2008年10月18日土曜日

インド北辺水力開発に反旗

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「インド北辺水力開発に反旗」,タイの情勢が不穏である。カンボジアとの領土問題もさることながら,国軍トップのアヌポン陸軍司令官が「私が首相なら既に辞任している」とソムチャイ首相に事実上の辞任勧告を突き付けたことは,再び軍のクーデターの可能性もあると報じられている。メコン諸国の開発のリーダーであるタイの,一刻も早い安定を願う。

さて,インド北辺の水力開発は,インドの石炭火力の抑制に貢献するものとして,人類最後の戦いである,と位置づけてきた。インド政府も,ヒマラヤ周辺の水力には,大きな期待を持ち,また新政策を掲げて,地元便益優先の姿勢で臨んできた。あれほどの大規模水力の開発に,よく周辺住民が耐えられるか,私も関心を持って見てきたが,比較的平穏な成り行きに,意外感を覚えていた。

今日の記事が,果たして住民運動と関係あるのかどうか,それは単なる政治的な動きなのか,よく分からないところがあるが,厳しく批判ののろしを上げたのは,2004年に野党に下ったインド人民党(注1)のリーダーで元財務大臣のカラ氏(注2)である。政治的な背景は私は説明できないが,少なくとも地元住民を守ると言うよりは,州政府の立場を明確にせよ,と叫んでいるように見える。

カラ氏(注2)は,強い調子の声明書を読み上げた。ジャムカシミール州(注3)の土地,水資源などの天然資源を略奪に近い形で持って行く中央政府の政策に反対している。彼が指摘しているのは,ジャムカシミール州(注3)の7つの水力プロジェクトが,州政府からNHPC(注4)に引き渡されたことを言っている。

カラ氏(注2)は,この州政府の行為がインダス水条約(注5)に違反するもので,地元住民の水利用の権利を侵しており,州政府自体が使える水を殆どゼロにしている,と言うのである。彼は,皮肉にも,このような暴挙を行った州は,他の州にも影響を与えて,北部各州の経済繁栄を阻害するものだ,と攻撃している。

政治的な意図は全く不明であり,言葉も極めて厳しい表現を使っているが,カラ氏(注2)は,水力開発を止めろと言っているわけではなさそうだ。インドの電源開発は元々州政府が責任を持っていたもので,州政府としては,大規模水力の開発に当たって,資金調達などを考えると,政府系公社であるNHPC(注4)に開発を委譲した方がよい,と考えたのだろう。重要人物の思わぬ反対の激論で,周囲は戸惑っているかも知れない。

(注)(1) Peoples Democratic Party (PDP),(2) former Finance Minister Tariq Hameed Karra,(3) Jammu and Kashimir,(4) National Hydro Electric Power Corporation (NHPC),(5) Indus Water Treaty (IWT),(6) Salal and Uri Power Projects,

本文

●インド野党PDP,政府はカシミールのNHPCプロジェクト,放棄せよ
このカシミールを含むインド北辺の水力開発については,中央政府の強い開発への意志と,公社も含む民間資本の開発意欲が前面に出ていて,不思議なぐらい,開発反対の声は聞こえてこなかった。ナルマダ紛争で鍛えたインド国民であるが,あの熱気は今はない。政府の唱える大規模な水力は,案外円滑に実施されるのか,とも思っていたが,政治家から強硬な反対論が出てきた。

政治的な背景はよく分からないが,2004年に野党に下ったインド人民党(注1)のリーダーで元財務大臣のカラ氏(注2)が,強い調子の声明を発表した。ジャムカシミール州(注3)の土地,水資源などの天然資源を略奪に近い形で持って行く中央政府の政策に反対している。彼が指摘しているのは,ジャムカシミール州(注3)の7つの水力プロジェクトが,州政府からNHPC(注4)に引き渡されたことを言っている。

カラ氏(注2)は,この州政府の行為がインダス水条約(注5)に違反するもので,地元住民の水利用の権利を侵しており,州政府自体が使える水を殆どゼロにしている,と言うのである。彼は,皮肉にも,このような暴挙を行った州は,他の州にも影響を与えて,北部各州の経済繁栄を阻害するものだ,と攻撃している。

更に続いて,州政府はこの7つのプロジェクトを州に取り戻すだけでなく,インダス水条約(注5)に即して州の損失が起きないように,NHPC(注4)の有する二つの水力プロジェクト,サラールとウリ(注6)を州に返還させよ,と言っている。もしこの主張が受け入れられなければ,インド人民党(注1)は立ち上がり,調査行動を阻止するだろう。また中央政府は,州に対して600億ルピーに上る補償を行う必要がある,これは水条約違反と言うことから来る。

政治的な意図は全く不明であり,言葉も極めて厳しい表現を使っているが,カラ氏(注2)は,水力開発を止めろと言っているわけではなさそうだ。インドの電源開発は元々州政府が責任を持っていたもので,州政府としては,大規模水力の開発に当たって,資金調達などを考えると,政府系公社であるNHPC(注4)に開発を委譲した方がよい,と考えたのだろう。重要人物の思わぬ反対の激論で,周囲は戸惑っているかも知れない。

(注)(1) Peoples Democratic Party (PDP),(2) former Finance Minister Tariq Hameed Karra,(3) Jammu and Kashimir,(4) National Hydro Electric Power Corporation (NHPC),(5) Indus Water Treaty (IWT),(6) Salal and Uri Power Projects,

