2008年10月9日木曜日

バングラデシュのエネルギー長期見通し

HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーの最前線もあり。
http://my.reset.jp/~adachihayao/index.htm

「バングラデシュのエネルギー長期見通し」,本題に触れる前に,どうも気になる,「知的送電網」,スマートグリッドだが,我々の世界でダムの水の計画をするときに,「神様運転」,と言うのがある。過去20年ぐらいの雨の降り方をそのまま運転に取り入れる方法で,明日の雨も分かっているから,最適な運転が可能である。知的送電網が出来ると,水力も風力も太陽光も,場所と時間が分かるから,最適運用が出来るのですかね。送配電線の末端まで,ブロードバンドの神経が行き亘っている。

さて,今日のバングラデシュの記事は,地質の専門家が書いた,とされているが,短い文章で,バングラデシュのすべての電力問題を総括していて,実に要領がよい。我々もこのような文章を書きたいものだと思う。彼は地質だから,おそらく石炭の調査をやっていて,煮え切らない,踏ん切りの悪いエネルギー官僚に業を煮やして,この記事を書いたのだろう。それにしては冷静。

バングラデシュは,全電力設備,5,245MWの82%が天然ガスを燃料としている。天然ガスの確認推定埋蔵量は,20.63TCF(兆立方フィート)であり,既に7.42TCFは消費済みで,残りは,2007年12月時点で,13.21TCFである。低成長と考えても,2020年までに必要なガスは,9.9~17.4TCFで,もう既に政府はガス使用制限に踏み切っており,先が見えている。

最近になって,国の北西部で,30億トンに上ると見られる石炭の包蔵が,発見された。5つの炭田候補のうち2つ,Barapukuria and Phulbari ,は調査が行われ,この炭田の傍で280MWの石炭火力が,既に建設された。全体の設備の5%である。今は Barapukuria Underground Coal Mine で年百万トンの生産が見込まれている。ところが,他の炭田については,資金の問題もあるが,一向に調査への踏切が悪い,と言うのである。

ここからは私の推定であるが,パキスタンなどは今日の記事にあるように,直ちに中国の支援が得られるが,バングラデシュは政治的にその立場にない。インドが助けてくれないか,とも思うが,インドとバングラデシュの関係は,誠に微妙である。ミャンマー沖合のガスで,インドはパイプラインを計画しているが,バングラデシュの領内を避けてルートを検討している。国内ガスは安いので,国際価格に巻き込まれるパイプラインは,バングラデシュにとっても,当面痛し痒しである。

バングラデシュのエネルギー問題は,国際的に孤立している。津波にやられ,毎年洪水に見舞われて,経済的に疲弊したバングラデシュ。水力がほとんどないので,私も余り取り上げていないので可哀相。もう石炭火力は中国に任す,と決めた日本やJパワーであるが,この記事を読んで,もう一踏ん張り,バングラデシュの石炭にチャレンジして上げませんか。

本文

●バングラデシュ,エネルギーのシナリオを改訂せよ

この記事を書いた人は,バングラデシュの地質専門家とある。要となる数字を確実に抑えて,しかも網羅的に議論を進め,これからのバングラデシュが経済成長を遂げるためには,石炭しかない,と言い切っている。天然ガスのバングラデシュで理解してきた我々であるが,勿論,天然ガスに限界のあることは知っていた。しかし,これほど確実に,バングラデシュの将来を説いた人は,彼以外いないのではないか。

まず彼は,経済成長は電力なしでは成し遂げられない,と言う点から始めている。にもかかわらず,政策担当者や専門家は一向に行動を起こす気配がない,と嘆いている。彼等の優柔不断と資金不足が,今日のバングラデシュの電力危機を招いている。バングラデシュの電力は,中枢神経を失っている,と厳しく非難している。

電力の現状,天然ガスが82%を占め,残りが石油9%,水力が4%,石炭が5%である。組織は,BPDBが電力の大本締めで,ダッカ首都圏とその周辺の配電をDPCDとDESCOが担当,Khulna 周辺を WZPDCL,農村地帯をREBが担当している。設備出力は,5,245MW,このうち稼働可能は,3,400MW,ピーク需要は4,200MW,電力不足は,800MW。実に簡潔に表現している。

