【日刊 アジアのエネルギー最前線】フィリッピンの電力改革に黄色信号
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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
今日の日経の社説は,「排出削減目標の内向き議論の危うさ」,というタイトルであるが,最後の方に,「国際交渉の場では国別総量目標にはふさわしくないと何回も明確に否定されたセクターごとの削減可能量の積み上げが,いまだに日本の選択肢として検討対象になっているのは,不可解というしかない。」,と書かれている。セクター毎,と国別との対立,と読む。
私は日本のセクター別の考え方の方が正しいと思う。国別に集まっても,何もまとまらない,それは国という単位が,地球温暖化とは何の関係もないからだ。オリンピックでも,必ず弱い国と強い国は同じように決勝にでなければならない,としたら,オリンピックにならないだろう。今の日本の癒し教育みたいになってしまって,何の意味もなくなるだろう。
国別の競争は止めて,石油,電力,鉄鋼,鉄道,自動車,などが個別に集まって,自分たちの分野で何をやればよいか,技術的に議論すべきだろう。それを総合的にまとめる主体はいるが,セクター別が本当だと思う。だから,今日の日経の激しい批判は,私はおかしいと思う。どうせまとまらないのだから,あくまで日本政府は,今の考え方を貫くべきだ。
フィリッピンは,エネルギー問題で,どうしてこのような政治的な話しかないのであろう。追っかける方も嫌になってしまう。300MWのカラカ石炭火力の話である。この発電所は,1984年頃,私たちがインドネシアでダムを造っていた頃,ニュージェックのメンバーがその建設の関わった,古い発電所である。まだ情報が確かでないが,これを買い取ったスエズエナージが,どうも夜逃げをしたような感じである。
元々,フィリッピンの電源資産売却は,電源の分散による競争市場の創出,と言う高い理想で出発したはずだが,売りに出される品物は傷物が多く,アンボクラオの水力でも,砂で埋まってしまって動かないものを修理費も含めて売却,BROOTとか言って,まず改修してから使ってくれ,というもので,壊れた時計を店先で売っている時計屋さん,と言う感じなのだ。日本企業の買ったCBKプロジェクトも,修理込みである。
インドで,アンデラプラデッシュで配電の民営化を進めるときに,まずやらなければならなかったことは,売却する前に配電網の物理的修理であった。それもやらないで資産売却を行うフィリッピンは,少し電力への真剣度が足りないと思う。その辺のゴルフ道具の中古屋の感覚しかないのではないか。中国に売り飛ばした送電網も,改修はこれからである。全くいい加減。何とか言ってやって下さい。
本文
●スリランカ,大統領,全発電所の完成を指示
私としては久しぶりのスリランカである。日本政府や私の友人達がスリランカについては頑張っていたが,中国の石炭火力が入ってきてからは,少し力が抜けた感じ。でも,今日の報道でも,反政府軍のLTTEを追いつめて,政府がやっと全土を制圧できるか,と言うところまで来ている。あの内戦状態の中を,良く日本政府が支えてきたと思う。日本とスリランカの特殊な関係がそうさせていたのだろうが。今日の記事。
ラジャパクセ大統領(注1)は,電力エネルギー省(注2)に対して,すべての新規電源は計画通り完成させるよう,指示した。大統領(注1)の指示は,現在工事中の電源プロジェクトの進捗を検討する会議が,トリーズ寺院(注3)で行われた席上で,行われた。ケラワラピティヤ発電所(注4)の完成で,170MWが国家送電網に投入されたところである。このプロジェクトの継続で,更に,85MWが追加される予定である。
現在工事中のノロチチョライ石炭火力(注6)は,第1期工事が,2010年及び2011年に完成し,その時点で,300MWが発電する。更に,第2期,第3期工事により,400MWが追加される予定である。アッパーコトマレ水力(注5),150MWも投入される予定である。また,電力エネルギー省(注2)は,150に上るミニ発電所の推進について,承認を与えている。
大統領(注1)は,多くの発電所が,計画では既に運転を開始していなければならないのに,いろいろな政治的事情で遅れてきた,しかし,ノロチチョライ石炭火力(注5)と,アッパーコトマレ水力(注5)は,現在の政府の強い決断の元で,軌道に乗ったものである,と語った。
(注) (1) President Rajapakse,(2) Ministry of Power and Energy,(3) Temple Trees,(4) Kerawalapitiya power plant,source: colombo page,(5) Upper Kotmale Hydropower Plant,flickr.com/photos/shehal/855130096,(6) Norochcholai thermal power plant,(7)
●フィリッピン,マニラ配電,サンミゲールの役員まだ
マニラ配電MERLCO(注7)の役員人事,2009年1月19日のフランシスコ社長(注8)の辞任,サンミゲールSMC(注9)の株式取得,などを背景に,憶測が流れている。1月26日にも,役員会が開かれる模様である。電力分割民営化の中,唯一巨大企業として生き残っているMERLCO(注7)だけに,その電力セクターへの影響は大きい。
MERLCO(注7)は,率直に,来週の役員会までは,人事については何も分からない,としている。ある高い情報筋では,26日の役員会で,SMC(注9)から,4人の役員が選任される,という情報を流している。フランシスコ社長(注8)の後任には,2つのグループがそれぞれ候補者を立てて争う形勢である。ロペスグループ(注10)の候補はイエスス氏(注11)であり,SMC(注9)は電力のベテランを候補にする,とされている。
SMC(注9)は,MERLCO(注7)の経営を行うために,社長を自派から立てるものと見られている。SMC(注9)の代表が役員に入ると言うことは,今まで占めていた政府系GSIS(注12)の席を,SMC(注9)に渡すということである。SMC(注9)からの社長候補は,コンユアンコSMC会長(注13)か,メンドサSMC社長(注14)と言われている。SMC(注9)は,2008年11月,GSIS(注12)の株取得,27%持ち分となっている。
