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あれは1984年だったのだろうか,インドネシアのダム建設現場の宿舎で,テレビを見ながらフィリッピンの混乱を遠くから眺めていた。いよいよマルコスが,マラカニアン宮殿からヘリコプターで米軍基地に向かうシーンも覚えている。フィリッピンはもの凄い熱気の中にあって,テレビに登場するアキノ新大統領を見ながら,案外美人だね,などと無責任な会話をやっていた。マルコス末期は,フィリッピンは東南アジアの先進国だった。
600MWの,殆ど完成している原子力発電所を放棄するなど,今から考えるととんでもないことだが,あのアキノ大統領の熱気の中で,この5億ドルの施設の放棄に,殆どの人が異議を唱えなかった。我々でさへ,マルコスの造った物か,仕方がないな,と言う感情も入り込んできていた。この5億ドル近い借金を返すのに,2007年4月までかかったという,つい先日ではないか,放棄から23年かかったわけだ。
東南アジアでこれから始まろうとしている原子力開発,地球温暖化対策の決め手として,インドネシア,タイ,ベトナムなどが,初めての原子力発電所の建設に駒を進めている中で,今しか知らない人には,あのフィリッピンが1980年代初期に,既に原子力発電所を稼働寸前まで持っていっていたなど,想像も出来ないだろう。23年間,風雨に曝されてきた原子力発電設備を,真剣に再稼働させようとしている人々がいるわけである。
世界原子力機関IAEAの専門家達が,2008年の初めに現地を訪れている。私も記事は覚えているが,彼等の結論がどうであったか,よく知らなかったが,今日の記事によると,再稼働可能,との意見を,フィリッピン政府に挙げたようだ。これに対して,同型機の経験を持つ韓国電力KEPCOが,これを買って出て,再稼働開始に向けてロビー活動を行っているという。
私も,再稼働出来るならやるべきだ,と思うが,それにかかる費用は,おそらく最初の建設費,5億ドルを越すのではないか,新規発電所を造るのと同じぐらいいるだろう。カンボジアの和平後,プレクトノットダム再建の雰囲気の時,昔の日本の無償,水車発電機を倉庫で点検したら,その再稼働の費用は,最初の費用の倍ほどかかった,修理というものはそう言うものだ。
まあそれでも,そこに原子力発電所が立地していた,という事実はもの凄く貴重で,国民に何処に造るかまだ発表も出来ないタイやベトナムに比べれば,旧施設を一度ぶっ壊しても,バターンに原子力発電所を造る価値は,十分にあるだろう。今日の科学者グループは,慎重な意見を述べている,当然だろう,23年前の空き家の中で原子力発電所を動かそうと言うのだから。
でも今日の記事を良く読んでみると,科学者代表,AGHAM(注4)のタパン総裁(注5)は,電気料金を安くする運動のグループの主宰者でもあるらしいが,彼は,電源資産を売却に走る政府を厳しく批判しており,基本的には,電力民営化に対して強い反対意見を持っているようだ,私も同感であるが,特にこのバターンの原子力発電所を,韓国に渡すことに,大きな抵抗を持っているようだ。送電線が中国に売られ時の感情と同じように。
本文
●フィリッピンのバターン原子力,議会の動きに注意喚起
ヤフーの掲示板に,中途で放棄されたフィリッピンのバターン原子力発電所BNPP(注1)のことが,匿名で書かれている。1973年の石油危機でマルコス大統領が,2基のBNPP(注1)の建設を指示,バターン-1(621MWeのウエスティングハウス加圧水型原子炉 )の建設 が,1976年4.6億ドルで1984年完成,1984年,アキノ大統領の手で原発は燃料を装荷されず,2007年4月までかかって,支払い完了。
2008年前半,国際原子力機関IAEA(注2)の調査団が現地を訪問,その継続性について調査,IAEA(注2)の結論は,BNPP(注1)のバターン-1が更新されることができて,30年の間,経済的に,そして問題なく維持管理運転されることができる,政府に報告している。その後の動きでは,韓国電力KEPCO(注3)が,この作業を行うべく,フィリッピン政府と折衝している,と言う経緯のようだ。国内科学者の意見が記事なっている。
最近のニュースによると,バターン原子力発電所BNPP(注1)の再稼働について,安全,経済性,持続性,などについて議論が行われている。AGHAM(注4)の科学者グループが,議会や政治家達に,意志決定の前に,十分に疑問に答えるよう要求している。AGHAM(注4)のタパン総裁(注5)の意思表明だが,プラントの稼働に際しては,経済性,技術的問題点,社会的要素,を十分に解明せよ,としている。
パイプなども含めたすべての施設を点検しなければならないが,現在関心を持っているKEPCO(注3)の調査団だけでは十分でない,と。IAEA(注2)の調査団は,単なる商業的な関心だけで進めるのは危険,と忠告している。この原子力発電所,BNPP(注1)の再稼働は,予想される電力不足への対応と料金の抑制が意識されている。
タパン総裁(注5)は,議会とアロヨ政権が,電気事業法EPIRA(注6)の元で電源資産を民間へ売却しながら,なぜこのBNPP(注1)の再稼働の資金調達を考えているのか,理解できないと言っている。また,地球温暖化対策といいながら,原子燃料精製過程で炭酸ガス封じ込めを議論していることも,疑問の一つだ,と言っている。アロヨ大統領が売却している発電所は,十分に原子力発電の代替が出来るではないか,と。
