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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
インドネシアのスラウエシ島沖でフェリーが転覆,200人以上が行方不明,悼しい。私が,この厳寒の中で可哀相に,と呟くと家族が,「本当に寒いでしょうね。」,と相づちを打っていた。スラウエシ島については,昨日のニュースで,オーストラリア企業がLNG基地を5億ドルで建設する,となっていた。経済成長から置いてけぼりを食っていた,このインドネシアの外島にも,開発の機運が生まれるか。
今日はベトナムの電気料金値上げの問題が,再び取り上げられている。ベトナムの報道記事は,どうも突っ込みが足りなくて物足りないが,政府の態度もこれまたはっきりしない。平均KWh当たり5セントだから,今のところは東南アジアで最低ではないか。それを,新鋭のガス火力発電所が建設されて,8セントぐらいで買わされるわけだから,どうにも矛盾に満ちたベトナムの電力経済である。
ベトナムは元々は,北の石炭火力と北のホアビン水力で,全国の電力需要を賄おうとして,北から南までの50万ボルト送電線を,1994年という早い時期に完成させている。石炭火力と旧ソ連の造った馬鹿でかい水力だから,元々の電気料金が安く,それが足かせとなって,電気料金を上げるのが非常に難しくなってきている。フーミー以来,新鋭のガス火力が南部に出現してからは,その高い原価に押されているわけだ。
このような状況は,タイも同じであり,もっと広げるならば,中国やインドも似たような環境にある。いずこも安い電気料金を原価に沿って上げて行くことに苦労している。そこから見ると,日本,フィリッピン,カンボジアは,元々資源がなく,最初から高い電気料金でスタートしているから,後はそれをどの様に下げて行くか,の問題。逆にベトナムなどは,どの様に上げて行くかと言う,対照的な現象が国の間に現れている。
フィリッピンのセブ系統に,韓国電力などが進めていた200MWの石炭火力拡張プロジェクトが動き出した。いつも電力料金や資産売却など,社会資本から見れば,ゼロサムゲームばかりやっていて,私も大分苛立っていたが,改革後,初めての電源開発計画だとも言える。200MW,5億ドル,というと随分高いが,流動床を取り入れて,燃料費は国内炭も焚けるようにして,努力している。
本文
●ベトナムの電気料金値上げ,認められる可能性
ベトナムの安い電気料金で,供給側が苦労している現状は,度々伝えられている。最近では,2009年1月7日付本HP(注1)で,「ベトナム,電気料金値上げ案,政府へ提出」,と題して,産業通商省MOIT(注2)のブイシュアンク副大臣(注3)は,電気料金値上げ案を政府に提出した,と発表している。二つの代替案からなっており,低いシナリオでは8.3%上げ,高いシナリオでは9%となっている。
これを追っかけた今日の記事だが,難航する電気料金値上げの現状を伝えている。産業通商省MOIT(注2)は二つの案を用意しているが,低い案は,前回と同じ8.3%上げだが,高い案では9.5%となっている。現状は,KWh当たり860ドン,約5セント相当,で,電力原価が家庭用販売単価より高くなっている。ブイシュアンク副大臣(注3)は,世界的な平均単価7セントから見て,この値上げ案は妥当だ,としている。
また彼は,将来の電力不足を考えると,高い電気料金は避けられない,と言っている。水力発電所は利益を上げているが,火力の原価を相殺できるところまでは行っていない,と。現状では,投資意欲を刺激しないし,将来確実に再び停電が発生することになる,と。この値上げ案は,2008年12月15日に政府に上げられており,産業通商省MOIT(注2)は,値上げの遅れを望んでいない,と。政府は,経済情勢を見て決めるだろう。
2009年のベトナム経済は複雑だ。計算を誤ると,経済への悪い影響を与えかねない。輸出が落ち込み,各企業とも生産を落としている。電気料金を決めるときに考えなければならない要素は,インフレ,為替レート,経済成長などである。原油価格落ち込みで,値上げ提案の見直しが必要かも知れない。原油は,2008年7月のバレル147ドルから,12月19日の33.87ドル,2004年2月10日のレベルまで落ちている。
電気料金値上げ案を審査するのは財務省(注4)であるが,発電原価と消費者の支払い能力のバランスを見るであろう。昨年,2008年は,産業にリードされて電力需要が16%の伸びを見せたが,発電能力は12%上がっただけである。その結果,中国からの買電を増やさざるを得ず,また輪番停電も実施した。EVN(注5)は,2015年までに,33,200MW建設のため,年間30億ドルが必要,と言っている。
EVN(注5)は,ずっと早い時期に,小売価格を,15~20%上げることを提案している。EVN(注5)は,送電線と,ハノイ電力(注6)とホーチミン電力(注7)を含むすべての配電部門を管理している。産業通商省MOIT(注2)は,EVN(注5)の提案より低い値上げ案を提案しているが,これは産業の生産が落ちることを懸念したものだ,と。