(注) (7) Manila Electric Company (Meralco),(8) Jesus "Chito" P. Francisco,(9) San Miguel Corporation (SMC),(10) Lopez’s group,(11) Jose "Ping" de Jesus,(12) Government Service Insurance System,(13) SMC chairman Eduardo Cojuangco,(14) SMC president Ramon Ang and Director Estelito Mendoza,(15)
●フィリッピン,スエズ,カラカ火力から手を引く
ふと目に止まった記事だが,これはフィリッピンの電力改革を根底から揺すぶる大事件ですね。高い情報筋によると,仏ベルギー籍企業スエズエナージ(注15)は,マニラ事務所を閉鎖し,その結果として,787百万ドルのカラカ火力案件(注16)から手を引いてしまったようだ。今週に始まったこの縮小活動は,2,3ヶ月かけて,その義務や事務所閉鎖を実施するはずであった,と実業界の情報筋が語っている。
スエズエナージ(注15)がマニラで雇用した人員は,各国の事務所へ分散配置されるはず,とされている。PSALM(注17)は,カラカ火力案件(注16)の行く末についても明確な声明を出していない,スエズエナージ(注15)がマニラ事務所を閉鎖したことは,認めているようだ。もしスエズエナージ(注15)が手を引く場合は,PSALM(注17)は,14百万ドルの契約履行保証金(注18)を剥奪することになる。
スエズエナージ(注15)の地元企業エメラルドエナージ(注19)がカラカ火力案件(注16)の資金調達を確認した時点で,WESM(注20)で活動するための何人かのスタッフを雇用しており,この人員はの多くは,PSALM(注17)と既に連関し動いている。総合すると,このNPC(注21)の中古の発電所の入札で,買電価格をKWh0.37ペソ調整,4.26ペソとして,昨年12月,ERC(注22)がカラカ火力案件(注16)の取引を決定している。
しかしその取引の直後,スエズエナージ(注15)は,カラカ火力案件(注16)の発電所の状態について,NPC(注21)が,100%国内産セミララ石炭(注23)を使ってきたため,状況が極めて悪い,と述べていた。PSALM(注17)とスエズエナージ(注15)は,270日間,最終引き渡しまで調整を行うこととなっていた。一般に,一定期間内に代金支払いを行わなければならないが,カラカ火力案件(注16)は特別扱いであった。
実際,カラカ火力案件(注16)は,2008年8月がその支払日であったが,6ヶ月以上遅れていた。入札に付されたのは,2007年10月で,契約は,2007年11月9日まで有効のはずだった。発電所の引き取りは,「そのままの状態(注24)」,が原則であるが,発電機の改修のための現金を渡していた。このカラカ火力案件(注16)の事件は,フィリッピンの民営化に暗い影を投げかけている。
(注) (15) Suez Energy,(16) Calaca deal,(17) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(18) performance bond,(19) Emerald Energy Corporation,(20) Wholesale Electricity Spot Market,(21) National Power Corporation (NPC),(22) Energy Regulatory Commission (ERC),(23) Semirara coal,(24) "as is, where is",(25)
●ネパールの水力開発には外国資本が必須
ネパールは大きな水力包蔵を持ちながら,外国直接投資を有効に利用できていないので,問題だ,と言う趣旨で,長文の記事が書かれているが,内容は余り変わった提案は含まれていない。包蔵水力は,83,000MWで,経済的開発可能量は,43,000MWである。開発されたのは,僅かに,561MWである。ここでこの長い記事が言っている部分で,ブータンを見てみろ,と言う言葉がある。
ブータンは,二つの大規模水力,合計1,380MWを開発することによって,一人当たりのGDPを760ドルから一気に1,320ドルに上げている,と言うことだ。私の見るところだが,果たしてブータンと同じことが,ネパール人に出来るか,と聞いてみたい。ブータンは,外交権,軍事権,そのすべてをインドに与えて,ここまで来たのである。
ネパールは,インドと反目しあって今日まで来てしまった。ネパール人が,ブータン人と同じことをして,インドにすべての外交権を預ければ,瞬く間にネパールの水力は開発されるであろう。でもネパール人にはそれが出来ない。私だって,ネパールの人に,ブータン人と同じようにやりなさい,などと言うことは出来ない。地球とは難しいものである。長文,誰か読んでみて下さい。
参考資料
スリランカ
●090126A Srilanka, itn.lk/news
スリランカ,大統領,全発電所の完成を指示
President instructs to complete work on power plants
http://www.itn.lk/news_02_20090124.html
フィリッピン
●090126B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,マニラ配電,サンミゲールの役員まだ
Meralco says it’s ‘unaware’ of SMC board entry
http://www.mb.com.ph/BSNS20090125146515.html
●090126C Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,スエズ,カラカ火力から手を引く
Calaca buyer Suez Energy gives up deal, closes office
http://www.mb.com.ph/BSNS20090125146511.html
ネパール
●090126D Nepal, nepalmonitor
ネパールの水力開発には外国資本が必須
FDI in Nepal’s Hydropower Sector: A Focus on the Product
http://www.nepalmonitor.com/2009/01/fdi_in_nepals_hydropower.html
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