HPは下記ドメインです。アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーの最前線もあり。http://my.reset.jp/~adachihayao/index.htm
「パキスタン大統領の北京挑戦」,OPECは,原油がバレル70ドルを切ったことで,緊急にOPEC会議を招集し,日200万トンから300万トンの減産に踏み切る可能性を示唆している。2008年10月17日まで4日間のパキスタン大統領の北京訪問だが,世界が注視している両国の原子力協定については,共同声明では触れていないが,イスラマバードにいるパキスタンのクレシ外相が,中国政府がパキスタンの原子力2基建設に協力する計画を持っている,と記者団に説明している。
中国の姿勢は非常に興味深い。米印原子力協定の時に問題となった原子力供給国グループ(NSG)には,中国も加盟している。過去には,中国はパキスタンの原子力建設に協力してきたのだが,改めてパキスタンとの間で協定を交わすとなると,核拡散防止条約NPT非加盟のパキスタンに問題があるばかりでなく,世界の勢力図に大きな変化をもたらす可能性がある。その結果の大きさに,湖錦濤主席は,思いをいたしたのだろう。
新任のパキスタンのザルダり大統領(注1)は非常に意気込んでいる。先日,国連総会でワシントンに行ったとき,インドのシン首相と会談し,カシミールのダム建設で強く抗議している。ダムの竣工式でシン首相が,両国の和解を名演説で説いたのに,耳を貸さず反発し,とるものもとりあえず,北京に向かった。勿論,米印原子力協定に真っ向から対抗する中国パキスタン原子力協定を探るためだろう。
私は,内外のニュースを見ていて,湖錦濤主席はザルダり大統領(注1)を宥めたのだと思っている。米印協定に真っ向から対立する覚悟は,少なくとも湖錦濤には出来ていない。ザルダり大統領(注1)から見た世界と,湖錦濤から見た世界は,全くと言って良いほど違うのだろう。しかし,湖錦濤は,パキスタンとの関係強化は望むところであり,それが以下の経済界での歓待に繋がる。
中国側は,迎賓館で,財界のトップを集めてザルダり大統領(注1)との会議をセットした。財界首脳の中には,大統領に向かって,「聡明で民主的な選挙によって選出されたザルダリ大統領(注9)」,と持ち上げ,総額50億ドルに上るパキスタンへの投資を約束した。分野は多岐に亘り,軍事,金融,原油探査,鉱業,石炭,水力の各分野に亘る。水力分野については,17億ドルとされている。
タールの石炭開発(注4)については,CTECのヤンリジン会長(注3)が会談した。この会議の後で覚書が交わされたが,当面百万ドル相当で調査を開始することとなった。シノハイドロのファンジシアン社長(注3)は,1987年以来,パキスタンの水力開発に協力している経験と既に2億ドルを投資していることを踏まえ,バシャダム(注5)とコハラ水力(注10)に付いて,調査を行うことを約束した。
12月には,米国の原子力大規模調査団がインドを訪問する。パキスタンの注視を受けながら,大きな商談が進むことになるが,ザルダり大統領(注1)はまだ湖錦濤の原子力協定への進展を諦めていないだろう。今日はその他,初めて中東の資金が,インドネシアの石炭火力へ関心を示しているニュースと,インドネシアのLNG獲得に関する日本や韓国のアプローチが話題となっている。
(注) (1) President Asif Ali Zardari,(2) Defence Minister Chaudhry Ahmed Mukhtar, Advisor on Interior Rehman Malik, Advisor on Finance Shaukat Tareen, Foreign Secretary Salman Bashir and Pakistan’s Ambassador to China Masood Khan,(3) Ma Zhigeng, Chairman NORINCO, Zhang Liansheng Chairman Poly Technologies, Liu Minkang Chinese Banking and Regulatory Authority, Yan Lijin, Chairman CETC and Fan Jixiang, President Sinohydro,(4) Thar coal,(5) Bhasha dam project,(6) China International Water and Electricity Corporation,(7) Water and Power Dvelopment Authority, Pakistan,(8) Northern Industries (NORINCO),(9) under the sagacious leadership of democratically elected President Asif Zardari,(10) Kohala Dam,
本文
●パキスタン,中国が50億ドル投資,17億ドルは水力開発へ
