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「フィリッピンの長期エネルギー計画」,今日は編集に思わぬ時間がかかってしまった。いつもは2時間ぐらいで仕上げるのに,今日はもたもたして手が動かなかった。それというのも,フィリッピンが重大なタイトルで来ているのに,内容が殆ど書いてなくて,彼方此方調べ回る羽目になった。確かに,長期計画の草案は美しく仕上がっているが,見通しと来たら,暗い,と言わざるを得ない。
フィリッピンのエネルギー省(注1)はまず,エネルギー長期計画PEP2008ー2030(注2)案を作成して,これを彼方此方に説明して歩くというのだ。その関係者の中には,石油,ガス,水力,太陽光,風力,バイオマス,海洋発電,地熱などの他,公聴会だから一般の関心者も含むわけで,日本の審議会主義とは少し異なる。
とにかく記事には数字がないので,資料を見て貰わなくてはならないが,あくまで国産エネルギーに固執していることは,先日も書いたとおりである。資料を見て貰うと,綺麗に整理された内容のない,石油,ガス,地熱などの探査の範囲などを書いて,これらによって,海外依存度を減らすのだ,としている。今回の原油高騰が余程こたえたのだろう。
どうだろう,例えば日本が,今,国内資源の依存度を増やす,と言えば話になるのだろうか。1960年代の石油危機の時には,確かにそういう雰囲気があったが,WTOを通して世界分業に動く国際情勢は,国内依存を議論する段階にはないような気がする。いや,フィリッピンが余りにそのことにこだわっているからである。日本の場合,国内の水力と原子力だけで,何処までの生活を維持できるのか,チェックしておく必要はあるが,フィリッピンの力の入れ方には,敬服する。
また今日は同時に,フィリッピンのNPCの新任のタムピンコ総裁(注5)が,金融危機を心配して,今年中に予定されている,1,200MWスワル(注9)と700MWパグビラオ(注10)の石炭火力の売却に関して,投資企業の意欲を懸念し,方策を打ち出しているその中で注目するのは,石炭調達責任をIPP側,とする点である。総裁も懸念はしているが,インドネシアが,供給契約の改定を申し込んでおり,フィリッピンの電力セクター多難,と言う感じである。
別件,インドの「バギリハールダム(注13)竣工式のインドのシン首相(注14)の劇的な演説で,パキスタンとインドの対立は雪解けに向かった」,と書きたかったところだが,そうも行かないようだ。このダムの竣工式を受けて,パキスタン側の反応は,ザルダニ大統領(注15)も含めて,かなり厳しい。特にカシミールから直接パキスタンに流れ込むシェナブ川(注16)の問題だけに,パキスタンの懐疑心が募って行く。
パキスタンの情報部が政府に上げた情報では,インドはバギリハールダム(注13)に続き,同様の規模のダムをシェナブ川(注16)に建設する計画を持っていて,シェナブ川(注16)の流況を自由に変えようとしている,としている。インドがこれらのダムからどの様に放流する計画を持っているか,それが重要としている。ザルダニ大統領(注15)は雪解けよりも,インドとの対決姿勢に徹するのか。
本文
●フィリッピン,エネルギー省,長期エネルギー計画で,公聴会へ
フィリッピン政府の公式発表である。エネルギー省(注1)は,フィリッピン・エネルギー長期計画PEP2008ー2030(注2)案について,関係者の意見を聞くべく,まず第9及び第10地区,カガヤン方面で,公聴会を開催した。主宰したのは,エネルギー省のキャムコ次官(注3)で,参加した関係者は,石油,ガス,石炭,水力,太陽光,風力,海洋などその他の関係者,と報告されている。最初にプレゼンテーションされた資料は,下記に示すものであろうと考えられる。
この長期計画案がもっとも問題にしているのは,エネルギーの国内依存度を高めようというもので,上記の各分野に於ける国内資源の開発意欲を高めようというものである。提案説明したキャムコ次官(注3)も,長期に渡る努力が必要なことを認めている。海外の石油ガス石炭の依存度を減らすために,国内に於ける探査を拡充することも,視野に入っている。
彼は,ミンダナオを例に挙げて,51%が水力資源に依存している事実を,一つの例に挙げているが,これは極めて特殊な例で,問題は今後のルソングリッドの行き付く先だろう。プレゼン資料をざーっと見たが,甚だ理想主義的で,現実に高い電気料金に悩みながら,このような国内資源重視のエネルギー政策,と言うのは正しいのだろうか。
the draft Philippine Energy Plan (PEP) 2008-2030
http://www.doe.gov.ph/PEP/consultation.htm
