2009年1月14日水曜日

インドネシアのガス田でエクソンと紛争

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

中国と日本の間で東シナ海のガス田が再び揉めている。欧州では,ロシア,ウクライナ,EUの間で,ガスパイプライン紛争が起こっている。イランのガスをパイプラインでインドに持ってくる話は,潰れたようだ。ミャンマーのガスは,中国が持って行くが,インドがこれに抵抗を示している。世界の彼方此方で,下り坂になった原油生産に変わって,天然ガスが問題になってくる。

今日のインドネシアのリアウ諸島,その最北端のナツナブロックで,米国多国籍企業エクソンモビルとインドネシア政府が,一触即発の状態にある。私自身は余り知らなかったが,このナツナブロックというのは,地図で見るとインドネシア領海の最北端,マレーシア本土とサラワクを遮る形で突きだしている。ここがアジア最大の46兆立方フィートの埋蔵を誇るナツナだ。

インドネシアの天然ガスの全体像は,JOGMEやNEDOが詳しいので,一度勉強しておきます。それにしても,エクソンとインドネシアの関係がこのように悪化しているのは問題だ。基本的には,インドネシアの資源国粋主義が,資源が押し詰まり,且つインドネシアの実力が上がって来るに従って突出してくる。プルタミナに主導権をとらせよ,と言うことなのだ。中国の影はないのか。カラ副大統領は,来年の大統領に打って出る。

今日のビジネスアイ(注50)は,「新成長産業,温暖化防止技術,CO2分離,回収を“ドル箱”に」,と論陣を張っている。オバマ大統領候補の言うところだが,日本はとにかく,米国には外交問題が山積で,果たして温暖化問題に集中できるのだろうか,と心配して上げる。東芝のCCS実証プラントの建設に着工,8月にも実証試験を開始,三菱重工業が関西電力と共同開発したCO2回収装置が先行,とか。

(50) http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200901140017a.nwc

本文
●米国企業シェブロンがフィリッピンの地熱政策を支援

フィリッピンは,再生可能エネルギー法を成立させて,地熱,水力を中心に,エネルギー供給の国産化を進めようとしているが,そこに力強い助っ人,と言うか,割り込んできたのが,地熱発電を中心に置いた米国エネルギー企業シェブロンの協力申し出である。エネルギー省DOE(注1)の国家エネルギー効率化保全計画NEECP(注2)に,シェブロン地熱CGPHI(注3)が支援する内容で,約束(注4)に両者が署名した。

DOE(注1)の記者発表によると,CGPHI(注3)のイー社長(注5)が個人的にレイエス長官(注6)に対して,CGPHI(注3)がNEECP(注2)計画と密接に関連づけて政策を展開する,と約束したものである。実際のアプローチは,その企業内でNEECP(注2)計画の示す項目を実行すると言うことで,CGPHI(注3)のエネルギー運用計画を,ティウイ(注7)とマキリン-バナホー(注8)の地熱発電所内で実施するというもの。

また,CGPHI(注3)は,DOE(注1)のエネルギー利用運用局EUMB-EECD(注9)の事務所や業務のエネルギー使用状況の監査に協力するよう努力する。レイエス長官(注6)は,このCGPHI(注3)のエネルギー効率化及び保全計画への協力申し出を,他の企業が追随してくれることを期待している。EUMB-EECD(注9)は,監査訓練,監査機器,最善の手段,消費モニタリング,などについて協力をして行く。

その他,CGPHI(注3)は,昨年来アロヨ大統領以下が実施しているスイッチオフ運動(注10),白熱灯(注11)を蛍光灯(注12)への変更運動,なども約束した。また,車の使用の制限などにも言及した。何か地熱発電を通じての大きな話かと思ったら,何となく甘っちょろい省エネルギー精神論を聞かされたような気持ちである。フィリッピンの官庁は,このような雰囲気が一般的だ。

(注) (1) Department of Energy (DoE),(2) National Energy Efficiency and Conservation Program (NEECP),(3) US firm Chevron Geothermal Philippines Holdings (CGPHI),(4) ‘pledge of commitment’,(5) CGPHI president and general manager Antonio F. Yee,(6) Energy Secretary Angelo T. Reyes,(7) Tiwi geothermal facilities in Albay,(8) Makiling-Banahaw geothermal facilities in Batangas-Laguna provinces,(9) Energy Utilization and Management Bureau-Energy Efficiency and Conservation Division (EUMB-EECD),(10) ‘Switch Campaign’,(11) incandescent bulbs,(12) compact fluorescent (CFLs),(13)