2008年10月17日まで,パキスタンのザルダり大統領(注1)は4日間,北京に滞在した。彼の最大の眼目は,米印原子力協定に対抗する形での,中国パキスタン原子力協定に対する湖錦濤主席の基本的な合意を得ることであっただろう。これについては,共同声明は触れていないようであるが,パキスタンのクレシ外相が,合意に至ったと説明している。この記事は,ザルダり大統領(注1)が中国の経済界と会見した内容である。
ザルダり大統領訪問団(注2)と経済界のトップ(注3)との会談は,金曜日に行われた。総括すると,中国の経済界がこの会談で約束した投資総額は50億ドルであり,その分野は,軍事,銀行,原油探査,鉱業,石炭,水力の各分野に亘る。水力分野については,17億ドルとされている。会談は迎賓館で行われ,特に中国経済界首脳は,ザルダり大統領(注1)の活気ある弾力的な経済構想に,関心を持ったという。
電力セクターについては,中国国際水電公司(注6)の代表が,ザルダり大統領訪問団(注2)と会談したが,WAPDA(注7)と協力して経済的な水力プロジェクトへの投資を約束した。原油探査と武器についてはNRINCO(注8)のマジゲン会長(注3)が担当したが,原油探査に当面30百万ドルの投資を約束した。会長は,「聡明で民主的な選挙によって選出されたザルダリ大統領(注9)」との会談の成果が大きいと評価した。
タールの石炭開発(注4)については,CTECのヤンリジン会長(注3)が会談した。この会議の後で覚書が交わされたが,当面百万ドル相当で調査を開始することとなった。シノハイドロのファンジシアン社長(注3)は,1987年以来,パキスタンの水力開発に協力している経験と既に2億ドルを投資していることを踏まえ,バシャダム(注5)とコハラ水力(注10)に付いて,調査を行うことを約束した。
今回のザルダり大統領(注1)の4日間の北京訪問は,先日,ワシントンで行われたインドのシン首相との会談に続くものだが,インドに対しては厳しくカシミールのダム開発に釘を刺した。大統領は,一見,インドからのアプローチをはねつけ,中国との連携を深めることに集中したようだ。少なくとも原子力分野では,米印と中国パキスタンが対立する構図となってきた。
(注) (1) President Asif Ali Zardari,(2) Defence Minister Chaudhry Ahmed Mukhtar, Advisor on Interior Rehman Malik, Advisor on Finance Shaukat Tareen, Foreign Secretary Salman Bashir and Pakistan’s Ambassador to China Masood Khan,(3) Ma Zhigeng, Chairman NORINCO, Zhang Liansheng Chairman Poly Technologies, Liu Minkang Chinese Banking and Regulatory Authority, Yan Lijin, Chairman CETC and Fan Jixiang, President Sinohydro,(4) Thar coal,(5) Bhasha dam project,(6) China International Water and Electricity Corporation,(7) Water and Power Dvelopment Authority, Pakistan,(8) Northern Industries (NORINCO),(9) under the sagacious leadership of democratically elected President Asif Zardari,(10) Kohala Dam,
●インドネシア,PLNのプロジェクト,中東の投資資本が関心
インドネシアのPLNは,現在鋭意,2009年または2010年の完成を目指して,10,000MWに上る石炭火力建設を,クラッシュプログラム(注11)と称して進めている。しかしその80%以上は中国の資金で,PLNが行う電源開発である,IPPはこの中には含まれていない。PLNは必ずしもIPPを除外はしていないが,この金融危機に際して,もし優秀な資本によるIPP開発があるならば,望むところだろう。
PLN筋の情報によると中東資本のコンソーシアム(注12)が,2億ドルの石炭火力への投資に,他のグループと争う姿勢を示した。PLNのモクタール総裁(注13)によると,PLNが起案した200MW石炭火力で,場所は供給力不足に苦しむ南スマトラ,リアウのチレンティ地区(注14)に位置し,ブキットアサム(注15)の所有する炭坑の近傍である。この中東グループは,4つの参加グループの一つだが,その資金力には注目が集まっている。
この中東のコンソーシアム(注12)は,地元企業リドラタマ(注16)と合弁を組み,イスラム開発銀行(注17)の支援を受けており,既に事前資格審査は合格している。ただ,中東企業のインドネシアでの電力開発参入は初めてであることに留意している。担当のプルノモ大臣(注18)は,金融危機の中,中東の企業の参加には大いに期待している,とコメントしている。