開発であるが,この7年間で開発されたのは,80MWの Tongi power plant のみで,しかもガス不足で停まっている。電化の状況は,現在電気の供給を受けているのは,人口の42.09%,2006年度に於ける一人当たりの電力消費は,169.92KWh,マスタープランによると,2020年までに全バングラデシュを電化する,としているが,完全に不可能である。

さて,頼みのガスだが,確認済みと可能性を含めて,23のガス田で,20.63TCF(兆立方フィート),そのうち既に7.42TCFは消費済みである。残りのガスポテンシャルは,2007年12月時点で,13.21TCFとなっている。2000年から2050年までに必要な天然ガスは,3%成長で40~44TCF,これまでの延長で64~69TCFなどである。低成長で2020年までに必要な量は,9.9~17.4TCFである。もう既に政府はガス使用制限に踏み切っており,先が見えている。

石炭について,北西部で5つの炭田から30億トンが発見されている。二つの炭田,Barapukuria and Phulbari では調査が行われたが,他の炭田ではまだ調査が不十分で,更なる現地調査が急がれている。今は Barapukuria Underground Coal Mine で年百万トンの生産が見込まれている。この炭田の傍で280MWの石炭火力が,既に建設された。全体の5%である。

Dr M Tamim, special assistant to the Adviser for the Ministry of Power, Energy and Mineral Resources は,もうガスの発電所は尽きた,と言っている。石炭についての長い長い議論は,もう終わりにして欲しい。もう今が決断の次期であり,確実な石炭探査とその活用の実施の段階と考えよ。

●中国,Huaneng,原子力開発を増加へ

Huaneng というのは,華能集団公司のことですかね,こう言うときに本当に中国語の英語は困ってしまう。上海拠点のこの電力会社は,中国債ぢであるが,昨日,山東省に最初の原子力発電所建設で合意した。参加するメーカーなど技術陣は,Tsinghua University, China Nuclear Engineering Group Co, Shanghai Electric and Harbin Power Equipment Corp. である。

The Huaneng nuclear plant,,は Rongcheng 市の Shidao Bay で,高温ガス冷却方式 high-temperature, gas-cooled technology,中国最初の発電所になる。出力200MWで,2009年9月着工,2013年運転開始の予定である。この技術の分野では,中国,米国,南アフリカが主導していると見られている。より安全で設計が簡単と言われている。

中国の原子力開発計画は2005年に策定されたが,それによると,2020年で40,000MWを開発するとされている。その時点で4%に相当する。しかし,現状の成長速度を考えて,2020年に5%の目標に調整している。現状設備は,11カ所で,9,080MWである。中央によると,3カ所に開発拠点を進めており,それは Qinshan in Zhejiang province, Daya Bay in Guangdong province and Tianwan in Jiangsu province. である。

Guodian and China Power Investment など他の各社も,クリーンエネルギーの立場から,原子力を推進している。この華能集団公司も,原子力の他,水力,風力,バイオマスなど,2010年までにクリーンエネルギー13,000MWに到達する。その他,Hainan, Guangdong, Jilin and Shandong provinces, Inner Mongolia autonomous region でも電源計画を進めている。風力の現有設備は1,300MWである。


●パキスタン,WAPDA総裁,中国調査団と共同プロジェクトで協議

パキスタンと中国の電源開発協力は既報である。Water and Power Development Authority (WAPDA) Chairman Shakil Durrani が中国大使と会って,具体的な計画について話し合った。Diamer-Basha Dam, Neelum-Jhelum, Kohala and Bunji hydropower projects などが話題に上がった。WAPDA総裁によると,中国の技術陣の受け入れや,資金についても話し合われたようだ。

Reference

Pakistan

●081008A Pakistan, The Post
WAPDA総裁,中国調査団と共同プロジェクトで協議
WAPDA chairman, Chinese envoy discuss joint projects
http://thepost.com.pk/CityNewsT.aspx?dtlid=186421&catid=3

China

●081008B China, chinadaily
Huaneng,原子力開発を増加へ
Huaneng gears up nuke plantBy Wan Zhihong (China Daily)
http://www.chinadaily.com.cn/bizchina/2008-10/08/content_7086609.htm
Bangladesh

●081008C Bangladesh, energybangla
バングラデシュ,エネルギーのシナリオを改訂へ
Revisiting the Energy Scenario in Bangladesh
http://energybangla.com/index.php?mod=article&cat=SomethingtoSay&article=1055

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