●インド政府,発電プロジェクトに対する石炭供給基準緩和

インドも中国もそうだが,電力と石炭の管轄が分かれているために,常に発電所への石炭供給で問題が起こってくる。中国はこれを統一する方向にあるが,インドはそう簡単にはいかないようだ。インド中央政府は,民間の炭坑の基準について規制を緩和している。それは,発電企業があるプロジェクトの余剰石炭を他のプロジェクトに回すことが出来る,と言うことである。

ある政府高官は,余剰石炭を抱えた発電企業が石炭省(注13)に相談した場合は,その許可はケースによる,と話している。石炭移動については,許可が出る前に,石炭省(注13)によって妥当性が検討される。許可が出るのは,電力料金ベースで入札したプロジェクト(注14)のみである。しかし規則上,これが出来るのは政府所有の事業体のみである。民間に適用するためには,石炭法(注1)の改正が必要である。

現在の規則では,自家用炭坑での余剰は中央政府に引き渡す必要があり,それはインド石炭(注16)がそれを配布することになる。臨時的に石炭省(注13)が許可する場合もある。最近の閣僚会議の決定で,リライアンス(注17)がササン(注18)自家用炭坑の余剰をマディヤプラデシュ州(注19)のチットランギ(注20)に移す決定は,炭坑の運用開始以前に許可されて紛争を巻きおこした。タタ(注21)はデリー高裁に持ち込んだ。

ある官僚は,余った石炭を他へ回すのは,経済の観点から当然で,既存の規則で処理できる,と言っている。計画委員会(注22)のメンバーは,石炭省(注13)の解釈は,多くのプロジェクトに対する予兆となるが,余剰石炭を他のプロジェクトに自由に持っていける,と言うことは,料金ベースの入札で,より競争性を増し,電気料金の下げに繋がり,需要家のを助けることに繋がる,と言っている。

現在までに,198の自家用炭坑が石炭省(注13)に登録されているが,運用を開始しているのは21だけである。自家用炭坑は,需要と供給の不一致をもたらし,国の石炭生産を減退させる。計画委員会(注22)によると,2012年の石炭不足は,6000万トンと言っている。

(注) (13) coal ministry,(14) tariff-based bidding,(15) Coal Mines (Nationalisation) Act, 1973,(16) Coal India,(17) Reliance Power,(18) Sasan captive mines,(19) Madhya Pradesh,(20) Chitrangi,(21) Tata Power,(22) Planning Commission,(23)

●インド,カルナタカ州,4,000MWなど,NTPCとMOU

インドの電源開発への努力が続く,ただし石炭火力だ。ラメッシュが登場する。この月曜日,2009年1月12日,カルナタカ州(注23)政府は,NTPC(注25)とBHEL(注26)と二つのMOUにサイン,クディギ(注24)の4,000MW火力,ライチュール(注27)のエドラプール(注28)及びイェルマルス(注29)の2,400MW火力,更に,NTPC(注25)の6カ所に上る総計500MWの風力プロジェクトである。

署名式はバンガロール(注32)で行われ,中央政府からデブ重工業相(注30)とラメッシュ電力副大臣(注31)が出席,イエディウラッパ州政府首相(注33)が挨拶,チャティスガール(注34)の1,400MW火力を入れて合計5,000MWが新規に付加される2012年には,電力不足は解消するだろう,と語った。ビジャプール(注35)から30km離れたクディギ(注24)に,カルナタカ電力KPCKL(注36)が2,000億ルピー投入。

このクディギ(注24)火力は,800MW3台と800MW2台の2期に分けられる。最初の1号機は2012年3月運転開始の予定である。二つ目のMOUは,カルナタカ電力PCKL(注36)とBHEL(注26)によるもので,既設ライチュール発電所(注37)の傍の,エドラプール(注28)に660MW火力,イェルマルス(注29)に800MW2台を建設する。特にデブ重工業相(注30)は,BHEL(注26)の参加が画期的,と語った。

このJVは,BHEL(注26)とKPCKL(注36)が,それぞれ26%,IDFC(注38)が残りの48%の資本を出資する。完成後,BHEL(注26)はJVから脱退できるが,電力は州内で供給され,電気料金はカルナタカ規制委員会KERC(注39)で決定される。非常に重要なプロジェクトは,500MWの風力発電所で,250億ルピーの建設費である。