産業通商省MOIT(注2)は,もし値上げの決定が余りに遅れるようであれば,7%でも良いから,すぐにでも承認して欲しい,と急いでいる。今年,2009年の発電計画は,833億KWhで,これは経済成長6.5%を維持するための伸びである。ベトナムの電気料金は,タイと共に,旧来の石炭火力や水力発電に引っ張られて,なかなか値上げが厳しくなっている,電源開発への大きな足かせだ。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090107A.htm,(2) Ministry of Industry and Trade,(3) Deputy Minister of Industry and Trade Bui Xuan Khu,(4) Ministry of Finance, Vietnam,(5) national utility Electricity of Vietnam (EVN),(6) Hanoi Electricity Company,(7) Ho Chi Minh City Electricity Company,(8)
●フィリッピンのERC,セブの5発電所取り扱い承認
ゼナイダー総裁(注8)に率いられる電力規制委委員会ERC(注9)は,韓国電力KEPCO(注10)とSPC電力KSPC(注11)が,セブ(注12)の,200MW,ナガ石炭火力(注13)の電力の買い手(注14)である電力協同組合ECs(注15)との間に締結した5つの電力供給契約を承認した。5つは,CEBECOI(注16),CEBECOII(注17),NORECOI(注18),NORECOII(注19),VRESCO(注20),である。
ERC(注9)は,SPC電力KSPC(注11)の電力単価を,KWh当たり4.2511ペソに固定したが,これは,為替レート,燃料価格,国際価格指数などに連動したエスカレーション指数によって変動すると予測されている。詳しくERC(注9)の文書を見ると,引取量は年間で,CEBECOI(注16)が1,190億KWh,CEBECOII(注17)が1.66億KWh,NORECOI(注18)が0.034億KWh,NORECOII(注19)1.47,VRESCO(注20)0.098
ERC(注9)の文書を見ると,このナガ石炭火力(注13)の建設費は,520百万ドルであるが,以前のKSPC(注11)のEPC契約(注21)では,300百万ドルとなっている。KSPC(注11)はターンキー契約(注22)を,韓国企業(注23)と結んでいる。100MW機2機で,既設のナガ発電所敷地内に据え付けられる。KSPC(注11)は一部をNPC(注24)が引き取る計画であるが,ERC(注9)は,別契約で再承認,としている。
このナガ石炭火力(注13)は,排出ガス抑制のため,循環流動床燃焼技術CFBC(注25)を適用する。このCFBC(注25)の採用で,低品質の石炭仕様も可能で,国内炭を購入することが出来る。このナガ石炭火力(注13)の拡張により,2011年には,ビサヤス系統(注26)の拡充に繋がり,供給不足を補うことになる。フィリッピン,久々の新規発電所のニュースである。
(注) (8) Chairman Zenaida G. Cruz-Ducut,(9) Energy Regulatory Commission (ERC),(10) Korea Electric Power Corporation (KEPCO),(11) SPC Power Corp. (KSPC),(12) Cebu,(13) Naga coal-fired plant,(14) off-takers (buyers),(15) electric cooperatives (ECs),(16) Cebu I Electric Cooperative, Inc. (CEBECO I),(17) Cebu II Electric Cooperative, Inc. (CEBECO II),(18) Negros Oriental I Electric Cooperative, Inc. (NORECO I),(19) Negros Oriental II Electric Cooperative, Inc. (NORECO II),(20) VMC Rural Electric Service Cooperative, Inc. (VRESCO),(21) engineering, procurement and construction (EPC) contract,(22) turnkey contract,(23) Korean firm Doosan Heavy Industries & Construction Companies,(24) state-owned National Power Corporation,(25) circulating fluidized bed combustion (CFBC) technology,(26) Visayas grid,(27)
参考資料
ベトナム
●090112A Vietnam, thanhniennews
ベトナムの電気料金値上げ,認められる可能性
Power price proposal being considered
http://www.thanhniennews.com/business/?catid=2&newsid=45307
フィリッピン
●090112B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのERC,セブの5発電所取り扱い承認
ERC okays 5 Cebu power supply deals
http://www.mb.com.ph/BSNS20090111145336.html
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