HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
ムンバイのテロ事件は一応の段落を迎えたが,タイの騒乱はまだ先が見えない。12月末まで続くことを見越した経済予測も出ている。このままではタイの経済が潰れるだけでなく,その波及は,ラオスやカンボジア,更にはベトナム,ミャンマーも含めたメコン河流域の経済にまで,影響が及ぶ可能性があるし,それが長期化すれば,アジアのエネルギー最前線に及ぶ影響は大きい。
この,2008年12月4日に,ブミポン国王の演説が予定されている,先日亡くなったお姉さんのことで,国民へのお礼なのであろう。そこで,今最高裁判所が動いている。タクシン派政党の追放を審議する法廷で,12月3日までには結審しなければならない。それは,ブミポン国王の演説の中に,それを入れなければならないからだ。国王は,立憲君主制を尊重する。国民は,国王には絶対に恥を欠かせない,判断に従うはずだ。
タクシン派を非合法とし,それを国王が追認して,軍部もそれに従う。タクシン派を除いた国王の意志による暫定政権を造って総選挙を行い,新しい政権を選ぶ,その様な道筋が見えてくるが,都市部と地方に分極したタイ国民,特に農村部に住む有権者が,タクシン派抜きの総選挙に,静かに従うかどうか,ブミポン国王は悩んでいることだろう。国王も高齢だ,タイの国民も国王を尊崇するなら,迷惑をかけないようにしたらどうか。
この混乱の中でも,エネルギーのテクノクラートは頑張っている。民営化を阻止された国家電力EGAT(注2)は,今や唯一の電力企業で,すべての民間開発の引き取り手を務めている。国際進出のためのEGATインターナショナル(注1)を組織したのはいつであったであろうか。既にラオスでは,関西電力(注13)と組んで,260MW,ナムニエップ水力(注12)の2015年運転開始に向かって走っている。
今日の記事では,スマトラ(注3)のジャンビ県(注11)に,インドネシア政府の認可の元,石炭の探査と生産の権利を獲得した。調査はこれからで,2009年2月に開始し,6ヶ月後に結論を出すという。現地の情報によると,石炭は良質で,埋蔵量は2億トンを超している。EGATインターナショナル(注1)は,可能性調査の結果が良ければ,現地にも発電所を造りたい,と言っている。
タイは,天然ガスへの依存度が70%近くに達し,2008年7月のような原油の高騰に襲われると,天然ガスも吊られて上がり,発電経済が崩壊しかねない。そのために,以前より,石炭火力を建設すべく,奔走しているが,マモーの国産石炭で大きな被害を被ったことがトラウマとなって,石炭火力建設を許さない。それでも,EGATは石炭火力を進めることで,立地の選定に苦慮している。スマトラの石炭は,この一部にも使われる。
それにしても,タイの人々の民衆力はこんなに強かったか。政府建物を包囲しているだけなら,余り国際的な影響は出ないが,彼等も学習したのか,或いは現政府が執務室を空港へ移したのが悪かったのか,国際空港の機能を奪えば,どれほど被害が大きいか,学んでしまった彼等は,今後の市民運動の重要な武器を握ったことになる。あれほど自由だったバンコク国際空港も,これからは厳重な警戒の元に置かれるだろう。
別件,京都議定書後の温室効果ガス削減の枠組み(ポスト京都)をめぐる議論が,この2008年12月1日,明日からポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)で始まる。新興国側と先進国の動き,新政権に移行する米国の出方,中国などの反発でCOP14の交渉が決裂する可能性はなさそうだが,絞り込み作業の先送りは,来年以降の交渉を厳しいものにさせそうだ,と報道されている。
(注) (1) Egat International Co (Egat Inter),(2) Electricity Generating Authority of Thailand,(3) Sumatra,(4) portfolio,(5) Egco Group Plc,(6) Ratchaburi Electricity Generating Holding Plc,(7) Egat governor Sombat Sarntijaree,(8) Prutichai Chonglertvanichkul, acting managing director of Egat Inter,(9) Inter Mining and Energy Co,(10) a memorandum of understanding,(11) Jumbi province,(12) Nam Ngiep hydropower plant,(13) Japan-based Kansai Electric,(14) Laotian government,(15) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081122D.htm,(16) Kalimantan,(17)
本文
●タイ,EGAT,インドネシアで,炭坑権利取得
タイは騒乱の続く中,まもなく,2008年12月3日に,タクシン党に対する審判が下って,12月4日にもブミポン国王の演説があるという。おそらく現政権は降りることになるだろうが,選挙を行うのか,生き残った他の政党で新政権を組むのか,大きな曲がり角に来ている。クーデターの可能性のあった軍部は,どちらかと言えば反タクシンの発言をしているので,内閣は替わるのだろう。その中でEGATが戦っている。
EGAT(注2)の子会社,EGATインター(注1)は,インドネシア政府から,スマトラ(注3)にて,石炭探査及び石炭採掘の権利を認可されたが,これはEGATインター(注1)の海外に於ける発電のポートフォーリオ(注4)を強化することになる。EGATインター(注1)は,EGCO(注5),ラチャブリ(注6)に続く国内3番目の株式上場発電企業である。
EGAT(注2)のソンバット総裁(注7)は,「今回の案件は,タイの将来の電力需給を満たすことを確実にするために,我が売り上げと発電設備の成長を保証するための我々のやり方だ。また更に,EGATインター(注1)は,フィリッピンの電源設備が資金不足に陥っている中で,その電源設備の300~600MWを確保することに成功することを望んでいる。」,更なる海外活動の見通しを述べた。
EGATインター(注1)のプルティチャイ社長代行(注8)によると,今回のスマトラ(注3)に於ける石炭権利は,18万ライ,または2万9000ヘクタールをカバーしている。この案件のEGATインター(注1)の株式持ち分は90%で,残りは,タイ鉱山企業の国際鉱山エネルギー(注9)が持っており,この2企業が,炭坑を共同開発することで,昨日,協定(注10)を交わしている。
探査作業と可能性調査は,2009年2月に開始し,また6ヶ月間に亘り,ビジネスプランを策定するための市場調査を行う予定である。EGATインター(注1)のプルティチャイ社長代行(注8)は,調査の結果,経済的に可能と判断されれば,石炭を地元企業に販売し,また一部をタイへ輸出する,計画という。インドネシア政府から受けている現段階の権利は,ジャンビ県(注11)の1万5,500ライまたは2,500ヘクタールである。
現地の調査によると,ジャンビ県(注11)の石炭埋蔵量は,高度の質を誇る22億トンとされている。金融危機にも関わらず,石炭価格は現状維持に近く,地域の高い需要を反映して,昨年,2007年のトン当たり80~85ドルに対し,70~75ドルである。プルティチャイ社長代行(注8)によると,EGATインター(注1)は,調査の結果が良ければ,現地での発電所建設も視野に入れているという。
EGATインター(注1)の他のプロジェクトは,2015年完成を目指すラオスの,260MW,ナムニエプ水力(注12)で,これは,関西電力(注13)とラオス政府(注14)の共同プロジェクトである。なお,EGAT(注2)のソンバット総裁(注7)は,2015年以降,タイは,2,800MWの石炭火力建設を目指しており,この発電所には,今回案件の石炭も一部として利用する考えであると,表明している。
インドネシアの石炭については,最近では,2008年11月22日付本HP(注15)で扱っている。インドネシアの石炭埋蔵量は930億トンである。インドネシアの石炭はスマトラ(注3)とカリマンタン(注16)に分布している。インドネシアの石炭は,硫黄分と窒素酸化物が少なく,廃棄部分も少なく,それにインドネシアの石炭は露天掘りが多く,経済的である。国内的にも,既設ディーゼル,7,753MWを石炭に変える計画が進む。
(注) (1) Egat International Co (Egat Inter),(2) Electricity Generating Authority of Thailand,(3) Sumatra,(4) portfolio,(5) Egco Group Plc,(6) Ratchaburi Electricity Generating Holding Plc,(7) Egat governor Sombat Sarntijaree,(8) Prutichai Chonglertvanichkul, acting managing director of Egat Inter,(9) Inter Mining and Energy Co,(10) a memorandum of understanding,(11) Jumbi province,(12) Nam Ngiep hydropower plant,(13) Japan-based Kansai Electric,(14) Laotian government,(15) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081122D.htm,(16) Kalimantan,(17)
●インド,グリーン開発で,1,500億ドル計画
インドの気候変動への取り組みを書いた記事は少ない。先日も,私の読者から,インドの再生可能エネルギーへの取り組みを取り上げてくれ,とメールを貰ったことがある。一度,2008年9月29日付本HP(注17)で,今テロで苦しんでいるムンバイのグリーンビルディングの記事を取り上げたが,余りパッとしなかった。今日の記事は珍しいが,これもシンガポールから入った記事である。
記事の元になった報告書は,国際規模の銀行HSBC(注18)のもので,インドの気候変動への目玉は,バイオ燃料,風力,石炭クリーン化(注19)の3本が柱で,2008~2017年の10年間に,1,500億ドルが投入されるとしている。報告書は,「インドの気候変動分野への投資機会」(注20)と題し,2008年7月に出された,「インドの気候変動対策への国家計画」(注21)の政策で,これを切っ掛けに投資が動く,と期待されている。
2008年11月27日付の報告書では,現在の金融危機の元でも,インドの気候変動への反応は,長期的視野に立った成長分野と見ている。インドは,世界の中でも,中国,米国,ロシアに続いて4番目に大きな温暖化ガス排出国で,人口一人当たりにすると,米国が20トン,オーストラリアが28トンに対して,インドは僅かに2トンである。
HSBC(注18)の報告書によると,投資予測は,11のテーマに対して,7.6兆ルピー,約1,500億ドル相当,で,その内訳は,石炭クリーン化(注19)に対して1.7兆ルピー,風力に対して1.34兆ルピー,バイオ燃料に対して1.47兆ルピーとしている。この投資の結果,2018年以降は,二酸化炭素の排出抑制は,4.8億トンに達するものと予測されている。
(注) (17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index080929C,(18) HSBC,(19) clean coal,(20) "India's climate investment opportunities revealed",(21) India's National Action Plan on Climate Change,(22)
●インド,水力開発,地方電化で優先資金獲得
国家予算等で動かす電力分野への資金投入が,問題にされている記事である。中央政府は,銀行の融資対象としての優先度の中に,地方電化と水力発電を含めることで,見直す決定をした。既に関係閣僚会議(注22)の,電力セクター見直しのための小委員会は,技術的な問題から,財務省によってトーンダウンされていた。ここで,凍結されていた2兆ルピーを動かすことが期待されている。
一方銀行は,農業や中小企業の優先度の高いプロジェクトへのローンの40%を負担することを要請されている。新しい提案は,1件位1億ルピーを超えない範囲で,銀行が,地方電化,独立系統の電源,小水力などへの融資を行うことが好ましい,としている。計画委員会(注23)は,提案はインフラ重視で,その勧告を,財務省とインド貯蓄銀行(注24)に来月までに報告書を付けて提出する,としている。
地方電化は,UPA(注25)政府の重点政策の一つで,BNプログラム(注26)の項目の一つである。このプログラムは,地方インフラ,住居,道路,通信,給水など,の構築を目的としている。財務省は,優先度について明確な基準を求めているが,政府はこのため小委員会を設け,送配電線も含めた電力セクターの優先度を協議することになっている。
小委員会はアルワリア計画委員会次席(注28)が指揮し,アンデラプラデシュ(注29),アッサム(注30),マハラシュトラ(注31),オリッサ(注32),ウッタルプラデッシュ(33)の各州の電力大臣がメンバーに入っている。財務省当局は,電力,道路,航空,など多くの優先度への要請が来ており,全部は無理だが,特別の優先度はやむを得ない,としている。銀行側は,電力セクターに,既に大きな融資残高を持っている。
銀行の電力セクターの融資残高は,全インフラ分の50%に当たるが,実際の準備金は6,000億ルピーで,電力セクターの必要額は,第11次五カ年計画(注34)で10兆ルピーを超す規模である。一旦銀行が,この電力セクターの提案を受け入れると,すべて融資残高で賄うことが出来る。11月7日現在の合計貸し出しは27兆ルピーで,30%伸びとすれば,10兆ルピーが,優先プロジェクトへ回せることになる。
(注) (22) group of ministers (GoM),(23) Planning Commission,(24) Reserve Bank of India (RBI),(25) United Progressive Alliance (UPA) ,(26) United Progressive Alliance (UPA),(27) Bharat Nirman programme,(28) Planning Commission deputy chairman Montek Singh Ahluwalia,(29) Andhra Pradesh,(30) Assam,(31) Maharashtra,(32) Orissa,(33) Uttar Pradesh,(34) Eleventh Five Year Plan (2007-12),(35)
Reference
Thailand
●081129A Thailand, Bangkok Post
EGAT,インドネシアで,炭坑権利取得
Egat gets mining approval in Indonesia
http://www.bangkokpost.com/291108_Business/29Nov2008_biz34.php
India
●081129B India, Economic Times
インド,グリーン開発で,1500億ドル計画
India green spending could reach $150 bn by 2017
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_green_spending_could_reach_150_bn_by_2017/articleshow/3769920.cms
●081129C India, Economic Times
インド,水力開発,地方電化で優先資金獲得
Hydro projects, rural power to get priority funds
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Hydro_projects_rural_power_to_get_priority_funds/articleshow/3771328.cms
2008年11月30日日曜日
2008年11月29日土曜日
世銀の大規模インフラに批判の声
HPは下記ドメインです。地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
インドのムンバイのテロ事件は収束に向かったが,死者の数は160人以上に上るという。パキスタンとの関係悪化が問題で,パキスタンの軍司令官がデリーに呼び出されている。バンコクは,空軍の飛行場を利用して,日本人観光客達約260人が引き上げてきたが,もう2度とバンコクには行きたくないと言っている。インドも,タイも,アジアのエネルギーの最前線である。これで投資意欲減退となれば,影響は大きい。
先日,インドがガスや原油を,トルコの地中海沿岸からイスラエルに運んで,イスラエル南端のアクバ湾の港エイラットに運び,タンカーでアカバ湾,紅海,アデン湾,アラビア海を経て,インドに運ぶ,と言う話のとき,イスラエルにアカバ湾,紅海への出口があることを知らなかった私は,地図で調べてその繁栄ぶりに驚き,誰か我々仲間で知っている人いるか,居たら表彰状を差し上げる,と言っていた。
私の読者1,300人のうち,ただ一人,エリオットを通過した人がいて,丁寧な表彰状を差し上げた。彼によると,「エイラット国境を通過した際にこのリゾート通過しました。アカバ湾は生物の多様性を保持しており,世界的にダイビングのメッカです。夜にヨルダン側から見ると,漁り火のようにエイラット側が輝いていました。またアカバ湾での夕日はエイラット側に沈み,夕焼けが,虹色になったのを想い出しました。」。
さて,今日は,世界銀行が出版した大規模ダムの書物に対して,世界銀行のダムへのこだわりを批判する記事を拾ってきた。世界銀行は,ラオスのナムテン2水力への支援に困って,世界の有識者に頼んで事例研究を行い,2000年に,ダム報告書を作成して世に問い,その結果をラオスに適用して,ナムテン2ダム支援を決定した。ラオスマイナスナムテンはゼロ,であったから,当時としては英断と見た。
そのナムテンダムもいよいよ完成が近づいてきたが,地球温暖化などやアフリカ支援の増大で,世界銀行としては,2000年の報告書以来8年,今ここで再び,世に大規模ダムの意味を問いかける必要があったのだろう,今度は書籍出版という形で,世に出したわけであるが,今日の記事ではさんざんに叩かれている。勿論主としてNGOグループであるが,世界銀行の大規模インフラ寄りを,その俎上に挙げている。次がポイント。
最近刊行された世界銀行の単行本,「大規模ダム」(注2)は,彼等の言うダムの便益を強調し,深刻な社会的,自然環境の代価を不適切に評価している。これは,世界銀行(注5)が,大規模ダムに好意を持っている証拠である。この,ダムの間接的な経済的影響,と題するものは,インド,エジプト,ブラジルを取り上げ,その経済効果を論じたもので,4つの例をとり,直接効果と貧困削減を取り上げている。
「大規模ダム」(注2)は4つの例を取り上げているが,10の例を挙げ,125のダムについて100項目に亘る技術検討を行ったWCD報告書(注3)に比べると,余りに対象が少ない。この対象の不足は深さにも及んでいる。経済効果を単純に論じて,社会的環境的代価の評価に失敗している。更に,初歩的な要素でダムを賞賛し,肯定的な要素が含まれる事例ばかりを取り上げている。
私は,世界銀行にしても環境NGOにしても,一般的な大規模ダムがよいか悪いか,を議論していることに誤りがあると思う。地形が違い,環境が違い,社会が違い,経済が違い,時代が違う。私たちのダムには一般的な設計や計画はない。必ず,その地点によって条件が異なる中での計画や,調査や,設計や,工事になる。その場所によっても違うし,時代も大きな要素だ。
日本がダムを造っていた頃は,日本はダムを必要としていた。インド,ベトナム,中国,ラオス,ミャンマー,などは,何千年と続く悠久の歴史の中で,ただ,いまの一点にダムを必要としているのでゃなかろうか。それも,同じインドの中でも,場所によって条件は全く違ってくるし,大規模ダムは善か悪かの一般議論は止めた方がよい。ダム地元の問題は別で,これは時代にあった対応が迫られていることは事実だろう。
(注)(1) World Bank commissioned book on large dams,(2) http://www.amazon.com/Future-Large-Dams-Environmental-Institutional/dp/1844071553,(3) World Commission on Dam's (WCD) 2000 report, (4) Nam Theun 2 hydropower project,(5) World Bank, (6) http://www.brettonwoodsproject.org/,(7) Bhakra dam,(8) Peter Bosshard of International Rivers,(9) 2005 Deaton report,(10) John Briscoe, the Bank´s senior water advisor,(11) Himanshu Thakkar, the coordinator of the South Asia Network on Dams, Rivers and People,(12) Democratic Republic of the Congo,(13) Grand Inga Dam,(14) Three Gorges Dam,(15) Inga 3,(16) Washington-based NGO Bank Information Center (BIC),(17) Shannon Lawrence of NGO International Rivers,(18) Damming for development: Lessons from Laos,(19) Nile river,(20) public-private partnership (PPP) project,(21)
本文
●世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している
現在工事中でまもなく完成するラオスのナムテン2水力プロジェクト(注4),融資と保証を求められた世界銀行(注5)は随分悩んだ。私たちも,世界銀行(注5)は最終的には承認しないのではないか,と思ったりしていた。その間,2000年に,世界銀行の支援で,世界の有識者によって書かれたWCD報告書(注3)が作成され,世に問われた。世界銀行(注5)は,これを一つの突破口に,ラオスへの支援に踏み切った。
ナムテン2水力プロジェクト(注4)が出来なければ,ラオスは潰れ,と言う認識もあった。このWCD報告書(注3)は,我々も注目して読んだり,サマリーを造ったりしたものだが,基本は,住民参加,だったと思う。あれから8年,世界銀行は再び,「大規模ダム」(注1),(注2),として,世に問うた。これを,ブレトンウッズ(注6)が,批判した記事である。
最近刊行された世界銀行の単行本,「大規模ダム」(注2)は,彼等の言うダムの便益を強調し,深刻な社会的,自然環境の代価を不適切に評価している。これは,世界銀行(注5)が,大規模ダムに好意を持っている証拠である。この,ダムの間接的な経済的影響,と題するものは,インド,エジプト,ブラジルを取り上げ,その経済効果を論じたもので,4つの例をとり,直接効果と貧困削減を取り上げている。
「大規模ダム」(注2)は4つの例を取り上げているが,10の例を挙げ,125のダムについて100項目に亘る技術検討を行ったWCD報告書(注3)に比べると,余りに対象が少ない。この対象の不足は深さにも及んでいる。経済効果を単純に論じて,社会的環境的代価の評価に失敗している。更に,初歩的な要素でダムを賞賛し,肯定的な要素が含まれる事例ばかりを取り上げている。
例えば,インドのバクラダム(注7)では,農業生産の成長を,農業の産業化と結びつけているが,農業は,ダム建設による土壌沃土の低下と地下水の低下という逆効果に悩まされている。反論が世界的に起こっている。IRのボシャード(注8)は,短絡的で政治的な調査に属するとし,それは2005年のディートン報告書(注9)にも書かれたことで,世界銀行のブレスク(注10)のダム擁護論,大規模水インフラの力,を筋書きにしている。
また,NGOのタッカー(注11)は,「大規模ダム」(注2)は,短絡的で世界銀行のダムとのギャップを埋めるのに役立っていない,調査そのものも,不正確で誇張が多く,見落としも多数ある,と酷評している。教訓はまだ生かされていなくて,最近の動向を見ても,世界銀行は未だ大規模インフラにこだわっており,その投資が貧困削減という重要な任務への動機となり得る証拠は,見つけ出せない。
コンゴー(注12)の例では,ダムの便益を受け取るのは,投資企業だけのように見受けられる。グランドインガダム(注13)は,三峡ダム(注14)を凌ぐ規模で,工事費は800億ドルであるが,インガ第3水力(注15)はその一部をなす。ワシントンのBIC(注16)は,この出力は,鉱山運営の拡張と電力輸出が主目的であって,開発の便益は,甚だ不明確である,とコメントしている。
WCD報告書(注3)の目的であったナムテン2水力プロジェクト(注4)は,対象が貧困ではなかった。NGOのIR,ローレンス(注17)の2008年7月の報告書,「ラオスの教訓(注18)」,によれば,今では移住者が6,000人と考えられている問題で,現地住民をプロジェクトの過程の中に巻き込む,という試みは,失敗に終わっている,と批判している。2008年6月時点で,完成時期は守られるが,環境計画はつまずいていると。
世界銀行(注5)の大規模インフラへの偏りは,ダムまで及んでいる。2008年9月1日に,世界銀行(注5)はエジプト政府と,新規灌漑施設で145百万ドルの支援を約束した。従来までナイル川(注19)の灌漑は公共事業であったが,今回は,公共民間協力(注20)となっている。雇用増大が言われているが,新技術導入で限界があり,便益は投資者にある。2009年着工であるが,貧困者への配分は未だ不透明である。
世界銀行(注5)刊行の「大規模ダム」(注2)は,相当の批判を招いている。私は,ダムがよいか悪いか,を一般的に論じようとしている企業サイドも,また環境グループの側も,正しくないと思っている。地形も違うし自然も違うし社会も経済も違う。ダムはある時あるところでは必要であるし,場所によっては無用で逆効果が目立つ場合もある。ある時点,日本がダムを必要としたように,世界でダムが必要な場所は,あるはずだ。
(注)(1) World Bank commissioned book on large dams,(2) http://www.amazon.com/Future-Large-Dams-Environmental-Institutional/dp/1844071553,(3) World Commission on Dam's (WCD) 2000 report, (4) Nam Theun 2 hydropower project,(5) World Bank, (6) http://www.brettonwoodsproject.org/,(7) Bhakra dam,(8) Peter Bosshard of International Rivers,(9) 2005 Deaton report,(10) John Briscoe, the Bank´s senior water advisor,(11) Himanshu Thakkar, the coordinator of the South Asia Network on Dams, Rivers and People,(12) Democratic Republic of the Congo,(13) Grand Inga Dam,(14) Three Gorges Dam,(15) Inga 3,(16) Washington-based NGO Bank Information Center (BIC),(17) Shannon Lawrence of NGO International Rivers,(18) Damming for development: Lessons from Laos,(19) Nile river,(20) public-private partnership (PPP) project,(21)
●インド,世界経済危機,NHPCの株式上場を遅らせる
インドの水力発電公社NHPC(注21)は100%政府株式保有の国営公社である。何度も株式上場の話が持ち上がっていたが,今回の金融危機で,上場時期を遅らせたようだ。NHPC(注21)のガルグ会長(注22)は,記者会見で,「あなたがたも感じているように,時期が悪い,上場を延期して,時期が至るのを待つ,」,とした。日本の郵貯と同じ環境に置かれたようだ。
NHPC(注21)は,2012年までに発電設備を倍増するため,2,800億インドルピー(注23)を投入する計画を持っている。このうち,1,100億ルピーは内部留保と上場による株式市場で,1,700億ルピーを外部よりの借り入れで調達する計画である。これらの借り入れはローンで賄われるが,信用問題が起きたわけではないので,現在のプロジェクトは,遅れることなく,進めることが出来る,と。
2008年8月にインド証券市場(注24)に提出され,ウエッブ上でも公表された株式売買説明書(注25)によると,売り出し株式は,168万株で,新たに市場に出すのが112万株,インド政府持ち分が55万9,100株となっている。こららの新規資金調達分は,計画中の7つの水力プロジェクトの資金調達の一部として使う予定である。
NHPC(注21)は,2012年までに新規電源を,5,322MW開発の予定である。現在の発電設備は,5175MWである。もしこの株式上場が実行されると,現在,インド政府が100%保有しているNHPC(注21)の株式は,インド政府持ち分が,86.4%に低下することになる。
(注) (21) NHPC formerly National Hydroelectric Power Corp,(22) Mr SK Garg chairman of NHPC,(23) INR, (24) Securities & Exchange Board of India,(25) share sale document,(26)
●インドネシア,国有ガス会社PGN,2009年は売り上げ好調と
インドネシアの国有ガス企業PGN(注26)は,発電需要の伸びで,来年,2009年も30%の成長を続ける見込みである。売上量は,2008年の予想が日6億立方フィート(MScfd(注27))に対して,2009年は,7億~8億MScfd(注27)に増ぢする見込みである。水曜日の記者会見でヘンディPGN社長(注28)が,見込みを発表した。
ヘンディPGN社長(注28)は,金融危機の最中であるが,発電事業者の需要は高い。PGN(注26)がこの発電事業者の需要を賄うことが出来るならば,来年度,2009年は極めて有望である,しかし,金融危機が如何に規模が大きいのか,いつまで続くのか,良く見極める必要がある,と語っている。しばらくはPGN社長(注28)は,最大の顧客である発電事業者の需要を満たすことに重点を置く,と。
現在,PGN(注26)は,発電事業者向けに,日2.6億立方フィートを供給中で,需要増大ではあるが,状況が変わらない限り,価格は変更しない,とヘンディPGN社長(注28)は言っている。現在,PGN(注26)は,百万Btu当たり(注29)5.5ドルで販売しており,購入価格は百万Btu当たり(注29)3.9ドルである。PGN(注26)のリサ財務部長(注30)は,2009年の経費は,2億ドルに達する,と語っている。
この費用は,内部予算とローンで賄われるが,ローンは,JBIC(注31)と世界銀行が大部分である。費用の殆どは,パイプラインネットワークのの開発に使われるもので,今年,2008年8月には,その全延長が1,035kmに達し,その容量は,日9.7億立方フィートである。PGN(注26)は政府所有であるので,その純益は政府の大きな歳入源で,政府財政の流動性に貢献している。
(注) (26) State gas distributor PT Perusahaan Gas Negara (PGN),(27) million cubic feet per day (MMScfd),(28) PGN president director Hendi Prio Santoso,(29) million British thermal units (mmbtu),(30) Riza Pahlevi Tabrani, PGN finance director,,(31) Japanese Bank for International Cooperation,(32)
Reference
Laos
●081128A Laos, brettonwoodsproject
世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している
new World Bank book fails to convince critics of large dams
http://www.brettonwoodsproject.org/art-562990
India
●081128B India, steelguru
世界経済危機,NHPCの株式上場を遅らせる
Recession reports - NHPC defers share sale
http://steelguru.com/news/index/2008/11/28/NzMwNTg%3D/Recession_reports_-_NHPC_defers_share_sale.html
Indoinesia
●081128C Indonesia, The Jakarta Post
国有ガス会社PGN,発電需要で,2009年は売り上げ好調と
PGN expects robust sales in 2009 on demand from power producers
http://www.thejakartapost.com/news/2008/11/27/pgn-expects-robust-sales-2009-demand-power-producers.html
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
インドのムンバイのテロ事件は収束に向かったが,死者の数は160人以上に上るという。パキスタンとの関係悪化が問題で,パキスタンの軍司令官がデリーに呼び出されている。バンコクは,空軍の飛行場を利用して,日本人観光客達約260人が引き上げてきたが,もう2度とバンコクには行きたくないと言っている。インドも,タイも,アジアのエネルギーの最前線である。これで投資意欲減退となれば,影響は大きい。
先日,インドがガスや原油を,トルコの地中海沿岸からイスラエルに運んで,イスラエル南端のアクバ湾の港エイラットに運び,タンカーでアカバ湾,紅海,アデン湾,アラビア海を経て,インドに運ぶ,と言う話のとき,イスラエルにアカバ湾,紅海への出口があることを知らなかった私は,地図で調べてその繁栄ぶりに驚き,誰か我々仲間で知っている人いるか,居たら表彰状を差し上げる,と言っていた。
私の読者1,300人のうち,ただ一人,エリオットを通過した人がいて,丁寧な表彰状を差し上げた。彼によると,「エイラット国境を通過した際にこのリゾート通過しました。アカバ湾は生物の多様性を保持しており,世界的にダイビングのメッカです。夜にヨルダン側から見ると,漁り火のようにエイラット側が輝いていました。またアカバ湾での夕日はエイラット側に沈み,夕焼けが,虹色になったのを想い出しました。」。
さて,今日は,世界銀行が出版した大規模ダムの書物に対して,世界銀行のダムへのこだわりを批判する記事を拾ってきた。世界銀行は,ラオスのナムテン2水力への支援に困って,世界の有識者に頼んで事例研究を行い,2000年に,ダム報告書を作成して世に問い,その結果をラオスに適用して,ナムテン2ダム支援を決定した。ラオスマイナスナムテンはゼロ,であったから,当時としては英断と見た。
そのナムテンダムもいよいよ完成が近づいてきたが,地球温暖化などやアフリカ支援の増大で,世界銀行としては,2000年の報告書以来8年,今ここで再び,世に大規模ダムの意味を問いかける必要があったのだろう,今度は書籍出版という形で,世に出したわけであるが,今日の記事ではさんざんに叩かれている。勿論主としてNGOグループであるが,世界銀行の大規模インフラ寄りを,その俎上に挙げている。次がポイント。
最近刊行された世界銀行の単行本,「大規模ダム」(注2)は,彼等の言うダムの便益を強調し,深刻な社会的,自然環境の代価を不適切に評価している。これは,世界銀行(注5)が,大規模ダムに好意を持っている証拠である。この,ダムの間接的な経済的影響,と題するものは,インド,エジプト,ブラジルを取り上げ,その経済効果を論じたもので,4つの例をとり,直接効果と貧困削減を取り上げている。
「大規模ダム」(注2)は4つの例を取り上げているが,10の例を挙げ,125のダムについて100項目に亘る技術検討を行ったWCD報告書(注3)に比べると,余りに対象が少ない。この対象の不足は深さにも及んでいる。経済効果を単純に論じて,社会的環境的代価の評価に失敗している。更に,初歩的な要素でダムを賞賛し,肯定的な要素が含まれる事例ばかりを取り上げている。
私は,世界銀行にしても環境NGOにしても,一般的な大規模ダムがよいか悪いか,を議論していることに誤りがあると思う。地形が違い,環境が違い,社会が違い,経済が違い,時代が違う。私たちのダムには一般的な設計や計画はない。必ず,その地点によって条件が異なる中での計画や,調査や,設計や,工事になる。その場所によっても違うし,時代も大きな要素だ。
日本がダムを造っていた頃は,日本はダムを必要としていた。インド,ベトナム,中国,ラオス,ミャンマー,などは,何千年と続く悠久の歴史の中で,ただ,いまの一点にダムを必要としているのでゃなかろうか。それも,同じインドの中でも,場所によって条件は全く違ってくるし,大規模ダムは善か悪かの一般議論は止めた方がよい。ダム地元の問題は別で,これは時代にあった対応が迫られていることは事実だろう。