http://www.doe.gov.ph/PEP/consultations/PLENARY%20(A.M.)/Upstream%20Sector/Region%20I%20-%20Upstream.pdf
注
(1) the Department of Energy (DOE),(2) the draft Philippine Energy Plan (PEP) 2008-2030,(3) Energy Undersecretary Roy V. Kyamko,
●フィリッピン,NPC,IPP契約での40%前払い制度を放棄
タイトルは単純だが,記事の内容は,これからの電源資産売却の基本的な問題を示唆している。この,売却元であるNPC(注4)が,電源資産を全体の30%まで減らすべく売却中であるが,NPCの新任のタムピンコ総裁(注5)の決断で,IPP側からの前払い(注6)40%の規定を放棄するというのである。タムピンコ総裁(注5)はPSALM(注7)総裁から移動したばかりである。
タムピンコ総裁(注5)は,今回の措置の根拠を説明している。今回の世界の金融危機によって,資産買収に向かうIPP企業連合IPPA(注8)企業の金繰りは苦しくなっている。PSALM(注7)は,来月にも次の入札を始めるが,この措置によって救われるはずだ。次の入札は,1200MWスワル(注9)と700MWパグビラオ(注10)の石炭火力である。
PSALM(注7)は,今回の入札で発電所本体ばかりでなく,燃料供給契約も譲り渡すことになっている。その出力についてはNPCが引き取り手(注11)になるが,また卸売市場であるWESM(注12)への電力量取引も行うことになっている。最近の情勢から4,000MW相当の燃料調達は大変であり,インドネシアが石炭契約の見直しを提案していることに問題もある。しかし逆に,IPPが責任を持って供給に当たることが出来るようになる,と言うことも考えて欲しい。
注
(4) state-run National Power Corporation (NPC),(5) newly-installed NPC president Froilan A. Tampinco,(6) upfront payment,(7) The Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM),(8) the prospective IPP Administrators (IPPAs),(9) 1,200-megawatt Sual ,(10) 700-MW Pagbilao coal plant,(11) off-takers (buyers),(12) the Wholesale Electricity Spot Market (WESM),
●パキスタン側,インドは,シェナブ川で,更に12のダム建設を計画
「バギリハールダム(注13)竣工式のインドのシン首相(注14)の劇的な演説で,パキスタンとインドの対立は雪解けに向かった」,と書きたかったところだが,そうも行かないようだ。このダムの竣工式を受けて,パキスタン側の反応は,ザルダニ大統領(注15)も含めて,かなり厳しい。特にカシミールから直接パキスタンに流れ込むシェナブ川(注16)の問題だけに,パキスタンの懐疑心が募って行く。
パキスタンの情報部が政府に上げた情報では,インドはバギリハールダム(注13)に続き,同様の規模のダムをシェナブ川(注16)に建設する計画を持っていて,シェナブ川(注16)の流況を自由に変えようとしている,としている。インドがこれらのダムからどの様に放流する計画を持っているか,それが重要としている。ザルダニ大統領(注15)は雪解けよりも,インドとの対決姿勢に徹するのか。
先日の国連総会の時に,ザルダニ大統領(注15)は,この件でインドのシン首相(注14)と会談している。このときの話題は,毎秒20万トンのシェナブ川(注16)の水の問題であったという。両者帰国後,バギリハールダム(注13)の竣工式で,シン首相(注14)が和解の演説を行ったが,この演説の直後にザルダニ大統領(注15)は,バギリハールダム(注13)がコントロールする毎秒9000トンの水の対して,懸念を表明している。
そうして,シン首相(注14)が述べた後三つのダム,と言う表現に対して,パキスタンの情報機関は12のダム,と説明しており,パキスタン側は,これらのダムの建設の阻止に動く様子である。パキスタン側は,バギリハールダム(注13)調査団を,10月18日に派遣する。団長は,インダス委員会のアリシャー氏(注17)である。
アリシャー(注17)団長は,いくつのダムが建設されるのか,インド側からの情報はない,と言っている。いずれにしてもダムは下流に影響を与えるので,厳しく協定に従って進めるよう,迫るつもりと言う。その協定(注18)では,インド側はダムの設計内容を着工の6ヶ月前にはパキスタンに通知し,協議を行うことになっている。