(注) (23) Karnataka,(24) Kudigi (Bijapur district),(25) NTPC,(26) Bharat Heavy Electricals (Bhel),(27) Raichur,(28) Edlapur,(29) Yermarus,(30) Union heavy industry and public enterprises minister Sontosh Mohan Dev,(31) Union minister of state for power and commerce Jairam Ramesh,(32) Bangalore,(33) Karnataka CM BS Yeddyurappa,(34) Chattisgarh,(35) Bijapur,(36) Power Company of Karnataka (PCKL),(37) Raichur thermal power station (RTPS),(38) IDFC,(39) Karnataka Energy Regulatory Commission (KERC),(40)

●インドネシアのリアウ,エクソンのガス田権利は4年前に失効

こういう問題があるとは知らなかった。このリアウのナツナガス田が何処にあるのか,調べてみて少し驚いた。このような北方までインドネシア領海があるとは。そうしてその領海の北縁に,東南アジア最大のガスのポテンシャルがあるとは。さて,米国企業エクソンモビル(注40)は,最近,2008年12月4日付本HP(注41)にもあるとおり,セプブロック(注42)で活躍している。

そのエクソンモビル(注40)は,4年越しのインドネシア政府との紛争に巻き込まれてきた。月曜日,2009年1月12日,ナツナブロック(注43)に於けるエクソンモビル(注40)の探査権は,2005年に失効していた,とエクソンモビル(注40)の怒りを買う発表を行った。エネルギー省のプルノモ大臣(注44)は,何とかならないかと検討したがどうしても駄目だった,と説明した。

リアウ諸島(注45)のナツナブロック(注43)は,48兆立方フィートの埋蔵量を持ち,アジア最大と言われている。エクソン(注40)の言い分は,昨年末,2008年末,開発計画POD(注46)を政府に提出した時点で,契約は延長になっている,としている。2009年1月9日に,スポークスマンを通じて主張している。インドネシア政府の立場は,このブロックでプルタミナ(注47)に出来るだけ自由裁量権を与えよう,と言うものだ。

昨年,2008年の閣議決定は,プルタミナ(注47)主導で,開発協力者を求めるよう,決定している。それは,投資額が520億ドルに達するからである。問題化する前,エクソン(注40)が74%,プルタミナ(注47)が26%の資本比率であった。プルタミナ(注47)は,その主導権を主張し続けてきたが,協力候補の中にエクソン(注40)も入っているが,複数の協力企業が必要とされている。

プルタミナ(注47)のアリ総裁(注48)は,エクソン(注40)は8候補の中の一つである,と明言しているし,国営ガス企業BPミガス(注49)のプリヨノ総裁(注50)は,エクソン(注40)の権利は失効している,と言っている。プルノモ大臣は,政府の判断を今週末に示す,と言っている。インドネシア政府は,大規模油田セプブロック(注42)で,エクソン(注40)と4年間の紛争の歴史がある。

エクソン(注40)は,この中部ジャワと東ジャワの境界にある大油田の最終勝者であった。インドネシア政府は,このエクソン(注40)のナツナブロック(注43)の権利喪失問題は,国際調停に持ち出される危険性がある。しかし,この大規模ガス田については,少し勉強する必要がある。

(注) (40) US energy company ExxonMobil,(41) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081204E.htm,(42) Cepu block,(43) Natuna-D Alpha block,(44) Energy and Mineral Resources Ministry Purnomo Yusgiantoro,(45) Riau Islands,(46) plans of development (POD),(47) state oil and gas company PT Pertamina,(48) Pertamina president director Ari H. Soemarno,(49) Upstream oil and gas regulator BPMigas,(50)

参考資料

フィリッピン

●090114A Philippines, Manila Bulletin
米国企業シェブロンがフィリッピンの地熱政策を支援
US firm Chevron Geothermal commits to support gov’t energy efficiency plan
http://www.mb.com.ph/BSNS20090113145509.html

インド

●090114B India, Economic Times
インド政府,発電プロジェクトに対する石炭供給基準緩和
Power projects will get to share captive coal
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power_projects_will_get_to_share_captive_coal/articleshow/3970527.cms
●090114C India, Economic Times
インド,カルナタカ州,4,000MWなど,NTPCとMOU
Karnataka plugs into NTPC, BHEL for thermal plant JVs
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Karnataka_plugs_into_NTPC_BHEL_for_thermal_plant_JVs/articleshow/3970522.cms

インドネシア

●090114D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのセプ,エクソンのガス田権利は4年前に失効
Exxon’s rights in Natuna terminated since 2005 Govt
http://www.thejakartapost.com/news/2009/01/13/exxon’s-rights-natuna-terminated-2005-govt.html

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