(注)(1) World Bank commissioned book on large dams,(2) http://www.amazon.com/Future-Large-Dams-Environmental-Institutional/dp/1844071553,(3) World Commission on Dam's (WCD) 2000 report, (4) Nam Theun 2 hydropower project,(5) World Bank, (6) http://www.brettonwoodsproject.org/,(7) Bhakra dam,(8) Peter Bosshard of International Rivers,(9) 2005 Deaton report,(10) John Briscoe, the Bank´s senior water advisor,(11) Himanshu Thakkar, the coordinator of the South Asia Network on Dams, Rivers and People,(12) Democratic Republic of the Congo,(13) Grand Inga Dam,(14) Three Gorges Dam,(15) Inga 3,(16) Washington-based NGO Bank Information Center (BIC),(17) Shannon Lawrence of NGO International Rivers,(18) Damming for development: Lessons from Laos,(19) Nile river,(20) public-private partnership (PPP) project,(21)
本文
●世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している
現在工事中でまもなく完成するラオスのナムテン2水力プロジェクト(注4),融資と保証を求められた世界銀行(注5)は随分悩んだ。私たちも,世界銀行(注5)は最終的には承認しないのではないか,と思ったりしていた。その間,2000年に,世界銀行の支援で,世界の有識者によって書かれたWCD報告書(注3)が作成され,世に問われた。世界銀行(注5)は,これを一つの突破口に,ラオスへの支援に踏み切った。
ナムテン2水力プロジェクト(注4)が出来なければ,ラオスは潰れ,と言う認識もあった。このWCD報告書(注3)は,我々も注目して読んだり,サマリーを造ったりしたものだが,基本は,住民参加,だったと思う。あれから8年,世界銀行は再び,「大規模ダム」(注1),(注2),として,世に問うた。これを,ブレトンウッズ(注6)が,批判した記事である。
最近刊行された世界銀行の単行本,「大規模ダム」(注2)は,彼等の言うダムの便益を強調し,深刻な社会的,自然環境の代価を不適切に評価している。これは,世界銀行(注5)が,大規模ダムに好意を持っている証拠である。この,ダムの間接的な経済的影響,と題するものは,インド,エジプト,ブラジルを取り上げ,その経済効果を論じたもので,4つの例をとり,直接効果と貧困削減を取り上げている。
「大規模ダム」(注2)は4つの例を取り上げているが,10の例を挙げ,125のダムについて100項目に亘る技術検討を行ったWCD報告書(注3)に比べると,余りに対象が少ない。この対象の不足は深さにも及んでいる。経済効果を単純に論じて,社会的環境的代価の評価に失敗している。更に,初歩的な要素でダムを賞賛し,肯定的な要素が含まれる事例ばかりを取り上げている。
例えば,インドのバクラダム(注7)では,農業生産の成長を,農業の産業化と結びつけているが,農業は,ダム建設による土壌沃土の低下と地下水の低下という逆効果に悩まされている。反論が世界的に起こっている。IRのボシャード(注8)は,短絡的で政治的な調査に属するとし,それは2005年のディートン報告書(注9)にも書かれたことで,世界銀行のブレスク(注10)のダム擁護論,大規模水インフラの力,を筋書きにしている。
また,NGOのタッカー(注11)は,「大規模ダム」(注2)は,短絡的で世界銀行のダムとのギャップを埋めるのに役立っていない,調査そのものも,不正確で誇張が多く,見落としも多数ある,と酷評している。教訓はまだ生かされていなくて,最近の動向を見ても,世界銀行は未だ大規模インフラにこだわっており,その投資が貧困削減という重要な任務への動機となり得る証拠は,見つけ出せない。
コンゴー(注12)の例では,ダムの便益を受け取るのは,投資企業だけのように見受けられる。グランドインガダム(注13)は,三峡ダム(注14)を凌ぐ規模で,工事費は800億ドルであるが,インガ第3水力(注15)はその一部をなす。ワシントンのBIC(注16)は,この出力は,鉱山運営の拡張と電力輸出が主目的であって,開発の便益は,甚だ不明確である,とコメントしている。
WCD報告書(注3)の目的であったナムテン2水力プロジェクト(注4)は,対象が貧困ではなかった。NGOのIR,ローレンス(注17)の2008年7月の報告書,「ラオスの教訓(注18)」,によれば,今では移住者が6,000人と考えられている問題で,現地住民をプロジェクトの過程の中に巻き込む,という試みは,失敗に終わっている,と批判している。2008年6月時点で,完成時期は守られるが,環境計画はつまずいていると。
世界銀行(注5)の大規模インフラへの偏りは,ダムまで及んでいる。2008年9月1日に,世界銀行(注5)はエジプト政府と,新規灌漑施設で145百万ドルの支援を約束した。従来までナイル川(注19)の灌漑は公共事業であったが,今回は,公共民間協力(注20)となっている。雇用増大が言われているが,新技術導入で限界があり,便益は投資者にある。2009年着工であるが,貧困者への配分は未だ不透明である。
世界銀行(注5)刊行の「大規模ダム」(注2)は,相当の批判を招いている。私は,ダムがよいか悪いか,を一般的に論じようとしている企業サイドも,また環境グループの側も,正しくないと思っている。地形も違うし自然も違うし社会も経済も違う。ダムはある時あるところでは必要であるし,場所によっては無用で逆効果が目立つ場合もある。ある時点,日本がダムを必要としたように,世界でダムが必要な場所は,あるはずだ。
(注)(1) World Bank commissioned book on large dams,(2) http://www.amazon.com/Future-Large-Dams-Environmental-Institutional/dp/1844071553,(3) World Commission on Dam's (WCD) 2000 report, (4) Nam Theun 2 hydropower project,(5) World Bank, (6) http://www.brettonwoodsproject.org/,(7) Bhakra dam,(8) Peter Bosshard of International Rivers,(9) 2005 Deaton report,(10) John Briscoe, the Bank´s senior water advisor,(11) Himanshu Thakkar, the coordinator of the South Asia Network on Dams, Rivers and People,(12) Democratic Republic of the Congo,(13) Grand Inga Dam,(14) Three Gorges Dam,(15) Inga 3,(16) Washington-based NGO Bank Information Center (BIC),(17) Shannon Lawrence of NGO International Rivers,(18) Damming for development: Lessons from Laos,(19) Nile river,(20) public-private partnership (PPP) project,(21)
●インド,世界経済危機,NHPCの株式上場を遅らせる
インドの水力発電公社NHPC(注21)は100%政府株式保有の国営公社である。何度も株式上場の話が持ち上がっていたが,今回の金融危機で,上場時期を遅らせたようだ。NHPC(注21)のガルグ会長(注22)は,記者会見で,「あなたがたも感じているように,時期が悪い,上場を延期して,時期が至るのを待つ,」,とした。日本の郵貯と同じ環境に置かれたようだ。
NHPC(注21)は,2012年までに発電設備を倍増するため,2,800億インドルピー(注23)を投入する計画を持っている。このうち,1,100億ルピーは内部留保と上場による株式市場で,1,700億ルピーを外部よりの借り入れで調達する計画である。これらの借り入れはローンで賄われるが,信用問題が起きたわけではないので,現在のプロジェクトは,遅れることなく,進めることが出来る,と。
2008年8月にインド証券市場(注24)に提出され,ウエッブ上でも公表された株式売買説明書(注25)によると,売り出し株式は,168万株で,新たに市場に出すのが112万株,インド政府持ち分が55万9,100株となっている。こららの新規資金調達分は,計画中の7つの水力プロジェクトの資金調達の一部として使う予定である。
NHPC(注21)は,2012年までに新規電源を,5,322MW開発の予定である。現在の発電設備は,5175MWである。もしこの株式上場が実行されると,現在,インド政府が100%保有しているNHPC(注21)の株式は,インド政府持ち分が,86.4%に低下することになる。
(注) (21) NHPC formerly National Hydroelectric Power Corp,(22) Mr SK Garg chairman of NHPC,(23) INR, (24) Securities & Exchange Board of India,(25) share sale document,(26)
●インドネシア,国有ガス会社PGN,2009年は売り上げ好調と
インドネシアの国有ガス企業PGN(注26)は,発電需要の伸びで,来年,2009年も30%の成長を続ける見込みである。売上量は,2008年の予想が日6億立方フィート(MScfd(注27))に対して,2009年は,7億~8億MScfd(注27)に増ぢする見込みである。水曜日の記者会見でヘンディPGN社長(注28)が,見込みを発表した。
ヘンディPGN社長(注28)は,金融危機の最中であるが,発電事業者の需要は高い。PGN(注26)がこの発電事業者の需要を賄うことが出来るならば,来年度,2009年は極めて有望である,しかし,金融危機が如何に規模が大きいのか,いつまで続くのか,良く見極める必要がある,と語っている。しばらくはPGN社長(注28)は,最大の顧客である発電事業者の需要を満たすことに重点を置く,と。
現在,PGN(注26)は,発電事業者向けに,日2.6億立方フィートを供給中で,需要増大ではあるが,状況が変わらない限り,価格は変更しない,とヘンディPGN社長(注28)は言っている。現在,PGN(注26)は,百万Btu当たり(注29)5.5ドルで販売しており,購入価格は百万Btu当たり(注29)3.9ドルである。PGN(注26)のリサ財務部長(注30)は,2009年の経費は,2億ドルに達する,と語っている。
この費用は,内部予算とローンで賄われるが,ローンは,JBIC(注31)と世界銀行が大部分である。費用の殆どは,パイプラインネットワークのの開発に使われるもので,今年,2008年8月には,その全延長が1,035kmに達し,その容量は,日9.7億立方フィートである。PGN(注26)は政府所有であるので,その純益は政府の大きな歳入源で,政府財政の流動性に貢献している。
(注) (26) State gas distributor PT Perusahaan Gas Negara (PGN),(27) million cubic feet per day (MMScfd),(28) PGN president director Hendi Prio Santoso,(29) million British thermal units (mmbtu),(30) Riza Pahlevi Tabrani, PGN finance director,,(31) Japanese Bank for International Cooperation,(32)
Reference
Laos
●081128A Laos, brettonwoodsproject
世界銀行のダム報告書,批判への説得に失敗している
new World Bank book fails to convince critics of large dams
http://www.brettonwoodsproject.org/art-562990
India
●081128B India, steelguru
世界経済危機,NHPCの株式上場を遅らせる
Recession reports - NHPC defers share sale
http://steelguru.com/news/index/2008/11/28/NzMwNTg%3D/Recession_reports_-_NHPC_defers_share_sale.html
Indoinesia
●081128C Indonesia, The Jakarta Post
国有ガス会社PGN,発電需要で,2009年は売り上げ好調と
PGN expects robust sales in 2009 on demand from power producers
http://www.thejakartapost.com/news/2008/11/27/pgn-expects-robust-sales-2009-demand-power-producers.html
2008年11月28日金曜日
フィリッピンの再生可能エネルギー再び
HPは下記ドメインです。地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
インドのムンバイ,テロ事件の最新情報では,死者数は125人、負傷者数は327人,で,タージマハールホテルは制圧されたが,トライデントホテルはまだ制圧中。それにしても津田さんの犠牲は人ごととは思えない。エネルギー最前線で戦っていた人だったから,ひょっとしたら一度ぐらい私のメルマガも読んでいてくれたかも知れない。冥福を祈ります。ただ,いろいろな解説を聞いていると,外国資本投資への反発,との意見もあり,しばらくのインドは,外資導入にも障害が生ずる可能性がある。外資導入が貧富の格差を生んだ,とテロの遠因を説明する人がある。
バンコクは,既にタイの経済学者などは,空港閉鎖が年末まで続く可能性がある,として損害額やGDPの落ちを計算し始めている。それほどタクシン派を追放するのは難しいのか,と思ってしまう。結局,地方の支持がタクシンから離れないので,総選挙をやってもまた同じことになるのか。結局タイは,バンコクと地方に経済格差が大きくなりすぎて,国民が2極化した,と言うことなのであろうか。1990年頃でも,我々も余りの落差に驚いていたぐらいだから,バンコク市民は,実力で政権をひっくり返すより仕方がない,何とも不幸な成り行きだ。
今日は再び,フィリッピンの再生可能エネルギーを取り上げている。面倒くさいが,どうも最近は,このフィリッピンの国産エネルギーへのこだわりが突出してきて,東南アジアでは特殊な動きを始めたことが気になり始めた。今日の記事は,再生可能エネルギー法案(注14)を積極的に進めてきたアンガラ上院議員(注2)が,2008年10月に上海で開かれたフォーラム(注3)で講演した内容に基づく。ポイントを上げると。
フィリッピンであるが,2010年までに60%を国内エネルギーで賄う目標を持っている。2000年に45%であった国産依存は,2007年には57.20%に達した。発電分野では,自給率が2006年に66%となり,石油依存度は,20.28%であったものが8.2%まで落ちている。この2010年,60%と言う目標は,フィリッピンに豊富な地熱などを中心に,再生可能エネルギーの利用で実現したい。
2003年に策定された再生可能エネルギー政策枠組み(注9)のもと,10年間で再生可能エネルギーを倍増する目標で,2007年末時点には5445MWに達した。フィリッピンエネルギー計画(注10)は,2009~2012年で新規電源5,393MW必要で,この内訳は,ルソン(注11)が3711MW,ビサヤ(注12)が844MW,ミンダナオ(注13)が838MWである。再生可能エネルギーによる新規電源は,現在,2,469MWが準備中の状態にある。この計画に対応する法律整備も進めている。
私は,とにかく世界の最先端に,落ちつくところを考えずにまず飛び上がるフィリッピンの行政の特徴を見る。原子力然り,電力セクター改革然り,そうしてまたこの再生可能エネルギー然り,である。原子力はとんでもないところでひっくり返ったし,電力改革は,東南アジアでも一番高い電気料金を下げることが改革の目的だったのだが,今のところはこれがその意に反している。電力改革は,とにかくそのまま進め,と言う人と,電気料金が高い,という一点で反対する勢力があるが,もう引っ返せない。需給バランスが壊れたときどう対処するか,それが改革の正否を決める。
再生可能エネルギーについては,これは資源のない国としての建前を前面に出してきて,国産資源を開発することと一体となって進んでいる。太陽光や風力もさることながら,やはり行き着くところは,地熱発電と水力だろう。水力は相当に開発が進んだと思わているが,治安の関係で手が付けられていないところが,まだミンダナオやルソン北部に残っている。フィリッピンの戦いを見守ろう。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081010C.htm,(2) Sen. Edgardo Angara,(3) Asia Pacific Finance and Development Center Biennial Forum,(4) International Energy Agency,(5) tons of oil equivalent (toe),(6) solar photovoltaic,(7) European Union,(8) Global Wind 2007 Report,(9) Renewable Energy Policy Framework,(10) Philippine Energy Plan,(11) Luzon,(12) Visayas,(13) Mindanao,(14) Renewable Energy Bill,(15) Renewable Portfolio Standard,(16) feed-in-tariff mechanism,(17) Green Energy Option,(18) carbon credit,(19) Green Revolution,(20) Rep. Mikey Macapagal Arroyo (Kampi, Pampanga), chairman of the House Committee,(21)
本文
●フィリッピン,再生可能エネルギーによるクリーン開発
フィリッピンの国産,再生可能エネルギーへの取り組みは激しい。ココナッツバイオを自動車のガソリンの中に,強制的に入れさせる法律の行くへを,ASEAN諸国が,疑いの目でじっと睨んでいる。また,2008年10月10日本HP(注1)では,フィリッピン国会が,再生可能エネルギー報告を了承,アロヨ大統領の署名待ちとなっている。この法案を積極的に進めた一人が,アンガラ上院議員(注2)である。今日の記事は,アンガラ上院議員(注2)が,2008年10月に上海で開かれたフォーラム(注3)で講演した内容に基づく。ポイントだけ拾う。
IEA(注4)の報告書によると,2005~2030年の間に,世界経済の拡大が,エネルギー使用量55%伸びを必要としている。これは石油換算(注5)で,114億トンを177億トンに持っていかなければならないことを意味する。これは,二酸化炭素ガス排出量で,2005年に於ける270億トンから,2030年に於ける420億トン,57%伸びをもたらす。そこで,再生可能エネルギーによるクリーンな開発が要請される。
再生可能エネルギーにとって,昨年,2007年は画期的な年で,これまでの再生可能エネルギーへの投資は710億ドルに達し,発電力で言えば,240,000MWに達した。風力は28%を占め,出力で,95,000MW,投資は370億ドルであった。送電網に組み込まれた太陽光発電(注6)は,7,700MWで,150万世帯の屋根に取り付けられた。バイオ燃料の2007年世界総量は,530億リッターと推定されている。
EU(注7)は,2020年までに20%の再生可能エネルギーを目指しており,中国は,15%としている。特に中国の風力について,昨年,2007年,初めて風力タービン製造の世界市場へ打って出た。2007世界風力報告(注8)によれば,中国の風力タービン製造能力は5,000MWに達し,2010年には,10,000~12,000MWに達すると予想されている。
フィリッピンであるが,2010年までに60%を国内エネルギーで賄う目標を持っている。2000年に45%であった国産依存は,2007年には57.20%に達した。発電分野では,自給率が2006年に66%となり,石油依存度は,20.28%であったものが8.2%まで落ちている。この2010年,60%と言う目標は,フィリッピンに豊富な地熱などを中心に,再生可能エネルギーの利用で実現したい。
2003年に策定された再生可能エネルギー政策枠組み(注9)のもと,10年間で再生可能エネルギーを倍増する目標で,2007年末時点には5445MWに達した。フィリッピンエネルギー計画(注10)は,2009~2012年で新規電源5,393MW必要で,この内訳は,ルソン(注11)が3711MW,ビサヤ(注12)が844MW,ミンダナオ(注13)が838MWである。再生可能エネルギーによる新規電源は,現在,2,469MWが準備中の状態にある。この計画に対応する法律整備も進めている。
もっとも注目を浴びているのは,再生可能エネルギー法(注14)で,今月,国会を通過し,再生可能エネルギー市場の形成の促進を図る。法案は今,アロヨ大統領の署名を待っている。この法案の特徴は,再生可能エネルギー採算基準(注15)で,一定の割合の導入を課し,12年間は価格を据え置くフィード-イン-タリフメカニズム(注16)を採用している。需要家が選択するグリーエネージオプション(注17)も用意している。
財政的なインセンティブも施策には含まれており,関連所得税免除1年延長で7年に,再生可能エネルギー関連機材の関税免除,国内機器準備への融資,カーボンクレディット(注18)の免税措置,地方電化への補助,などである。フィリッピンのこの方針は,有効だとの国際的な評価を得ている。世界的のも,気候変動へのコストは2000億ドルを超すと言われている。フィリッピンが,先頭になってグリーン改革(注19)を行うことに,喜びを感じている。
フィリッピンで,再生可能エネルギー法(注14)を,アキノ上院議員(注20)と共に推進してきたアンガラ議員(注2)だけに,まとまった報告であるが,目標にはまだまだ数字的に疑問がある。しかし,少なくとも,東南アジアの中では突出した行動で,電力改革と共に,何でも法律化してしまうこの区のの特性が印象づけられる。国産エネルギーへのこだわりがこうさせた,とも言えるので,資源を持たない国の焦りともとれる。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081010C.htm,(2) Sen. Edgardo Angara,(3) Asia Pacific Finance and Development Center Biennial Forum,(4) International Energy Agency,(5) tons of oil equivalent (toe),(6) solar photovoltaic,(7) European Union,(8) Global Wind 2007 Report,(9) Renewable Energy Policy Framework,(10) Philippine Energy Plan,(11) Luzon,(12) Visayas,(13) Mindanao,(14) Renewable Energy Bil,(15) Renewable Portfolio Standard,(16) feed-in-tariff mechanism,(17) Green Energy Option,(18) carbon credit,(19) Green Revolution,(20) Rep. Mikey Macapagal Arroyo (Kampi, Pampanga), chairman of the House Committee,(21)
●今日,ネパールとインドの総括協議,水力開発など
2008年9月半ば,ネパールの首相として初めてニューデリーを訪問してインドの新首相から暖かく迎えられたプラチャンダーは,ネパールの経済開発を軌道に乗せるために,矢継ぎ早に,主としてインドに対して,協力案件を投げかけた。それは,10年間,10000MWの水力開発であり,その他水資源を中心とした案件であった。今日の記事は,外務大臣の間で,いよいよ協議が始まる。
今日,2008年11月27日,ネパールとインドの二国間外務大臣協議が始まる。まず両国の外務大臣は,犯人引き渡し条約(注21)の交渉から入る。インドのムケルジ外相(注22)は,ニューデリーを離れるに当たり,記者団に対して,条約の早期取り決めに当たる,と語った。出発前に,ムケルジ外相(注22)は,国境の町ビルグンジュ(注23)を訪ね,建設中の国境関門(注24)を視察している。
一方,ネパールのヤダブ外相(注25)は,二国間協力に関する16項目の談話を発表している。10年間に,10000MWの水力開発,に関してインドの協力を求める。また,国境のテライ(注26)の問題も重要視している。テライ(注26)のマケシ(注27)関連については,インドのムケルジ外相(注22)も,既にマケシ(注27)のリーダー達に会っており,彼等を支援してインフラ構築など協力を惜しまない,としている。
インド側は,ネパールの要請する貿易規制や,定期的な両国の会合の提案を受け入れており,ネパールは,インド企業のネパールへの参入に対応する投資環境の整備を約束しており,事前の空気は友好的である。国境問題については,技術委員会が既に,地図上への線引きを終えており,この地図上に両外相が署名する段取りになっている。
(注) (21) a provision for extradition,(22) Indian Minister for External Affairs Pranab Mukherjee,(23) Birgunj,(24) Integrated Check Post,(25) Foreign Minister Upendra Yadav,(26) Tarai,(27) Madhesi,(28)
●ラオス,新たな水力プロジェクト,ベトナムとの連携
この記事は,ハノイ駐在の中国紙の記者が書いたもので,最近の中国メディアは,ベトナムの周辺国への動きに神経質である。記事によると,新規水力発電所が,ラオスのフアパン県(注28)に計画されていて,地方の電力需要とベトナムへの輸出を考えている,とビエンチャンタイムス(注29)が報じている,というもの。
フアパン県(注28)が何処なのか,まだ私は確認できないが,おそらく北部のベトナム国境に近いところなのであろう。現時点では,地元の小水力とベトナムからの2MWの融通で,電力供給している。フアパン県(注28)のブアソン電力担当(注30)によると,県全人口の30%が,電力を受けている状況という。
彼によると,今回のプロジェクトが円滑に進めば,県全体の電化のみならず,ベトナムへの輸出も,2020年には,可能である,と言っている。プロジェクトは複数で,大きいものは,600~800MW,小さいものは8MWで,調査は2010年には終了する。
ラオスのエネルギー鉱業省のエネルギー開発推進局(注31)によれば,ラオスの包蔵水力は,メコン本流を除いて,26,500MWであり,過去30年間でその2%が開発されたに過ぎない,と言っている。
(注) (28) Huaphan province,(29) Vientiane Times,(30) provincial Energy and Mines Department Manager Bouasone Thammaly,(31) Energy Promotion and Development Department of Lao Ministry of Energy and Mines,(32)
Reference
Philippines
●081127A Philippines, abs-cbnnews
再生可能エネルギーによるクリーン開発
Clean development through renewable energy?Edgardo Angara
http://www.abs-cbnnews.com/views-and-analysis/11/26/08/clean-development-through-renewable-energy%E2%80%94edgardo-angara
Nepal
●081127B Nepal, thehimalayantimes
今日,ネパールとインドの総括協議,画期的な取り決めへ
Bilateral nod to update extradition treaty
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=aFanata0sa3qzpla4Sa0qa.axamal&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20081127
Laos
●081127C Laos, news.xinhuanet
新たな水力プロジェクト,ベトナムとの連携
New hydropower plants to be built in Laos
http://news.xinhuanet.com/english/2008-11/26/content_10416643.htm
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
インドのムンバイ,テロ事件の最新情報では,死者数は125人、負傷者数は327人,で,タージマハールホテルは制圧されたが,トライデントホテルはまだ制圧中。それにしても津田さんの犠牲は人ごととは思えない。エネルギー最前線で戦っていた人だったから,ひょっとしたら一度ぐらい私のメルマガも読んでいてくれたかも知れない。冥福を祈ります。ただ,いろいろな解説を聞いていると,外国資本投資への反発,との意見もあり,しばらくのインドは,外資導入にも障害が生ずる可能性がある。外資導入が貧富の格差を生んだ,とテロの遠因を説明する人がある。
バンコクは,既にタイの経済学者などは,空港閉鎖が年末まで続く可能性がある,として損害額やGDPの落ちを計算し始めている。それほどタクシン派を追放するのは難しいのか,と思ってしまう。結局,地方の支持がタクシンから離れないので,総選挙をやってもまた同じことになるのか。結局タイは,バンコクと地方に経済格差が大きくなりすぎて,国民が2極化した,と言うことなのであろうか。1990年頃でも,我々も余りの落差に驚いていたぐらいだから,バンコク市民は,実力で政権をひっくり返すより仕方がない,何とも不幸な成り行きだ。
今日は再び,フィリッピンの再生可能エネルギーを取り上げている。面倒くさいが,どうも最近は,このフィリッピンの国産エネルギーへのこだわりが突出してきて,東南アジアでは特殊な動きを始めたことが気になり始めた。今日の記事は,再生可能エネルギー法案(注14)を積極的に進めてきたアンガラ上院議員(注2)が,2008年10月に上海で開かれたフォーラム(注3)で講演した内容に基づく。ポイントを上げると。
フィリッピンであるが,2010年までに60%を国内エネルギーで賄う目標を持っている。2000年に45%であった国産依存は,2007年には57.20%に達した。発電分野では,自給率が2006年に66%となり,石油依存度は,20.28%であったものが8.2%まで落ちている。この2010年,60%と言う目標は,フィリッピンに豊富な地熱などを中心に,再生可能エネルギーの利用で実現したい。
2003年に策定された再生可能エネルギー政策枠組み(注9)のもと,10年間で再生可能エネルギーを倍増する目標で,2007年末時点には5445MWに達した。フィリッピンエネルギー計画(注10)は,2009~2012年で新規電源5,393MW必要で,この内訳は,ルソン(注11)が3711MW,ビサヤ(注12)が844MW,ミンダナオ(注13)が838MWである。再生可能エネルギーによる新規電源は,現在,2,469MWが準備中の状態にある。この計画に対応する法律整備も進めている。
私は,とにかく世界の最先端に,落ちつくところを考えずにまず飛び上がるフィリッピンの行政の特徴を見る。原子力然り,電力セクター改革然り,そうしてまたこの再生可能エネルギー然り,である。原子力はとんでもないところでひっくり返ったし,電力改革は,東南アジアでも一番高い電気料金を下げることが改革の目的だったのだが,今のところはこれがその意に反している。電力改革は,とにかくそのまま進め,と言う人と,電気料金が高い,という一点で反対する勢力があるが,もう引っ返せない。需給バランスが壊れたときどう対処するか,それが改革の正否を決める。
再生可能エネルギーについては,これは資源のない国としての建前を前面に出してきて,国産資源を開発することと一体となって進んでいる。太陽光や風力もさることながら,やはり行き着くところは,地熱発電と水力だろう。水力は相当に開発が進んだと思わているが,治安の関係で手が付けられていないところが,まだミンダナオやルソン北部に残っている。フィリッピンの戦いを見守ろう。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081010C.htm,(2) Sen. Edgardo Angara,(3) Asia Pacific Finance and Development Center Biennial Forum,(4) International Energy Agency,(5) tons of oil equivalent (toe),(6) solar photovoltaic,(7) European Union,(8) Global Wind 2007 Report,(9) Renewable Energy Policy Framework,(10) Philippine Energy Plan,(11) Luzon,(12) Visayas,(13) Mindanao,(14) Renewable Energy Bill,(15) Renewable Portfolio Standard,(16) feed-in-tariff mechanism,(17) Green Energy Option,(18) carbon credit,(19) Green Revolution,(20) Rep. Mikey Macapagal Arroyo (Kampi, Pampanga), chairman of the House Committee,(21)
本文
●フィリッピン,再生可能エネルギーによるクリーン開発
フィリッピンの国産,再生可能エネルギーへの取り組みは激しい。ココナッツバイオを自動車のガソリンの中に,強制的に入れさせる法律の行くへを,ASEAN諸国が,疑いの目でじっと睨んでいる。また,2008年10月10日本HP(注1)では,フィリッピン国会が,再生可能エネルギー報告を了承,アロヨ大統領の署名待ちとなっている。この法案を積極的に進めた一人が,アンガラ上院議員(注2)である。今日の記事は,アンガラ上院議員(注2)が,2008年10月に上海で開かれたフォーラム(注3)で講演した内容に基づく。ポイントだけ拾う。
IEA(注4)の報告書によると,2005~2030年の間に,世界経済の拡大が,エネルギー使用量55%伸びを必要としている。これは石油換算(注5)で,114億トンを177億トンに持っていかなければならないことを意味する。これは,二酸化炭素ガス排出量で,2005年に於ける270億トンから,2030年に於ける420億トン,57%伸びをもたらす。そこで,再生可能エネルギーによるクリーンな開発が要請される。
再生可能エネルギーにとって,昨年,2007年は画期的な年で,これまでの再生可能エネルギーへの投資は710億ドルに達し,発電力で言えば,240,000MWに達した。風力は28%を占め,出力で,95,000MW,投資は370億ドルであった。送電網に組み込まれた太陽光発電(注6)は,7,700MWで,150万世帯の屋根に取り付けられた。バイオ燃料の2007年世界総量は,530億リッターと推定されている。
EU(注7)は,2020年までに20%の再生可能エネルギーを目指しており,中国は,15%としている。特に中国の風力について,昨年,2007年,初めて風力タービン製造の世界市場へ打って出た。2007世界風力報告(注8)によれば,中国の風力タービン製造能力は5,000MWに達し,2010年には,10,000~12,000MWに達すると予想されている。
フィリッピンであるが,2010年までに60%を国内エネルギーで賄う目標を持っている。2000年に45%であった国産依存は,2007年には57.20%に達した。発電分野では,自給率が2006年に66%となり,石油依存度は,20.28%であったものが8.2%まで落ちている。この2010年,60%と言う目標は,フィリッピンに豊富な地熱などを中心に,再生可能エネルギーの利用で実現したい。