フィリッピンは,水力,地熱,天然ガス,風力,太陽光など,多くのエネルギー資源を持ちながら,それらを民間のIPPに売却しようとしている,政府は原子力発電所BNPP(注1)までも,外国企業に売ろうとしているのか,とタパン総裁(注5)は疑問を呈している。タパン総裁(注5)はまた,電気料金運動のPOWER(注7)の主宰者でもあるが,EPIRA(注6)の改正問題にも言及している。
ちょっと過激だが,タパン総裁(注5)は,政府が真剣に電気料金を安くしようと思っているならば,付加価値税(注8)を止め,やっかいな買電契約PPA(注9)を破棄し,EPIRA(注6)も廃案にすべきだ,と言っている。要するに彼は,民営化を止めるべきだと言っているのか。また,供給力を心配しているならば,既設の改修にお金を回すべきだ,新規発電所の建設を,外国資本から取り上げろ,と息巻いている。
最後に本題の原子力発電所BNPP(注1)について,危険は付き物なので,その運転について,国内世論を良く見極め,経済,技術,社会的観点について,国民の立場から評価を行ってくれ,と提言している。なお,BNPP(注1)の経緯についてまとめると,1960年代に研究開始,1976年に建設開始,1985年に完成,1986年に操業停止,となっている。
(注) (1) Bataan Nuclear Power Plant (BNPP),(2) International Atomic Energy Agency (IAEA),(3) KEPCO,(4) AGHAM or the Samahan ng Nagtataguyod ng Agham at Teknolohiya para sa Sambayanan,(5) Dr. Giovanni Tapang, AGHAM National Chairperson,(6) Electric Power Industry Reform Act (EPIRA),(7) POWER or People Opposed to Warrantless Electricity Rates,(8) value-added tax,(9) PPA contract,(10)
●フィリッピン,マニラ配電の社長人事,イエスス氏
先週のフランシスコ社長(注13)の退任に続いて,マニラ電力MERALCO(注10)の役員人事について,2009年1月26日の取締役会で,社長などの選任が行われた。社長に選ばれたのは,下馬評通り,ロペス財閥(注11)の技術的幹部,イエスス氏(注12)で,2月1日に就任する。イエスス氏(注12)は,マニラ北鉄道MNTC(注14)の社長である。
また,27%の株式取得に成功したサンミゲールSMC(注15)からは,4人が役員会入りした。コンジュアンコSMC会長(注16),アンSMC社長(注17),メンドーサ元法務長官(注18),カルデロン氏(注19)の4氏である。SMC(注15)の株式27%は,政府系保険機構GSIS(注20)から買い取ったもである。ロペス会長(注21)は,十分な経験を持つ役員達で,マニラ電力MERALCO(注10)の発展が期待される,と述べた。
(注) (10) Manila Electric Company (Meralco),(11) Lopez group,(12) Jose "Ping" de Jesus as its new president and chief operating officer,(13) Jesus P. Francisco,(14) Manila North Tollways Corporation (MNTC),(15) San Miguel Corporation (SMC),(16) SMC Chairman Ambassador Eduardo CojuangcoJr.,(17) SMC President Ramon Ang,elected Vice Chairman,(18) former Minister of Justice Estelito Mendoza,(19) Aurora Calderon,(20) Government Service Insurance System (GSIS),(21) Meralco chairman and chief executive officer Manuel M. Lopez,(22)
参考資料
フィリッピン
●090128A Philippines, pinoypress
フィリッピンのバターン原子力,議会の動きに注意喚起
Scientists Caution Solons on Move to Reopen Bataan Nuclear Plant
http://www.pinoypress.net/2009/01/27/scientists-caution-solons-on-move-to-reopen-nuclear-energy-plant/
●090128B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,マニラ配電の社長人事,イエスス氏
As SMC takes 4 board seats De Jesus named Meralco President
http://www.mb.com.ph/BSNS20090127146659.html
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