●インドネシア,プルタミナ,東部ジャワの西マドラ油田,持ち分増加を視野

最近のインドネシアは,原油の枯渇に戦いており,先日も,石油各社首脳を国会に招いて,今後の生産の見込みをヒアリングしたばかりである。その時の問答で,議員から出た疑念の中に,国営企業であるプルタミナ(注7)は生産量を増やしているのに,どうして海外資本は生産量を減らしているのか,というものがある。今回のこの東ジャワの西マドラ油田(注8)の問題も,ここから来ているのであろうか。

プルタミナのカレン副社長(注9)が記者会見に応じている。彼女によると,プルタミナ(注7)は現在50%のシェアーを保持しているが十分でないと言う。この油田は,原油日6,500バレル,ガス日45百万立方フィートを生産しているが,その運転は,25%シェアーの韓国のKEDECO(注10)に握られている。また中国のCNOOC(注11)も25%を持っている。プルタミナ(注7)の自由にならない,と言うわけである。

カレン副社長(注9)によると,プルタミナ(注7)は,西マドラ油田(注8)ばかりでなく,東カリマンタン,トータルのマハカム油田(注12),ティモール海,インペックスのマセラ沖合油田(注13),東カリマンタン沖,シェブロンの深水油田(注14)でもシェアーの拡大を計画しており,既に資金調達も終わっているが,今はその規模を明らかに出来ない,としている。

最近のインドネシアは,資源に関してますます国粋化を強めている。それは,最高裁がPLN完全民営化を違憲と判断したときが節目のような気がする。それまでは,電力でもエネルギーでも,競争市場の創出が大きな目標であったから。来年は大統領選挙が行われ,カラ副大統領も対抗馬として出馬するだろう。彼は開発にも熱心だが,中国の市場経済コントロールに大きな関心を示している。

(注)(7) state oil and gas company PT Pertamina,(8) the West Madura block, East Java,(9) Pertamina corporate vice president for upstream Karen Agustiawan,(10) South Korea's Kodeco Energy,(11) China's National Offshore Oil Corp. (CNOOC),(12) Total's Mahakam block in East Kalimantan,(13) Inpex's Masela offshore block in Timor Sea,(14) Chevron's deep-water fields off East Kalimantan,

●フィリッピン,ファーストジェン,水力発電所売却,赤字補填

相変わらず,フィリッピンの電源は売ったり買ったりで,電源開発の話は出てこない。今日の議論も,私にはよく分からないが,ファーストジェン(注15)はロペス財団によるフィリッピン有数の発電会社であり,その一挙手一投足には注目が集まる。電気料金がASEANで一番高い市場で,完全民営化に向かって進んでいるのだから,そこに金融界の競争が生じてもおかしくないが,やはりそのエネルギーは,社会基盤の整備に向けるべきと思う。

ファーストジェン(注15)が,その所有する水力発電所の資産105百万ドルを,関連会社であるEDC(注18)に売却した,その目的は,11月にも発生する410百万ドルの負債の穴埋めのためである。この意図の中には,株式市場の中での株価の動きに大いに関係しているし,最近の世界の金融危機で,融資を受けることが困難であることも反映している。

対象となっている売却対象は,ファーストジェン水力企業(注16)の株式60%であり,具体的な発電所は,112MW,パンタバンガン-マシウエー水力(注17)で,売却先はEDC(注18)である。この発電所が注目されているのは,ダム建設なしで増設できる可能性を持っていることである。EDC(注18)は,その安定以外に,将来の成長を買った,と見られている。

なお,ファーストジェン(注15)は,2006年にこの発電所を129百万ドルで買ったもので,現在では175百万ドルの資本評価と240百万ドルの企業価値と見られていた。今回,60%売却によって,36%のリターンを得たことになる。また,EDC(注18)は,地熱発電所を所有していて,将来は再生可能エネルギーの本拠を目指しており,水力は格好の買い物だったようだ。

しかし,既設の発電所を,このような形で売買されるのは全く気に入らない。事実,インドネシアやタイでは,このような感覚はない。電力は社会のための公器と考えられているので,国民生活のために如何に安全に供給するかがテーマーで,証券のように扱われたのではかなわない。フィリッピンがより進んでいる,と言う人もいるだろうが,今朝の新聞でも,米国発の金融危機で,市場のメカニズムも見直し基調であるという。

(注)(15) Philippine power producer First Gen Corp,(16) First Gen Hydro Power Corp,(17) the 112MW Pantabangan-Masiway hydroelectric power complex,,(18) Energy Development Corp,(19)

Reference

Philippines

●081017A Philippines, financeasia
ファーストジェン,水力発電所売却,赤字補填
First Gen sells assets to cut debt burden
http://www.financeasia.com/article.aspx?CIaNID=86915

India

●081017B India, kashmirobserver
インド野党PDP,政府はカシミールのNHPCプロジェクト,放棄せよ
Govt Should Scrap Deal with NHPC: PDP
http://www.kashmirobserver.com/index.php?option=com_content&view=article&id=1474:govt-should-scrap-deal-with-nhpc-pdp-&catid=50:localnews&Itemid=81

Indonesia

●081017C Indonesia, The Jakarta Post
プルタミナ,東部ジャワの西マドラ油田,持ち分増加を視野
Pertamina eyes bigger stake in Madura block
http://www.thejakartapost.com/news/2008/10/16/pertamina-eyes-bigger-stake-madura-block.html

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