2009年8月8日土曜日

メコン河のダム建設にメコン委員会が調査へ

メコン河のダム建設にメコン委員会が調査へ
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最近のニュースを探っていると,特に米国を中心に,水力発電を再興しようと言う雰囲気に満ちあふれており,その水力開発の大義名分について書いている記事が多い。グリーン・ニューディールの流れに乗った記事も多いが,やはり,人類の持つエネルギー資源の開発にはタイミングというものがある。1960年代のサンボール・ダムや,1990年代のパモン・ダムなど,大いにチャンスがあったわけである。

結局,半世紀を経てもメコン下流域にはダムは出来ず,今三度,再生可能エネルギー開発に乗って,メコン川本流のダム開発が大いに沸いている。今回は,火を付けたのは明らかにタイのサマック前首相だが,実際には誰が旗を振っているのかよく分からない。NGOの資料を読むと,日本のマネーが怪しい,日本工営ではないか,以前にサルウイーン開発を主導したEPDCではないか,など書かれている。

1990年代にビエンチャンの上流のパモン・ダムの調査の話の時に,私は,ダムの河川に対する常識は上流で,中国領内のダムが下流へ便益を与える,下流域ではダム開発は難しかろう,と考えて議論していた。上流では順調にダム開発が進んでいるが,中国側も下流国側も,技術的な話し合いを持とうとしない。ダムの運用というのは約束事で,上下流がもっと話し合わないと,ダムの効用を引き出すことは難しい。

タイのアビシット首相はハノイに飛んで,タイ,EGATは,性急に本流ダムを推進しているわけではない,とベトナムを宥めたようだが,ベトナムは,メコンデルタの渇水期の流量が減って,稲作などに対する塩害を恐れている。水力国のベトナムのことだからよく分かっているはずで,ダムの設備をどの様に下流のために運用するか,理解済みだと思う。中国のダムからの渇水補給を,真剣に議論しなければならない段階だろう。

ただ,ここで難しいのは,水系一貫の環境影響評価で,必要だと言われながら,一つのダム計画のために,上流から下流まで,調査の手を広げた例はまずないだろう。今回のメコン河委員会の調査は,これに一歩踏み込んだもので,泥沼に突っ込んだメコン河委員会,という言い方も出来る。この場合は特に上流,中国の問題があって,中国は専門家を派遣する,と言っているが,上流への調査権限は委員会にはない,と言うだろう。

11のダム建設,と言われているが,ラオスやカンボジアが進めようとしているのは,コーン・フォールのドンサホン,カンボジア領内最下流のサンボール・ダム,中流で比較的影響が少ないと言われるバンクム・ダム,更に上流,ルワンプラバン上流に考えられるダム,などが,一縷の着工の望みを持っている地点だろう。メコン河委員会は,来年,2009年8月までの1年間,と言っているが,随分困難な話である。

今,日本の社会は,総選挙よりも,酒井法子の麻薬問題でひっくり返っている,酒井法子がやるならば他にも一杯いるだろう,という感じか。米国政府は麻薬問題で一番危ないのは日本の社会,と言う表現をしている。ラオスの東端に麻薬補償で発電所を作りに行ったことがあるが,ラシオに腰を落ち着けて頑張っていた山梨大学の先生に一晩話を聞いたが,メコンと関係のある地域の麻薬との関係は根強い。あの蕎麦代替,どうなった?


本文

●メコン河委員会がいよいよダム開発の調査に乗り出す

A watchdog has kicked off a study to look at proposed hydropower developments on the Mekong River and their impact on the tens of millions of people living along it, officials said Friday. The probe has been launched to help countries affected by the projects decide whether they want to go ahead with them.

メコン河下流域で11のダム開発を誰が主導しているのか,ちょっと分かりにくい。しかし火を付けたのは,タイのサマック前首相だろう。今日の記事が出るに当たって,少し調べてみたが,先日もメコンデルタの問題でベトナムが開発に疑問を呈した後,タイのアビシット首相がハノイに飛び,ダム開発についての調整を行ったようである(注11)。民間企業が動いている,という記事はあり,特に日本のコンサルタントも熱心だ,と見られている。

メコン河委員会MRC(注6)は,これ以上,黙りを決め込んでいるわけにはいかなくなったようで,広報担当(注7)を通じて,本格的に調査に乗り出す,という声明を発表した。MRC(注6)のバード事務局長(注9)は,1995年に新しくメコン河委員会MRC(注6)が再発足してから,最大の重要な決断である,としているが,ここで何もしなければ,MRC(注6)の存在意義が問われるところだろう。

このMRC(注6)の決断の中には,中国領内のダムの関連も当然は行ってくるわけで,この点については,おそらく非常に難しい論点があるのだろう。中国側は,MRC(注6)の調査に専門家を送る用意がある,と言っているが,中国側としては,メコン下流の問題でしょう,という主張だろう。MRC(注6)が上流にまで調査をの手を広げるマンデートはない,と主張しそうな感じである。

MRC(注6)は,調査完了の目処を,来年,2010年8月と想定している。しかしこの問題は,まさに密林に分け入るようなもので,彷徨い込んだらもう出られなく可能性が高いと思う。ハノイのメコン河委員会の会合では,ラオスのナムトウン2水力で組織された世界ダム委員会WCD(注12)も関係してきているような感じで,調査自体が大きな反響を呼ぶだろう。

(注)A (1) 090807A Mekong,google,(2) title: Study begins to look at impact of Mekong hydropower plans,(3) http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5h6KK5Z4-yQ1kRxJUPLsIESjGJviA,(4) (AFP),HANOI,(5) Mekong River,(6) Mekong River Commission (MRC),(7) Damian Kean, spokesman for the Mekong River Commission (MRC) secretariat,(8) Lancang River,(9) Jeremy Bird, chief executive officer of the MRC secretariat,(10) map source: MRC,(11) http://www.stimson.org/southeastasia/?SN=SE200907212270,(12) WCD http://www.dams.org/,(13)

今日の参考資料

●090807A Mekong,google
メコン河委員会がいよいよダム開発の調査に乗り出す
Study begins to look at impact of Mekong hydropower plans
http://my.reset.jp/adachihayao/index090807A.htm
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5h6KK5Z4-yQ1kRxJUPLsIESjGJviA

最近の関連資料

●090730A Mekong, The Nation
メコン圏への大国の介入にタイなどはどの様に対処すべきか
As superpowers eye the Mekong, Thailand should act
http://my.reset.jp/adachihayao/index090730A.htm
●090702B Mekong, ipsnews
メコン川本流のダム開発は水戦争を勃発させる
Dams Across the Mekong Could Trigger a ‘Water War’
http://my.reset.jp/adachihayao/index090702B.htm
●090617B Mekong, rfa
メコン河上流のダム建設が下流域に脅威となっている
Upstream Dams 'Threaten Mekong'
http://my.reset.jp/adachihayao/index090617B.htm
●090601A Mekong, saigon-gpdaily
メコン河委員会が上流も含めた本流ダム開発を検討へ
Mekong body starts evaluating mainstream dams
http://my.reset.jp/adachihayao/index090601A.htm
●090529A Mekong, emediawire
メコン河電力サミットが開催され流域の開発調整が行われる
Regulatory Complexities To Be Addressed At Mekong Power Summit
http://my.reset.jp/adachihayao/index090529A.htm

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