2003年に策定された再生可能エネルギー政策枠組み(注9)のもと,10年間で再生可能エネルギーを倍増する目標で,2007年末時点には5445MWに達した。フィリッピンエネルギー計画(注10)は,2009~2012年で新規電源5,393MW必要で,この内訳は,ルソン(注11)が3711MW,ビサヤ(注12)が844MW,ミンダナオ(注13)が838MWである。再生可能エネルギーによる新規電源は,現在,2,469MWが準備中の状態にある。この計画に対応する法律整備も進めている。
もっとも注目を浴びているのは,再生可能エネルギー法(注14)で,今月,国会を通過し,再生可能エネルギー市場の形成の促進を図る。法案は今,アロヨ大統領の署名を待っている。この法案の特徴は,再生可能エネルギー採算基準(注15)で,一定の割合の導入を課し,12年間は価格を据え置くフィード-イン-タリフメカニズム(注16)を採用している。需要家が選択するグリーエネージオプション(注17)も用意している。
財政的なインセンティブも施策には含まれており,関連所得税免除1年延長で7年に,再生可能エネルギー関連機材の関税免除,国内機器準備への融資,カーボンクレディット(注18)の免税措置,地方電化への補助,などである。フィリッピンのこの方針は,有効だとの国際的な評価を得ている。世界的のも,気候変動へのコストは2000億ドルを超すと言われている。フィリッピンが,先頭になってグリーン改革(注19)を行うことに,喜びを感じている。
フィリッピンで,再生可能エネルギー法(注14)を,アキノ上院議員(注20)と共に推進してきたアンガラ議員(注2)だけに,まとまった報告であるが,目標にはまだまだ数字的に疑問がある。しかし,少なくとも,東南アジアの中では突出した行動で,電力改革と共に,何でも法律化してしまうこの区のの特性が印象づけられる。国産エネルギーへのこだわりがこうさせた,とも言えるので,資源を持たない国の焦りともとれる。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081010C.htm,(2) Sen. Edgardo Angara,(3) Asia Pacific Finance and Development Center Biennial Forum,(4) International Energy Agency,(5) tons of oil equivalent (toe),(6) solar photovoltaic,(7) European Union,(8) Global Wind 2007 Report,(9) Renewable Energy Policy Framework,(10) Philippine Energy Plan,(11) Luzon,(12) Visayas,(13) Mindanao,(14) Renewable Energy Bil,(15) Renewable Portfolio Standard,(16) feed-in-tariff mechanism,(17) Green Energy Option,(18) carbon credit,(19) Green Revolution,(20) Rep. Mikey Macapagal Arroyo (Kampi, Pampanga), chairman of the House Committee,(21)
●今日,ネパールとインドの総括協議,水力開発など
2008年9月半ば,ネパールの首相として初めてニューデリーを訪問してインドの新首相から暖かく迎えられたプラチャンダーは,ネパールの経済開発を軌道に乗せるために,矢継ぎ早に,主としてインドに対して,協力案件を投げかけた。それは,10年間,10000MWの水力開発であり,その他水資源を中心とした案件であった。今日の記事は,外務大臣の間で,いよいよ協議が始まる。
今日,2008年11月27日,ネパールとインドの二国間外務大臣協議が始まる。まず両国の外務大臣は,犯人引き渡し条約(注21)の交渉から入る。インドのムケルジ外相(注22)は,ニューデリーを離れるに当たり,記者団に対して,条約の早期取り決めに当たる,と語った。出発前に,ムケルジ外相(注22)は,国境の町ビルグンジュ(注23)を訪ね,建設中の国境関門(注24)を視察している。
一方,ネパールのヤダブ外相(注25)は,二国間協力に関する16項目の談話を発表している。10年間に,10000MWの水力開発,に関してインドの協力を求める。また,国境のテライ(注26)の問題も重要視している。テライ(注26)のマケシ(注27)関連については,インドのムケルジ外相(注22)も,既にマケシ(注27)のリーダー達に会っており,彼等を支援してインフラ構築など協力を惜しまない,としている。
インド側は,ネパールの要請する貿易規制や,定期的な両国の会合の提案を受け入れており,ネパールは,インド企業のネパールへの参入に対応する投資環境の整備を約束しており,事前の空気は友好的である。国境問題については,技術委員会が既に,地図上への線引きを終えており,この地図上に両外相が署名する段取りになっている。
(注) (21) a provision for extradition,(22) Indian Minister for External Affairs Pranab Mukherjee,(23) Birgunj,(24) Integrated Check Post,(25) Foreign Minister Upendra Yadav,(26) Tarai,(27) Madhesi,(28)
●ラオス,新たな水力プロジェクト,ベトナムとの連携
この記事は,ハノイ駐在の中国紙の記者が書いたもので,最近の中国メディアは,ベトナムの周辺国への動きに神経質である。記事によると,新規水力発電所が,ラオスのフアパン県(注28)に計画されていて,地方の電力需要とベトナムへの輸出を考えている,とビエンチャンタイムス(注29)が報じている,というもの。
フアパン県(注28)が何処なのか,まだ私は確認できないが,おそらく北部のベトナム国境に近いところなのであろう。現時点では,地元の小水力とベトナムからの2MWの融通で,電力供給している。フアパン県(注28)のブアソン電力担当(注30)によると,県全人口の30%が,電力を受けている状況という。
彼によると,今回のプロジェクトが円滑に進めば,県全体の電化のみならず,ベトナムへの輸出も,2020年には,可能である,と言っている。プロジェクトは複数で,大きいものは,600~800MW,小さいものは8MWで,調査は2010年には終了する。
ラオスのエネルギー鉱業省のエネルギー開発推進局(注31)によれば,ラオスの包蔵水力は,メコン本流を除いて,26,500MWであり,過去30年間でその2%が開発されたに過ぎない,と言っている。
(注) (28) Huaphan province,(29) Vientiane Times,(30) provincial Energy and Mines Department Manager Bouasone Thammaly,(31) Energy Promotion and Development Department of Lao Ministry of Energy and Mines,(32)
Reference
Philippines
●081127A Philippines, abs-cbnnews
再生可能エネルギーによるクリーン開発
Clean development through renewable energy?Edgardo Angara
http://www.abs-cbnnews.com/views-and-analysis/11/26/08/clean-development-through-renewable-energy%E2%80%94edgardo-angara
Nepal
●081127B Nepal, thehimalayantimes
今日,ネパールとインドの総括協議,画期的な取り決めへ
Bilateral nod to update extradition treaty
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=aFanata0sa3qzpla4Sa0qa.axamal&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20081127
Laos
●081127C Laos, news.xinhuanet
新たな水力プロジェクト,ベトナムとの連携
New hydropower plants to be built in Laos
http://news.xinhuanet.com/english/2008-11/26/content_10416643.htm
2008年11月27日木曜日
ミャンマーのラシオへの思い
HPは下記ドメインです。地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
昨日はバンコク空港の閉鎖でショックを受けたが,今日はインド,ムンバイの連続テロで,これも大きなショックだ。外務省によると,日本人268人のうち20~30人と連絡が取れないと言う。ムンバイにいた朝日新聞記者によると,武装グループに襲われたのはムンバイのタージマハルホテルだという。我々が,日本レストランでその値段の高さに驚いたホテルだ。バンコクにしても,ムンバイにしても,我々友人達の働く場所の中心地だから,関係した人がいないか,懸念する。バンコクは,王様も軍も,まだ動かない。
昨日,インドのパイプラインで振り回されたが,パイプラインって安全なのですかね。昨日,HPを更新してからゆっくりとグーグルアースを回して,昨日話題になったミャンマーのシットウエイ海港,カラダン川,イスラエルのエイラット海港,などの衛星写真を見ていたが,自分の知識の狭さに恥ずかしさを覚えた。ミャンマーのシットウエイ海港などは,単なるミャンマーの漁村だと思っていたら,大都市ではないですか。ヨットのようなものが浮かび,観光客の写真も出てくる,地球は広いなあ,と思った。
また驚いたのは,イスラエルのエイラット海港,大きな地図では確認も出来ないような針のようなアクバ湾の奥深く存在するエイラットは,まさしく大観光地で,ヨットが飛び交い,世界一流の高級ホテルが並んでいる。このアクバ湾の奥のイスラエルのリゾート地を知っていた人が,我々の仲間にいますか?いたらメールを下さい,表彰状を差し上げる。分かっているようで地球が分かっていないことを,大いに反省した。
それでも,自分が一度行ったところは,懐かしさと共に強く印象づけられている。その一つが今日のミャンマーのシャン州,ラシオ(注1)の町である。ミャンマーの東北端,コーカン自治区に行く途中に立ち寄って一泊した町(注2)だが,奥地に向かう最後の拠点,その様な感じがして,その緑の中に立つ金色のパゴダの写真を撮るために,彼方此方,朝日と睨めっこをしながら,動き回ったことがある。麻薬退治のためにコーカン自治区に向かっていたのだが,このラシオの町には,麻薬退治の親分のような日本の大学教授が,デンと居宅を構えていた。
このラシオの少し手前,と言うか西の方に,メイミョウという,昔日本軍が司令部を置いていた町,その近くで,JICAの仕事で小水力を造ろうとする日本工営の部隊と一緒に山に入ったことがある(注6)。数100KWの小さい発電所だが,日本の手でプロトタイプの発電所を,と頑張っていて,ヤンゴンに帰って先方電力省と話し合いを持ったら,近くで中国がもっと大きな発電所を造ってくれるから,君たちはもういいよ,と言われた。
その時は,何のことかよく分からなかったが,それから数年,姿を現してきたのは,600MWのシュエリ水力発電所(注5)である。2008年末完成,と行っているから,もうそろそろ出来上がるのだろう。この発電所は,ラシオから80kmほど北で,電気はマンダレー(注4)に送られるが,ラシオの人々は,これで24時間電灯が灯る,と期待している。
このシュエリ発電所の位置は,イラワジ川から分かれて東に走るシュエリ川の上流にあって,中国の国境までは僅かに30kmだ。大きな部分が中国の国境区域に送られるのだろう。その国境の町で,ドルを中国元に換金したが,国境の橋の上を歩いていたら中国の公安らしき警官に,入るな,と言って追っ払われた。全く周辺は中国人の世界で,中国語と中国元がなければ生活できない。中国のミャンマーでのプレゼンスは大きくなるばかりである。
(注) (1) Lashio,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/Myanmar.htm,(3) Mandalay,(4) http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-burma.html,(5) Shweli hydroelectric project,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/MyanmarB.htm,(7) http://www.monstersandcritics.com/news/asiapacific/news/article_1293972.php,(8) U Hla Aye, who is the managing director of Shan Yoma travel company,(9) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B01.GIF,(10) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B03.jpg,(11) Shan State,(12) Lashio Gyi (Big Lashio),(13) Muse-Lashio-Mandalay road,(14) Taung Paw Paya (Hilly Pagoda), (15) Yay-kan-taung recreation park,(16)
本文
●ミャンマー,シャン州のラシオ,観光客を惹き付けるか
ミャンマーのラシオ(注1)の記事を見て,しばらく郷愁に耽る時間を許されたい。2000年9月に,麻薬と蕎麦を入れ替える仕事で,マンダレー(注3)から,ミャンマー北東,サルウイーン河沿い,中国との国境の町,老街まで車で走ったとき,ラシオ(注1)に一泊した。その時の写真もあるので見て下さい(注2)。ラシオの語感は頭に残っていて,それはどうも第二次大戦の記録と結びついているようだ。「ビルマは日本にとって南方資源地帯の西側防壁であるとともに,ラングーン-ラシオ-昆明と続く援蒋ルートの拠点でもあった。」(注4),の一文が示すとおり,戦争の重要な拠点であったのだ。
それから,今日の記事にも出てくるシュエリ水力(注5)で,これは600MWで2008年末にも完成する大規模な発電所であるが,ラシオ(注1)から80kmほど北のシュエリ川に中国が建設しているもので,中国国境までは僅か30km余りである。ラシオ(注1)は,この発電所の完成を待ちわびているが,果たしてラシオ(注1)に持ってこられるのかどうか。主要な目的は,マンダレー(注3)と中国領内への送電なのであろう。シュエリ水力(注5)については,2007年の記事がある(注7)。
私がJICAの一員のとき,ラシオ(注1)の少し手前で,日本工営の進める小水力発電所を手伝ったことがあった。その時,小さいながらなかなかの適地で山の中を歩いて踏査を行い,計画を進めることを楽しみにしていた。その時の写真もあるので,是非見て下さい(注6)。それで,喜び勇んで首都のヤンゴンに引き上げて,さて相手方電力省と協議しようとすると,先方から,作ってもらわなくて結構です,近くに中国が大規模な発電所を造るので,それで間に合いますので,と言う話である。それがあのシュエリ水力(注5)だったのである。
今日の記事は,ミャンマーで観光会社を経営するウラアイさん(注8)の話に耳を傾けて下さい。たまには,旅行先の候補の一つとして,ラシオ(注1)のような町を選ぶのも良いのではないか。ウラアイさん(注8)の撮った,マンダレー(注3)からラシオ(注1)まで走る列車の写真がある(注9)。位置関係を示す地図もある(注10)。ウラアイさん(注8)の記事は,「シャン州(注11)のラシオ(注1)は果たして観光客を惹き付けるか」,と言うタイトルである。
ラシオ(注1)出身のウラアイさん(注8)は,ラシオ(注1)はこの20年で急速な発展を遂げたという。そうして次の10年で有力な観光地になって行くだろう,という。最近,ラシオ(注1)に帰ってきて,町中の彼方此方に光り輝く電灯を見て,一生懸命地図を見ながら思い出すことに努めた。特にこの3年間の発展は劇的だ。20年前は,ラシオ(注1)の町は,二つに分かれていて,ラシオ(注1)からラシオギ(注12)に行く道はジャングルの中で真っ暗だった。この記事の筆者も,15年前にお母さんとラシオ(注1)を訪ねたときは,泊まった一軒だけに電気がついていて,周囲の家は蝋燭で明かりを灯していた。その時,シスコもカラオケもパブもなく,ただ涼しくて暗くて静かな夜だった。
最近のラシオ(注1)は,経済的な開発が行われている。ムース - マンダレー - ラシオ(注1)は大変に混雑していて,特に観光開発が盛んである。今のラシオ(注1)は,GSMの電話ネットワークはあるし,シュエリ水力(注5)もまもなく完成し,24時間電気が使えるようになるだろう。観光のスポットは,イエイカンタウン公園(注14),町全体が見えるパゴダの丘(注15),などなど。郊外では,温泉もあるし,滝もある。観光会社は,旅行パックを組んで,忙しくしている。まだ立派なホテルやレストランを造る必要があるが,この先,5年,10年が楽しみだ。
ラシオ(注1)は,マンダレー(注3)から汽車で来れるが,ヤンゴンから冷房付きのバスも出ている。20時間かかるが,1万5000~1万7000チャットである。ヤンゴンからラシオ(注1)までの航空便のある。
(注) (1) Lashio,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/Myanmar.htm,(3) Mandalay,(4) http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-burma.html,(5) Shweli hydroelectric project,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/MyanmarB.htm,(7) http://www.monstersandcritics.com/news/asiapacific/news/article_1293972.php,(8) U Hla Aye, who is the managing director of Shan Yoma travel company,(9) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B01.GIF,(10) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B03.jpg,(11) Shan State,(12) Lashio Gyi (Big Lashio),(13) Muse-Lashio-Mandalay road,(14) Taung Paw Paya (Hilly Pagoda), (15) Yay-kan-taung recreation park,(16)
●フィリッピン,ロペスのEDC,IFCから41億ペソのローンを獲得
EDC(注16)については,2008年10月24日付本HP(注17)で,「丸紅,フィリッピンの再生可能を視野に,EDC株式視野か」,のタイトルで,再生可能エネルギー開発との関連が論じられている。2008年10月17日の本欄(注18)では,ファーストジェン(注19)が,その所有する水力発電所の資産105百万ドルを,関連会社であるEDC(注16)に売却し,売却対象は,ファーストジェン水力企業(注20)の株式60%であり,具体的な発電所は,112MW,パンタバンガン-マシウエー水力(注21)で,売却先はEDC(注16)である。EDC(注16)は,その安定以外に,将来の成長を買った,と見られている,と報告されている。
また,2008年10月24日付本HP(注17)の本論で,更にこの上に,丸紅(注6)のフィリッピン戦略が重なってくる。丸紅(注22)は,ロペス財団の保有するファーストジェン(注19)の株式40%獲得を真剣に考えているようだとしている。この40%と言う数字は,国家石油PNOCとEDC(注3)を通じて,地熱発電事業をコントロールするに十分なシェアーである。丸紅(注6)側からの情報は未だにないが,ファーストジェン(注20)によると,この丸紅(注22)関連の手続きは年内に完了する,としていた。
資金繰りに問題が出てきたとされている,これら一連のロペス系発電企業であるが,今日の記事では世界銀行系IFC(注23)の借款が,再生可能エネルギーの地熱発電を扱うEDC(注16)へ供与されたニュースである。昨日,2008年11月22日の署名式で,EDC(注16)のアキノ社長(注24)は,この金融危機の中でEDC(注16)への信用が継続していることを示している,としている。IFC(注23)は,国担当のアング氏(注25)が行った。アキノ社長(注24)は,この資金は,中期の資本支出に回される,としている。
またアキノ社長(注24)は,今回のローン協定が,1980年代,EDC(注16)が地熱発電事業を始めた頃からのIFC(注23)との関係を,強化するものだ,と評価している。IFC(注23)は,EDC(注16)が,2006年,株式上場を果たしたときの中核投資機関であった。更にアキノ社長(注24)は,このローンは,EDC(注16)の長期ビジョンに対するIFC(注23)の期待を示すもので,それは,EDC(注16)が,再生可能エネルギー産業で世界をリードする可能性を持っているものだ,EDC(注16)は,地熱発電技術の世界の最先端の一部を担っている,としている。
EDC(注16)のロドリゲス財務主任(注26)は,今回のローンの条件が極めて良かった,と評価し,返済期間15年,猶予期間3年の条件は,IFC(注23)のEDC(注16)への信用の現れ,としている。IFC(注23)は以前より,EDC(注16)の変化時期を支えるとし,EDC(注16)が世界的なクリーンな再生可能エネルギー開発をリードするだろう,と期待を示している。EDC(注16)は,フィリッピンの地熱発電の60%を所有している。
また前の水力にも記事は触れている。EDC(注16)は最近,水力への参入も標榜し,パンタガンナン - マシウエイ水力(注21)の運営企業であるファーストジェン水力(注27)の60%の株式取得を視野に入れている。ファーストジェン(注19)が政府系PNOC-EDC(注28)を買収したのは,地熱に焦点が当たっていた。EDC(注16)は,地熱発電を制することが即ち,再生可能エネルギー事情の足下を強化することに繋がる,と信じている。
(注) (16) Lopez-controlled Energy Development Corp. (formerly PNOC-EDC) ,(17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024A.htm,(18) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081017A.htm,(19) First Gen Hydro Power Corp,(20) First Gen Hydro Power Corp,(21) 112MW Pantabangan-Masiway hydroelectric power complex,(22) Japanese conglomerate Marubeni Corp,(23) International Finance Corp. (IFC),(24) EDC president and chief executive officer Paul Aquino,(25) IFC country head Jesse Ang,(26) EDC chief financial officer Fenina Rodriguez, (27) International Finance Corp (FGHPC),(28) PNOC-EDC,(29)
Reference
Philippines
●081126A Philippines, philstar
ロペスのEDC,IFCから41億ペソのローンを獲得
EDC inks P4.1-B IFC loan
http://www.philstar.com/Article.aspx?articleId=418595
Myanmar
●081126B Myanmar, mmtimes
ミャンマー,シャン州のラシオ,観光客を惹き付けるか
Can Lashio draw tourists to Shan State
http://www.mmtimes.com/no446/n011.htm
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
昨日はバンコク空港の閉鎖でショックを受けたが,今日はインド,ムンバイの連続テロで,これも大きなショックだ。外務省によると,日本人268人のうち20~30人と連絡が取れないと言う。ムンバイにいた朝日新聞記者によると,武装グループに襲われたのはムンバイのタージマハルホテルだという。我々が,日本レストランでその値段の高さに驚いたホテルだ。バンコクにしても,ムンバイにしても,我々友人達の働く場所の中心地だから,関係した人がいないか,懸念する。バンコクは,王様も軍も,まだ動かない。
昨日,インドのパイプラインで振り回されたが,パイプラインって安全なのですかね。昨日,HPを更新してからゆっくりとグーグルアースを回して,昨日話題になったミャンマーのシットウエイ海港,カラダン川,イスラエルのエイラット海港,などの衛星写真を見ていたが,自分の知識の狭さに恥ずかしさを覚えた。ミャンマーのシットウエイ海港などは,単なるミャンマーの漁村だと思っていたら,大都市ではないですか。ヨットのようなものが浮かび,観光客の写真も出てくる,地球は広いなあ,と思った。
また驚いたのは,イスラエルのエイラット海港,大きな地図では確認も出来ないような針のようなアクバ湾の奥深く存在するエイラットは,まさしく大観光地で,ヨットが飛び交い,世界一流の高級ホテルが並んでいる。このアクバ湾の奥のイスラエルのリゾート地を知っていた人が,我々の仲間にいますか?いたらメールを下さい,表彰状を差し上げる。分かっているようで地球が分かっていないことを,大いに反省した。
それでも,自分が一度行ったところは,懐かしさと共に強く印象づけられている。その一つが今日のミャンマーのシャン州,ラシオ(注1)の町である。ミャンマーの東北端,コーカン自治区に行く途中に立ち寄って一泊した町(注2)だが,奥地に向かう最後の拠点,その様な感じがして,その緑の中に立つ金色のパゴダの写真を撮るために,彼方此方,朝日と睨めっこをしながら,動き回ったことがある。麻薬退治のためにコーカン自治区に向かっていたのだが,このラシオの町には,麻薬退治の親分のような日本の大学教授が,デンと居宅を構えていた。
このラシオの少し手前,と言うか西の方に,メイミョウという,昔日本軍が司令部を置いていた町,その近くで,JICAの仕事で小水力を造ろうとする日本工営の部隊と一緒に山に入ったことがある(注6)。数100KWの小さい発電所だが,日本の手でプロトタイプの発電所を,と頑張っていて,ヤンゴンに帰って先方電力省と話し合いを持ったら,近くで中国がもっと大きな発電所を造ってくれるから,君たちはもういいよ,と言われた。
その時は,何のことかよく分からなかったが,それから数年,姿を現してきたのは,600MWのシュエリ水力発電所(注5)である。2008年末完成,と行っているから,もうそろそろ出来上がるのだろう。この発電所は,ラシオから80kmほど北で,電気はマンダレー(注4)に送られるが,ラシオの人々は,これで24時間電灯が灯る,と期待している。
このシュエリ発電所の位置は,イラワジ川から分かれて東に走るシュエリ川の上流にあって,中国の国境までは僅かに30kmだ。大きな部分が中国の国境区域に送られるのだろう。その国境の町で,ドルを中国元に換金したが,国境の橋の上を歩いていたら中国の公安らしき警官に,入るな,と言って追っ払われた。全く周辺は中国人の世界で,中国語と中国元がなければ生活できない。中国のミャンマーでのプレゼンスは大きくなるばかりである。
(注) (1) Lashio,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/Myanmar.htm,(3) Mandalay,(4) http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-burma.html,(5) Shweli hydroelectric project,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/MyanmarB.htm,(7) http://www.monstersandcritics.com/news/asiapacific/news/article_1293972.php,(8) U Hla Aye, who is the managing director of Shan Yoma travel company,(9) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B01.GIF,(10) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B03.jpg,(11) Shan State,(12) Lashio Gyi (Big Lashio),(13) Muse-Lashio-Mandalay road,(14) Taung Paw Paya (Hilly Pagoda), (15) Yay-kan-taung recreation park,(16)
本文
●ミャンマー,シャン州のラシオ,観光客を惹き付けるか
ミャンマーのラシオ(注1)の記事を見て,しばらく郷愁に耽る時間を許されたい。2000年9月に,麻薬と蕎麦を入れ替える仕事で,マンダレー(注3)から,ミャンマー北東,サルウイーン河沿い,中国との国境の町,老街まで車で走ったとき,ラシオ(注1)に一泊した。その時の写真もあるので見て下さい(注2)。ラシオの語感は頭に残っていて,それはどうも第二次大戦の記録と結びついているようだ。「ビルマは日本にとって南方資源地帯の西側防壁であるとともに,ラングーン-ラシオ-昆明と続く援蒋ルートの拠点でもあった。」(注4),の一文が示すとおり,戦争の重要な拠点であったのだ。
それから,今日の記事にも出てくるシュエリ水力(注5)で,これは600MWで2008年末にも完成する大規模な発電所であるが,ラシオ(注1)から80kmほど北のシュエリ川に中国が建設しているもので,中国国境までは僅か30km余りである。ラシオ(注1)は,この発電所の完成を待ちわびているが,果たしてラシオ(注1)に持ってこられるのかどうか。主要な目的は,マンダレー(注3)と中国領内への送電なのであろう。シュエリ水力(注5)については,2007年の記事がある(注7)。
私がJICAの一員のとき,ラシオ(注1)の少し手前で,日本工営の進める小水力発電所を手伝ったことがあった。その時,小さいながらなかなかの適地で山の中を歩いて踏査を行い,計画を進めることを楽しみにしていた。その時の写真もあるので,是非見て下さい(注6)。それで,喜び勇んで首都のヤンゴンに引き上げて,さて相手方電力省と協議しようとすると,先方から,作ってもらわなくて結構です,近くに中国が大規模な発電所を造るので,それで間に合いますので,と言う話である。それがあのシュエリ水力(注5)だったのである。
今日の記事は,ミャンマーで観光会社を経営するウラアイさん(注8)の話に耳を傾けて下さい。たまには,旅行先の候補の一つとして,ラシオ(注1)のような町を選ぶのも良いのではないか。ウラアイさん(注8)の撮った,マンダレー(注3)からラシオ(注1)まで走る列車の写真がある(注9)。位置関係を示す地図もある(注10)。ウラアイさん(注8)の記事は,「シャン州(注11)のラシオ(注1)は果たして観光客を惹き付けるか」,と言うタイトルである。
ラシオ(注1)出身のウラアイさん(注8)は,ラシオ(注1)はこの20年で急速な発展を遂げたという。そうして次の10年で有力な観光地になって行くだろう,という。最近,ラシオ(注1)に帰ってきて,町中の彼方此方に光り輝く電灯を見て,一生懸命地図を見ながら思い出すことに努めた。特にこの3年間の発展は劇的だ。20年前は,ラシオ(注1)の町は,二つに分かれていて,ラシオ(注1)からラシオギ(注12)に行く道はジャングルの中で真っ暗だった。この記事の筆者も,15年前にお母さんとラシオ(注1)を訪ねたときは,泊まった一軒だけに電気がついていて,周囲の家は蝋燭で明かりを灯していた。その時,シスコもカラオケもパブもなく,ただ涼しくて暗くて静かな夜だった。
最近のラシオ(注1)は,経済的な開発が行われている。ムース - マンダレー - ラシオ(注1)は大変に混雑していて,特に観光開発が盛んである。今のラシオ(注1)は,GSMの電話ネットワークはあるし,シュエリ水力(注5)もまもなく完成し,24時間電気が使えるようになるだろう。観光のスポットは,イエイカンタウン公園(注14),町全体が見えるパゴダの丘(注15),などなど。郊外では,温泉もあるし,滝もある。観光会社は,旅行パックを組んで,忙しくしている。まだ立派なホテルやレストランを造る必要があるが,この先,5年,10年が楽しみだ。
ラシオ(注1)は,マンダレー(注3)から汽車で来れるが,ヤンゴンから冷房付きのバスも出ている。20時間かかるが,1万5000~1万7000チャットである。ヤンゴンからラシオ(注1)までの航空便のある。
(注) (1) Lashio,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/Myanmar.htm,(3) Mandalay,(4) http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-burma.html,(5) Shweli hydroelectric project,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/MyanmarB.htm,(7) http://www.monstersandcritics.com/news/asiapacific/news/article_1293972.php,(8) U Hla Aye, who is the managing director of Shan Yoma travel company,(9) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B01.GIF,(10) http://my.reset.jp/~adachihayao/081126B03.jpg,(11) Shan State,(12) Lashio Gyi (Big Lashio),(13) Muse-Lashio-Mandalay road,(14) Taung Paw Paya (Hilly Pagoda), (15) Yay-kan-taung recreation park,(16)
●フィリッピン,ロペスのEDC,IFCから41億ペソのローンを獲得
EDC(注16)については,2008年10月24日付本HP(注17)で,「丸紅,フィリッピンの再生可能を視野に,EDC株式視野か」,のタイトルで,再生可能エネルギー開発との関連が論じられている。2008年10月17日の本欄(注18)では,ファーストジェン(注19)が,その所有する水力発電所の資産105百万ドルを,関連会社であるEDC(注16)に売却し,売却対象は,ファーストジェン水力企業(注20)の株式60%であり,具体的な発電所は,112MW,パンタバンガン-マシウエー水力(注21)で,売却先はEDC(注16)である。EDC(注16)は,その安定以外に,将来の成長を買った,と見られている,と報告されている。
また,2008年10月24日付本HP(注17)の本論で,更にこの上に,丸紅(注6)のフィリッピン戦略が重なってくる。丸紅(注22)は,ロペス財団の保有するファーストジェン(注19)の株式40%獲得を真剣に考えているようだとしている。この40%と言う数字は,国家石油PNOCとEDC(注3)を通じて,地熱発電事業をコントロールするに十分なシェアーである。丸紅(注6)側からの情報は未だにないが,ファーストジェン(注20)によると,この丸紅(注22)関連の手続きは年内に完了する,としていた。
資金繰りに問題が出てきたとされている,これら一連のロペス系発電企業であるが,今日の記事では世界銀行系IFC(注23)の借款が,再生可能エネルギーの地熱発電を扱うEDC(注16)へ供与されたニュースである。昨日,2008年11月22日の署名式で,EDC(注16)のアキノ社長(注24)は,この金融危機の中でEDC(注16)への信用が継続していることを示している,としている。IFC(注23)は,国担当のアング氏(注25)が行った。アキノ社長(注24)は,この資金は,中期の資本支出に回される,としている。
またアキノ社長(注24)は,今回のローン協定が,1980年代,EDC(注16)が地熱発電事業を始めた頃からのIFC(注23)との関係を,強化するものだ,と評価している。IFC(注23)は,EDC(注16)が,2006年,株式上場を果たしたときの中核投資機関であった。更にアキノ社長(注24)は,このローンは,EDC(注16)の長期ビジョンに対するIFC(注23)の期待を示すもので,それは,EDC(注16)が,再生可能エネルギー産業で世界をリードする可能性を持っているものだ,EDC(注16)は,地熱発電技術の世界の最先端の一部を担っている,としている。
EDC(注16)のロドリゲス財務主任(注26)は,今回のローンの条件が極めて良かった,と評価し,返済期間15年,猶予期間3年の条件は,IFC(注23)のEDC(注16)への信用の現れ,としている。IFC(注23)は以前より,EDC(注16)の変化時期を支えるとし,EDC(注16)が世界的なクリーンな再生可能エネルギー開発をリードするだろう,と期待を示している。EDC(注16)は,フィリッピンの地熱発電の60%を所有している。
