2009年1月9日金曜日

パキスタンは2016年までに25,270MW

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

電力危機の真っ直中にあるパキスタンは,ダムを造るのが早いのか,国際的なガスパイプラインを敷設する方が早いのか,この二つの選択しかないと言って良いと思うが,イランからのガスパイプラインについては,既にインドがこの案を放棄してしまった,と見るのが正しいだろう。パイプラインインフラをパキスタンだけで建設するのは,困難と言って良い。

ロシアとEUの間のガス供給問題が,大変な事態になっている。今日のニュースでは,ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止し欧州に影響が出ている問題で,ロシア国営企業ガスプロムは8日,一旦合意したガス供給再開を再び拒否した,と報じられている。APによると,欧州の少なくとも15カ国でロシアのガスの供給が完全に停止,氷点下25度の寒さに見舞われたポーランドなどで今週,11人が凍死している,と報じられた。

国際的なガスパイプラインというものが,如何に危ないかを示す今日のニュースである。政治的に安定したヨーロッパの話なので,世界でもっとも政治的に危険な地域,パキスタンでガスパイプライン,と言うのは全くあり得ない話と言わなければならない。今日のパキスタンの記事は,またか,と言いたくなるような,パキスタンの大規模ダムの話である。

パキスタン政府は,2016年までに,16ダム,25,270MWを開発する,と報じている。いずれも数十億ドルのプロジェクトで,誇大妄想と言われそうな最近のパキスタンである。プロジェクトの名前は挙がれども,資金調達の話はなかなか上がってこない。今日の記事にも,地点の羅列はあるが,資金源は全く見通しが立っていない。唯一の頼みは,今となれば中国であるが,もう一つはっきりしない。

これだけの莫大な水力包蔵を有しているパキスタンを,このままにしておいて良いのか,と言う気がする。今まで,動こうともしなかったネパールの包蔵水力が,政治的な変化と共に,明るい見通しが立ち,インドの,石炭火力の代替としての有効な開発に結びつく気運が出てきている。ブータンは既に,インドの重要な電源地帯である。

パキスタンの包蔵水力は,インドとパキスタンの協力がないと,おそらく開発できないであろうと思う。インド12億人,パキスタン1億人,その1億人のパキスタンに,お金さへあれば,2016年までに開発できる水力が,25,270MWあるという。インドとパキスタンが,共同でインダスを開発する日が,果たして人類の歴史の中で実現する日があるのであろうか。

本文

●パキスタン政府,16プロジェクトで,25,270MW

パキスタンは夢ばかり見ている,と言う気がしないでもない。豊富な水資源を抱えながら電力不足に泣く,そうしていつ出来るか分からない大規模ダムプロジェクトを,今にも出来そうに国民に喧伝して,停電に悩みテロに襲われる国民を宥めようとしている。今日のような記事は,何度となく読まされているが,しかし今日の記事は,16プロジェクト,すべてを洗い出しているので,詳しく見ておこう。

パキスタンの中期計画として8%の経済成長を続けるために,政府は,16の水力プロジェクトを,462億ドルかけて,2016年までに完成させる計画である,と水資源電力省(注1)が語っている。これが全部完成すると,25,270MWの出力が得られる。この中で,ディアマ-バシャダム(注2)とゴールデンゴルダム(注3)は着工寸前で,他の14プロジェクトは,WAPDA(注4)によって現在検討中である。

この中で5年内,2009~2013年に完成が予定されているものは,全部で,20,000MWで,ディアマ-バシャダム(注2)とゴールデンゴルダム(注3)の他,コハラダム(注5),ダスブインジダム(注6),ムンダパタンダム(注7),などである。ディアマ-バシャダム(注2)は,126億ドル,4,500MW,ゴールデンゴルダム(注3)は,130百万ドル,106MW,などである。

その他,パラス渓谷ダム(注8)が7億ドル,621MW,スパットガー(注9)が,7億ドル,610MW,コハラダム(注5)が,21.6億ドル,1,100MW,ダスダム(注10)が,4,000MW,ブンジ水力(注11)が,65億ドル,5,400MW,パンダール(注12)が,60億ドル,80MW,バショダム(注13)が,65百万ドル,28MW,ケヤルクバール水力(注14)が,30百万ドル,122MW,シシ川のラウイ(注15)が,160百万ドル,70MW。

続いて,ハルポプロジェクト(注16)が,40百万ドル,33MW,インダス河のタコット水力(注17)が,50億ドル,2,800MW,パタンプロジェクト(注18)が,2,800MW,インダス河のユルブプロジェクト(注19)が,60億ドル,3,000MW,シオック川のユゴ(注20)が,10億ドル,600MW,である。これらのダムプロジェクトは,灌漑や洪水制御の役割も果たすことになる。

もしこれらのプロジェクトに,十分に資金が行き渡らない場合は,国民や国土の荒廃をもたらすことになる。資金調達のためには,民間資金に魅力あるものである必要があるが,民間資金は,便益だけを目的としているので,なかなか難しい。

(注) (1) Ministry of Water and Power,(2) Diamer-Basha dam,(3) Golen Gol dam,(4) Water and Power Development Authority (WAPDA),(5) Kohala,(6) Dasu Buinji,(7) Munda Pattan,(8) Palas Valley,(9) Spat Gah,(10) Dasu dam,(11) Bunji hydro-project,(12) Phandar project,(13) Basho,(14) Keyal Khwar hydro project,(15) Lawi project on river Shishi,(16) Harpo project,(17) Thakot HPP on river Indus at Thakot,(18) Pattan project,(19) Yulb project on river Indus at Skardu,(20) Yugo on river Shyok at Skardu,(21)

●フィリッピン政府,環境順応企業に,ECC免許

フィリッピン政府は,エネルギー効率化,クリーン技術の採用を,環境遵守証明ECC(注21)と連動させて推進させる意向である。環境運用庁EMB(注22)は,環境遵守証明ECC(注21)の規則の改定を試みてきた。その行動計画によると,特別のEMB(注22)の第3地域(注23)を含むとしている。エネルギー機器の他,総合的な植林やゴミの分離を,ECC(注21)発行の条件にする政策を含むようだ。

この政策形成は,政府が2009年2月までに実施しようとしているグリーン化戦略GFIS-SCP(注24)の一部をなすものである。これは,第3地域(注23),即ち,パンパンガ(注25),バターン(注26),ザンバレス(注27)に位置する産業の環境運用とエネルギー効率化を改善するのが目的である。このプログラムの実施により,企業の運営,財務,温暖化ガス削減,エネルギー保全,などに貢献できる。

(注) (21) environmental compliance certificate (ECC),(22) Environmental Management Bureau (EMB),(23) Region 3,(24) Green Framework of Innovative Strategy on Sustainable Consumption and Productivity (GFIS-SCP),(25) Pampanga,(26) Bataan,(27) Zambales,(28)

参考資料

パキスタン

●090109A Pakistan, dailytimes
パキスタン政府,16プロジェクトで,25,270MW
Govt plans 16 projects for generating 25,270MW power
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2009%5C01%5C08%5Cstory_8-1-2009_pg5_3

フィリッピン

●090109B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン政府,環境順応企業に,ECC免許
ECC requires clean energy-efficient tech
http://www.mb.com.ph/BSNS20090108145117.html

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