注
(13) Baglihar,(14) the Indian Prime Minister Manmohan Singh,(15) President Asif Ali Zardari,(16) River Chenab,(17) Commissioner Indus Waters Commission Syed Jamaat Ali Shah,(18) Indus Waters Treaty
●パキスタン,インドのバギリハールダムで,世論の助けを求める
パキスタンのアシュラフ水資源電力大臣(注19)は,記者会見で,電力や水事情の全般について,質問に答えたが,特に重要な点を拾う。バギリハールダム(注13)のシェナブ川(注16)の水については,強い調子でパキスタンの権利を主張し,具体的には,下流のマララ堰(注20)で毎秒55000トンが確保されることが条件で,これが守られない場合は,国際機関への訴えも辞さない,とした。
今後の電力需給では,来年12月末には,需給は回復する,と約束した。特に今後は,電力料金の安い水力に重点を置くとし,バシャ-ダイムラーダム(注21)の着工を2009年9月とした。また,タールの(注22)石炭について,年内の着工を約束した。
(注)
(19) Water and Power Minister Raja Pervaiz Ashraf,(20) Head Marala,(21) Bhasha-Diamir Dam,(22) Thal Coal project,
●インド,2050年までに原子力発電,35%まで確保
インドと米国の原子力協定(注23)の締結に際して,カコドカール原子力委員会議長(注24)が会見,2050年までに原子力発電所の割合を35%まで延ばす計画であることを明らかにした。第7号機,第8号機については,既にラジャスタン州(注25)で進めていることも明らかにした。また議長は,この協定が核テスト(注26)を制限していないことを強調すると共に,今後はウラニュームの輸入が円滑に進むことに期待を示した。
注
(23) the Indo-US Civil Nuclear Deal,(24) Atomic Energy Commission Chairman Anil Kakodkar,(25) Rajasthan,(26) a nuclear test
Reference
Pakistan
●081014A Pakistan, The Post
パキスタン,インドのバギリハールダムで,世論の助けを求める
Pakistan to seek world help on Baglihar
http://thepost.com.pk/Ba_ShortNewsT.aspx?fbshortid=3455&bcatid=14&bstatus=Current&fcatid=14&fstatus=Current
Philippines
●08014B Philippines, Manila Bulletin
]NPC,IPP契約での40%前払い制度を放棄
NPC to waive 40% upfront payment
http://www.mb.com.ph/BSNS20081014137943.html
●081014C Philippines, pia.gov.ph
エネルギー省,長期エネルギー計画で,公聴会へ
DOE consults public on long-range energy plan
http://www.pia.gov.ph/default.asp?m=12&fi=p081014.htm&no=98
India
●081014D India, The International News
インドは,シェナブ川で,更に12のダム建設を計画
India to build 12 more dams on Chenab
http://www.thenews.com.pk/top_story_detail.asp?Id=17800
●081014E India, Economic Times
インド,2050年までに原子力発電,35%まで確保'
India to achieve 35 per cent power from n-plants by 2050'
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_to_achieve_35_per_cent_power_from_n-plants_by_2050/articleshow/3593622.cms
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