また前の水力にも記事は触れている。EDC(注16)は最近,水力への参入も標榜し,パンタガンナン - マシウエイ水力(注21)の運営企業であるファーストジェン水力(注27)の60%の株式取得を視野に入れている。ファーストジェン(注19)が政府系PNOC-EDC(注28)を買収したのは,地熱に焦点が当たっていた。EDC(注16)は,地熱発電を制することが即ち,再生可能エネルギー事情の足下を強化することに繋がる,と信じている。
(注) (16) Lopez-controlled Energy Development Corp. (formerly PNOC-EDC) ,(17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024A.htm,(18) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081017A.htm,(19) First Gen Hydro Power Corp,(20) First Gen Hydro Power Corp,(21) 112MW Pantabangan-Masiway hydroelectric power complex,(22) Japanese conglomerate Marubeni Corp,(23) International Finance Corp. (IFC),(24) EDC president and chief executive officer Paul Aquino,(25) IFC country head Jesse Ang,(26) EDC chief financial officer Fenina Rodriguez, (27) International Finance Corp (FGHPC),(28) PNOC-EDC,(29)
Reference
Philippines
●081126A Philippines, philstar
ロペスのEDC,IFCから41億ペソのローンを獲得
EDC inks P4.1-B IFC loan
http://www.philstar.com/Article.aspx?articleId=418595
Myanmar
●081126B Myanmar, mmtimes
ミャンマー,シャン州のラシオ,観光客を惹き付けるか
Can Lashio draw tourists to Shan State
http://www.mmtimes.com/no446/n011.htm
2008年11月26日水曜日
インドのパイプラインへの挑戦
HPは下記ドメインです。地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
タイ,バンコクの空港が停まっている。これは大変なことである。バンコク空港と言えば,我々が必ずと言って良いほど使っていた空港で,ラオスもカンボジアもミャンマーもベトナムも,下手をすればアフリカも,この空港を使って調査に行っていた。おそらく相当の数の友人達が,彼方此方で足止めを食っているだろう。それにしても一体,タイの政治はどうなってしまったのか。
タクシンが首相の座に着いたときは,何か,お笑いのナンチャンに似ていたけれど,それでも大きな期待があった。南の石炭火力発電所を自ら視察に行ったり,経済開発の面で大いに期待した。しかし途中で,日本の円借款は邪魔になる,というような発言をしたり,通信で危ない噂が流れたり,結局は彼は,我々の当初の期待を裏切った。
それでも,勇敢にミャンマーに突っ込んでいったのはタクシンである。現在の,ヤダナの天然ガスの輸入やサルウイーン河の開発に手を付けるために,国際世論のうるさい中も,ミャンマーの当時の首都ヤンゴンまで出かけていた。結局,考えてみれば商売しかなかったのか。それにしても逃げ回る姿は格好悪い。結局国に帰って牢獄に繋がれたフジモリ大統領の方が,勇敢か。
そのミャンマーに仕掛けているのがインドの我がラメシュ副大臣(注4)だ。水力発電公社NHPCが,出来ません,と言って投げ出そうとしたイラワジ川上流のタマンティダム,1,200MW,に自ら出ていって,NHPCを叱りつけ,そのダムを造って下流の水利用に貢献し,電気はインドへ持って帰る,と息巻いて,ミャンマーに踏みとどまった。勿論,ラメシュ副大臣(注4)の狙いは,60兆立方フィートと言われるミャンマー沖の天然ガスで,ミャンマーが殆ど雲南とバンコクへ送ろうとした中に,割って入ろうとしている。
今日のニュースを見て驚いた。ラメシュ副大臣(注4)は,2008年10月にミャンマーに乗り込んだときに,既にアラカン山脈を越えて,ラキン州まで入り,カラダン川を遡って,インドのミゾラム州(注13)に達するルートを下見していたのだ。HPで地図を見て頂きたい。中国が,石油基地として開発しているラムリー島から北西に100km,ここにシットウエイ海港(注12)を改造して中国とにらみ合い,一方,シットウエイ海港(注12)からカラダン川を遡って,一部舟運,一部新設道路で,インドの最東端,ミゾラム州(注13)に繋ごうというのである。
これは勿論,両国の通商のためであって,エネルギーに関しては,今回の協議では一言も触れられていない。しかし,私から見ると,これは明らかに,ミャンマー沖のガスをパイプラインでインドへ持って帰るその下ごしらえなのだ。それと,突き出た半島同志,100kmの距離で,中国の海港とインドの海港がにらみ合う姿は,何とも勇ましい。インドは海軍が強いという。ラメシュ副大臣(注4)の仕掛けを見守ろう。
またもう一つ,インドのエネルギーラインで驚きの記事がある。トルコに集まる中央アジアとカスピ海沿岸のエネルギー資源を,イスラエルを通してインドに持ち帰ろう,と言うのである。読んだ私も,一瞬,世界地図と睨めっこをした。トルコの地中海沿岸の港セイハン(注26)から,約100kmのパイプラインをイスラエルに引くという,何処に行くのよ,反対方向じゃないか,と呟きながら,イスラエルのエイラット港(注28)を探した。
驚いたですね,イスラエルにただ一点,紅海に面している港があったのです。ぼけっと地図を見ていても分からない,私は今まで,イスラエルは全海岸が地中海にあると思っていた。ところが,スエズ運河を経ずに,紅海に面した港があって,そこから紅海を南下し,アデン湾を通過すると,もうそこはインドの内海とも言えるアラビア海ではないですか。私には想像も出来なかったルートだが,昔のインド人は,おそらくよく使っていた海路なのでしょうね。
インド側は沈黙を守っているが,トルコの首相が構想を明らかにして,来月にも三国の打ち合わせに入るという。結局,イランのガスパイプラインはブッシュ大統領に反対されて,この道をとるのだ,と言う表現で記事は書かれている。それにしても,ミャンマー領内に僅かに突出しているミゾラム州(注13)から,バングラデシュを経由せずにインドに持ち帰るとか,イスラエルの僅かな隙間に手を突っ込むとか,どうもこの当たりの話は,アジア開発3人男の一人,ラメッシュの仕掛けですね。ややこしいから後でHPで地図を出しておくので見て下さい。まさにアジアのエネルギー最前線の話ですよ。
(注)(1) Xinhua,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htm,(3) Ramree Island,(4) Indian Minister of State for Commerce and Power Shri Jairam Ramesh,(5) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080801A,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080917B,(7) Maung Aye, vice chairman of the State Peace and Development Council.,(8) foreign secretary Shivshankar Menon, (9) deputy minister U Kyaw Thu,(10) a multi-modal transit and transport facility,(11) Kaladan River,(12) Sittway Port in Myanmar,(13) Indian state of Mizoram,(14) Sitpyitpyin,(15) Nay Pyi Taw,(16) Rakhine state,(17) Reedkhoda,(18) Tamu-Moye,(19) Mandalay,(20) 3rd meeting of Myanmar-India Joint Trade Committee,(21)
(注) (21) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081104B.htm,(22) Turkish Prime Minister Recep Tayyip Erdogan,(23) Bangalore,(24) Caspian region,(25) Mediterranean port,(26) Ceyhan,(27) Red Sea,(28) Eilat port,(29) Suez Canal,(30) Turkish Energy Minister Hilmi Guler,(31) Gulf of Aden,(32) Arabian Sea, (33)
本文
●ミャンマーとインド,経済協力の促進を確認
このニュースが,ヤンゴン駐在の中国紙シンフア(注1)記者から発せられていることに注意したい。中国は,2008年11月1日付本HP(注2)にて報告しているように,ミャンマー沖合西の島,ラムリー島(注3)に,中国のエネルギー根拠地を港と共に造成中である。またインドは,私が強く注目しているラメシュ副大臣(注4)が,嫌がる水力発電公社NHPCを説き伏せて,ミャンマーのタマンティ水力などに,調査継続の指示をして,更に中国に持ち去られようとしているミャンマーの天然ガス狙いで動いていることは,2008年8月1日付本HP(注5)と,2008年9月17日付本HP(注6)に詳しく流れが書かれている。
さて今日の記事,エネルギーについては殆ど語られていないが,裏にある動きを考えながら読んでみよう。ミャンマーとインドは,この日曜日,ミャンマーにて,外務省当局者による第9次二国間協議を行い,広範な分野の協力について討議を行った。これは,2008年4月,ミャンマーの第2位にあるマウンアイ将軍(注7)が,インドを訪問したときの合意事項を,更に前進させるための今日である。インドを代表したのは,メノン外務次官(注8),ミャンマーを代表したのはウチョーツー外務副大臣(注9)である。
2008年4月,ニューデリーで,ミャンマーのマウンアイ将軍(注7)との間で合意された項目は3つに亘るが,特に注目したいのは,両国の交通ルートの開発(注10)で,それはミャンマーのカラダン川(注11)を使って,ミャンマーのシットウエイ海港(注12)とインドのミゾラム州(注13)を結ぼうというものである。この案は,シットウエイ海港(注12)の改良工事,カラダン川(注11)の上流の町シットピットピン(注14)とシットウエイ海港(注12)の間の舟運のための河川改修,シットピットピン(注14)から国境までの道路建設,を含むものである。
また,2008年6月,インドの我がラメシュ副大臣(注4)が,ミャンマーの新首都ネピトー(注15)を訪問したとき,20百万ドルのアルミニュームワイヤーの工場,64百万ドルの23万ボルト送電線建設,などの経済協力で合意している。そのとき,我がラメシュ副大臣(注4)は,ランキン州(注16)を訪ね,自分の足でこのカラダン川(注11)多目的輸送ルートの視察を行っている。
ミャンマーとインドの国境線は1,600kmであり,両国の経済関係は,この2,3年,急激に深まっている。ミャンマー側によると,ミャンマーとインド両国の通商は,2007~2008年財政年度で995百万ドルで,ミャンマーからの輸出が810百万ドル,インドからの輸入が185百万ドルである。ミャンマーにとってインドは,タイ,中国,シンガポールに続く第4位の通商額で,輸出額としてはタイに続く第2位で,全輸出量の25%に達している。
また,インドのミャンマーへの投資額は,2008年1月当時,契約ベースで,219.57百万ドルに達し,このうち137百万ドルは,2007年9月の原油ガス分野への投資に使われている。最近では,インドのリードコダ(注17)とミャンマーのタムモイ(注18)間の通商設備の整備がなされている。2008年10月には,ラメシュ副大臣(注4)がマンダレー(注19)を訪問し,第3回インド-ミャンマー通商協議(注20)が持たれている。この会議では,金融などの他,電力及びエネルギー分野の協力も話し合われた。その他ラメシュ副大臣(注4)は,ITセンターの開設,500人のミャンマー学生の招聘,租税や保健医療などの行政に関する支援も含まれている。
この記事から脈々として伝わってくるのは,中国に対抗するインドの,特に我がラメシュ副大臣(注4)の遠謀深慮が窺われる。最後の狙いは,ミャンマーの天然ガスにあるのだが,それを前面に出さずに,ミャンマーのソフトなプラットフォーム構築に力点を置き,しかも,中国が大々的な港湾建設を行っているラムリー島(注3)の目と鼻の先,100km西北のシットウエイ海港(注12)とカラダン川(注11)の舟運に注目して,最後は,バングラデシュを通過しない最近のインド,ミゾラム州(注13)へ繋ぐと言うことは,ラメシュ副大臣(注4)がこのルートを,インドへのガスパイプラインの本命と位置づけて,現場まで見ていることに注目したい。
(注)(1) Xinhua,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htm,(3) Ramree Island,(4) Indian Minister of State for Commerce and Power Shri Jairam Ramesh,(5) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080801A,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080917B,(7) Maung Aye, vice chairman of the State Peace and Development Council.,(8) foreign secretary Shivshankar Menon, (9) deputy minister U Kyaw Thu,(10) a multi-modal transit and transport facility,(11) Kaladan River,(12) Sittway Port in Myanmar,(13) Indian state of Mizoram,(14) Sitpyitpyin,(15) Nay Pyi Taw,(16) Rakhine state,(17) Reedkhoda,(18) Tamu-Moye,(19) Mandalay,(20) 3rd meeting of Myanmar-India Joint Trade Committee,(21)
●インド,トルコのガス原油をイスラエル経由で
インドは原油ガスが欲しい,パイプラインを探りまくっている。今日も,ミャンマーのカルダン川ルートを見てきたところだ。また,2008年11月4日付本HP(注21)では,インドのムケルジ外相が,イランにせき立てられてテヘランを訪問,米印原子力協定があるから,イランからのガスパイプラインに明確な態度を出せないのか,と記者団に迫られて,インドは独立国だ,と強弁した。今日の記事は驚きである。私もしばらく世界地図とにらめっこしなければならなかった。これはラメッシュの発想に違いない。
さて記事だが,トルコ側の記者会見で始まっている。インドはまだ何も言っていないが,記事はインド紙である。インドが原油ガスを,トルコからイスラエル経由,スエズ運河を通らずに手に入れる方法について,まもなく3国の政府関係者が協議すすことになった。これはインドが,中央アジアやカスピ海沿岸(注24)のエネルギーを手にするための容易な方法の提案で,トルコのエルドラン首相(注22)が述べた内容である。
エルドラン首相(注22)はインドの南部,バンガロール(注23)を訪ねているようで,月曜の業界首脳との会議で,明らかにした。この提案は,長い間議論が続けられたイランからのパキスタンを経てのパイプライン問題で,建設費が大きく計画を超えたことと,米国の強硬な反対によって,合意が成立しなかった直後になされたものだ。
トルコは,イランを避けるルートの中では,地域のハブの役割を果たしている。計画のパイプラインは,カスピ海沿岸(注24)からトルコの地中海の港(注25)セイハン(注26)までのパイプラインを,更にイスラエルの紅海(27)に面する港,エイラット港(注28)まで敷設するものである。直線距離で約100kmである。
このエイラット港(注28)から原油とガスをインドのタンカーで出せれば,スエズ運河(注29)の通過を避けることが出来る。トルコのエネルギー大臣ギラー氏(注30)は,トルコは既にこのプロジェクトの可能性調査を終了しており,来月にもトルコで,トルコ政府とインド政府の協議が行われるはずだ,と語った。
なるほど,紅海(27)に出てアデン湾(注31)を抜け,アラビア海(注3)に出れば,インドの港はもう目の前に見えている。インド海軍は結構強いらしいから,これは安全なルートだ。イスラエルがエイラット港(注28)で紅海に面しているとは,余り知っている人はいないのではないか。でも,トルコからイスラエルまでのパイプラインは,レバノンやシリアがあり,結構な危険地帯,それでもイラン,イラクよりは安全か。
(注) (21) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081104B.htm,(22) Turkish Prime Minister Recep Tayyip Erdogan,(23) Bangalore,(24) Caspian region,(25) Mediterranean port,(26) Ceyhan,(27) Red Sea,(28) Eilat port,(29) Suez Canal,(30) Turkish Energy Minister Hilmi Guler,(31) Gulf of Aden,(32) Arabian Sea, (33)
●パキスタンのバシャダム建設,水危機に有望
パキスタンの水問題,今日で3日連続である。一昨日,2008年11月23日付本HP(注33)では,インドのシェナブ川(注35)のバギリハールダム(注6)について,パキスタン側の激しい反対論が提起されたし,昨日,2008年11月24日付本HP(注34)では,遠くワシントンから,パキスタン全土の水問題の厳しさが訴えられ,ダム建設の促進が要請されていた。今日は,一種の国民へのコンセンサスを得る目的なのか,ディアマー-バシャダム(注37)の着工決定を歓迎する記事である。
パキスタンの水とエネルギー不足を克服するために,「水資源開発構想2016(注38)」,の中には,カラバーダム(注39),ディアマー-バシャダム(注37),アコリダム(注40),ムンダダム(注41),クラムタンギダム(注42)の建設が,高々と謳い上げられている。規模の小さい州では不安が多く,大規模ダムの建設は,厳しい政治的な議論に晒されている。この民主的な新しい政府の元で,やはり,融和と同意が醸成されてきた。シェナブ川(注35)でインドがダムを造ったことで水危機が本格化し,国家経済委員会(注43)はディアマー-バシャダム(注37)の着工を決意し,国内の全勢力から,手を挙げて歓迎されている。
ディアマー-バシャダム(注37)は,インダス河のタルベラダム(注44)の上流315km,ギルギット(注45)の下流165km,北西辺境州(注46)と北域の境界にあるチラス(注47)から下流40kmの位置にある。ダムの領域は110平方kmで,湛水池は100km上流のカラコラムハイウエー(注48)のライコット橋(注49)まで達する。発電所出力は,4,500MWで,工事費は126億ドル,ダムの高さは272m,貯水容量は730万エーカーフィート(注50)で,完成は2016年となっている。海外の専門家によるパネルでも,最適地だと言われており,移住人口は2万8,000人または4,250世帯である。7年で返済予定で,発電は15億ドル,灌漑は6億ドルの年便益を見積もっている。
全国的には,2015年までに発電設備を18,000MWから33,000MWに挙げるために300億ドルを必要としている。ダムは洪水で流れ去る貴重な水を貯め,社会経済開発に貢献する。飲料水,灌漑,洪水調節,発電などに便益をもたらす。インダス河流域に建設されている灌漑施設に,直ちに使うことが出来る。タルベラダム(注44)の効果は,最初の計画を大幅に上回ったが,30年間の堆砂などで機能が落ちている。
パキスタンの貯水池容量は世界的に見て少ない。一人当たりで,米国は6,150立方m,オーストラリアは5,000立方m,中国は2,200立方m,に対してパキスタンは僅かに132立方mである。乾燥地帯では洪水の水をダムで持ち越す必要があるが,ナイル河ではアスワンハイダム(注51)で1,000日分,米国の例では900日分,南アフリカのオレンジ河では500日分,インドでは120~220日分であるが,インダスのパキスタンは僅かに30日分である。乾燥地帯に属する国では,年間流量の40%を貯留する必要があると言われているが,パキスタンでは8%で,運用困難である。もし計画が実現すれば,裸地2,500万エーカーが耕作可能となる。
このような意味から,パキスタンの国民は一致してダム計画を支持している。しかし,ディアマー-バシャダム(注37)は,明日着工しても完成までに8年を要する。この間パキスタン政府は,小規模ダムで対処しようとしている。国家経済委員会(注43)は,小規模ダム314地点の着工を承認している。包蔵水力50,000MWと言われているが,まだ86%が残されたままだ。
しかし,大規模ダムについては,ディアマー-バシャダム(注37)について影響ある政治区域を明確にすること,地元便益を確実に分配すること,移住者に対する完全な補償,地元住民の心情への十分な対策を講ずること,などが必須であるが,パキスタンは水との闘争で十分な力を蓄えている。それは,資源の有効利用への知識,既設設備の有効利用,水使用のための制度の近代化,来る数十年の改革の実施,などである。
何とも,パキスタンは,ディアマー-バシャダム(注37)建設に当たって,まさしく戦争前夜の様相である。これは政府が国民の一致団結を呼びかけた記事と見て良かろう。インドへの挑戦状も,実は大規模ダム建設への,政府の意図的な行動,と見ることも出来るだろう。中国は既に,このディアマー-バシャダム(注37)への協力を約束している。
(注) (33) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(34) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081124A.htm,(35) Chenab river, (36) Bagilihar dam,(37) Diamer-Basha dam, (38) “Water Vision - 2016”,(39) Kalabagh dam,(40) Akhori dam, (41) Munda,(42) Kurram Tangi dam,(43) National Economic Council (Ecnec),(44) Tarbela Dam,(45) Gilgit,(46) North Western Frontier Province (NWFP) ,(47) Chilas,(48) Karakoram Highway (KKH),(49) Raikot Bridge,(50) MAF,(51) high Aswan Dam reservoir,(52)
●ネパール,民間資本,水力開発促進のための施策を要請
ネパール新生共和国の初代首相になったマオイストのプラチャンダー首相は,演説でも,またインドを訪問したときも,口癖のように,10年間で10,000MWを開発する,と言い続けている。実際にこれが可能なのかどうか,誰もが疑問を持っている。安倍首相が年度内にすべて年金を明らかにする,と言っても誰も信じず,しかし安倍さんはそれを繰り返さざるを得なかった。その様な状態にプラチャンダーが追い込まれませんように。
この月曜日,2008年11月24日,ネパールで,「水力開発展望2020(注52)」,が開催された。この席上で,水力開発への投資を刺激する対策が必要なことが議論された。発言したのは,ネパール商工会議所会頭クマール氏(注53)で,「政府は,水力分野の開発を高い優先度に置いている。しかしこの政策に対しては,潜在的な投資企業に投資を促すための,集中した施策が必要である。」,と政府を促した。
他の参加者からも,この先10年間で10,000MW開発するための政策が明確に見えてこない,と注文がついた。これに対して政府高官は,政府は,水力開発を促すため,効率的に,開発ライセンスを付与する政策を実行中である,と言う答えが返ってきただけである。実際に政府は,既に,13,000MWに相当する開発免許を与えていることは,確認されている。
(注) (52) "Vision 2020: A Vision for Hydropower Growth",(53) Federation of Nepalese Chamber of Commerce and Industries (FNCCI), president Kush Kumar Joshi,(54)
Reference
Pakistan
●081125A Pakistan, pakobserver
パキスタンのバシャダム建設,水危機に有望
Construction of Bhasha Dam is a welcome sign
http://pakobserver.net/200811/25/Articles02.asp
Nepal
●081125B Nepal, nepalnews
ネパール,民間資本,水力開発促進のための施策を要請
Govt must be clear on harnessing hydropower: Private sector
http://www.nepalnews.com/archive/2008/nov/nov25/news05.php
Myanmar
●081125C Myanmar, mathaba
ミャンマーとインド,経済協力の促進を確認
Myanmar, India to cement economic and trade ties
http://mathaba.net/news/?x=612352
India
●081125D India, Economic Times
インド,トルコのガス原油をイスラエル経由で
India, Turkey, Israel to discuss gas pipeline
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_Turkey_Israel_to_discuss_gas_pipeline/articleshow/3754646.cms
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
タイ,バンコクの空港が停まっている。これは大変なことである。バンコク空港と言えば,我々が必ずと言って良いほど使っていた空港で,ラオスもカンボジアもミャンマーもベトナムも,下手をすればアフリカも,この空港を使って調査に行っていた。おそらく相当の数の友人達が,彼方此方で足止めを食っているだろう。それにしても一体,タイの政治はどうなってしまったのか。
タクシンが首相の座に着いたときは,何か,お笑いのナンチャンに似ていたけれど,それでも大きな期待があった。南の石炭火力発電所を自ら視察に行ったり,経済開発の面で大いに期待した。しかし途中で,日本の円借款は邪魔になる,というような発言をしたり,通信で危ない噂が流れたり,結局は彼は,我々の当初の期待を裏切った。
それでも,勇敢にミャンマーに突っ込んでいったのはタクシンである。現在の,ヤダナの天然ガスの輸入やサルウイーン河の開発に手を付けるために,国際世論のうるさい中も,ミャンマーの当時の首都ヤンゴンまで出かけていた。結局,考えてみれば商売しかなかったのか。それにしても逃げ回る姿は格好悪い。結局国に帰って牢獄に繋がれたフジモリ大統領の方が,勇敢か。
そのミャンマーに仕掛けているのがインドの我がラメシュ副大臣(注4)だ。水力発電公社NHPCが,出来ません,と言って投げ出そうとしたイラワジ川上流のタマンティダム,1,200MW,に自ら出ていって,NHPCを叱りつけ,そのダムを造って下流の水利用に貢献し,電気はインドへ持って帰る,と息巻いて,ミャンマーに踏みとどまった。勿論,ラメシュ副大臣(注4)の狙いは,60兆立方フィートと言われるミャンマー沖の天然ガスで,ミャンマーが殆ど雲南とバンコクへ送ろうとした中に,割って入ろうとしている。
今日のニュースを見て驚いた。ラメシュ副大臣(注4)は,2008年10月にミャンマーに乗り込んだときに,既にアラカン山脈を越えて,ラキン州まで入り,カラダン川を遡って,インドのミゾラム州(注13)に達するルートを下見していたのだ。HPで地図を見て頂きたい。中国が,石油基地として開発しているラムリー島から北西に100km,ここにシットウエイ海港(注12)を改造して中国とにらみ合い,一方,シットウエイ海港(注12)からカラダン川を遡って,一部舟運,一部新設道路で,インドの最東端,ミゾラム州(注13)に繋ごうというのである。
これは勿論,両国の通商のためであって,エネルギーに関しては,今回の協議では一言も触れられていない。しかし,私から見ると,これは明らかに,ミャンマー沖のガスをパイプラインでインドへ持って帰るその下ごしらえなのだ。それと,突き出た半島同志,100kmの距離で,中国の海港とインドの海港がにらみ合う姿は,何とも勇ましい。インドは海軍が強いという。ラメシュ副大臣(注4)の仕掛けを見守ろう。
またもう一つ,インドのエネルギーラインで驚きの記事がある。トルコに集まる中央アジアとカスピ海沿岸のエネルギー資源を,イスラエルを通してインドに持ち帰ろう,と言うのである。読んだ私も,一瞬,世界地図と睨めっこをした。トルコの地中海沿岸の港セイハン(注26)から,約100kmのパイプラインをイスラエルに引くという,何処に行くのよ,反対方向じゃないか,と呟きながら,イスラエルのエイラット港(注28)を探した。
驚いたですね,イスラエルにただ一点,紅海に面している港があったのです。ぼけっと地図を見ていても分からない,私は今まで,イスラエルは全海岸が地中海にあると思っていた。ところが,スエズ運河を経ずに,紅海に面した港があって,そこから紅海を南下し,アデン湾を通過すると,もうそこはインドの内海とも言えるアラビア海ではないですか。私には想像も出来なかったルートだが,昔のインド人は,おそらくよく使っていた海路なのでしょうね。
インド側は沈黙を守っているが,トルコの首相が構想を明らかにして,来月にも三国の打ち合わせに入るという。結局,イランのガスパイプラインはブッシュ大統領に反対されて,この道をとるのだ,と言う表現で記事は書かれている。それにしても,ミャンマー領内に僅かに突出しているミゾラム州(注13)から,バングラデシュを経由せずにインドに持ち帰るとか,イスラエルの僅かな隙間に手を突っ込むとか,どうもこの当たりの話は,アジア開発3人男の一人,ラメッシュの仕掛けですね。ややこしいから後でHPで地図を出しておくので見て下さい。まさにアジアのエネルギー最前線の話ですよ。
(注)(1) Xinhua,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htm,(3) Ramree Island,(4) Indian Minister of State for Commerce and Power Shri Jairam Ramesh,(5) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080801A,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080917B,(7) Maung Aye, vice chairman of the State Peace and Development Council.,(8) foreign secretary Shivshankar Menon, (9) deputy minister U Kyaw Thu,(10) a multi-modal transit and transport facility,(11) Kaladan River,(12) Sittway Port in Myanmar,(13) Indian state of Mizoram,(14) Sitpyitpyin,(15) Nay Pyi Taw,(16) Rakhine state,(17) Reedkhoda,(18) Tamu-Moye,(19) Mandalay,(20) 3rd meeting of Myanmar-India Joint Trade Committee,(21)
(注) (21) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081104B.htm,(22) Turkish Prime Minister Recep Tayyip Erdogan,(23) Bangalore,(24) Caspian region,(25) Mediterranean port,(26) Ceyhan,(27) Red Sea,(28) Eilat port,(29) Suez Canal,(30) Turkish Energy Minister Hilmi Guler,(31) Gulf of Aden,(32) Arabian Sea, (33)
本文
●ミャンマーとインド,経済協力の促進を確認
このニュースが,ヤンゴン駐在の中国紙シンフア(注1)記者から発せられていることに注意したい。中国は,2008年11月1日付本HP(注2)にて報告しているように,ミャンマー沖合西の島,ラムリー島(注3)に,中国のエネルギー根拠地を港と共に造成中である。またインドは,私が強く注目しているラメシュ副大臣(注4)が,嫌がる水力発電公社NHPCを説き伏せて,ミャンマーのタマンティ水力などに,調査継続の指示をして,更に中国に持ち去られようとしているミャンマーの天然ガス狙いで動いていることは,2008年8月1日付本HP(注5)と,2008年9月17日付本HP(注6)に詳しく流れが書かれている。
さて今日の記事,エネルギーについては殆ど語られていないが,裏にある動きを考えながら読んでみよう。ミャンマーとインドは,この日曜日,ミャンマーにて,外務省当局者による第9次二国間協議を行い,広範な分野の協力について討議を行った。これは,2008年4月,ミャンマーの第2位にあるマウンアイ将軍(注7)が,インドを訪問したときの合意事項を,更に前進させるための今日である。インドを代表したのは,メノン外務次官(注8),ミャンマーを代表したのはウチョーツー外務副大臣(注9)である。
2008年4月,ニューデリーで,ミャンマーのマウンアイ将軍(注7)との間で合意された項目は3つに亘るが,特に注目したいのは,両国の交通ルートの開発(注10)で,それはミャンマーのカラダン川(注11)を使って,ミャンマーのシットウエイ海港(注12)とインドのミゾラム州(注13)を結ぼうというものである。この案は,シットウエイ海港(注12)の改良工事,カラダン川(注11)の上流の町シットピットピン(注14)とシットウエイ海港(注12)の間の舟運のための河川改修,シットピットピン(注14)から国境までの道路建設,を含むものである。
また,2008年6月,インドの我がラメシュ副大臣(注4)が,ミャンマーの新首都ネピトー(注15)を訪問したとき,20百万ドルのアルミニュームワイヤーの工場,64百万ドルの23万ボルト送電線建設,などの経済協力で合意している。そのとき,我がラメシュ副大臣(注4)は,ランキン州(注16)を訪ね,自分の足でこのカラダン川(注11)多目的輸送ルートの視察を行っている。
ミャンマーとインドの国境線は1,600kmであり,両国の経済関係は,この2,3年,急激に深まっている。ミャンマー側によると,ミャンマーとインド両国の通商は,2007~2008年財政年度で995百万ドルで,ミャンマーからの輸出が810百万ドル,インドからの輸入が185百万ドルである。ミャンマーにとってインドは,タイ,中国,シンガポールに続く第4位の通商額で,輸出額としてはタイに続く第2位で,全輸出量の25%に達している。
また,インドのミャンマーへの投資額は,2008年1月当時,契約ベースで,219.57百万ドルに達し,このうち137百万ドルは,2007年9月の原油ガス分野への投資に使われている。最近では,インドのリードコダ(注17)とミャンマーのタムモイ(注18)間の通商設備の整備がなされている。2008年10月には,ラメシュ副大臣(注4)がマンダレー(注19)を訪問し,第3回インド-ミャンマー通商協議(注20)が持たれている。この会議では,金融などの他,電力及びエネルギー分野の協力も話し合われた。その他ラメシュ副大臣(注4)は,ITセンターの開設,500人のミャンマー学生の招聘,租税や保健医療などの行政に関する支援も含まれている。
この記事から脈々として伝わってくるのは,中国に対抗するインドの,特に我がラメシュ副大臣(注4)の遠謀深慮が窺われる。最後の狙いは,ミャンマーの天然ガスにあるのだが,それを前面に出さずに,ミャンマーのソフトなプラットフォーム構築に力点を置き,しかも,中国が大々的な港湾建設を行っているラムリー島(注3)の目と鼻の先,100km西北のシットウエイ海港(注12)とカラダン川(注11)の舟運に注目して,最後は,バングラデシュを通過しない最近のインド,ミゾラム州(注13)へ繋ぐと言うことは,ラメシュ副大臣(注4)がこのルートを,インドへのガスパイプラインの本命と位置づけて,現場まで見ていることに注目したい。
