナムは既に償却の進んだ原価の低い水力発電所を持っている,もしこれが有効に使えるなら,便益も大きいが,例えば,カマウ火力(注5)のような新鋭火力では,KWh当たり8セントで買っている。小売価格は,KWh当たり5セントなので,3セントのギャップがあり,電気料金の値上げは避けられない。

電気料金値上げの国民生活への影響について,慎重に考えるが,世界的な電気料金は,KWh当たり7セントで,ここまで一気に上げることは永久追うが大きいから,段階的な手段を踏みたいと思っている,と。値上げ時期の問題については,現在政府の決定を待っている状況だが,2009年代1四半期が適当だろう,と。

政府の景気刺激策について,この電気料金値上げは逆行しないか,との質問に,まさにこの点は逆説的で,注意が必要だが,8%の値上げがそのまま商品に跳ね返ってくるわけではない,大きな影響は与えないだろう,と。いずれにしても,ベトナムは電気料金の値上げは必須で,記事に言うように,7セントまで段階的に上げて,そして燃料などの自動調整に持って行くのが懸命だろうと思う。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081203A.htm,(2) Ministry of Industry and Trade,(3) Deputy Minister of Industry and Trade Bui Xuan Khu,(4) Electricity of Vietnam,(5) Ca Mau thermal power plant,(6)

●フィリッピン,エネルギー省,NPC資産売却に自信

フィリッピン,エネルギー長官レイエス(注6)が,2008年の報告書をアロヨ大統領(注7)に提出,彼に言わせれば,輝かしき2008年の電力セクターの実績を誇り,将来への明るい見通しを語って見せた。私たちは,問題はこれからの2010,2011年の電源不足だと思うが。エネルギー省DOE(注8)は,全国電化率と電源資産の70%売却の目標を達成し,今後もNPC(注9)の残りの資産民営化に集中することになる。

エネルギー長官レイエス(注6)は,アロヨ大統領(注7)に報告書を提出して,2009年について,NPC(注9)の残りの資産,アンガット(注10),ナボタス(注11),パリンピノン(注12),トンゴナン(注13),バックマン(注14)各発電所の民営化を続ける,と語った。ルソン系統(注15)とビサヤス系統(注16)の資産売却は,73.2%に達している。送電公社(注17)の民営化は,395億ドルでNGCP(注18)が落札,進捗した。

NGCP(注18)による全国送電網の運用の法的権利は,2008年12月20日,アロヨ大統領(注7)の署名によって発効している。2008年は躍進したが,オープンアクセス70%の目標は達していない。地方電化については目標を超え,全国41,000のバランガイ(注19)の97.13%が電化したが,なお,1,205のバランガイ(注19)が未電化であると。この全電化目標は,アロヨ大統領(注7)の方針であると。

2009年には,更にDOE(注8)は,数百万世帯に対して,太陽光や風力のような再生可能エネルギーで,地方電化を進めて行きたい。また,経済特区での電気料金下げ,KWh当たり1.03ペソは実現した。また,電気料金が競争で決まるよう,WESM市場(注20)の運用の評価を行っており,透明性と競争性を上げるべく,構造や管理態勢を見守っている。ビサヤス系統(注16)も入れるなどWESM市場(注20)の拡大に取り組んでいる。

2009年は,国内電力サミット(注21)を,エネルギーフォーラム(注22)と銘打って開催する。2008年12月には,アロヨ大統領(注7)によって再生可能エネルギー法2008(注23)が署名され,歴史的な出来事で,電力の未来を再生可能エネルギー(注24)で,と世界中が見守っている。この法律は,その技術への投資を支援し,2013年には,再生可能エネルギー(注24)による電力を,倍増しようとするものである。地方電化もある。

2008年の画期的プロジェクトは,8MWの第2次風力発電プロジェクト(注25)で,バングイ湾(注26),バングイ(注27),イロコスノルテ(注28)で実施された。2008年8月26日に,風力設備は,33MWに達し,これは東南アジア最大である。民間による小水力開発は,イソゴロ(29),ブガソン(注30),サンミゲール(注31),カラモラン(注32),カタンドウアン(注33),インパサゴン(注34),ブキッドノン(注35)の他,15地点で進捗中。

同時に,APHC(注36)と風力について3つの契約が行われており,カリラヤ(注37),ラグナ(注38),ピリジャ(注39),リサール(注40),アブラデイログ(注41),オキシデンタルミンダナオ(注42)で調査が行われている。2008年の原油価格高騰を受けて,バイオ燃料法(注43)が成立して,DOE(注8)は代替燃料開発を積極的に進めている。

石油産業上流の油田開発について,2008年に5つの契約を行っている。8つのPSC(注44)の地域で弾性波探査資料などの整備を行っている。更に,4つの地熱発電,石炭生産も契約から実施に入っている。電力サミットでは,電気事業法を再検討するフォーラム(注45)が開かれる。エネルギー長官レイエス(注6)は,2009年は,フィリッピンにとって,まさに輝ける年だ,と言っている。

(注) (6) Energy Secretary Angelo Reyes,(7) President Gloria Macapagal-Arroyo,(8) Department of Energy (DoE),(9) National Power Corporation (Napocor),(10) Angat,(11) Navotas,(12) Palinpinon,(13) Tongonan,(14) Bacman,(15) Luzon grid,(16) Visayas grid,(17) National Transmission Corporation,(18) National Grid Corporation of the Philippines or NGCP,(19) barangays,(20) Wholesale Electricity Spot Market,(21) Power Summit 2009,(22) Energy Family and ERC Consultative Forum,(23) Renewable Energy Act of 2008,(24) RE (renewable energy) ,(25) Northwind Windpower Project,(26) Bangui Bay,(27) Bangui,(28) Ilocos Norte,(29) Isogoro,(30) Bugasong in Antique,(31) San Miguel in Catanduantes,(32) Caramoran,(33) Catanduanes (2 projects),(34) Impasagong,(35) Bukidnon,(36) Alternergy Philippine Holdings Corporation,(37) Caliraya,(38) Laguna,(39) Pililla,(40) Rizal,(41) Abra de Ilog,(42) Occidental Mindoro,(43) Biofuels Act,(44) Petroleum Service Contract (PSC),(45) Electric Power Industry Reform Act. Roundtable,(46)

参考資料

ベトナム

●090106J Vietnam, english.vietnamnet
ベトナム,電気料金値上げ案,政府へ提出
Electricity price increase plan submitted to Government
http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/01/822435/

フィリッピン

●090106K Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,エネルギー省,NPC資産売却に自信
DoE confident of privatizing the remaining assets of Napocor this year
http://www.pna.gov.ph/index.php?idn=&nid=3&rid=179324

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