2008年10月1日水曜日

フィリッピンの再生可能エネへの取組

長い間HP更新できずゴメン,復旧しました。地図など,見て下さいね。http://my.reset.jp/~adachihayao/index.htm

「フィリッピンの再生可能エネへの取組」,この8月26日に,「フィリッピン,エネルギー省,ココナツメチール計画,加速を要請される」,と題して,ココナツからとれるメチル油を自動車のガソリンの中に2%以上混入させることを法律で決めてしまった,それも2009年,来年の2月までに完全実施ですることが,報告されている。本当に出来るのか,とASEAN諸国が,息を詰めて見ている,となっている。

先日9月28日には,原油生産が落ち込み始めて焦っているインドネシアが,エネルギー省の省令で,発電燃料も含めて,2008年10月1日から発電燃料などへの一定量のバイオ燃料混入を義務化,試行し,2009年1月1日からバイオ5%混入と言う大量の義務化を伴う本格運用に入る,と報告されている。

今回フィリッピンは,大胆に,上院が,再生可能エネルギー法案 Renewable Energy bill を通過させて,先日のインドネシアに続き,ASEANのトップを走ることになった。上院では,Senators Edgardo J. Angara や Juan Miguel Zubiri などが中心となって,この先5年で10億ドルの市場となるだろう,と囃している。最大の宣伝文句は,これにより,原油輸入の代替として,金額にして36億ドルまたは2,000
億ペソの経費削減となる,としている。

NEDOが解説しているように,結局は,2007年1月15日にセブで開催されたASEANサミットで,「東アジアエネルギー保障宣言(代替エネルギー協定)」である。これを受けたフィリッピンは,その時,4点の政策を掲げている。化石燃料効率化,水力など再生可能,バイオ燃料,市場の国際化,の4点である。

私は,フィリッピンが板挟みになっていると思う。国民からは,近隣諸国で一番高い電気料金の問題を追求され,一方で資源に恵まれない国として,高い電気料金を要求することになる再生可能エネルギーの開発,即ち,国内資源を活用して海外依存度を減らさねばならない事情である。私は,国際市場を信頼して,しばらくは輸入石炭による石炭火力の増設を行うのが,この10年の課題だと思うが,どうであろうか。

今日は10月1日である。おめでとう,JICAと旧OECF並びに外務省の無償資金を飲み込んだ新JICAの発足の日である。世界の電源開発に貢献してきたJBICの解体は残念であったが,技術協力と資金供与が少しでも一体化されるならば,それもよしとする。私の持論は,閣僚レベルのODA調整審議会の設置による長期プロジェクトの支援であり,このためにはODA基本法が必要なのだろう。

フランスのサルコジ大統領は30日,パリでインドのシン首相と会談,民生用原子力分野の協力について協議し,両国間の協力協定に調印した,と報じられている。米印原子力協力協定の進展と共に,原子力でのインド支援の世界の枠組みが,完成しつつある。

本文

●フィリッピンの上院,再生可能エネルギー法を承認

ココナッツなどのバイオ燃料法が施行されて話題となって,ASEAN諸国の注目を浴びていたフィリッピンは,今回上院が,再生可能エネルギー法案 Renewable Energy bill を通過させて,先日のインドネシアに続き,ASEANのトップを走ることになった。上院では,Senators Edgardo J. Angara や Juan Miguel Zubiri などが中心となって,この先5年で10億ドルの市場となるだろう,と囃している。

最大の宣伝文句は,輸入原油の削減による国家財政の立て直しで,今回の原油高が大きな引き金となった。政策の根幹は,2014年までに2,500MWの再生可能エネルギーによる発電施設を完成し,これによって1億バレルの原油輸入を節約,金額にして36億ドルまたは2,000億ペソの経費削減となる,としている。

具体的な発電所としては,太陽光発電が2030年までに4,700MW,2050年までに13,000MWを開発する。また風力は2030年までに15,000MW,2050年までに22,000MWを開発する,としている。電気料金はますます跳ね上がることになる。原油輸入に頼らなければならないことが,国民の不安をかき立てていることだ。

NEDOが,フィリッピンの再生可能エネルギー開発に関する報告を行っている。少し前のものであるが,東南アジア諸国の再生可能エネルギー開発の原典は,2007年1月15日にセブで開催されたASEANサミットで,「東アジアエネルギー保障宣言(代替エネルギー協定)」である。これを受けたフィリッピンは,その時,4点の政策を掲げている。

一つは,化石燃料使用に際する効率性及び環境性能の向上,二つは,エネルギー効率の増大と転換プログラム,水力,再生可能エネルギーシステム,三つは,バイオ燃料生産及び使用を通じた従来型燃料への依存軽減,4つは,経済的に無理のないエネルギーを推し進めるASEAN域内及び国際市場の奨励。いずれも文章は綺麗だが,難しい問題ばかりである。