(注)(1) Xinhua,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htm,(3) Ramree Island,(4) Indian Minister of State for Commerce and Power Shri Jairam Ramesh,(5) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080801A,(6) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080917B,(7) Maung Aye, vice chairman of the State Peace and Development Council.,(8) foreign secretary Shivshankar Menon, (9) deputy minister U Kyaw Thu,(10) a multi-modal transit and transport facility,(11) Kaladan River,(12) Sittway Port in Myanmar,(13) Indian state of Mizoram,(14) Sitpyitpyin,(15) Nay Pyi Taw,(16) Rakhine state,(17) Reedkhoda,(18) Tamu-Moye,(19) Mandalay,(20) 3rd meeting of Myanmar-India Joint Trade Committee,(21)
●インド,トルコのガス原油をイスラエル経由で
インドは原油ガスが欲しい,パイプラインを探りまくっている。今日も,ミャンマーのカルダン川ルートを見てきたところだ。また,2008年11月4日付本HP(注21)では,インドのムケルジ外相が,イランにせき立てられてテヘランを訪問,米印原子力協定があるから,イランからのガスパイプラインに明確な態度を出せないのか,と記者団に迫られて,インドは独立国だ,と強弁した。今日の記事は驚きである。私もしばらく世界地図とにらめっこしなければならなかった。これはラメッシュの発想に違いない。
さて記事だが,トルコ側の記者会見で始まっている。インドはまだ何も言っていないが,記事はインド紙である。インドが原油ガスを,トルコからイスラエル経由,スエズ運河を通らずに手に入れる方法について,まもなく3国の政府関係者が協議すすことになった。これはインドが,中央アジアやカスピ海沿岸(注24)のエネルギーを手にするための容易な方法の提案で,トルコのエルドラン首相(注22)が述べた内容である。
エルドラン首相(注22)はインドの南部,バンガロール(注23)を訪ねているようで,月曜の業界首脳との会議で,明らかにした。この提案は,長い間議論が続けられたイランからのパキスタンを経てのパイプライン問題で,建設費が大きく計画を超えたことと,米国の強硬な反対によって,合意が成立しなかった直後になされたものだ。
トルコは,イランを避けるルートの中では,地域のハブの役割を果たしている。計画のパイプラインは,カスピ海沿岸(注24)からトルコの地中海の港(注25)セイハン(注26)までのパイプラインを,更にイスラエルの紅海(27)に面する港,エイラット港(注28)まで敷設するものである。直線距離で約100kmである。
このエイラット港(注28)から原油とガスをインドのタンカーで出せれば,スエズ運河(注29)の通過を避けることが出来る。トルコのエネルギー大臣ギラー氏(注30)は,トルコは既にこのプロジェクトの可能性調査を終了しており,来月にもトルコで,トルコ政府とインド政府の協議が行われるはずだ,と語った。
なるほど,紅海(27)に出てアデン湾(注31)を抜け,アラビア海(注3)に出れば,インドの港はもう目の前に見えている。インド海軍は結構強いらしいから,これは安全なルートだ。イスラエルがエイラット港(注28)で紅海に面しているとは,余り知っている人はいないのではないか。でも,トルコからイスラエルまでのパイプラインは,レバノンやシリアがあり,結構な危険地帯,それでもイラン,イラクよりは安全か。
(注) (21) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081104B.htm,(22) Turkish Prime Minister Recep Tayyip Erdogan,(23) Bangalore,(24) Caspian region,(25) Mediterranean port,(26) Ceyhan,(27) Red Sea,(28) Eilat port,(29) Suez Canal,(30) Turkish Energy Minister Hilmi Guler,(31) Gulf of Aden,(32) Arabian Sea, (33)
●パキスタンのバシャダム建設,水危機に有望
パキスタンの水問題,今日で3日連続である。一昨日,2008年11月23日付本HP(注33)では,インドのシェナブ川(注35)のバギリハールダム(注6)について,パキスタン側の激しい反対論が提起されたし,昨日,2008年11月24日付本HP(注34)では,遠くワシントンから,パキスタン全土の水問題の厳しさが訴えられ,ダム建設の促進が要請されていた。今日は,一種の国民へのコンセンサスを得る目的なのか,ディアマー-バシャダム(注37)の着工決定を歓迎する記事である。
パキスタンの水とエネルギー不足を克服するために,「水資源開発構想2016(注38)」,の中には,カラバーダム(注39),ディアマー-バシャダム(注37),アコリダム(注40),ムンダダム(注41),クラムタンギダム(注42)の建設が,高々と謳い上げられている。規模の小さい州では不安が多く,大規模ダムの建設は,厳しい政治的な議論に晒されている。この民主的な新しい政府の元で,やはり,融和と同意が醸成されてきた。シェナブ川(注35)でインドがダムを造ったことで水危機が本格化し,国家経済委員会(注43)はディアマー-バシャダム(注37)の着工を決意し,国内の全勢力から,手を挙げて歓迎されている。
ディアマー-バシャダム(注37)は,インダス河のタルベラダム(注44)の上流315km,ギルギット(注45)の下流165km,北西辺境州(注46)と北域の境界にあるチラス(注47)から下流40kmの位置にある。ダムの領域は110平方kmで,湛水池は100km上流のカラコラムハイウエー(注48)のライコット橋(注49)まで達する。発電所出力は,4,500MWで,工事費は126億ドル,ダムの高さは272m,貯水容量は730万エーカーフィート(注50)で,完成は2016年となっている。海外の専門家によるパネルでも,最適地だと言われており,移住人口は2万8,000人または4,250世帯である。7年で返済予定で,発電は15億ドル,灌漑は6億ドルの年便益を見積もっている。
全国的には,2015年までに発電設備を18,000MWから33,000MWに挙げるために300億ドルを必要としている。ダムは洪水で流れ去る貴重な水を貯め,社会経済開発に貢献する。飲料水,灌漑,洪水調節,発電などに便益をもたらす。インダス河流域に建設されている灌漑施設に,直ちに使うことが出来る。タルベラダム(注44)の効果は,最初の計画を大幅に上回ったが,30年間の堆砂などで機能が落ちている。
パキスタンの貯水池容量は世界的に見て少ない。一人当たりで,米国は6,150立方m,オーストラリアは5,000立方m,中国は2,200立方m,に対してパキスタンは僅かに132立方mである。乾燥地帯では洪水の水をダムで持ち越す必要があるが,ナイル河ではアスワンハイダム(注51)で1,000日分,米国の例では900日分,南アフリカのオレンジ河では500日分,インドでは120~220日分であるが,インダスのパキスタンは僅かに30日分である。乾燥地帯に属する国では,年間流量の40%を貯留する必要があると言われているが,パキスタンでは8%で,運用困難である。もし計画が実現すれば,裸地2,500万エーカーが耕作可能となる。
このような意味から,パキスタンの国民は一致してダム計画を支持している。しかし,ディアマー-バシャダム(注37)は,明日着工しても完成までに8年を要する。この間パキスタン政府は,小規模ダムで対処しようとしている。国家経済委員会(注43)は,小規模ダム314地点の着工を承認している。包蔵水力50,000MWと言われているが,まだ86%が残されたままだ。
しかし,大規模ダムについては,ディアマー-バシャダム(注37)について影響ある政治区域を明確にすること,地元便益を確実に分配すること,移住者に対する完全な補償,地元住民の心情への十分な対策を講ずること,などが必須であるが,パキスタンは水との闘争で十分な力を蓄えている。それは,資源の有効利用への知識,既設設備の有効利用,水使用のための制度の近代化,来る数十年の改革の実施,などである。
何とも,パキスタンは,ディアマー-バシャダム(注37)建設に当たって,まさしく戦争前夜の様相である。これは政府が国民の一致団結を呼びかけた記事と見て良かろう。インドへの挑戦状も,実は大規模ダム建設への,政府の意図的な行動,と見ることも出来るだろう。中国は既に,このディアマー-バシャダム(注37)への協力を約束している。
(注) (33) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(34) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081124A.htm,(35) Chenab river, (36) Bagilihar dam,(37) Diamer-Basha dam, (38) “Water Vision - 2016”,(39) Kalabagh dam,(40) Akhori dam, (41) Munda,(42) Kurram Tangi dam,(43) National Economic Council (Ecnec),(44) Tarbela Dam,(45) Gilgit,(46) North Western Frontier Province (NWFP) ,(47) Chilas,(48) Karakoram Highway (KKH),(49) Raikot Bridge,(50) MAF,(51) high Aswan Dam reservoir,(52)
●ネパール,民間資本,水力開発促進のための施策を要請
ネパール新生共和国の初代首相になったマオイストのプラチャンダー首相は,演説でも,またインドを訪問したときも,口癖のように,10年間で10,000MWを開発する,と言い続けている。実際にこれが可能なのかどうか,誰もが疑問を持っている。安倍首相が年度内にすべて年金を明らかにする,と言っても誰も信じず,しかし安倍さんはそれを繰り返さざるを得なかった。その様な状態にプラチャンダーが追い込まれませんように。
この月曜日,2008年11月24日,ネパールで,「水力開発展望2020(注52)」,が開催された。この席上で,水力開発への投資を刺激する対策が必要なことが議論された。発言したのは,ネパール商工会議所会頭クマール氏(注53)で,「政府は,水力分野の開発を高い優先度に置いている。しかしこの政策に対しては,潜在的な投資企業に投資を促すための,集中した施策が必要である。」,と政府を促した。
他の参加者からも,この先10年間で10,000MW開発するための政策が明確に見えてこない,と注文がついた。これに対して政府高官は,政府は,水力開発を促すため,効率的に,開発ライセンスを付与する政策を実行中である,と言う答えが返ってきただけである。実際に政府は,既に,13,000MWに相当する開発免許を与えていることは,確認されている。
(注) (52) "Vision 2020: A Vision for Hydropower Growth",(53) Federation of Nepalese Chamber of Commerce and Industries (FNCCI), president Kush Kumar Joshi,(54)
Reference
Pakistan
●081125A Pakistan, pakobserver
パキスタンのバシャダム建設,水危機に有望
Construction of Bhasha Dam is a welcome sign
http://pakobserver.net/200811/25/Articles02.asp
Nepal
●081125B Nepal, nepalnews
ネパール,民間資本,水力開発促進のための施策を要請
Govt must be clear on harnessing hydropower: Private sector
http://www.nepalnews.com/archive/2008/nov/nov25/news05.php
Myanmar
●081125C Myanmar, mathaba
ミャンマーとインド,経済協力の促進を確認
Myanmar, India to cement economic and trade ties
http://mathaba.net/news/?x=612352
India
●081125D India, Economic Times
インド,トルコのガス原油をイスラエル経由で
India, Turkey, Israel to discuss gas pipeline
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_Turkey_Israel_to_discuss_gas_pipeline/articleshow/3754646.cms
2008年11月25日火曜日
パキスタンの水問題深刻
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
その昔,ラオスのナムグムダムの上を歩いているときに,ラオスの若いエンジニアーから,「アダチさん,おめでとう。いよいよ日本も社会主義国の仲間入りだね。」,と言って握手を求められて面食らった,丁度,社会党の村山さんが首相になったときである。社会主義国と社会主義政党が政権を握ったこととは,大きな違いなのだが,説明するのは面倒くさかった,有り難う,と言って握手した。あの時,あのラオスの子は,本気で言ったのだろうか,冗談だったのだろうか,今になっても考え込んでしまう。
今日の記事の中で,ネパールの週刊雑誌の編集者で中国の専門家が,中国メディアのインタービューを受けて,中国の経済政策を礼賛しつくし,中国経済こそは,これからのネパールの経済発展の模範だ,と大きく持ち上げている。かって,インドネシアのカラ副大統領も,中国から帰ってきて,中国の方式こそが,経済発展の方程式だ,インドネシアも見習う,と宣言して,石炭火力を全部作ってもらう約束を獲得したことがあった。
このネパールの記者と,私の友人であるラオスのエンジニアートは,同じ勘違いをしている。ネパールはマオイストのプラチャンダーが首相となり,これは共産主義政権だと言われている。ただ,ネパールの記者は,この共産党政権に他の政党が,ゆくゆくは組み込まれて,共産党の一党独裁に進み,中国と同じ道を歩む,と考えているようだ。ネパールの場合は,中国と違って,明日国民がノーと言えば,共産党政権は壊れる。
ただ,このネパールのプラチャンダー政権は,政権につく前のマオイストは,中国は共産主義の堕落したもの,と決めつけて批判してきており,今回政権をとったことで,プラチャンダーは,インドに行く前に北京を訪問して,悪かったと謝って,姿勢を180度転換することで,今日の記者に皮肉られている。でも,そんなことより,中国に,鉄道建設とダム建設を手伝って貰うことの方が,プラチャンダーにとって大切なようだ。
インドを挟んでの,ネパールと,水問題のパキスタン,両国とも,インドの回りをぐるぐる回る衛星だ,と言えば叱られるかな。しかし,昨日は,インドがインダスの上流に建設するシェナブ川(注15)のバギリハールダムで,パキスタン側の痛烈な記事があり,今日はパキスタンの水の専門家が,ワシントンで,パキスタンの水の窮状を訴えた記事を読まされて,すっかりパキスタンに同情しているが,水問題とは何か,考えさせられる。
このパキスタンの専門家の話で,最後に彼女が言っている言葉が,結構面白い。彼女は,パキスタンの水問題は,まず発想の転換をしなければならない,と言って,パンジャブ州とシンディ州の争い,と言う考え方を止めて,水を使っているもの同士の論議に転換しなければならない,と言っている。州同志の争うは,いつまでも続いて,政治家のいい道具にされてしまっている,と言うのである。まさしく水問題は,一旦政治の道具,外交の道具に使われると,解決できない,と言うことは,メコン河も同じ構造だ。専門家は,次のように言っている。
世界の河川でも,上下流の争いの例は沢山あるが,パキスタンも例外ではない。しかしそこには多くの教訓が潜んでいる。下流国が自分で自分を守ることが重要で大切だ。パキスタンの場合は,一般的な方法と新しい発想を組み合わせて解決可能だと思う。今とは違う枠組みを発想して行かなければならないかも知れない。州間の論争でなく水使用者の論争にすべきではないか。その意味では,パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の論争に,全土の問題を解決するヒントがある。水の供給の問題から水需要の運営法に,重点を移していったらどうか。
このカマール女史(注17)の講演を読み進むうち,各地の水問題は殆どが政治に利用された政治問題ではないか,と言う気になってきた。まあ実態はそうなのだろうけれど,皆さん,一生懸命技術を考えているけれど,結局最後は政治家に利用されて行く。カマール女史(注17)の最後に出てくる言葉,「水は州の間の争いではなく,水を使うものの争いでなくてはならない。」,と言う言葉がそれを示している。
(注) (14) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(15) Chenab river,(16) Karachi,(17) Simi Sadaf Kamal,chairperson of Hissar, an NGO in Karachi,(18) semi-arid,(19) Balochistan,(20) Mangla dam,(21) Tarbela dam,(22) Punjab,(23) Kalabagh dam,(24) Diamer-Bhasha Dam,(25) non-flood methods of cultivation,(26) micro-irrigation strategies,(27) tubewell,(28) on-farm irrigation,(29) Indus delta,(30) Kotri Barrage,(31) Water Accord of 1991,(32) Sindh,(33)
本文
●ネパールは,中国の30年間に亘る改革の経験に学べ
ネパールの最初の政権の仕事は,インド訪問ではなくて,北京訪問だった。2008年8月28日付け本HP(注1)でこのプラチャンダー首相の北京訪問に触れている。「プラチャンダーは,約束したユートピアの実現よりは,戦争を仕掛ける方がどれだけ簡単か,そのうち思い知るだろう。」,と,当時のワシントンストリートジャーナルは書いている。また,2008年9月16日付本HP(注2)では,プラチャンダー首相が,インド訪問に当たって,北京を先に訪問したことの言い訳を,縷々述べている。
今日の記事は,ネパールの中では中国通で通っているネパール週刊誌(注3)のシュレスタ記者(注4)が,中国紙(注5)のインタビューに答えたもので,歯の浮くような中国への憧憬の言葉が連なっているが,まあ,ネパール人の中にこのような親中派がいて,今回の革命に近い毛派の政権奪取の中で,インドと中国をどの様に秤にかけようとしているか,とくと拝見してみたい。シュレスタ記者(注4)は,1991年以来,16回北京を訪問していると言う。この記事は,カトマンズ(注6)で書かれたものである。
シュレスタ記者(注4)は,開口一番,長い内戦の結果,これからネパールの経済改革が始まるが,それは中国が過去30年間に解放への改革’注7)してきた歴史に学びたい,と切り出している。そうして,経済開発の基本は政治的な安定である,として,ネパールの和平達成に,期待を寄せ,今こそ中国に学んで中国のように繁栄を達成したい,としている。勿論,全く中国のコピーでなく,ネパールなりの方法で,と念を押している。
シュレスタ記者(注4)は,共産主義(注8)を礼賛している。誰が共産主義(注8)は廃れたと言っているのか,中国を見ればその答えが分かる,と言っている。そこには,マルクス(注9)やエンゲルス(注10),更には毛沢東(注11)とトショウヘイ(注12)の名前が出てきて,如何にも古めかしい。政権を取ったマオイスト(注13)も,以前は中国を,共産主義のはぐれもの,と蔑んでいたが,今は,中国がマオイスト(注13)の新しい規範になりつつあるのは,如何にもおかしい。180度転換である。
シュレスタ記者(注4)は,どうも勘違いしているのは,このマオイスト(注13)党が,他の政党を巻き込んで大きな政党になる,即ち,一党独裁の携帯に進む,と考えているようにもとれる。なぜ今回,マオイスト(注13)が政権を取れたのか,その民主主義の本質が理解できていないようだ。シュレスタ記者(注4)は,今話題となっているネパールの水力資源開発に,中国の力が大きいだろう,と言っている。一方でインドが主力占める水力開発であるが,少なくとも実施の方法は中国に学ぶべき,と言っている。
またシュレスタ記者(注4)は,雇用の問題について,ネパールの政府内で外国人を見かけたことがあるか,問いかけ,上海では実に118,000人の外国人が働いており,この中には日本人と韓国人が5万人,アメリカ人が1万人,更に100人のインド人が,コンピューターソフトに関わる仕事に就いている,とネパールとの違いを浮き彫りにしている。この中国の変化は,1978年以来の開放政策にある,と指摘している。
シュレスタ記者(注4)は,1978年以来の中国の発展を驚きの眼で描いており,2020年には,中国が世界の先頭立って走っているだろう,と言っている。1978年の中国には,民間企業はゼロであったが,現在の中国では,GDPの30%を民間資本が稼ぎ出しており,また30%は外国資本で,30%が公共部門であることも,シュレスタ記者(注4)の関心を引いている。
このシュレスタ記者(注4)のインタビュー記事を読んで思ったのは,発展途上国にとって中国が如何に羨ましい存在であるか,と言うことと,ネパールの政治形態にへの思い違いが,今後のネパール人達の政治的行動にどの様に出てくるか,興味がある。またこれは危ない点でもあるが,ネパールは中国と違って,国民がマオイスト(注13)に飽きると,いつでも政権政党の首をすげ替えることが出来る,と言う点だ。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080828C,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080916B,(3) Nepali weekly newspaper Jan-Aastha,(4) Shrestha,(5) http://news.xinhuanet.com/english/,(6) Kathmandu,(7) "Reform and Opening-up",(8) communism,(9) Marx,(10) Engels,(11) Mao Zedong,(12) Deng Xiaoping,(13) Communist Party of Nepal (Maoist) (CPN-M) ,(14)
●パキスタンは,5400万人が,安全な水がない
昨日,2008年11月23日付本HP(注14)で,パキスタンのインダス河,特にその支流のシェナブ川(注15)で,インドに追いつめられる焦りを見てきたが,まさに国際河川の上流と下流の国の水への思いを新たにした。まだその思いも冷めないうちの今日,2008年11月24日,今度は和親から発せられたパキスタンの人々の水への声が,記事になっている。ワシントンで開かれたパキスタンの水問題に関する会議で,カラチ(注16)から出席した水問題専門家カマール女史(注17)の発言の内容である。
パキスタンの人口1億6,500万人のうち,5,400万人は安全な飲み水に恵まれていなく,7600万人が公衆衛生の恩恵を受けていない。また,9,800万人が農業に従事し,4,900万人が貧困のレベルにある。国土の92%は,乾燥地帯または準乾燥地帯(注18)である。インダス流域は国土の25%を占め,人口の65%がこのインダス流域に住んでいる。農業生産は,パキスタンのGDPの25%を占めている。
パキスタンは水不足のプレッシャーの中にあり,2035年には完全に欠乏する。灌漑面積の38%は沼地で,14%は塩害に悩まされている。インダス流域には塩が堆積し,帯水層は塩に侵されている。バロチスタン(注19)は塩分で危険な状態で,インダス下流域では,真水は激減している。パキスタンでの州の間の水争いは長く,重要な用途別の議論がなされる時間がなかった。
灌漑と農業に使われる水は97%に達し,僅かに4%が他の目的に使われているに過ぎない。水道と下水の費用はGDPに0.2%であることが分かった。マングラダム(注20)とタルベラダム(注21)の容量の25%が失われているので,灌漑水路の回転に使われるだけの水がない。また,取水堰や水路で失われる水は4分の一に達し,水路で失われる量は,送水量の3分の一に達する。農業で消費するのは25%に過ぎない。上流,中流,下流での水争いは激しく,耕作可能な土地の45%は,常に耕している,準備中の状態である。
非常に費用がかかるが,1~2カ所のダムは必要だ。しかし,特に,パンジャブ州(注22)と他の3州との問題で,余りにも議論が長すぎる。カラバーダム(注23)は今一時的に棚上げされているが,建設費126億ドル,発電出力,450,000MW,のディアマ-バシャダム(注24)が浮上してきた。もし円滑に行けば,2016年に完成の予定である。便益的には,水力発電が15億ドル,灌漑が6億ドル,の割合だ。
もう少し効率的な維持管理システムを確立できれば,輸送中の水の損失が劇的に減少する。水の政治的要素は,パキスタンではまだ封建的な土地使用に阻害されている。特に,バロチスタン(注19)州では,雨水による灌漑や灌漑の出来ない乾燥地帯が殆どを占めて,他の農業の方法が無視されている。それは,ノンフラッド(注25)や小規模灌漑(注26)の方法である。
インダス流域で,地下水揚水箇所(注27)が50万カ所ほどあるが,地下水灌漑は耕地直接灌漑(注28)の半分を占めている。インダスデルタ(注29)の主要な17の水路のうち生きているのは一つで,他は,海水と淡水の境界で汚染されている。世界で第6位の規模を誇ったマングローブ林は消え去り,コトリ堰(注30)より下流は干上がっている,そこには海水が侵入している状態だ。
パキスタンには,包括的な水資源法がない。それは,水利権,水使用,水の価値,評価の原則,補助金,汚染防止,などを規定すべきものだ。現在は,不均衡や先入観の入り交じったもので,唯一,1991年に制定された,水基本合意書(注31)があるだけである。パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の環境論争は長い。互いに首尾一貫していないし,政治に利用されている。
世界の河川でも,上下流の争いの例は沢山あるが,パキスタンも例外ではない。しかしそこには多くの教訓が潜んでいる。下流国が自分で自分を守ることが重要で大切だ。パキスタンの場合は,一般的な方法と新しい発想を組み合わせて解決可能だと思う。今とは違う枠組みを発想して行かなければならないかも知れない。州間の論争でなく水使用者の論争にすべきではないか。その意味では,パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の論争に,全土の問題を解決するヒントがある。水の供給の問題から水需要の運営法に,重点を移していったらどうか。
このカマール女史(注17)の講演を読み進むうち,各地の水問題は殆どが政治に利用された政治問題ではないか,と言う気になってきた。まあ実態はそうなのだろうけれど,皆さん,一生懸命技術を考えているけれど,結局最後は政治家に利用されて行く。カマール女史(注17)の最後に出てくる言葉,「水は州の間の争いではなく,水を使うものの争いでなくてはならない。」,と言う言葉がそれを示している。
(注) (14) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(15) Chenab river,(16) Karachi,(17) Simi Sadaf Kamal,chairperson of Hissar, an NGO in Karachi,(18) semi-arid,(19) Balochistan,(20) Mangla dam,(21) Tarbela dam,(22) Punjab,(23) Kalabagh dam,(24) Diamer-Bhasha Dam,(25) non-flood methods of cultivation,(26) micro-irrigation strategies,(27) tubewell,(28) on-farm irrigation,(29) Indus delta,(30) Kotri Barrage,(31) Water Accord of 1991,(32) Sindh,(33)
●インド,ヒマチャルプラデシュ,小水力開発で,窓口を一元化
インド,最近のヒマチャルプラデシュ州(注33)の動きには,何か注目すべきところがある。2008年10月24日付本HP(注34)で,ADBが8億ドルの融資を決めたが,その対象は再生可能の小水力中心である。また,2008年11月19日付本HP(注35)では,ヒマチャルプラデシュ州(注33)政府が,環境を考慮して水力は流れ込み式のみ,と言っている。実際には大規模ダムにも手を付けているわけだが,州全体の方向は,インドの発電所となるのではなく,自分たちの環境を守ろう,という方向か。
この日曜日,クル地区(注36)の,5MW,トッシュ小水力(注37)の竣工式に出席したヒマチャルプラデシュ州(注33)州政府のドウマル首相(注38)は,その祝辞の中で,小水力開発の促進を図るため,州政府の承認過程を一本化したい,と表明した。ドウマル首相(注38)によれば,このクル地区(注36)で2008年度内に80地点,総計出力,190MWを完成する予定である。
ヒマチャルプラデシュ州(注33)では,最近,高山で河川が氷結して,水力発電所の出力が30%も落ちている。この3年間に,冬の日需要,11月~3月,が,28億KWhから50億KWhへ増大している。中央政府のプールからの割り当てと他の電源を併せても,30億KWhにしかならない。このため,日20億KWhの不足が生じている。
2006年,ヒマチャルプラデシュ州(注33)政府は,水力開発政策を策定し,インドの水力州となることを決意し,数百の小水力や主要な大規模水力の推進を決定してきた。州内の企業はこれに勇気づけられ,規模が,2~5MWの小水力を盛んに取り上げて来た。ADB(注39)が先月に発表した8億ドルの資金支援は,全部で808MWの出力に対応したものである。
いずれにしても,ドウマル首相(注38)は,水力開発にのめり込む決意をしている。それが,小水力に及んだところが,他の州と趣を異にする。これはまさしく地元企業への振興策の一環であることは間違いなく,おそらく,州政府自体が,ADB(注39)と直接交渉を行ったものであろう。他の州にも波及するのだろうか。
(注) (33) Himachal Pradesh,(34) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024D.htm,(35) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081119.htm,081119F,(36) Kullu district,(37) Tosh mini-hydro project,(38) Himachal Pradesh Chief Minister Prem Kumar Dhumal,(39) Asian Development Bank,(40)
Reference
Pakistan
●081124A Pakistan, dailytimes
パキスタンは,5400万人が,安全な水がない
54 million Pakistanis without safe drinking water
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C11%5C24%5Cstory_24-11-2008_pg7_28
●081124B Nepal, xinhuanet
ネパールは,中国の30年間に亘る改革の経験に学べ
Experience of China's 30-year reform helpful to Nepal
http://news.xinhuanet.com/english/2008-11/23/content_10400710.htm
India
●081124C India, sindhtoday
ヒマチャルプラデシュ,小水力開発で,窓口を一元化
Himachal Pradesh moots single window clearance for hydro projects
http://www.sindhtoday.net/south-asia/38519.htm
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
その昔,ラオスのナムグムダムの上を歩いているときに,ラオスの若いエンジニアーから,「アダチさん,おめでとう。いよいよ日本も社会主義国の仲間入りだね。」,と言って握手を求められて面食らった,丁度,社会党の村山さんが首相になったときである。社会主義国と社会主義政党が政権を握ったこととは,大きな違いなのだが,説明するのは面倒くさかった,有り難う,と言って握手した。あの時,あのラオスの子は,本気で言ったのだろうか,冗談だったのだろうか,今になっても考え込んでしまう。
今日の記事の中で,ネパールの週刊雑誌の編集者で中国の専門家が,中国メディアのインタービューを受けて,中国の経済政策を礼賛しつくし,中国経済こそは,これからのネパールの経済発展の模範だ,と大きく持ち上げている。かって,インドネシアのカラ副大統領も,中国から帰ってきて,中国の方式こそが,経済発展の方程式だ,インドネシアも見習う,と宣言して,石炭火力を全部作ってもらう約束を獲得したことがあった。
このネパールの記者と,私の友人であるラオスのエンジニアートは,同じ勘違いをしている。ネパールはマオイストのプラチャンダーが首相となり,これは共産主義政権だと言われている。ただ,ネパールの記者は,この共産党政権に他の政党が,ゆくゆくは組み込まれて,共産党の一党独裁に進み,中国と同じ道を歩む,と考えているようだ。ネパールの場合は,中国と違って,明日国民がノーと言えば,共産党政権は壊れる。
ただ,このネパールのプラチャンダー政権は,政権につく前のマオイストは,中国は共産主義の堕落したもの,と決めつけて批判してきており,今回政権をとったことで,プラチャンダーは,インドに行く前に北京を訪問して,悪かったと謝って,姿勢を180度転換することで,今日の記者に皮肉られている。でも,そんなことより,中国に,鉄道建設とダム建設を手伝って貰うことの方が,プラチャンダーにとって大切なようだ。
インドを挟んでの,ネパールと,水問題のパキスタン,両国とも,インドの回りをぐるぐる回る衛星だ,と言えば叱られるかな。しかし,昨日は,インドがインダスの上流に建設するシェナブ川(注15)のバギリハールダムで,パキスタン側の痛烈な記事があり,今日はパキスタンの水の専門家が,ワシントンで,パキスタンの水の窮状を訴えた記事を読まされて,すっかりパキスタンに同情しているが,水問題とは何か,考えさせられる。
このパキスタンの専門家の話で,最後に彼女が言っている言葉が,結構面白い。彼女は,パキスタンの水問題は,まず発想の転換をしなければならない,と言って,パンジャブ州とシンディ州の争い,と言う考え方を止めて,水を使っているもの同士の論議に転換しなければならない,と言っている。州同志の争うは,いつまでも続いて,政治家のいい道具にされてしまっている,と言うのである。まさしく水問題は,一旦政治の道具,外交の道具に使われると,解決できない,と言うことは,メコン河も同じ構造だ。専門家は,次のように言っている。
世界の河川でも,上下流の争いの例は沢山あるが,パキスタンも例外ではない。しかしそこには多くの教訓が潜んでいる。下流国が自分で自分を守ることが重要で大切だ。パキスタンの場合は,一般的な方法と新しい発想を組み合わせて解決可能だと思う。今とは違う枠組みを発想して行かなければならないかも知れない。州間の論争でなく水使用者の論争にすべきではないか。その意味では,パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の論争に,全土の問題を解決するヒントがある。水の供給の問題から水需要の運営法に,重点を移していったらどうか。
このカマール女史(注17)の講演を読み進むうち,各地の水問題は殆どが政治に利用された政治問題ではないか,と言う気になってきた。まあ実態はそうなのだろうけれど,皆さん,一生懸命技術を考えているけれど,結局最後は政治家に利用されて行く。カマール女史(注17)の最後に出てくる言葉,「水は州の間の争いではなく,水を使うものの争いでなくてはならない。」,と言う言葉がそれを示している。
