2009年8月14日金曜日

ラオスの北部ナムカンで中国が水力開発

ラオスの北部ナムカンで中国が水力開発
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中国はダム建設で,激しくカンボジア,ミャンマーに介入している。ラオスは中国の裏庭であるし,当然ラオスにも大きく係わっている,と言う先入観があるが,考えてみると,経済的な浸透は深いものがあるが,ダム建設については,大きなプロジェクトは殆ど手がけていない,一つの盲点みたいな感じである。いろいろな理由があるであろうが,おそらく,民営化の時期の問題と,ラオス北部に良好な地点がなかったことだろう。

ラオスの水力開発の民営化は,アジアの中でも非常に早かった。1991年には,ラオスはまだ世界銀行やOECFの公的資金を目指して頑張っていたが,公的資金では無理だと悟ったのは,1992年だったと思う。今日の記事にも出てくる,元工業省次官,現EDL会長のカモンさんが,ラオスの水力地点を民間開発で行う,とバンコクで表明したときに,私も現場に立ち会っていた。

そう考えてみると,水力の民間開発,即ちIPPでは,メコン流域で最初の決断だったと思う。当時のタイは経済成長の最盛期で,ADBや世界銀行の民間支援を受けて,欧州やタイ,日本の企業などがラオスに一気に進出して,重要な地点を殆ど抑えてしまった。ナムテン2然り,ナムグム2,3も然りである。そう言う意味では,JICAが開発調査を行う気になったときには,もうナムニエップしか選択肢がなかったほどである。

2000年ぐらいに中国が実力を伸ばしてラオスのダム開発に参入する意志を持ったときに,中国はおそらくラオス北部の,ルワンプラバンに流れ込む,ナムウー,ナムスワン,ナムカン,などの川を考えたはずだが,この地域の川は平坦で,しかも多くの住民が川の近くで生活していてダム建設が難しく,また,地形的にもこの辺りは,ラオス南部に比べて雨が少なく,経済性が必ずしもよくなかった。

このたび,やっとナムカン川にとりついたわけであるが,ナムカン2が140MW,ナムカン3は47MWで,今の時点では,ラオスの国内向け程度のの規模となってしまっている。従って北西部のシエンクワンとルワンプラバンを結ぶ送電線を抱き合わせて,ラオス北部一帯の国内電力供給の飛躍的な整備に手を付けようと,視点を変えざるを得なかった,と考えられる。

今日のニュースは,既に日本語でも報道されていて(注),ラオスの電力公社EDLはカモン会長に率いられて,北京に集まったようだ。北京の環境の責任者が,特に発言をしていて,中国はダム建設での海外進出に際しては,その国の環境基準に合致するよう工事を進める,とわざわざ断っている。中国内部でも,大規模水力の中止命令が続々とでており,中国はこの意味で,ダム建設についても曲がり角に来ている。

(注) http://japanese.cri.cn/881/2009/08/14/1s145281.htm


本文

●ラオスのナムカン川でシノハイドロが2つの水力推進へ

Sinohydro Corporation, China's largest builder of hydropower plants, has signed a contract with Laos' electricity supplier, Electricite Du Laos (EDL), to build two hydropower stations and a power transmission line in a deal that is cumulatively worth around $559 million.

中国のラオスへのプレゼンスは大きい。しかし,考えてみれば,ラオスの水力開発に関しては,中国は寧ろ出遅れている。ラオスの水力開発は,1990年代始めに民間開発を指向したから,当時はタイの経済を中心とした西側企業の進出で,ナムトウン川,ナムグム川などの主要なメコン支流を抑えられてしまっていたからか。中国の国境付近は,殆ど中国経済の中であろうから,ルワンプラバン(注8)への南下は,指呼の内だろう。

ルワンプラバン付近にメコン河左岸に流れ込む大支流は,ナムウー,ナムスワン,ナムカン(注9)などがあるが,特に大きいナムウーは,河川勾配が非常に緩やかで,人々が多く川沿いに居住していて,ダムを造ると大きな水没移住が起こることと,この地域はラオスの中でも降雨が少なく,比較の問題で,水力開発には余り適していない,と私は見ていた。中国はこの中でも比較的小規模な地点に,食い込んできた。