関連資料
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1000/1000-03.pdf

●ベトナム,メコン上流での水力開発に懸念表明

この9月26日の本欄で,9月25~27日までビエンチャンで MRC's Regional Multi-Stakeholder Consultation が開かれて,中国が参加したこと,上流の中国側が洪水に関する資料提供を約束したこと,などを報告した。今日は突然ベトナムサイトから発信された情報は,ベトナム代表として会議に参加した Dao Trong Tu, deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee の発言についてである。

彼は,メコン流域内での水力開発に懸念を表明した。全くベトナムに言われたくない,と言う感じである。ベトナムは水力開発が好きで,水力に偏りすぎて,渇水期に電気が足りなくて困っている,と言う記事も出ていた。ベトナム代表は,ダムの建設が魚類の生息環境に影響を与え,それを生活の糧としている流域住民に被害を与えている,と主張する。

ベトナムのメコン下流では,pangasius と言う魚がいて,これが年間10億ドル相当の水揚げとなっているというのだが,ちょっと信じられない大きな数字である。現在メコン下流で計画されているダムの数は80カ所,そのうち11がラオス領内,全部の出力は40,800MW,貯水容量は全部で700億トンであるという。

いろいろな発言の中で,Do Manh Hung, director of the Mekong River Commission’s Operation Department の発言は注意を引く。殆どの水力は民間資本によって開発されているが,各国政府の関与が足りない,と彼は言うのである。開発の初期に,ラオス政府が開発の一部をシェアーするのはおかしい,と私も言い続けたことがあった。環境など監督規制の立場と,開発の立場は,やはり分けるべきなのだろう。

●インド政府,リライアンスのKGガス,電力への供給ストップ

インドの Reliance Industries (RIL) が進めるKG流域,Krishna-Godavari basin の天然ガス生産については,先日も取り上げたばかりである。「原油40,000 barrels of oil per day (bopd) と 240-350 mmscfd の天然ガス生産である。これらを含めて,リライアンスは,インドの原油ガス生産の50%を抑えることになる。」,と,RILが期待以上の成果に満足している,という内容であった。

今回,インド政府が執った措置は,天然ガスの優先順位がおかしいではないか,と言うところに起因している。天然ガス生産者である Reliance Industries (RIL), RIL-NIKO が,天然ガスを Reliance Natural Resources Ltd (RNRL) とNTPCが合弁で進める発電所に優先供給しようとしたところ,関係閣僚会議 The empowered group of ministers (E-GoM) が決定した国家ガス基本政策 Gas Utilisation Policy に反するという。

実際問題,この政策では,肥料工場が優先権を持っていて,肥料が必要としている天然ガスの量は,2011年から12年にかけて,76.39 million standard cubic meter (MMSCMD) とされているが,KG流域のガスは,40 MMSCMD しかないので,発電が使用する場合は,元々LNGガスを使用することになっていたはずだ,と言う政府の解釈で,電力へのガス供給がストップされている。

リライアンスの Mr Ambani 会長は,財務大臣や政府の幹部の間を走り回っており,この難問の打開に懸命である。この問題は結局裁判所に持ち込まれることになりそうで,産出が確認された貴重な天然ガスも,インド特有の政治紛争の中に,巻き込まれそうだ。

●カンボジア,原子力開発を視野に

寝耳に水,とはこのことを言うのかな。カンボジアが突然,2020年までに原子力発電所を開発することを視野に入れている,と情報が流れた。短い記事で,カンボジア政府が,具体的なアクションをとっているとは思えないが,これで東南アジア諸国で,全く原子力開発に触れていないのは,ラオスとミャンマーだけになってしまった。

私たちもよく知っている A secretary of state for the Ministry of Industry, Mines and Energy, Sat Samy,彼は既にこのような肩書きを持った有力なエネルギー官僚になっているのだ。彼はさすがに冷静で,押しかける記者に対して,「ASEANの閣僚会議で既に議題に上っているではないか,ASEANでは,メンバー国は原子力エネルギー開発の促進,と言うことで合意している。」,と冷静に答えている。

Refertence

Vietnam

●080930A Vietnam, thanhniennews
ベトナム,メコン上流での水力開発に懸念表明
Vietnam voices worry over Mekong hydropower
http://www.thanhniennews.com/education/?catid=4&newsid=42422

Philippines

●080930B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの上院,再生可能エネルギー法を承認
Senate passes Renewable Energy bill
http://www.mb.com.ph/MAIN20080930136623.html

India

●080930C India, Economic Times
インド政府,リライアンスのKGガス,電力への供給ストップ
Govt may block KG gas flow to RNRL, NTPC
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Govt_may_block_KG_gas_flow_to_RNRL_NTPC/articleshow/3542676.cms

Cambodia
●080930D Cambodia, radioaustralia
カンボジア,原子力開発を視野に
Cambodia looks to nuclear power
http://www.radioaustralia.net.au/news/stories/200809/s2378032.htm?tab=asia

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