(注) (14) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(15) Chenab river,(16) Karachi,(17) Simi Sadaf Kamal,chairperson of Hissar, an NGO in Karachi,(18) semi-arid,(19) Balochistan,(20) Mangla dam,(21) Tarbela dam,(22) Punjab,(23) Kalabagh dam,(24) Diamer-Bhasha Dam,(25) non-flood methods of cultivation,(26) micro-irrigation strategies,(27) tubewell,(28) on-farm irrigation,(29) Indus delta,(30) Kotri Barrage,(31) Water Accord of 1991,(32) Sindh,(33)
本文
●ネパールは,中国の30年間に亘る改革の経験に学べ
ネパールの最初の政権の仕事は,インド訪問ではなくて,北京訪問だった。2008年8月28日付け本HP(注1)でこのプラチャンダー首相の北京訪問に触れている。「プラチャンダーは,約束したユートピアの実現よりは,戦争を仕掛ける方がどれだけ簡単か,そのうち思い知るだろう。」,と,当時のワシントンストリートジャーナルは書いている。また,2008年9月16日付本HP(注2)では,プラチャンダー首相が,インド訪問に当たって,北京を先に訪問したことの言い訳を,縷々述べている。
今日の記事は,ネパールの中では中国通で通っているネパール週刊誌(注3)のシュレスタ記者(注4)が,中国紙(注5)のインタビューに答えたもので,歯の浮くような中国への憧憬の言葉が連なっているが,まあ,ネパール人の中にこのような親中派がいて,今回の革命に近い毛派の政権奪取の中で,インドと中国をどの様に秤にかけようとしているか,とくと拝見してみたい。シュレスタ記者(注4)は,1991年以来,16回北京を訪問していると言う。この記事は,カトマンズ(注6)で書かれたものである。
シュレスタ記者(注4)は,開口一番,長い内戦の結果,これからネパールの経済改革が始まるが,それは中国が過去30年間に解放への改革’注7)してきた歴史に学びたい,と切り出している。そうして,経済開発の基本は政治的な安定である,として,ネパールの和平達成に,期待を寄せ,今こそ中国に学んで中国のように繁栄を達成したい,としている。勿論,全く中国のコピーでなく,ネパールなりの方法で,と念を押している。
シュレスタ記者(注4)は,共産主義(注8)を礼賛している。誰が共産主義(注8)は廃れたと言っているのか,中国を見ればその答えが分かる,と言っている。そこには,マルクス(注9)やエンゲルス(注10),更には毛沢東(注11)とトショウヘイ(注12)の名前が出てきて,如何にも古めかしい。政権を取ったマオイスト(注13)も,以前は中国を,共産主義のはぐれもの,と蔑んでいたが,今は,中国がマオイスト(注13)の新しい規範になりつつあるのは,如何にもおかしい。180度転換である。
シュレスタ記者(注4)は,どうも勘違いしているのは,このマオイスト(注13)党が,他の政党を巻き込んで大きな政党になる,即ち,一党独裁の携帯に進む,と考えているようにもとれる。なぜ今回,マオイスト(注13)が政権を取れたのか,その民主主義の本質が理解できていないようだ。シュレスタ記者(注4)は,今話題となっているネパールの水力資源開発に,中国の力が大きいだろう,と言っている。一方でインドが主力占める水力開発であるが,少なくとも実施の方法は中国に学ぶべき,と言っている。
またシュレスタ記者(注4)は,雇用の問題について,ネパールの政府内で外国人を見かけたことがあるか,問いかけ,上海では実に118,000人の外国人が働いており,この中には日本人と韓国人が5万人,アメリカ人が1万人,更に100人のインド人が,コンピューターソフトに関わる仕事に就いている,とネパールとの違いを浮き彫りにしている。この中国の変化は,1978年以来の開放政策にある,と指摘している。
シュレスタ記者(注4)は,1978年以来の中国の発展を驚きの眼で描いており,2020年には,中国が世界の先頭立って走っているだろう,と言っている。1978年の中国には,民間企業はゼロであったが,現在の中国では,GDPの30%を民間資本が稼ぎ出しており,また30%は外国資本で,30%が公共部門であることも,シュレスタ記者(注4)の関心を引いている。
このシュレスタ記者(注4)のインタビュー記事を読んで思ったのは,発展途上国にとって中国が如何に羨ましい存在であるか,と言うことと,ネパールの政治形態にへの思い違いが,今後のネパール人達の政治的行動にどの様に出てくるか,興味がある。またこれは危ない点でもあるが,ネパールは中国と違って,国民がマオイスト(注13)に飽きると,いつでも政権政党の首をすげ替えることが出来る,と言う点だ。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0808.htm,080828C,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080916B,(3) Nepali weekly newspaper Jan-Aastha,(4) Shrestha,(5) http://news.xinhuanet.com/english/,(6) Kathmandu,(7) "Reform and Opening-up",(8) communism,(9) Marx,(10) Engels,(11) Mao Zedong,(12) Deng Xiaoping,(13) Communist Party of Nepal (Maoist) (CPN-M) ,(14)
●パキスタンは,5400万人が,安全な水がない
昨日,2008年11月23日付本HP(注14)で,パキスタンのインダス河,特にその支流のシェナブ川(注15)で,インドに追いつめられる焦りを見てきたが,まさに国際河川の上流と下流の国の水への思いを新たにした。まだその思いも冷めないうちの今日,2008年11月24日,今度は和親から発せられたパキスタンの人々の水への声が,記事になっている。ワシントンで開かれたパキスタンの水問題に関する会議で,カラチ(注16)から出席した水問題専門家カマール女史(注17)の発言の内容である。
パキスタンの人口1億6,500万人のうち,5,400万人は安全な飲み水に恵まれていなく,7600万人が公衆衛生の恩恵を受けていない。また,9,800万人が農業に従事し,4,900万人が貧困のレベルにある。国土の92%は,乾燥地帯または準乾燥地帯(注18)である。インダス流域は国土の25%を占め,人口の65%がこのインダス流域に住んでいる。農業生産は,パキスタンのGDPの25%を占めている。
パキスタンは水不足のプレッシャーの中にあり,2035年には完全に欠乏する。灌漑面積の38%は沼地で,14%は塩害に悩まされている。インダス流域には塩が堆積し,帯水層は塩に侵されている。バロチスタン(注19)は塩分で危険な状態で,インダス下流域では,真水は激減している。パキスタンでの州の間の水争いは長く,重要な用途別の議論がなされる時間がなかった。
灌漑と農業に使われる水は97%に達し,僅かに4%が他の目的に使われているに過ぎない。水道と下水の費用はGDPに0.2%であることが分かった。マングラダム(注20)とタルベラダム(注21)の容量の25%が失われているので,灌漑水路の回転に使われるだけの水がない。また,取水堰や水路で失われる水は4分の一に達し,水路で失われる量は,送水量の3分の一に達する。農業で消費するのは25%に過ぎない。上流,中流,下流での水争いは激しく,耕作可能な土地の45%は,常に耕している,準備中の状態である。
非常に費用がかかるが,1~2カ所のダムは必要だ。しかし,特に,パンジャブ州(注22)と他の3州との問題で,余りにも議論が長すぎる。カラバーダム(注23)は今一時的に棚上げされているが,建設費126億ドル,発電出力,450,000MW,のディアマ-バシャダム(注24)が浮上してきた。もし円滑に行けば,2016年に完成の予定である。便益的には,水力発電が15億ドル,灌漑が6億ドル,の割合だ。
もう少し効率的な維持管理システムを確立できれば,輸送中の水の損失が劇的に減少する。水の政治的要素は,パキスタンではまだ封建的な土地使用に阻害されている。特に,バロチスタン(注19)州では,雨水による灌漑や灌漑の出来ない乾燥地帯が殆どを占めて,他の農業の方法が無視されている。それは,ノンフラッド(注25)や小規模灌漑(注26)の方法である。
インダス流域で,地下水揚水箇所(注27)が50万カ所ほどあるが,地下水灌漑は耕地直接灌漑(注28)の半分を占めている。インダスデルタ(注29)の主要な17の水路のうち生きているのは一つで,他は,海水と淡水の境界で汚染されている。世界で第6位の規模を誇ったマングローブ林は消え去り,コトリ堰(注30)より下流は干上がっている,そこには海水が侵入している状態だ。
パキスタンには,包括的な水資源法がない。それは,水利権,水使用,水の価値,評価の原則,補助金,汚染防止,などを規定すべきものだ。現在は,不均衡や先入観の入り交じったもので,唯一,1991年に制定された,水基本合意書(注31)があるだけである。パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の環境論争は長い。互いに首尾一貫していないし,政治に利用されている。
世界の河川でも,上下流の争いの例は沢山あるが,パキスタンも例外ではない。しかしそこには多くの教訓が潜んでいる。下流国が自分で自分を守ることが重要で大切だ。パキスタンの場合は,一般的な方法と新しい発想を組み合わせて解決可能だと思う。今とは違う枠組みを発想して行かなければならないかも知れない。州間の論争でなく水使用者の論争にすべきではないか。その意味では,パンジャブ州(注22)とシンディ州(注32)の論争に,全土の問題を解決するヒントがある。水の供給の問題から水需要の運営法に,重点を移していったらどうか。
このカマール女史(注17)の講演を読み進むうち,各地の水問題は殆どが政治に利用された政治問題ではないか,と言う気になってきた。まあ実態はそうなのだろうけれど,皆さん,一生懸命技術を考えているけれど,結局最後は政治家に利用されて行く。カマール女史(注17)の最後に出てくる言葉,「水は州の間の争いではなく,水を使うものの争いでなくてはならない。」,と言う言葉がそれを示している。
(注) (14) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081123A.htm,(15) Chenab river,(16) Karachi,(17) Simi Sadaf Kamal,chairperson of Hissar, an NGO in Karachi,(18) semi-arid,(19) Balochistan,(20) Mangla dam,(21) Tarbela dam,(22) Punjab,(23) Kalabagh dam,(24) Diamer-Bhasha Dam,(25) non-flood methods of cultivation,(26) micro-irrigation strategies,(27) tubewell,(28) on-farm irrigation,(29) Indus delta,(30) Kotri Barrage,(31) Water Accord of 1991,(32) Sindh,(33)
●インド,ヒマチャルプラデシュ,小水力開発で,窓口を一元化
インド,最近のヒマチャルプラデシュ州(注33)の動きには,何か注目すべきところがある。2008年10月24日付本HP(注34)で,ADBが8億ドルの融資を決めたが,その対象は再生可能の小水力中心である。また,2008年11月19日付本HP(注35)では,ヒマチャルプラデシュ州(注33)政府が,環境を考慮して水力は流れ込み式のみ,と言っている。実際には大規模ダムにも手を付けているわけだが,州全体の方向は,インドの発電所となるのではなく,自分たちの環境を守ろう,という方向か。
この日曜日,クル地区(注36)の,5MW,トッシュ小水力(注37)の竣工式に出席したヒマチャルプラデシュ州(注33)州政府のドウマル首相(注38)は,その祝辞の中で,小水力開発の促進を図るため,州政府の承認過程を一本化したい,と表明した。ドウマル首相(注38)によれば,このクル地区(注36)で2008年度内に80地点,総計出力,190MWを完成する予定である。
ヒマチャルプラデシュ州(注33)では,最近,高山で河川が氷結して,水力発電所の出力が30%も落ちている。この3年間に,冬の日需要,11月~3月,が,28億KWhから50億KWhへ増大している。中央政府のプールからの割り当てと他の電源を併せても,30億KWhにしかならない。このため,日20億KWhの不足が生じている。
2006年,ヒマチャルプラデシュ州(注33)政府は,水力開発政策を策定し,インドの水力州となることを決意し,数百の小水力や主要な大規模水力の推進を決定してきた。州内の企業はこれに勇気づけられ,規模が,2~5MWの小水力を盛んに取り上げて来た。ADB(注39)が先月に発表した8億ドルの資金支援は,全部で808MWの出力に対応したものである。
いずれにしても,ドウマル首相(注38)は,水力開発にのめり込む決意をしている。それが,小水力に及んだところが,他の州と趣を異にする。これはまさしく地元企業への振興策の一環であることは間違いなく,おそらく,州政府自体が,ADB(注39)と直接交渉を行ったものであろう。他の州にも波及するのだろうか。
(注) (33) Himachal Pradesh,(34) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024D.htm,(35) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081119.htm,081119F,(36) Kullu district,(37) Tosh mini-hydro project,(38) Himachal Pradesh Chief Minister Prem Kumar Dhumal,(39) Asian Development Bank,(40)
Reference
Pakistan
●081124A Pakistan, dailytimes
パキスタンは,5400万人が,安全な水がない
54 million Pakistanis without safe drinking water
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C11%5C24%5Cstory_24-11-2008_pg7_28
●081124B Nepal, xinhuanet
ネパールは,中国の30年間に亘る改革の経験に学べ
Experience of China's 30-year reform helpful to Nepal
http://news.xinhuanet.com/english/2008-11/23/content_10400710.htm
India
●081124C India, sindhtoday
ヒマチャルプラデシュ,小水力開発で,窓口を一元化
Himachal Pradesh moots single window clearance for hydro projects
http://www.sindhtoday.net/south-asia/38519.htm
2008年11月24日月曜日
ベトナムの開発に何か変化が
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
私の郷里は兵庫県の但馬だが,郷里の近くの豊岡市が,数年前に大洪水の被害を受け,全市が水没するという悲惨な災害を味わった。国道を走っていた自動車が水没して逃げられなかった話もあった。良くあの辺りを車で走る機会があるが,まさに70年以上の私の見聞の中でも,豊岡市が水没した,なんて言う話は聞いたことがなかったので驚いた。
学校の友人で,かって建設省の要職にあった友人と話をする機会があり,「豊岡市を水没させるなんてとんでもない,一体円山川の治水をどう考えていたのか」,とやや詰問気味に聞いたことがある。彼は,うーんと唸りながら,実は円山川には,ダムサイトの適当な地形がなかったんだよ,と言っていた。確かに,生野峠から発する円山川,我々はあそこに小さい奥多々良木ダムを造ったが,治水ダムはどこか,と聞かれれば唸らざるを得ない。その様な場所はない。
今,琵琶湖の大戸川ダムで大いに議論が沸き上がっている。計画上の実情は私も分からないが,もし円山川に治水ダムを造ると言えば,多くの人が反対するだろう。豊岡市の水没などというのは,まさに100年か200年に一度,あるかないかの確率だから,誰も深刻には考えないし,ダムには反対する人が多数と考えられる。国土交通省が,本当に洪水への対策として考えているならば,3人の知事にも分かるように,身を犠牲にしても,大阪を救うために,説得する義務があろう。多数決の問題ではない。
メコン河には,知事がいない。まさに近畿の3県の知事に当たるのは,ラオス,タイ,ベトナム,カンボジアの首脳達だろう。全く近畿でないところ,福井県当たりにダムを造って,下流を心配させているのは,中国である。タイもラオスもカンボジアも,中国にはお世話になっているから,上流の中国のダムに正面切って,議論を持ちかける首脳はいない。ところが,ベトナムは別である。
今日の記事は,先日の2008年9月5日付本欄(注1)に,第13回メコン河委員会総会で,メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)が,メコン上流でのダム開発が,下流ベトナムの漁業や農業に,マイナスの影響をもたらしている,と発言したのである。ベトナムと言えばダムが好きで,水力発電所を造りすぎて渇水に見舞われるなど,ダムがとても好きな国であり,今や発展途上で,日本がダムを必要としていた昭和40年代に似ている。
そのベトナムが,中国がオブザーバーとして出席しているメコン総会で,明確に上流ダムへの懸念を示したのである。私も,前に見たときに,あれっという思いに駆られたが,その後,ベトナムの姿勢を窺っていると,何か変化が起こっている,という感じがしてきている。前に副首相が,電力公社などに,余り外国に出て関係ない仕事をするな,と警告したし,先日の記事で,良く読んでいないが,もうベトナムの水力開発は終わりに近づいた,と言う表題があった。今回の発言も,トップの了解なしには出来ないだろう。
中国が,ラオス,ミャンマーまでの進出は良いとしても,昨今のニュースのように,ベトナムの庭先であるカンボジアまでダム開発に出てきてしまうと,カンボジアのポルポトを,世界的な制裁を受けながら大きな犠牲を払って政権を倒したベトナムとしては,黙ってみておれないのではないか。しかも,もし中国がカンボジアの天然ガスを持って帰る,なんて言う事態になると,地域のエネルギーバランスが壊れてしまいかねない。今しばらく,ベトナムの動きを注視したい。
国際河川の水争いは,もっと深刻なのがインダス川である。今日のパキスタン側の主張を読むと,国内唯一の水源が,インドに握られている,と言う実態に,どうしようもない地理的なパキスタンの立場を思ってしまう。パキスタンは,基本的にインダス水条約の改訂を考えているのだが,一旦手にしたインド有利の水の権利は,容易には解決しないだろう。インドだって,ブラマプトラ川,ひいてはガンジス川の水を中国に握られていて,時々このHPにも,将来の水争いの気配を感じているこのごろだから。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080905A,(2) ‘Thanh Nien’ newspaper,(3) deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee (VNMC), Dao Trong Tu,(4) Nguyen Van Trong, deputy director of the state-run Research Institute for Agriculture,(5) Mekong Delta,(6) Can Tho,(7) Nguyen Tu Be,(8) Hau River,(9) Shutchi and pagasius catfish,(10) Tonle Sap,(11) Nguyen Tan, an agriculture expert at Can Tho’s Department of Agriculture and Rural Development.,(12) Mekong River, (13) Tibet,(14) South China Sea,(15) Lancang river, (16) "environmentally sustainable development",(17) Mekong River Commission,(18) Don Sahong dam,(19) Phnom Penh,(20) Kratie province,(21) Xekamen River,(22) Xekamen 1 dam, (23) Xekamen 3 dam,(24) Luang Prabang,(25) A memorandum of understanding,(26) PetroVietnam Power Co,(27) Vietnam National Mekong Committee,(28) Pham Khoi Nguyen, Minister of Natural Resources and Environment,(29)
本文
●最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
2008年9月5日付本欄(注1)に,第13回メコン河委員会総会の状況を報告しているが,その時私も,ハッとしてベトナム代表の発言に目が停まっていた。ベトナム代表は,メコン上流でのダム開発が,下流ベトナムの漁業や農業に,マイナスの影響をもたらしている,と発言したのである。ベトナムもメコン河のダム開発の重要な一員ではないか,それもNGOならともかく,政府代表の発言だから,私の記事を読む眼が一瞬そこで揺らいだのである。そのままにしていたけれども,今日の記事で,再び思い出すことになった。
メコン河の本流支流でのダム開発に伴う議論が続く中,最近時々,ベトナムの政府系のメディアもこの議論に出てき来ている。ベトナム政府官僚そのものがこの数ヶ月,非常に開放的な発言を繰り返している。2008年9月末,タンニエン紙(注2)は,メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)の談話を載せている。「メコン河及びその支流での水力発電用のダム開発が,例えばベトナムのような国に,予測できないマイナスの結果をもたらす可能性がある。」。
また,第13回メコン河委員会総会(注1)の席上で,ベトナム政府の農業研究所グエンバンチョン次長(注4)は,「ダム建設によって,メコンデルタ(注5)の2,000万人の,漁業と灌漑に依存しているベトナム人が,マイナスの影響を受けている。」,と発言している。このような言葉が,メコン河とその支流でダム建設に重要な役割を持っているベトナムから出てきている。事実ベトナム企業は,多くのダム建設や計画に参画している。
ベトナム南部のカントー(注6)の45歳の漁業に従事するグエントウベさん(注7)は,「ベトナムのお役人が,水力ダムが漁業を駄目にしている,と言うことを声高に発言するのは初めてで,それを聞いて私は大変嬉しい。」,と語っている。グエントウベさん(注7)は若いときからメコン河支流のハウ川(注8)で漁業に従事しているが,この2,3年,目立って漁獲高が減少しているとして,「人々は,上流のダムが,魚たちのベトナムへの旅を阻害しているのだ,と言っている。」,と。
数年前までは,容易に数トンのナマズ類(注9)を捕獲できたが,それは乾期にベトナムの支流に逃げ込んできていたからだ。かって漁業者は,籠の中でナマズを産卵させ育てて輸出する養殖業者に,最良の母親ナマズを売って生活してきた。このような健康な母親ナマズは,今ではベトナム領内の川では捕獲困難で,カンボジアのトンレサップ(注10)まで追いやられたナマズを追っかけている。しかし,トンレサップ(注10)も最近は状況が良くない。カンボジアについては,単に漁獲高が減っている,と言うだけではなくて,漁業の方法そのものにまで変化が起きてきて,網でとるので魚は小さく高値の魚はなくなった。
カントー(注6)市当局農業部門専門家のグエンタン氏(注11)は,「多くの人が,この2,3年,カンボジア,ラオス,ベトナムで洪水期に多くの土地が浸水したのは,メコン川上流の中国のダムの影響だ,と信じている。」,と前提して,「私の関心は,メコンの流砂だ。」,と言っている。「本来は肥沃な土壌を伴って洪水時に下流に栄養を供給していたが,それが今はダムにため込まれている。その結果,農民は汚染の可能性のある化学肥料を使わなければならなくなる。」,と懸念している。
沿岸におよそ6,000万人が生活する4,800km長さのメコン河(注12)は,チベット(注13)に水源を発して,ミャンマー,タイ,カンボジア,ベトナムを経て,南シナ海(注14)に注ぐが,その間,人々は,舟運,食糧,穀物への水,などの恩恵に依存してきた。特に大きな論争は本流沿いのダム開発で,中国のランサン川(注15)を初め,ラオス,カンボジア,タイでの本流ダム計画が,その論争の対象である。
1955年に下流4カ国,カンボジア,ラオス,タイ,ベトナムで,「環境的に持続的な開発(注16)」を目指して,メコン委員会MRC(注17)を発足させ,本流上のダム開発計画は周辺国への通知が必要,との合意書を交わしている。特にメコン流域外への乾期の分流は,全メンバーの同意を必要としている。中国とミャンマーは,メコン委員会MRC(注17)はオブザーバーとして参加しているが,中国は上流ダムはメコンデルタ(注5)の雨期の洪水を軽減して下流に貢献している,と主張している。
最近のエネルギー高騰で,各国はメコン流域内の水力開発に努力している。いろいろな調査があるが,80のプロジェクトが下流域内で動いている,と言われている。そのうち8地点は,本流上の計画で,ラオス内5地点,タイが2地点,カンボジアが1地点である。もっとも論争が激しいのは,コーンの滝(注18)のドンサホンダム(注18)である。このコーンの滝(注18)は,狭い流路の複合体をなして,そのまま国境を越えてカンボジアに流れ込む。ドンサホンダム(注18)はもっとも深い流路を塞ぐが,乾期の4月から5月には,一種類の魚類だけが,この滝を通過する。このため,ドンサホンダム(注18)は,繁殖区域であるトンレサップ(注10)と上流のラオスやタイ領域を,完全に遮断してしまう。
プノンペン(注19)政府も,本流にダム計画を進めようとしている。カンボジア中央のクラティエ(注20)地点で,中国企業が調査を行っている。環境グループは,メコン委員会MRC(注17)自体が,水力開発推進派で占められている,と非難してきた。2007年,175の環境及び市民運動グループが共同で,メコン委員会MRC(注17)に手紙を書き,「メコン下流域でのダム開発が深刻な環境及び経済的な影響を与えているのに,メコン委員会MRC(注17)は沈黙しているだけだ。」,と攻撃している。3月には,事務局に押しかけている。
ベトナムであるが,確実な経済成長で電力需要が増大している。中国とラオスから電力を輸入しているが,国内でも多くの水力を開発しており,ラオスやカンボジアのプロジェクトにも参入している。メコン支流のセカマン川(注21)でセカマン第1ダム(注22),セカマン第3ダム(注23)を建設中である。また,2007年10月中に覚書(注25)が交わされたルワンプラバン(注24)近傍の1410MW規模の発電ダムには,ペトロベトナム(注26)が参加している。
メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)は,「中国がメコン委員会MRC(注17)に加盟していないので,今のところ我々は,中国の発電ダムとの戦いには成功していない。しかし,メコン川本流で多くのダム計画が動いているが,VNMC(注27)は大規模ダムのもたらす悪影響に警報を鳴らす権利を確保している。上下流の大規模ダムが多すぎると,ベトナムの漁業や農業が打撃を受けることは明白である。」,と明確に述べている。
2008年9月のVNMC(注27)創立30周年式典で,ファムコイグエン水資源環境大臣(注28)は,次のように演説している。「VNMC(注27)の役割とは,ベトナムの権利と受けるべき便益を確保し,メコン上流で実施さっる開発事業のマイナス影響を減ずる努力にある。」。
誠に複雑極まるベトナムの立場であるが,私は最近,ベトナムに何か変化が起こっているという予感はある。副首相が,余り外国の関係のないダムプロジェクトに手を出すな,とはやるEVNなどにブレーキをかけているし,つい先日は,ベトナムのダム開発は殆ど終わった,と宣言しているし,また今日の記事にもあるとおり,はっきりとメコン下流国の立場から,上流のダム開発に警告を鳴らしている。私は中国が,前後の見境なく,ミャンマー,ラオス,更にはカンボジアまでダム造りに出かけてくることに,反発をするための下準備ではないか,と感じている。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080905A,(2) ‘Thanh Nien’ newspaper,(3) deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee (VNMC), Dao Trong Tu,(4) Nguyen Van Trong, deputy director of the state-run Research Institute for Agriculture,(5) Mekong Delta,(6) Can Tho,(7) Nguyen Tu Be,(8) Hau River,(9) Shutchi and pagasius catfish,(10) Tonle Sap,(11) Nguyen Tan, an agriculture expert at Can Tho’s Department of Agriculture and Rural Development.,(12) Mekong River, (13) Tibet,(14) South China Sea,(15) Lancang river, (16) "environmentally sustainable development",(17) Mekong River Commission,(18) Don Sahong dam,(19) Phnom Penh,(20) Kratie province,(21) Xekamen River,(22) Xekamen 1 dam, (23) Xekamen 3 dam,(24) Luang Prabang,(25) A memorandum of understanding,(26) PetroVietnam Power Co,(27) Vietnam National Mekong Committee,(28) Pham Khoi Nguyen, Minister of Natural Resources and Environment,(29)
●インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
インドの第11次五カ年計画(注29)の中の新規電源開発量が変更されている,と言う情報があったが,これが報道としては正式なものだ。従来の,新規電源,78,577MWも,まさしく絵に描いた餅,と言われ,電力大臣が何度も国会に呼び出されて,出来るわけがない,と追求されているのに,これを増やして,92,000MWにすると言う。言い分を聞いてみよう。
インド政府は,2007~2012年の第11次五カ年計画(注29)で,国全体の需要の伸びに併せて,78,530MWの新規電源を開発する,として,途中でこれを,78,577MWに変更している。今回,再度これを修正し,92,000MWとすると発表した。この内訳は,水力が,16,553MW,火力が,58,644MW,原子力が,3,380MWである。電力セクターを調整するCEA(注30)によると,第11次五カ年計画(注29)分として,2009年8月までに,11,404MWが運転開始するという。その内訳は,火力,8472MW,水力,2,712MW,原子力,220MWである。
現時点に於ける全国の発電設備は,145,554MWで,92,892MWが火力,36,347MWが水力,4,120MWが原子力,11,194MWが再生可能エネルギーである。最初の五カ年計画の78,557MWのうち,10,760MWが民間資本,27,952MWが州政府,39865MWがCEA(注30),即ち中央機関,という計画であった。2008~2009年の新規電源は,7,530MWと推定されていた。このうち,2,141MWは既に完成しており,残りの5,389MWは,2009年3月までに完成する。
現在工事中でこの財政年度末(2009年3月か)までに完成するプロジェクトは次の通り。NTPC(注31)のカハルガオン(注32)の500MW火力,トレント(注32)のグジャラート州(注33),スゲン(注34)の752MW火力,オークウエル(注35)によるアンデラプラデッシュ州(注36),コナシーマ(注37)の445MW火力,ガウタミ(注38)によるアンデラプラデッシュ州(注36)の464MW火力,原子力公団(注39)によるラジャスタン州(注41)の第5,6号機とカルナタカ州(注40)のカイガ(注42)の第4号機,各原子力である。
現在の世界金融危機も,プロジェクトの資金調達に影響を与えているが,インド政府は,資金調達を終えたものについては,政府保証を与える方向で検討しているが,上に示したプロジェクトは順調に進んでいる。常設連携委員会(注43)は,2012年までに完成する予定の35,000MWについて,最近,石炭供給連携を承認した。計画中の全部が完成した暁には,2012年に於ける全国設備は,237,554MWに達するはずである。
この92,000MW新規開発案は,意欲的なもので,2002~2007年の第10次五カ年計画(注44)での実績の4倍で,この第10次五カ年計画(注44)で達成されなかった分は,2007~2012年の第11次五カ年計画(注29)に引き継がれている。政府の,電力需給を満たす構想は,まさにインドの成長の重要な媒体となるだろう。この記事は,IIR(注44)によって書かれたものである。
随分国会で電力大臣が追及されていたが,国会も最近は,見守るしかない,ということなのか,静かである。実際,過去の実績の4倍の速度で電源を開発して行くことは,非常に難しい目標であることは,全人が分かっているはずだ。まだ,石炭火力の大気汚染も余り問題になっていないし,ダムの環境問題も,全体的には静かである。でもこの5年間のインド国民の意識は,ドラスティックに変わる可能性があるし,ADBが指摘しているように資金調達の問題があるし,それと機器製造能力の問題もある。また,米印原子力協定の結果は反映されていないだろう。
(注) (29) Eleventh Five-Year Plan (2007-12),(30) Central Electricity Authority,(31) NTPC, (32) Kahalgaon,(32) Torrent Power Limited,(33) Gujarat,(34) Sugen,(35) Oakwell Power Limited,(36) Andhra Pradesh,(37) Konaseema,(38) Gautami Power Private Limited,(39) Nuclear Power Corporation of India Limited,(40) Karnataka,(41) Rajasthan,(42) Kaiga,(43) Standing Linkage Committee of the Indian government,(44) Industrial Info Resources,(45)
●パキスタン,インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
インダス川の水争いについては,相当前から関心を持ってきた。1998年ぐらいに書いた私のメモも本HPに残っている(注46)。実際に,機会があって,パキスタンのインダス川の畔にも立って見たし,パキスタン側の重要な構造物であるタルベラダムも訪ねる機会があった。また,ペシャワールから北に入り込んで,英国植民地時代の実に立派な灌漑システムを見てきた。今日は,パキスタンが,インダスの水に関して,思いの丈を記事ぶっつけている。特に,ザルダニ大統領になってから,パキスタンの姿勢が強硬になってきた。
1947年に,インドとパキスタンの分割が行われた直後,水問題に関してインドとパキスタンは厳しい緊張状態に入った。インドは,パキスタンの主要な農地の広がるパンジャブ(注47)平野に対して,東の三つの支流,ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)の水を止めると脅かした。この脅迫は,農業経済に依存するパキスタンを窒息させることを意味した。インドは事実それを実効することが可能であった。何となれば,インダス源流の五つの川,ジェルム川(注51),シェナブ川(注52),ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)が,すべてインド占領カシミールIOK(注53)に入っていたからである。
数十年の論争の後,世界銀行が中に入って,チームを組み,インドとパキスタン両国に納得できる解決方法を探った。非常に困難な仕事であったが,その後,紛争の度に持ち出される有名なインダス水条約(注54)が,1960年に成立した。合意の基礎は,インドはラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)を自由にコントロールし,パキスタンは,インダス本流とジェルム川(注51),シェナブ川(注52)の権利を持つ,というものであった。
ところが,これにパキスタン側で火がついた。それは,パキスタン側に属する水は75%を占めるが,灌漑面積はパキスタン側が90%だと言うことだ。これが現在も尾を引いていて,バギリハールダム(注55),サラールダム(注56),ニールム-ジェルム水力(注57)の紛争の種となっているのである。もっとも深刻なのは,シェナブ川(注52)のバギリハールダム(注55)である。最初は,バギリハールダム(注55)は流れ込み式(注57)とインド側は言って,2008年10月10日に,インド占領カシミールIOK(注53)のジャム(注59)から150kmのシェナブ川(注52)に,バギリハール水力発電所(注60)が完成した。