シノハイドロ,中国水利水電建設集団公司(注5)は,ミャンマー,カンボジアを始め,遠くアフリカにも進出している。今回,ラオスの国家電力EDL(注6)と合弁を組んで,140MWのナムカン第2水力(注7)と,47MWのナムカン第3水力(注8)を建設する方向で合意した,と報じられた。シエンクワン(注12)からの送電線も含め,総事業費559百万ドルである。

この報道は中国側からなされたものであるが,EDL(注6)の会長職に就いているカモン氏も,間もなく着工,と認めている。注目すべきは,北京の環境中心(注16)のマ・ユン水力担当(注17)が特に発言し,中国の政策として,海外でダム開発を進める場合は,その国の環境基準を遵守する,環境法制が整っていない国では,特に環境に配慮して開発を進める,として,最近の中国の問題点を先んじて制した。

(注)A (1) 090814A Laos, english.people,(2) title: Sinohydro inks power plant deal with Laos' energy firm,(3) http://english.people.com.cn/90001/90778/90857/90861/6727902.html,(4) Source:China Daily,(5) Sinohydro Corporation,中国水利水電建設集団公司,(6) Electricite Du Laos (EDL),(7) 130,000-kW Nam Kham 2 hydropower plant,(8) Luang Prabang,(9) Nam Kham river,(10) Assets Supervision and Administration Commission,(11) 47,000-kW Nam Kham 3 hydropower plant,(12) Xiengkhouang,(13) Laos' 2020 national grid network plan,(14) Khammone Phonekeo, chairman of EDL,(15) Huang Baodong, deputy general manager of Sinohydro,(16) Institute of Public and Environmental Affairs,(17) Ma Jun, a hydropower insider and director of the Institute of Public and Environmental Affairs,(18) photo source: www.flickr.com/photos/ganagafoto/2404737467/,(19)

今日の参考資料

●090814A Laos, english.people
ラオスのナムカン川でシノハイドロが2つの水力推進へ
Sinohydro inks power plant deal with Laos' energy firm
http://my.reset.jp/adachihayao/index090814A.htm
http://english.people.com.cn/90001/90778/90857/90861/6727902.html

最近の関連資料

●090702A Laos, enews.mcot
ラオスは2020年までにASEANの電源地帯となる
Laos plans to become battery of ASEAN by 2020
http://my.reset.jp/adachihayao/index090702A.htm
●090407B Laos, isria.info
ラオスのルワンプラバンでナムモンMW水力が完成
A Japanese funded 70 mw dam supplies energy to six villages
http://www.isria.info/en/7_April_2009_35.htm


●ラオスのビエンチャンでカンボジア,ベトナムなど国境地域の協議

Representatives from Vietnam, Laos and Cambodia have gathered at a conference in Vientiane, Laos to discuss measures to strengthen cooperation in developing the triangle region between the three countries. The implementation of Japanese-funded projects to develop the triangle region is also under discussion.

ラオス,ベトナム,カンボジアのトライアングル地域,と言っても余り注目してみたことはなかったが,改めて地図に焦点を合わせてみて,何があるのかな,と不思議になってくる。アクセス的には殆どベトナムのテリトリーで,カンボジア,ラオスからは接近するのも大変な地域だ。モット広い視野で見ると,セサン川,スレポック川などに囲まれた電源地帯の果てである。

日本政府が20百万ドルの基金を創設したので,それをどう使うか協議をするために,参加国代表がビエンチャンに集まって協議するという。少し調べてみたが,どの様な背景があるのかよく分からない。日本企業も開発に名乗りを上げているという。東西回廊(注7)の構想の一環だ,とも書かれているが,関係ないですよね。或いはここに三国に跨る道路を造ろうというのか,それにしてはお金が足りない。

(注)B (1) 090814B Laos, english.vovnews,(2) title: Conference on Vietnam-Laos-Cambodia development triangle,(3) http://english.vovnews.vn/Home/Conference-on-VietnamLaosCambodia-development-triangle/20098/106787.vov,(4) Vientiane,(5) triangle region,(6) Japanese-funded projects,(7) East-West Corridor,(8) photo source: www.ampersandtravel.com/RegionItineraryList.a...,(9)

今日の参考資料

●090814B Laos, english.vovnews
ラオスのビエンチャンでカンボジア,ベトナムなど国境地域の協議
Conference on Vietnam-Laos-Cambodia development triangle
http://my.reset.jp/adachihayao/index090814B.htm
http://english.vovnews.vn/Home/Conference-on-VietnamLaosCambodia-development-triangle/20098/106787.vov


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