何度も,インドネシアに対するイスラム金融の貢献は,期待され,噂されてきたが,電力への参入は初めてと聞いて,意外な感じである。既に殆どの資金調達に目処を付けていると思われるクラッシュプログラム(注11)であるが,今回の金融機の影響を受けるのではないかと懸念している。第2次クラッシュプログラムの情報もあり,今後の中東資金の動きが気になるところである。
(注) (11) Crash Programme,(12) A Middle East consortium, Mine Power Holding BSC,(13) President director Fahmi Mochtar,(14) located in Cirenti district, Riau Province,(15) state coal mining company PT Bukit Asam,(16) local contractor PT Ridlatama Energy,(17) the Islamic Development Bank,(18) Energy and Mineral Resources Ministry Purnomo Yusgiantoro,(19)
●インドネシア,韓国ガス企業,LNG契約の延長を望む
インドネシアは,原油生産の落ちに神経を使っている。天然ガスの生産は続くが,問題は国内消費の増加への対処である。特にLNGについては,日本と厳しい折衝が続いている。契約を減量の上,百万Btu当たり16ドルにも達する高値で交渉が進んでおり,ここまで上がってくると,電力用としては用をなさなくなるだろう。交渉は厳しい場面を迎えている。
インドネシアのプルノモ大臣(注18)は,韓国ガス企業コガス(注19)が,2014年及び2017年に期限切れとなるLNG契約を延長するよう申し込んできたことを明らかにした。プルノモ大臣(注18)は,韓国のリユンホー知識経済大臣(注20)との極秘会談の後,現状では,国内需要の伸びを考えると,如何なるコミットも出来ない,と言うことを示唆した。
コガス(注19)は現在,アルンとボンタンのLNG基地(注21)から毎年200万トンを輸入している。インドネシアは,ボンタンのLNG基地(注21)の能力を増やすため,シェブロン(注22)のカリマンタン沖深海油田(注23)の生産を2014年に開始する予定であるが,深海であるため高価な天延ガスになることを懸念している。
また,問題は日本と契約交渉中で,韓国に即答できない理由の一つ,と説明している。日本に対しては,現在の契約は年間600万トンであるが,2011年3月に期限切れとなる。延長は交渉中であるが,10年延長,最初の5年が3百万トン,最後の5年が200万トンとなる予定である。なお,韓国ガス企業コガス(注19)は,この7月にタングー基地(注24)から百万Btu当たり20ドル(注25)の高額の契約をしたばかりである。
プルノモ大臣(注18)はまさか百万Btu当たり20ドル以上,と言うわけではなかろうな。日本に対して16ドル,と言う報道が一時なされたことがある。タイは8ドルぐらいでガスを使っており,インドでは最近11ドルの値段が出て,衝撃が出ている。20ドルは,電力の燃料費に換算すると17セントになる。原油の下げがどの様にLNGに影響するのか,よく分からない。量と価格の両面から厳しさが増して行く。
(注) (18) Energy and Mineral Resources Ministry Purnomo Yusgiantoro,(19) Korea Gas Corp (Kogas),(20) Lee Youn Ho, South Korea's Minister of Knowledge Economy,(21) Arun and Bontang LNG plants,(22) Chevron Corp,(23) new deep-water fields off East Kalimantan,(24) Tangguh project,(25) US$20 per million British thermal units (mmbtu)
Reference
Pakistan
●081018A Pakistan, pakobserver
中国が50億ドル投資,17億ドルは水力開発へ
Chinese firms offer $5b investment
http://pakobserver.net/200810/18/news/topstories03.asp
Indonesia
●081018B Indonesia, The Jakarta Post
PLNのプロジェクト,中東の投資資本が関心
PLN project attracts Middle East investor
http://www.thejakartapost.com/news/2008/10/17/pln-project-attracts-middle-east-investor.html
●081018C Indonesia, The Jakarta Post
韓国ガス企業,LNG契約の延長を望む
Kogas wants to extend LNG supply from RI
http://www.thejakartapost.com/news/2008/10/16/kogas-wants-extend-lng-supply-ri.html
0 件のコメント:
コメントを投稿