バギリハール水力発電所(注60)は,設備出力900MW,工事費10億ドルであるが,パキスタン側の拒否の理由は,シェナブ川(注52)がパキスタンの権利であるにもかかわらず,インドが流れ込み式と称して,インダス水条約(注54)を無視したこと,設計がインドが水を自由に出来るようになって約束に手ぬるいこと,パキスタンとの間でことあるときはインドが自由に裁量できること,地滑りの頻発でダムが不安定なこと,ちっきが地震地帯であること,560万エーカーの水を取り上げたこと,の6点である。
今回の事態は,1960年以前にパキスタンが苦境に陥った時を思い出させる。インドはインダス水条約(注54)に違反して,シェナブ川(注52)の水をバギリハールダム(注55)によって自由にし,パキスタンを食糧不足に陥らせる可能性を秘めている。パキスタンの立場は,ピーク時に,シアルコット(注61)付近のマララ堰(注62)において,毎秒55,000トンの水を確保することだが,今年,2008年は,毎秒22,000トンしかなく,収穫に影響を与えた。
パキスタンのインダス委員会首席アリシャー氏(注62)の要求は簡単で,不足分の被害を補償してくれというものだが,インドのインダス委員会首席アランナタン氏(注63)は,このバギリハールダム(注55)湛水中の不足に対しての補償要求を拒否している。パキスタンは,収支を図るため海外資金を76億ドル借り入れする状況で,農民は水不足で困窮している。もうこれ以上,パキスタンは水で我慢は出来ない。2025年までには食糧カットが必要になってきている。パキスタンの水問題は,次の諸点だ。
世界でももっとも水不足が激しく,1960年には一人当たり年間5,650トンあったものが,2006年時点では1,200トンに激減している。パキスタンはインダス以外に水源はない,2100万エーカーが未灌漑である。インダスの水量,土砂,塩害に対して,防御の手がない。インダス水条約(注54)の結果,パキスタンは水インフラに莫大な投資を強いられた。毎年,1,500万トンもの塩が蓄積される。気候変動の影響,氷河融解,モンスーンなど,90%の水が影響を受ける。
多くの科学者が,水問題を示唆している。パキスタンは全力で戦っている。有名な科学者ピアス氏(注64)の,「川が干上がるとき」(注65)は,パキスタンの将来を暗示している。パキスタンは,将来,西の水源に依存する必要があるが,莫大なインフラ投資が必要である。またこのような分流は,パキスタンの文化を破壊することにも繋がる。インドとパキスタンの緊張は,日に日に高まっているが,数年前のCBM(注66)に希望を持っている。パキスタンが受けた被害への補償については,国連などの仲介が必要だろう。
インダス水条約(注54)の見直しに当たっては,条約後に建設されたダムなどの問題,ストレジ渓谷(注67)の洪水の問題,シェナブ川(注52)の渇水問題,インダスデルタ(注68)の渇水による荒廃の問題,などを考慮する必要がある。インドは,広域な環境を考慮して,インダスデルタ(注68)へ水を供給する必要がある。インドとパキスタンは,過去に,シルクリーク問題(注69)で希望を得たように,新しい条約の改定に,共同して前向きに対処できるだろう。
それにしても,激しい記事で,改めてインドとパキスタンの,インダス川の水争いの深刻さを実感する。パキスタンに新しい政権が誕生したことも,一つの緊迫の原因かと思う。インド側は,穏やかにことを運ぼうとしている,これはインドのシン首相の人柄とも思うが,私は,パキスタンの新任,ザルダニ大統領が,インドとの間のある程度の緊張を保持したい,と思っていると思う。それは,今難しい国内を統一して行かなければならないし,また今回は厳しい金融危機の煽りを受けている。
(注) (45) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(47) Punjab,(48) Ravi river,(49) Beas river, (50) Sutlej river, (51) Jhelum river, (52) Chenab river, (53) Indian Occupied Kashmir,(54) Indus Water Treaty-1960 (IWT),(55) Baglihar dam,(56) Salal dam,(57) Neelum-Jhelum Hydropower Project,(58) run-of-the-water,(59) Jammu,(60) Baglihar hydro electric power project,(61) Sialkot,(62) Marala headwork,(62) Pakistan Indus water commissioner Mr Jamaat Ali Shah,(63) Indian water commissioner, Mr. G. Arangnathan,(64) Fred Pearce,(65) “When the Rivers Run Dry: Journeys into the Heart of the World’s Water Crisis”,(66) Confidence Building Measures (CBMs),(67) Sutlej valley,(68) Indus delta,(69) Sir Creek issue,(70)
Reference
Vietnam
●081122A Vietnam, psnews
最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
Rare Criticism of Dams Surface
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44797
Pakistan
●081123A Pakistan, pakobserver
インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
Reflecting Chenab water issue
http://pakobserver.net/200811/23/Articles02.asp
India
●081122C India, pump-zone
インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
India Targeting 92,000-MW Power Addition by 2012
http://www.pump-zone.com/global-news/global-news/india-targeting-92000-mw-power-addition-by-2012.html
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
私の郷里は兵庫県の但馬だが,郷里の近くの豊岡市が,数年前に大洪水の被害を受け,全市が水没するという悲惨な災害を味わった。国道を走っていた自動車が水没して逃げられなかった話もあった。良くあの辺りを車で走る機会があるが,まさに70年以上の私の見聞の中でも,豊岡市が水没した,なんて言う話は聞いたことがなかったので驚いた。
学校の友人で,かって建設省の要職にあった友人と話をする機会があり,「豊岡市を水没させるなんてとんでもない,一体円山川の治水をどう考えていたのか」,とやや詰問気味に聞いたことがある。彼は,うーんと唸りながら,実は円山川には,ダムサイトの適当な地形がなかったんだよ,と言っていた。確かに,生野峠から発する円山川,我々はあそこに小さい奥多々良木ダムを造ったが,治水ダムはどこか,と聞かれれば唸らざるを得ない。その様な場所はない。
今,琵琶湖の大戸川ダムで大いに議論が沸き上がっている。計画上の実情は私も分からないが,もし円山川に治水ダムを造ると言えば,多くの人が反対するだろう。豊岡市の水没などというのは,まさに100年か200年に一度,あるかないかの確率だから,誰も深刻には考えないし,ダムには反対する人が多数と考えられる。国土交通省が,本当に洪水への対策として考えているならば,3人の知事にも分かるように,身を犠牲にしても,大阪を救うために,説得する義務があろう。多数決の問題ではない。
メコン河には,知事がいない。まさに近畿の3県の知事に当たるのは,ラオス,タイ,ベトナム,カンボジアの首脳達だろう。全く近畿でないところ,福井県当たりにダムを造って,下流を心配させているのは,中国である。タイもラオスもカンボジアも,中国にはお世話になっているから,上流の中国のダムに正面切って,議論を持ちかける首脳はいない。ところが,ベトナムは別である。
今日の記事は,先日の2008年9月5日付本欄(注1)に,第13回メコン河委員会総会で,メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)が,メコン上流でのダム開発が,下流ベトナムの漁業や農業に,マイナスの影響をもたらしている,と発言したのである。ベトナムと言えばダムが好きで,水力発電所を造りすぎて渇水に見舞われるなど,ダムがとても好きな国であり,今や発展途上で,日本がダムを必要としていた昭和40年代に似ている。
そのベトナムが,中国がオブザーバーとして出席しているメコン総会で,明確に上流ダムへの懸念を示したのである。私も,前に見たときに,あれっという思いに駆られたが,その後,ベトナムの姿勢を窺っていると,何か変化が起こっている,という感じがしてきている。前に副首相が,電力公社などに,余り外国に出て関係ない仕事をするな,と警告したし,先日の記事で,良く読んでいないが,もうベトナムの水力開発は終わりに近づいた,と言う表題があった。今回の発言も,トップの了解なしには出来ないだろう。
中国が,ラオス,ミャンマーまでの進出は良いとしても,昨今のニュースのように,ベトナムの庭先であるカンボジアまでダム開発に出てきてしまうと,カンボジアのポルポトを,世界的な制裁を受けながら大きな犠牲を払って政権を倒したベトナムとしては,黙ってみておれないのではないか。しかも,もし中国がカンボジアの天然ガスを持って帰る,なんて言う事態になると,地域のエネルギーバランスが壊れてしまいかねない。今しばらく,ベトナムの動きを注視したい。
国際河川の水争いは,もっと深刻なのがインダス川である。今日のパキスタン側の主張を読むと,国内唯一の水源が,インドに握られている,と言う実態に,どうしようもない地理的なパキスタンの立場を思ってしまう。パキスタンは,基本的にインダス水条約の改訂を考えているのだが,一旦手にしたインド有利の水の権利は,容易には解決しないだろう。インドだって,ブラマプトラ川,ひいてはガンジス川の水を中国に握られていて,時々このHPにも,将来の水争いの気配を感じているこのごろだから。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080905A,(2) ‘Thanh Nien’ newspaper,(3) deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee (VNMC), Dao Trong Tu,(4) Nguyen Van Trong, deputy director of the state-run Research Institute for Agriculture,(5) Mekong Delta,(6) Can Tho,(7) Nguyen Tu Be,(8) Hau River,(9) Shutchi and pagasius catfish,(10) Tonle Sap,(11) Nguyen Tan, an agriculture expert at Can Tho’s Department of Agriculture and Rural Development.,(12) Mekong River, (13) Tibet,(14) South China Sea,(15) Lancang river, (16) "environmentally sustainable development",(17) Mekong River Commission,(18) Don Sahong dam,(19) Phnom Penh,(20) Kratie province,(21) Xekamen River,(22) Xekamen 1 dam, (23) Xekamen 3 dam,(24) Luang Prabang,(25) A memorandum of understanding,(26) PetroVietnam Power Co,(27) Vietnam National Mekong Committee,(28) Pham Khoi Nguyen, Minister of Natural Resources and Environment,(29)
本文
●最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
2008年9月5日付本欄(注1)に,第13回メコン河委員会総会の状況を報告しているが,その時私も,ハッとしてベトナム代表の発言に目が停まっていた。ベトナム代表は,メコン上流でのダム開発が,下流ベトナムの漁業や農業に,マイナスの影響をもたらしている,と発言したのである。ベトナムもメコン河のダム開発の重要な一員ではないか,それもNGOならともかく,政府代表の発言だから,私の記事を読む眼が一瞬そこで揺らいだのである。そのままにしていたけれども,今日の記事で,再び思い出すことになった。
メコン河の本流支流でのダム開発に伴う議論が続く中,最近時々,ベトナムの政府系のメディアもこの議論に出てき来ている。ベトナム政府官僚そのものがこの数ヶ月,非常に開放的な発言を繰り返している。2008年9月末,タンニエン紙(注2)は,メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)の談話を載せている。「メコン河及びその支流での水力発電用のダム開発が,例えばベトナムのような国に,予測できないマイナスの結果をもたらす可能性がある。」。
また,第13回メコン河委員会総会(注1)の席上で,ベトナム政府の農業研究所グエンバンチョン次長(注4)は,「ダム建設によって,メコンデルタ(注5)の2,000万人の,漁業と灌漑に依存しているベトナム人が,マイナスの影響を受けている。」,と発言している。このような言葉が,メコン河とその支流でダム建設に重要な役割を持っているベトナムから出てきている。事実ベトナム企業は,多くのダム建設や計画に参画している。
ベトナム南部のカントー(注6)の45歳の漁業に従事するグエントウベさん(注7)は,「ベトナムのお役人が,水力ダムが漁業を駄目にしている,と言うことを声高に発言するのは初めてで,それを聞いて私は大変嬉しい。」,と語っている。グエントウベさん(注7)は若いときからメコン河支流のハウ川(注8)で漁業に従事しているが,この2,3年,目立って漁獲高が減少しているとして,「人々は,上流のダムが,魚たちのベトナムへの旅を阻害しているのだ,と言っている。」,と。
数年前までは,容易に数トンのナマズ類(注9)を捕獲できたが,それは乾期にベトナムの支流に逃げ込んできていたからだ。かって漁業者は,籠の中でナマズを産卵させ育てて輸出する養殖業者に,最良の母親ナマズを売って生活してきた。このような健康な母親ナマズは,今ではベトナム領内の川では捕獲困難で,カンボジアのトンレサップ(注10)まで追いやられたナマズを追っかけている。しかし,トンレサップ(注10)も最近は状況が良くない。カンボジアについては,単に漁獲高が減っている,と言うだけではなくて,漁業の方法そのものにまで変化が起きてきて,網でとるので魚は小さく高値の魚はなくなった。
カントー(注6)市当局農業部門専門家のグエンタン氏(注11)は,「多くの人が,この2,3年,カンボジア,ラオス,ベトナムで洪水期に多くの土地が浸水したのは,メコン川上流の中国のダムの影響だ,と信じている。」,と前提して,「私の関心は,メコンの流砂だ。」,と言っている。「本来は肥沃な土壌を伴って洪水時に下流に栄養を供給していたが,それが今はダムにため込まれている。その結果,農民は汚染の可能性のある化学肥料を使わなければならなくなる。」,と懸念している。
沿岸におよそ6,000万人が生活する4,800km長さのメコン河(注12)は,チベット(注13)に水源を発して,ミャンマー,タイ,カンボジア,ベトナムを経て,南シナ海(注14)に注ぐが,その間,人々は,舟運,食糧,穀物への水,などの恩恵に依存してきた。特に大きな論争は本流沿いのダム開発で,中国のランサン川(注15)を初め,ラオス,カンボジア,タイでの本流ダム計画が,その論争の対象である。
1955年に下流4カ国,カンボジア,ラオス,タイ,ベトナムで,「環境的に持続的な開発(注16)」を目指して,メコン委員会MRC(注17)を発足させ,本流上のダム開発計画は周辺国への通知が必要,との合意書を交わしている。特にメコン流域外への乾期の分流は,全メンバーの同意を必要としている。中国とミャンマーは,メコン委員会MRC(注17)はオブザーバーとして参加しているが,中国は上流ダムはメコンデルタ(注5)の雨期の洪水を軽減して下流に貢献している,と主張している。
最近のエネルギー高騰で,各国はメコン流域内の水力開発に努力している。いろいろな調査があるが,80のプロジェクトが下流域内で動いている,と言われている。そのうち8地点は,本流上の計画で,ラオス内5地点,タイが2地点,カンボジアが1地点である。もっとも論争が激しいのは,コーンの滝(注18)のドンサホンダム(注18)である。このコーンの滝(注18)は,狭い流路の複合体をなして,そのまま国境を越えてカンボジアに流れ込む。ドンサホンダム(注18)はもっとも深い流路を塞ぐが,乾期の4月から5月には,一種類の魚類だけが,この滝を通過する。このため,ドンサホンダム(注18)は,繁殖区域であるトンレサップ(注10)と上流のラオスやタイ領域を,完全に遮断してしまう。
プノンペン(注19)政府も,本流にダム計画を進めようとしている。カンボジア中央のクラティエ(注20)地点で,中国企業が調査を行っている。環境グループは,メコン委員会MRC(注17)自体が,水力開発推進派で占められている,と非難してきた。2007年,175の環境及び市民運動グループが共同で,メコン委員会MRC(注17)に手紙を書き,「メコン下流域でのダム開発が深刻な環境及び経済的な影響を与えているのに,メコン委員会MRC(注17)は沈黙しているだけだ。」,と攻撃している。3月には,事務局に押しかけている。
ベトナムであるが,確実な経済成長で電力需要が増大している。中国とラオスから電力を輸入しているが,国内でも多くの水力を開発しており,ラオスやカンボジアのプロジェクトにも参入している。メコン支流のセカマン川(注21)でセカマン第1ダム(注22),セカマン第3ダム(注23)を建設中である。また,2007年10月中に覚書(注25)が交わされたルワンプラバン(注24)近傍の1410MW規模の発電ダムには,ペトロベトナム(注26)が参加している。
メコン河委員会ベトナム国内委員会次長ダオチョントウ氏(注3)は,「中国がメコン委員会MRC(注17)に加盟していないので,今のところ我々は,中国の発電ダムとの戦いには成功していない。しかし,メコン川本流で多くのダム計画が動いているが,VNMC(注27)は大規模ダムのもたらす悪影響に警報を鳴らす権利を確保している。上下流の大規模ダムが多すぎると,ベトナムの漁業や農業が打撃を受けることは明白である。」,と明確に述べている。
2008年9月のVNMC(注27)創立30周年式典で,ファムコイグエン水資源環境大臣(注28)は,次のように演説している。「VNMC(注27)の役割とは,ベトナムの権利と受けるべき便益を確保し,メコン上流で実施さっる開発事業のマイナス影響を減ずる努力にある。」。
誠に複雑極まるベトナムの立場であるが,私は最近,ベトナムに何か変化が起こっているという予感はある。副首相が,余り外国の関係のないダムプロジェクトに手を出すな,とはやるEVNなどにブレーキをかけているし,つい先日は,ベトナムのダム開発は殆ど終わった,と宣言しているし,また今日の記事にもあるとおり,はっきりとメコン下流国の立場から,上流のダム開発に警告を鳴らしている。私は中国が,前後の見境なく,ミャンマー,ラオス,更にはカンボジアまでダム造りに出かけてくることに,反発をするための下準備ではないか,と感じている。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0809.htm,080905A,(2) ‘Thanh Nien’ newspaper,(3) deputy secretary general of the Vietnam National Mekong Committee (VNMC), Dao Trong Tu,(4) Nguyen Van Trong, deputy director of the state-run Research Institute for Agriculture,(5) Mekong Delta,(6) Can Tho,(7) Nguyen Tu Be,(8) Hau River,(9) Shutchi and pagasius catfish,(10) Tonle Sap,(11) Nguyen Tan, an agriculture expert at Can Tho’s Department of Agriculture and Rural Development.,(12) Mekong River, (13) Tibet,(14) South China Sea,(15) Lancang river, (16) "environmentally sustainable development",(17) Mekong River Commission,(18) Don Sahong dam,(19) Phnom Penh,(20) Kratie province,(21) Xekamen River,(22) Xekamen 1 dam, (23) Xekamen 3 dam,(24) Luang Prabang,(25) A memorandum of understanding,(26) PetroVietnam Power Co,(27) Vietnam National Mekong Committee,(28) Pham Khoi Nguyen, Minister of Natural Resources and Environment,(29)
●インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
インドの第11次五カ年計画(注29)の中の新規電源開発量が変更されている,と言う情報があったが,これが報道としては正式なものだ。従来の,新規電源,78,577MWも,まさしく絵に描いた餅,と言われ,電力大臣が何度も国会に呼び出されて,出来るわけがない,と追求されているのに,これを増やして,92,000MWにすると言う。言い分を聞いてみよう。
インド政府は,2007~2012年の第11次五カ年計画(注29)で,国全体の需要の伸びに併せて,78,530MWの新規電源を開発する,として,途中でこれを,78,577MWに変更している。今回,再度これを修正し,92,000MWとすると発表した。この内訳は,水力が,16,553MW,火力が,58,644MW,原子力が,3,380MWである。電力セクターを調整するCEA(注30)によると,第11次五カ年計画(注29)分として,2009年8月までに,11,404MWが運転開始するという。その内訳は,火力,8472MW,水力,2,712MW,原子力,220MWである。
現時点に於ける全国の発電設備は,145,554MWで,92,892MWが火力,36,347MWが水力,4,120MWが原子力,11,194MWが再生可能エネルギーである。最初の五カ年計画の78,557MWのうち,10,760MWが民間資本,27,952MWが州政府,39865MWがCEA(注30),即ち中央機関,という計画であった。2008~2009年の新規電源は,7,530MWと推定されていた。このうち,2,141MWは既に完成しており,残りの5,389MWは,2009年3月までに完成する。
現在工事中でこの財政年度末(2009年3月か)までに完成するプロジェクトは次の通り。NTPC(注31)のカハルガオン(注32)の500MW火力,トレント(注32)のグジャラート州(注33),スゲン(注34)の752MW火力,オークウエル(注35)によるアンデラプラデッシュ州(注36),コナシーマ(注37)の445MW火力,ガウタミ(注38)によるアンデラプラデッシュ州(注36)の464MW火力,原子力公団(注39)によるラジャスタン州(注41)の第5,6号機とカルナタカ州(注40)のカイガ(注42)の第4号機,各原子力である。
現在の世界金融危機も,プロジェクトの資金調達に影響を与えているが,インド政府は,資金調達を終えたものについては,政府保証を与える方向で検討しているが,上に示したプロジェクトは順調に進んでいる。常設連携委員会(注43)は,2012年までに完成する予定の35,000MWについて,最近,石炭供給連携を承認した。計画中の全部が完成した暁には,2012年に於ける全国設備は,237,554MWに達するはずである。
この92,000MW新規開発案は,意欲的なもので,2002~2007年の第10次五カ年計画(注44)での実績の4倍で,この第10次五カ年計画(注44)で達成されなかった分は,2007~2012年の第11次五カ年計画(注29)に引き継がれている。政府の,電力需給を満たす構想は,まさにインドの成長の重要な媒体となるだろう。この記事は,IIR(注44)によって書かれたものである。
随分国会で電力大臣が追及されていたが,国会も最近は,見守るしかない,ということなのか,静かである。実際,過去の実績の4倍の速度で電源を開発して行くことは,非常に難しい目標であることは,全人が分かっているはずだ。まだ,石炭火力の大気汚染も余り問題になっていないし,ダムの環境問題も,全体的には静かである。でもこの5年間のインド国民の意識は,ドラスティックに変わる可能性があるし,ADBが指摘しているように資金調達の問題があるし,それと機器製造能力の問題もある。また,米印原子力協定の結果は反映されていないだろう。
(注) (29) Eleventh Five-Year Plan (2007-12),(30) Central Electricity Authority,(31) NTPC, (32) Kahalgaon,(32) Torrent Power Limited,(33) Gujarat,(34) Sugen,(35) Oakwell Power Limited,(36) Andhra Pradesh,(37) Konaseema,(38) Gautami Power Private Limited,(39) Nuclear Power Corporation of India Limited,(40) Karnataka,(41) Rajasthan,(42) Kaiga,(43) Standing Linkage Committee of the Indian government,(44) Industrial Info Resources,(45)
●パキスタン,インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
インダス川の水争いについては,相当前から関心を持ってきた。1998年ぐらいに書いた私のメモも本HPに残っている(注46)。実際に,機会があって,パキスタンのインダス川の畔にも立って見たし,パキスタン側の重要な構造物であるタルベラダムも訪ねる機会があった。また,ペシャワールから北に入り込んで,英国植民地時代の実に立派な灌漑システムを見てきた。今日は,パキスタンが,インダスの水に関して,思いの丈を記事ぶっつけている。特に,ザルダニ大統領になってから,パキスタンの姿勢が強硬になってきた。
1947年に,インドとパキスタンの分割が行われた直後,水問題に関してインドとパキスタンは厳しい緊張状態に入った。インドは,パキスタンの主要な農地の広がるパンジャブ(注47)平野に対して,東の三つの支流,ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)の水を止めると脅かした。この脅迫は,農業経済に依存するパキスタンを窒息させることを意味した。インドは事実それを実効することが可能であった。何となれば,インダス源流の五つの川,ジェルム川(注51),シェナブ川(注52),ラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)が,すべてインド占領カシミールIOK(注53)に入っていたからである。
数十年の論争の後,世界銀行が中に入って,チームを組み,インドとパキスタン両国に納得できる解決方法を探った。非常に困難な仕事であったが,その後,紛争の度に持ち出される有名なインダス水条約(注54)が,1960年に成立した。合意の基礎は,インドはラビ川(注48),ビース川(注49),ステルジュ川(注50)を自由にコントロールし,パキスタンは,インダス本流とジェルム川(注51),シェナブ川(注52)の権利を持つ,というものであった。
ところが,これにパキスタン側で火がついた。それは,パキスタン側に属する水は75%を占めるが,灌漑面積はパキスタン側が90%だと言うことだ。これが現在も尾を引いていて,バギリハールダム(注55),サラールダム(注56),ニールム-ジェルム水力(注57)の紛争の種となっているのである。もっとも深刻なのは,シェナブ川(注52)のバギリハールダム(注55)である。最初は,バギリハールダム(注55)は流れ込み式(注57)とインド側は言って,2008年10月10日に,インド占領カシミールIOK(注53)のジャム(注59)から150kmのシェナブ川(注52)に,バギリハール水力発電所(注60)が完成した。
バギリハール水力発電所(注60)は,設備出力900MW,工事費10億ドルであるが,パキスタン側の拒否の理由は,シェナブ川(注52)がパキスタンの権利であるにもかかわらず,インドが流れ込み式と称して,インダス水条約(注54)を無視したこと,設計がインドが水を自由に出来るようになって約束に手ぬるいこと,パキスタンとの間でことあるときはインドが自由に裁量できること,地滑りの頻発でダムが不安定なこと,ちっきが地震地帯であること,560万エーカーの水を取り上げたこと,の6点である。
今回の事態は,1960年以前にパキスタンが苦境に陥った時を思い出させる。インドはインダス水条約(注54)に違反して,シェナブ川(注52)の水をバギリハールダム(注55)によって自由にし,パキスタンを食糧不足に陥らせる可能性を秘めている。パキスタンの立場は,ピーク時に,シアルコット(注61)付近のマララ堰(注62)において,毎秒55,000トンの水を確保することだが,今年,2008年は,毎秒22,000トンしかなく,収穫に影響を与えた。
パキスタンのインダス委員会首席アリシャー氏(注62)の要求は簡単で,不足分の被害を補償してくれというものだが,インドのインダス委員会首席アランナタン氏(注63)は,このバギリハールダム(注55)湛水中の不足に対しての補償要求を拒否している。パキスタンは,収支を図るため海外資金を76億ドル借り入れする状況で,農民は水不足で困窮している。もうこれ以上,パキスタンは水で我慢は出来ない。2025年までには食糧カットが必要になってきている。パキスタンの水問題は,次の諸点だ。
世界でももっとも水不足が激しく,1960年には一人当たり年間5,650トンあったものが,2006年時点では1,200トンに激減している。パキスタンはインダス以外に水源はない,2100万エーカーが未灌漑である。インダスの水量,土砂,塩害に対して,防御の手がない。インダス水条約(注54)の結果,パキスタンは水インフラに莫大な投資を強いられた。毎年,1,500万トンもの塩が蓄積される。気候変動の影響,氷河融解,モンスーンなど,90%の水が影響を受ける。
多くの科学者が,水問題を示唆している。パキスタンは全力で戦っている。有名な科学者ピアス氏(注64)の,「川が干上がるとき」(注65)は,パキスタンの将来を暗示している。パキスタンは,将来,西の水源に依存する必要があるが,莫大なインフラ投資が必要である。またこのような分流は,パキスタンの文化を破壊することにも繋がる。インドとパキスタンの緊張は,日に日に高まっているが,数年前のCBM(注66)に希望を持っている。パキスタンが受けた被害への補償については,国連などの仲介が必要だろう。
インダス水条約(注54)の見直しに当たっては,条約後に建設されたダムなどの問題,ストレジ渓谷(注67)の洪水の問題,シェナブ川(注52)の渇水問題,インダスデルタ(注68)の渇水による荒廃の問題,などを考慮する必要がある。インドは,広域な環境を考慮して,インダスデルタ(注68)へ水を供給する必要がある。インドとパキスタンは,過去に,シルクリーク問題(注69)で希望を得たように,新しい条約の改定に,共同して前向きに対処できるだろう。
それにしても,激しい記事で,改めてインドとパキスタンの,インダス川の水争いの深刻さを実感する。パキスタンに新しい政権が誕生したことも,一つの緊迫の原因かと思う。インド側は,穏やかにことを運ぼうとしている,これはインドのシン首相の人柄とも思うが,私は,パキスタンの新任,ザルダニ大統領が,インドとの間のある程度の緊張を保持したい,と思っていると思う。それは,今難しい国内を統一して行かなければならないし,また今回は厳しい金融危機の煽りを受けている。
(注) (45) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(47) Punjab,(48) Ravi river,(49) Beas river, (50) Sutlej river, (51) Jhelum river, (52) Chenab river, (53) Indian Occupied Kashmir,(54) Indus Water Treaty-1960 (IWT),(55) Baglihar dam,(56) Salal dam,(57) Neelum-Jhelum Hydropower Project,(58) run-of-the-water,(59) Jammu,(60) Baglihar hydro electric power project,(61) Sialkot,(62) Marala headwork,(62) Pakistan Indus water commissioner Mr Jamaat Ali Shah,(63) Indian water commissioner, Mr. G. Arangnathan,(64) Fred Pearce,(65) “When the Rivers Run Dry: Journeys into the Heart of the World’s Water Crisis”,(66) Confidence Building Measures (CBMs),(67) Sutlej valley,(68) Indus delta,(69) Sir Creek issue,(70)
Reference
Vietnam
●081122A Vietnam, psnews
最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
Rare Criticism of Dams Surface
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44797
Pakistan
●081123A Pakistan, pakobserver
インダスの水問題,シェナブ川の実情を反映せよ
Reflecting Chenab water issue
http://pakobserver.net/200811/23/Articles02.asp
India
●081122C India, pump-zone
インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
India Targeting 92,000-MW Power Addition by 2012
http://www.pump-zone.com/global-news/global-news/india-targeting-92000-mw-power-addition-by-2012.html
2008年11月23日日曜日
インドネシアの石炭探査投資を
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
ペルーで開かれているAPEC首脳会議の大きなポイントは,WTO妥結に向けて,再び動き出そうとする雰囲気,それがすべてという気もする。ブッシュ大統領が,一人で頑張っている感もあるが,元々,米国に対して中国とインドの対立で前回壊れたのだから,ブッシュ大統領が年内,と言っているのは,余程の覚悟を決めたのか。
WTOの決裂は,日本なども農業関係など,良かったと思っている人たちも多いいが,皆が自由貿易を目指して行くことが,世界経済の発展のために必要なら,中途半端な取り組みは,かえって良くないと思う。日本の食糧自給率をある線で確保する,それはどの線で確保すればよいのだろうか。考えかけるときりがない。私も,良く書いているが,石油ガス石炭が入らなかったら,水力と原子力だけで4,5年は生きよう,そうするとどの様な生活になるのか,一度イメージしてみてはどうか。
戦争中のことを考えればよいのだろう。少なくとも今の水力と原子力を,うまく維持しながら生活すると,あの戦争中の生活よりは,かなり上等なのではないか。だから,ダム撤去なんて言うのはとんでもないと思う。でも,そう言うことを考えながら,世界はWTOの理想に向かって完全分業を目指すわけだから,日本には何が残るのだろうか。人間と原子力とダムと道路しか残らない?
そう言う意味で,インドネシアは,石油がどんどん底をついて,最近では石炭を頼りにしてきている。今日の記事では,大手石炭企業ブミ(注2)の株価が年初から81%という暴落を演じている。世界の石炭埋蔵量は,8,470億トン,133年分で,インドネシアは930億トンが残っていて,アジア最大の石炭輸出国,日本を初め多くのアジア諸国の発電計画に大きな影響を与えている。
今日の記事によると,石炭価格が2008年7月のピーク値トン192ドルから,現在の103ドルまで,46%下げたことも,株価押し下げの原因になっている。しかし記事の筆者は,石炭の経済性は揺るがないとし,百万Btu当たりに換算すると,石炭は1~2ドルに対し,石油ガスは6~12ドルで,5世代ぐらいまであるから,石炭の優位性は動かない,としている。
インドネシアの石炭は,スマトラ(注4)とカリマンタン(注5)に多いいが,今日の記事は,探査の重要性を強調している。チャン氏(注1)は,インドネシアの石炭は,短期的には株の値下がり,探査への投資減少,と危機的だが,将来の見通しを明らかにして投資を呼び込めれば,投資企業にとって非常に魅力的である,と結んでいる。今日の数字を見ると,世界の石炭包蔵の10%強をインドネシアが持って入り,私の言う,今しばらく人類は石炭に頼らなければならない,という主張の中で,インドネシア石炭の果たす役割は,大きいと思う。
(注) (1) David Chang , Analyst ,(2) Bumi Resources ,(3) Bakrie and Brothers ,(4) Sumatra,(5) Kalimantan,(6) Ministry of Energy & Mineral Resources,(7) Ministry of Environment,(8) Investment Coordinating Board,(9) Ministry of Finance,(10) Ministry of Communication and Regional Governments,(11)
本文
●インドネシアの石炭株暴落,石炭価格の暴落の影響
インドネシアの株式市場が暴落している,2008年初めから50%の下げで,アジア最悪である。この記事は,解説者のチャン氏(注1)が書いたものである。世界的な金融危機が,消費に与えた影響が大きい。その中でも,石炭企業ブミ(注2)はひどく81%も暴落,他の石炭関連企業も48~54%下げている。主たる理由は,石炭価格が2008年7月のピーク値トン192ドルから,現在の103ドルまで,46%下げたことだ。
石炭企業ブミ(注2)の株式に投資家の信頼を失わせたのは,その株式を保有していたバクリエブラザーズ(注3)が,35%の持ち合いを売却しようとしたことによる。チャン氏(注1)は,これはインドネシア石炭の短期的な沈滞減少だと思っている。それは,インドネシア石炭が,まだまだ重要だという認識に基づく。石炭は,世界中で,発電,製鉄,セメントなどに広く使われ,発電分野では,石炭が40%を占め,見通し可能な将来では,石炭がまだ発展し続けると,信じられるからだ。
インドネシア石炭は,アジア最大で,またアジアは2007年において世界の石炭の60%を消費しており,2010年には64%となると予想されている。インドネシアは世界最大の石炭輸出国である。炭素汚染が問題になっているが,石炭の経済性は揺るがない。百万Btu当たりに換算すると,石炭は1~2ドルに対し,石油ガスは6~12ドルである。石炭の埋蔵量は世界で8,470億トンであり,次の133年間,次の5~6世代に十分である。
インドネシアの石炭埋蔵量は930億トンである。インドネシアの石炭はスマトラ(注4)とカリマンタン(注5)に分布している。インドネシアの石炭は,硫黄分と窒素酸化物が少なく,廃棄部分も少なく,設備や灰捨て場の費用を節約できる。米国や欧州の規制にも有利である。それにインドネシアの石炭は露天掘りが多く,経済的である。国内的にも,既設ディーゼル,7,753MWを石炭に変える計画が進み,また2009~2010年に新雪石炭火力10,000MWの準備が進んでいる。
インドネシアの石炭の探査への外資の投資が進まないのは,不確定な規制措置と法制度である。インドネシアの石炭がこのまま推移すると,石油のように石炭輸入国に陥る可能性がある。インドネシアの石炭は,エネルギー鉱物資源省(注6),環境省(注7),投資調整庁(注8),財務省(注9),通信自治省(注10)の多くの省庁で管理されていることが弊害だ。これが除かれれば,インドネシアの石炭産業は,極めて有望だ。
チャン氏(注1)は,インドネシアの石炭は,短期的には株の値下がり,探査への投資減少,と危機的だが,将来の見通しを明らかにして投資を呼び込めれば,投資企業にとって非常に魅力的である,と結んでいる。今日の数字を見ると,世界の石炭包蔵の10%強をインドネシアが持って入り,私の言う,今しばらく人類は石炭に頼らなければならない,という主張の中で,インドネシア石炭の果たす役割は,大きいと思う。
(注) (1) David Chang , Analyst ,(2) Bumi Resources ,(3) Bakrie and Brothers ,(4) Sumatra,(5) Kalimantan,(6) Ministry of Energy & Mineral Resources,(7) Ministry of Environment,(8) Investment Coordinating Board,(9) Ministry of Finance,(10) Ministry of Communication and Regional Governments,(11)
●中国が,ミャンマーを原油の中継基地として使おうとしている
中国を中心とした外国勢力のミャンマーのエネルギー資源開発については,2008年11月1日付本欄(注11)で,中国紙が総括して,国際的な争奪戦の様相を示してきたことを匂わせている。また,2008年11月17日付け本欄(注2)では,新たに15のダムが計画に上がってきたことを伝えた。この活動をミャンマーにとってチャンスと見るか,外国の収奪と見るか,大いに意見の分かれるところである,と書いている。今日の記事は,ミャンマー紙イラワジ(注13)が,各国の動きに批判的な記事を載せている。
中国が,パイプラインによってミャンマーを,中東やアフリカからの原油ガス中継地として使うという意図を明らかにしてから,ミャンマーに於ける人権問題が,再びクローズアップされてきた。中国はメディアを通じて,雲南省高官の談話として,15億ドルのパイプライン建設は,この6ヶ月内に着工するだろう,と報じている。皮肉にも,世界の金融危機と時を同じくするが,先般中国政府が発表した6000億ドルの緊急対策に含まれると考える可能性もあると言うことだ。
情報として,中国は,アラカン沿岸(注16),ラムリー島(注14)のチャウクピュー(注15)に,スーパータンカーを接岸できる高深度港湾を建設中,と言われている。このことは,中国メディアも,マラッカ海峡(注17)ノミに頼り必要のないルートをミャンマーが提供してくれる,との表現で,これを認めている。また,中国国有巨大エネルギー企業CNPC(注18)は,原油パイプラインとは別に,10億ドルで,ミャンマーのガスを運ぶパイプラインを敷設する予定である。
国際人権団体は,これらのパイプラインの影響を心配している。シュエガス運動のウオンアウン氏(注21)は,アラカン州(注19)やシャン州(注20)に於ける人権が侵される,それは,軍部が大部隊を派遣して治安維持を名目に,強制的な立ち退きや労働などを,強いる可能性がある,と心配している。また問題は,韓国のダイウー(注22)の動きである。ダイウー(注22)はCNPC(注18)のパートナーで,シュエガス田(注23)の主開発企業である。米国籍の地球人権ERIのスミス氏(注24)は,韓国がOECD(注25)のメンバー国でありながら,この人権問題の一端の責任を負うことに懸念を示している。
専門家ワタナ氏(注26)は,これらのパイプラインは,ミャンマーの石油ガス公社(注27)が進めていると公表されているが,実質は中国のCNPC(注18)が進めているとの理解だ,と言っている。中国が,自国のエネルギー確保のため,ミャンマーを使っている,との認識である。また,ダムの問題についても,現在進行中の22のダムに加え,新たに15のダムの計画を追加している。これは,現在進行中の,16,500MWの上に新たに,14,000MWを加えることとなる。
専門家のレイノルズ氏(注28)は,これらの発電所が全部動くと,タイの現在の容量を超えてしまう,と言っている。ミャンマーの現在の電力は,17,00MWにしか過ぎない。タイの現在の設備は,26,000MWであるが,結局,ミャンマーの電力は,インドや中国に送られることになるだろう。関連する中国の企業は,YMEIE(注29),FIGC(注30),GWRI(注31)で,CPIC(注32)に至っては,一社で7つのダムを建設中である。
またこの記事では,日本の自動車メーカーもやり玉に挙がっており,日産と鈴木が,ミャンマーの軍関係企業FMI(注33)と結んで,車の組み立てとオートバイの生産に携わっている。ピックアップで,現在の月産170台を,2009年には1,200台に上がると,FMI(注33)は言っている。鈴木のミャンマー産業省(注34)との契約は,更に将来20年間に更新されている。工場は,南ダゴン工業団地(注35)にある。ロンドンのロイドも,ミャンマー軍事政権と結びついている,として非難されている。
この報告にあるように,経済的な結びつきを軍事政権との間で深めているのは,中国だけではない。しかし,ミャンマーの水力資源の開発は,おそらく,今しかない,と言うことは,皆よく分かっていると思う。政権が民主化されたときに,これらの資産はどうなるのであろうか。中国が,莫大な資金の償還を要求することになるのだろうか。しかし中国は,少なくとも20年は軍事政権が続く,と読まなければ,これだけの投資は出来ないだろう。
(注) (11) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htmm,(12) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081117C.htm,(13) http://www.irrawaddy.org/,(14) Ramree Island,(15) Kyaukphyu,(16) Arakan coast,(17) Strait of Malacca,(18) China National Petroleum Corp,(19) Arakan atate,(20) Shan state,(21) Wong Aung, coordinator of the Shwe Gas Movement,(22) Daewoo International,(23) Shwe Gas Project,(24) Matthew F Smith of the US-based EarthRights International,(25) Organization for Economic Cooperation and Development,(26) regional energy industries analyst-consultant Sar Watana,(27) Myanmar Oil and Gas Enterprise,(28) energy consultant Collin Reynolds in Bangkok,(2) Yunnan Machinery and Equipment Import and Export Co,(30) Farsighted Investment Group Co,(31) Gold Water Resources Limited,(32) China Power Investment Corporation,(33) First Myanmar Investment,(34) Ministry of Industry (2),(35) South Dagon Industrial Zone in Rangoon,(36)
●中国の電力分野,2000~2008年,報告書刊行
2008年11発8日付本欄(注36)では,2008年の年次報告書が刊行されている。今回は,2000~2008年の9年間の電力投資に関する報告書(注37)と考えられる。2007年末時点の設備出力は,713,000MWである。2008年は順調で,電力需要は年率13%の伸びが続く。しかし,小規模老朽発電所の閉鎖や投資の抑制で,2008年の設備の伸びは,11.8%に止まるだろう。
将来10年間の電力産業は,工業化と都市化が進んで,年率平均6.6~7.0%の伸びを続け,それに見合う投資が必要だ。投資の方向は,水力,風力,原子力の伸びが期待されるが,やはり石炭火力への投資の第一位を占める。この構造はしばらく長く続くだろう。現在の発電量は,水力が13.88%,原子力が1.94%,風力が0.26%に対して,石炭火力は78%を占めていて,70%まで下がる2020年までは同じ傾向だろう。
これらの電源の投資を分析すると,資産負債比(注38)はこれらの電源で変わりはないが,全出力に対するコスト比と便益比では,水力と原子力が全平均より優れている。特に原子力の便益比(注39)は30%を示し,石炭火力の30%,全平均の10%に比べて,かなり高い。この報告書(注37)は,上場の56の電力企業の,2000~2008年の投資実績を分析したもので,中国電力産業全体の傾向と投資の特徴を分析している。
投資額について言えば,広東省(注40),15.33%,内モンゴル自治区(注41),13.84%,上海(注42)10.53%,で,これに四川省(注43),北京(注44)が続く。電源種別では,火力が,2163.8億元,水力が,977.3億元,熱電共同(注45)が,485.8億元であり,これにガス探査と石炭鉱山探査への投資が続く。この報告書では,56の上場企業が調査の対象となったが,例として,広東電力開発公司(注46)を見て見ると,年間の投資額が,15~25億元の間である。
また,広東電力開発公司(注46)は,金融業(注47,48)にも進出している。また,風力発電の進展に伴い,シベイシャン風力プロジェクト(注49),100MWに30%出資して,既に発電を開始している。また,風力発電プロジェクト調査を,広東省(注40)の湛江(注50)で開始している。
(注) (36) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081108C.htm,(37) Investment Report of China Electric Power Industry 2000 to 2008,(38) asset-liability ratio,(39) ratio of profit to gross output value,(40) Guangdong province,(41) Inner Mongolia Autonomous Region,(42) Shanghai,(43) Sichuan,(44) Beijing,(45) thermoelectricity,(46) Guangdong Electric Power Development Co., Ltd.,(47) Guangdong Yuedian Finance Co. Ltd.,(48) Sunshine Insurance Group Corp. Ltd.,(49) Shibeishan Wind Power Project,(50) Zhanjiang,(51)
●中国の怒川のダム開発,グリーンビート
サルウイーン河(注52)上流,中国領内の怒川(注53)の13のダム計画については,既に各所で報告されているが,この記事でビデオがユーチューブ(注54)で公開されている。グリーンビート(注51)が撮影したものだ。余り写真は良くないが,初めて見る怒川(注53)の光景である。是非とも見て下さい(注55)。中国にもこのようなグリーンビート(注51)と言う環境団体があるのだ。控えめながら,怒川(注53)のダム開発に於ける環境被害を心配している。
2004年,中国でもっとも生物多様性の高い怒川(注53)で,13のダム計画が発表された。全部のダムの発電出力は,三峡ダムの発電をこすもので,この電力は中国南西部で消費される計画である。2004年に,温家宝首相(注56)が,環境団体や外国の声で,一時中断の決定を行った。2005年の後半にいたって,幾つかの規模を小さくしたプロジェクトが提案され,これがダム建設の始まりを意味した。環境に悪影響を与えるであろうダム建設以外で,この地域に電力をもたらすことは考えられない。
雲南省の怒川(注53)の情報は,「中国河川プロジェクト(注58)」,に詳しい。怒川(注53)の全長は3,059km,水源は,キンハイ-チベット高原(注59)のタングラ山(注60)に発し,インド洋の北東端に流れ込む。このうち約700kmは,「東洋のグランドキャニオン(注61)」,と呼ばれる峡谷をなす。流れは,ガオリゴン山(注62)に当たって西に方向を変え,ビルオ雪山(注63)とメイリ雪山(注64)で東に変わるが,その間,4,500mの深さの渓谷をなしている。
怒川(注53)は,中国の雲南省を流れ下って,ミャンマー東部に入り,サルウイーン河(注52)と呼ばれる。サルウイーン河(注52)はところにより,タイとミャンマーの国境をなしながら,最後はカイン州(注65)のアンダマン海(注66)に注ぐ。13のダム計画で少数民族の多数の部落が水没するが,自然及び社会的環境への影響が懸念されている。
(注) (51) Green Beat,(52) Salween River,(53) Nu River,(54) Tou Tube,(55) http://www.chinasgreenbeat.com/blog/,(56) Wen Jiabao,(58) China River Project,(59) Qinghai-Tibet plateau,(60) Tangula Mountain,(61) “Grand Canyon of the East.”,(62) Gao Li Gong Shan,(63) Bi Luo Snow Mountain,(64) Mei Li Snow Mountain Range,(65) Kayin State,(66) Andaman Sea,(67)
Reference
Vietnam
●081122A Vietnam, psnews
最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
Rare Criticism of Dams Surface
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44797
Myanmar
●081122B Myanmar, irrawaddy
中国が,ミャンマーを原油の中継基地として使おうとしている
China’s Burma Oil Conduit an ‘Abuse Threat’
http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=14673
India
●081122C India, pump-zone
インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
India Targeting 92,000-MW Power Addition by 2012
http://www.pump-zone.com/global-news/global-news/india-targeting-92000-mw-power-addition-by-2012.html
Indonesia
●081122D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの石炭株暴落,石炭価格の暴落の影響
Power of the future despite looking black now
http://www.thejakartapost.com/news/2008/11/21/coal-power-future-despite-looking-black-now.html
China
●081122E China, companiesandmarkets
中国の電力分野,2000~2008年,報告書刊行
Investment Report of China Electric Power Industry 2000 to 2008
http://www.live-pr.com/en/investment-report-of-china-electric-power-r1048231550.htm
●081122F China, chinadigitaltimes
中国の怒川のダム開発,グリーンビート
Hydropower on the Nu River
http://chinadigitaltimes.net/2008/11/hydropower-on-the-nu-river/
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
ペルーで開かれているAPEC首脳会議の大きなポイントは,WTO妥結に向けて,再び動き出そうとする雰囲気,それがすべてという気もする。ブッシュ大統領が,一人で頑張っている感もあるが,元々,米国に対して中国とインドの対立で前回壊れたのだから,ブッシュ大統領が年内,と言っているのは,余程の覚悟を決めたのか。
WTOの決裂は,日本なども農業関係など,良かったと思っている人たちも多いいが,皆が自由貿易を目指して行くことが,世界経済の発展のために必要なら,中途半端な取り組みは,かえって良くないと思う。日本の食糧自給率をある線で確保する,それはどの線で確保すればよいのだろうか。考えかけるときりがない。私も,良く書いているが,石油ガス石炭が入らなかったら,水力と原子力だけで4,5年は生きよう,そうするとどの様な生活になるのか,一度イメージしてみてはどうか。
戦争中のことを考えればよいのだろう。少なくとも今の水力と原子力を,うまく維持しながら生活すると,あの戦争中の生活よりは,かなり上等なのではないか。だから,ダム撤去なんて言うのはとんでもないと思う。でも,そう言うことを考えながら,世界はWTOの理想に向かって完全分業を目指すわけだから,日本には何が残るのだろうか。人間と原子力とダムと道路しか残らない?
そう言う意味で,インドネシアは,石油がどんどん底をついて,最近では石炭を頼りにしてきている。今日の記事では,大手石炭企業ブミ(注2)の株価が年初から81%という暴落を演じている。世界の石炭埋蔵量は,8,470億トン,133年分で,インドネシアは930億トンが残っていて,アジア最大の石炭輸出国,日本を初め多くのアジア諸国の発電計画に大きな影響を与えている。
今日の記事によると,石炭価格が2008年7月のピーク値トン192ドルから,現在の103ドルまで,46%下げたことも,株価押し下げの原因になっている。しかし記事の筆者は,石炭の経済性は揺るがないとし,百万Btu当たりに換算すると,石炭は1~2ドルに対し,石油ガスは6~12ドルで,5世代ぐらいまであるから,石炭の優位性は動かない,としている。
インドネシアの石炭は,スマトラ(注4)とカリマンタン(注5)に多いいが,今日の記事は,探査の重要性を強調している。チャン氏(注1)は,インドネシアの石炭は,短期的には株の値下がり,探査への投資減少,と危機的だが,将来の見通しを明らかにして投資を呼び込めれば,投資企業にとって非常に魅力的である,と結んでいる。今日の数字を見ると,世界の石炭包蔵の10%強をインドネシアが持って入り,私の言う,今しばらく人類は石炭に頼らなければならない,という主張の中で,インドネシア石炭の果たす役割は,大きいと思う。
(注) (1) David Chang , Analyst ,(2) Bumi Resources ,(3) Bakrie and Brothers ,(4) Sumatra,(5) Kalimantan,(6) Ministry of Energy & Mineral Resources,(7) Ministry of Environment,(8) Investment Coordinating Board,(9) Ministry of Finance,(10) Ministry of Communication and Regional Governments,(11)
本文
●インドネシアの石炭株暴落,石炭価格の暴落の影響
インドネシアの株式市場が暴落している,2008年初めから50%の下げで,アジア最悪である。この記事は,解説者のチャン氏(注1)が書いたものである。世界的な金融危機が,消費に与えた影響が大きい。その中でも,石炭企業ブミ(注2)はひどく81%も暴落,他の石炭関連企業も48~54%下げている。主たる理由は,石炭価格が2008年7月のピーク値トン192ドルから,現在の103ドルまで,46%下げたことだ。
石炭企業ブミ(注2)の株式に投資家の信頼を失わせたのは,その株式を保有していたバクリエブラザーズ(注3)が,35%の持ち合いを売却しようとしたことによる。チャン氏(注1)は,これはインドネシア石炭の短期的な沈滞減少だと思っている。それは,インドネシア石炭が,まだまだ重要だという認識に基づく。石炭は,世界中で,発電,製鉄,セメントなどに広く使われ,発電分野では,石炭が40%を占め,見通し可能な将来では,石炭がまだ発展し続けると,信じられるからだ。
インドネシア石炭は,アジア最大で,またアジアは2007年において世界の石炭の60%を消費しており,2010年には64%となると予想されている。インドネシアは世界最大の石炭輸出国である。炭素汚染が問題になっているが,石炭の経済性は揺るがない。百万Btu当たりに換算すると,石炭は1~2ドルに対し,石油ガスは6~12ドルである。石炭の埋蔵量は世界で8,470億トンであり,次の133年間,次の5~6世代に十分である。
インドネシアの石炭埋蔵量は930億トンである。インドネシアの石炭はスマトラ(注4)とカリマンタン(注5)に分布している。インドネシアの石炭は,硫黄分と窒素酸化物が少なく,廃棄部分も少なく,設備や灰捨て場の費用を節約できる。米国や欧州の規制にも有利である。それにインドネシアの石炭は露天掘りが多く,経済的である。国内的にも,既設ディーゼル,7,753MWを石炭に変える計画が進み,また2009~2010年に新雪石炭火力10,000MWの準備が進んでいる。
インドネシアの石炭の探査への外資の投資が進まないのは,不確定な規制措置と法制度である。インドネシアの石炭がこのまま推移すると,石油のように石炭輸入国に陥る可能性がある。インドネシアの石炭は,エネルギー鉱物資源省(注6),環境省(注7),投資調整庁(注8),財務省(注9),通信自治省(注10)の多くの省庁で管理されていることが弊害だ。これが除かれれば,インドネシアの石炭産業は,極めて有望だ。
チャン氏(注1)は,インドネシアの石炭は,短期的には株の値下がり,探査への投資減少,と危機的だが,将来の見通しを明らかにして投資を呼び込めれば,投資企業にとって非常に魅力的である,と結んでいる。今日の数字を見ると,世界の石炭包蔵の10%強をインドネシアが持って入り,私の言う,今しばらく人類は石炭に頼らなければならない,という主張の中で,インドネシア石炭の果たす役割は,大きいと思う。
(注) (1) David Chang , Analyst ,(2) Bumi Resources ,(3) Bakrie and Brothers ,(4) Sumatra,(5) Kalimantan,(6) Ministry of Energy & Mineral Resources,(7) Ministry of Environment,(8) Investment Coordinating Board,(9) Ministry of Finance,(10) Ministry of Communication and Regional Governments,(11)
●中国が,ミャンマーを原油の中継基地として使おうとしている
中国を中心とした外国勢力のミャンマーのエネルギー資源開発については,2008年11月1日付本欄(注11)で,中国紙が総括して,国際的な争奪戦の様相を示してきたことを匂わせている。また,2008年11月17日付け本欄(注2)では,新たに15のダムが計画に上がってきたことを伝えた。この活動をミャンマーにとってチャンスと見るか,外国の収奪と見るか,大いに意見の分かれるところである,と書いている。今日の記事は,ミャンマー紙イラワジ(注13)が,各国の動きに批判的な記事を載せている。
中国が,パイプラインによってミャンマーを,中東やアフリカからの原油ガス中継地として使うという意図を明らかにしてから,ミャンマーに於ける人権問題が,再びクローズアップされてきた。中国はメディアを通じて,雲南省高官の談話として,15億ドルのパイプライン建設は,この6ヶ月内に着工するだろう,と報じている。皮肉にも,世界の金融危機と時を同じくするが,先般中国政府が発表した6000億ドルの緊急対策に含まれると考える可能性もあると言うことだ。
情報として,中国は,アラカン沿岸(注16),ラムリー島(注14)のチャウクピュー(注15)に,スーパータンカーを接岸できる高深度港湾を建設中,と言われている。このことは,中国メディアも,マラッカ海峡(注17)ノミに頼り必要のないルートをミャンマーが提供してくれる,との表現で,これを認めている。また,中国国有巨大エネルギー企業CNPC(注18)は,原油パイプラインとは別に,10億ドルで,ミャンマーのガスを運ぶパイプラインを敷設する予定である。
国際人権団体は,これらのパイプラインの影響を心配している。シュエガス運動のウオンアウン氏(注21)は,アラカン州(注19)やシャン州(注20)に於ける人権が侵される,それは,軍部が大部隊を派遣して治安維持を名目に,強制的な立ち退きや労働などを,強いる可能性がある,と心配している。また問題は,韓国のダイウー(注22)の動きである。ダイウー(注22)はCNPC(注18)のパートナーで,シュエガス田(注23)の主開発企業である。米国籍の地球人権ERIのスミス氏(注24)は,韓国がOECD(注25)のメンバー国でありながら,この人権問題の一端の責任を負うことに懸念を示している。
専門家ワタナ氏(注26)は,これらのパイプラインは,ミャンマーの石油ガス公社(注27)が進めていると公表されているが,実質は中国のCNPC(注18)が進めているとの理解だ,と言っている。中国が,自国のエネルギー確保のため,ミャンマーを使っている,との認識である。また,ダムの問題についても,現在進行中の22のダムに加え,新たに15のダムの計画を追加している。これは,現在進行中の,16,500MWの上に新たに,14,000MWを加えることとなる。
専門家のレイノルズ氏(注28)は,これらの発電所が全部動くと,タイの現在の容量を超えてしまう,と言っている。ミャンマーの現在の電力は,17,00MWにしか過ぎない。タイの現在の設備は,26,000MWであるが,結局,ミャンマーの電力は,インドや中国に送られることになるだろう。関連する中国の企業は,YMEIE(注29),FIGC(注30),GWRI(注31)で,CPIC(注32)に至っては,一社で7つのダムを建設中である。
またこの記事では,日本の自動車メーカーもやり玉に挙がっており,日産と鈴木が,ミャンマーの軍関係企業FMI(注33)と結んで,車の組み立てとオートバイの生産に携わっている。ピックアップで,現在の月産170台を,2009年には1,200台に上がると,FMI(注33)は言っている。鈴木のミャンマー産業省(注34)との契約は,更に将来20年間に更新されている。工場は,南ダゴン工業団地(注35)にある。ロンドンのロイドも,ミャンマー軍事政権と結びついている,として非難されている。
この報告にあるように,経済的な結びつきを軍事政権との間で深めているのは,中国だけではない。しかし,ミャンマーの水力資源の開発は,おそらく,今しかない,と言うことは,皆よく分かっていると思う。政権が民主化されたときに,これらの資産はどうなるのであろうか。中国が,莫大な資金の償還を要求することになるのだろうか。しかし中国は,少なくとも20年は軍事政権が続く,と読まなければ,これだけの投資は出来ないだろう。
(注) (11) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081101A.htmm,(12) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081117C.htm,(13) http://www.irrawaddy.org/,(14) Ramree Island,(15) Kyaukphyu,(16) Arakan coast,(17) Strait of Malacca,(18) China National Petroleum Corp,(19) Arakan atate,(20) Shan state,(21) Wong Aung, coordinator of the Shwe Gas Movement,(22) Daewoo International,(23) Shwe Gas Project,(24) Matthew F Smith of the US-based EarthRights International,(25) Organization for Economic Cooperation and Development,(26) regional energy industries analyst-consultant Sar Watana,(27) Myanmar Oil and Gas Enterprise,(28) energy consultant Collin Reynolds in Bangkok,(2) Yunnan Machinery and Equipment Import and Export Co,(30) Farsighted Investment Group Co,(31) Gold Water Resources Limited,(32) China Power Investment Corporation,(33) First Myanmar Investment,(34) Ministry of Industry (2),(35) South Dagon Industrial Zone in Rangoon,(36)
●中国の電力分野,2000~2008年,報告書刊行
2008年11発8日付本欄(注36)では,2008年の年次報告書が刊行されている。今回は,2000~2008年の9年間の電力投資に関する報告書(注37)と考えられる。2007年末時点の設備出力は,713,000MWである。2008年は順調で,電力需要は年率13%の伸びが続く。しかし,小規模老朽発電所の閉鎖や投資の抑制で,2008年の設備の伸びは,11.8%に止まるだろう。
将来10年間の電力産業は,工業化と都市化が進んで,年率平均6.6~7.0%の伸びを続け,それに見合う投資が必要だ。投資の方向は,水力,風力,原子力の伸びが期待されるが,やはり石炭火力への投資の第一位を占める。この構造はしばらく長く続くだろう。現在の発電量は,水力が13.88%,原子力が1.94%,風力が0.26%に対して,石炭火力は78%を占めていて,70%まで下がる2020年までは同じ傾向だろう。
これらの電源の投資を分析すると,資産負債比(注38)はこれらの電源で変わりはないが,全出力に対するコスト比と便益比では,水力と原子力が全平均より優れている。特に原子力の便益比(注39)は30%を示し,石炭火力の30%,全平均の10%に比べて,かなり高い。この報告書(注37)は,上場の56の電力企業の,2000~2008年の投資実績を分析したもので,中国電力産業全体の傾向と投資の特徴を分析している。
投資額について言えば,広東省(注40),15.33%,内モンゴル自治区(注41),13.84%,上海(注42)10.53%,で,これに四川省(注43),北京(注44)が続く。電源種別では,火力が,2163.8億元,水力が,977.3億元,熱電共同(注45)が,485.8億元であり,これにガス探査と石炭鉱山探査への投資が続く。この報告書では,56の上場企業が調査の対象となったが,例として,広東電力開発公司(注46)を見て見ると,年間の投資額が,15~25億元の間である。
また,広東電力開発公司(注46)は,金融業(注47,48)にも進出している。また,風力発電の進展に伴い,シベイシャン風力プロジェクト(注49),100MWに30%出資して,既に発電を開始している。また,風力発電プロジェクト調査を,広東省(注40)の湛江(注50)で開始している。
(注) (36) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081108C.htm,(37) Investment Report of China Electric Power Industry 2000 to 2008,(38) asset-liability ratio,(39) ratio of profit to gross output value,(40) Guangdong province,(41) Inner Mongolia Autonomous Region,(42) Shanghai,(43) Sichuan,(44) Beijing,(45) thermoelectricity,(46) Guangdong Electric Power Development Co., Ltd.,(47) Guangdong Yuedian Finance Co. Ltd.,(48) Sunshine Insurance Group Corp. Ltd.,(49) Shibeishan Wind Power Project,(50) Zhanjiang,(51)
●中国の怒川のダム開発,グリーンビート
サルウイーン河(注52)上流,中国領内の怒川(注53)の13のダム計画については,既に各所で報告されているが,この記事でビデオがユーチューブ(注54)で公開されている。グリーンビート(注51)が撮影したものだ。余り写真は良くないが,初めて見る怒川(注53)の光景である。是非とも見て下さい(注55)。中国にもこのようなグリーンビート(注51)と言う環境団体があるのだ。控えめながら,怒川(注53)のダム開発に於ける環境被害を心配している。
2004年,中国でもっとも生物多様性の高い怒川(注53)で,13のダム計画が発表された。全部のダムの発電出力は,三峡ダムの発電をこすもので,この電力は中国南西部で消費される計画である。2004年に,温家宝首相(注56)が,環境団体や外国の声で,一時中断の決定を行った。2005年の後半にいたって,幾つかの規模を小さくしたプロジェクトが提案され,これがダム建設の始まりを意味した。環境に悪影響を与えるであろうダム建設以外で,この地域に電力をもたらすことは考えられない。
雲南省の怒川(注53)の情報は,「中国河川プロジェクト(注58)」,に詳しい。怒川(注53)の全長は3,059km,水源は,キンハイ-チベット高原(注59)のタングラ山(注60)に発し,インド洋の北東端に流れ込む。このうち約700kmは,「東洋のグランドキャニオン(注61)」,と呼ばれる峡谷をなす。流れは,ガオリゴン山(注62)に当たって西に方向を変え,ビルオ雪山(注63)とメイリ雪山(注64)で東に変わるが,その間,4,500mの深さの渓谷をなしている。
怒川(注53)は,中国の雲南省を流れ下って,ミャンマー東部に入り,サルウイーン河(注52)と呼ばれる。サルウイーン河(注52)はところにより,タイとミャンマーの国境をなしながら,最後はカイン州(注65)のアンダマン海(注66)に注ぐ。13のダム計画で少数民族の多数の部落が水没するが,自然及び社会的環境への影響が懸念されている。
(注) (51) Green Beat,(52) Salween River,(53) Nu River,(54) Tou Tube,(55) http://www.chinasgreenbeat.com/blog/,(56) Wen Jiabao,(58) China River Project,(59) Qinghai-Tibet plateau,(60) Tangula Mountain,(61) “Grand Canyon of the East.”,(62) Gao Li Gong Shan,(63) Bi Luo Snow Mountain,(64) Mei Li Snow Mountain Range,(65) Kayin State,(66) Andaman Sea,(67)
Reference
Vietnam
●081122A Vietnam, psnews
最近のベトナムのダム批判は,どうしたことか
Rare Criticism of Dams Surface
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44797
Myanmar
●081122B Myanmar, irrawaddy
中国が,ミャンマーを原油の中継基地として使おうとしている
China’s Burma Oil Conduit an ‘Abuse Threat’
http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=14673
India
●081122C India, pump-zone
インドの2012年までの電源開発目標は,92,000MW
India Targeting 92,000-MW Power Addition by 2012
http://www.pump-zone.com/global-news/global-news/india-targeting-92000-mw-power-addition-by-2012.html
Indonesia
●081122D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの石炭株暴落,石炭価格の暴落の影響
Power of the future despite looking black now
http://www.thejakartapost.com/news/2008/11/21/coal-power-future-despite-looking-black-now.html
China
●081122E China, companiesandmarkets
中国の電力分野,2000~2008年,報告書刊行
Investment Report of China Electric Power Industry 2000 to 2008
http://www.live-pr.com/en/investment-report-of-china-electric-power-r1048231550.htm
●081122F China, chinadigitaltimes
中国の怒川のダム開発,グリーンビート
Hydropower on the Nu River
http://chinadigitaltimes.net/2008/11/hydropower-on-the-nu-river/
2008年11月22日土曜日
中国雲南省がコルカタ訪問
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
天野山の測量作業で帰りが遅くなって,更新が一日遅れになってしまいました。また今日は,フィリッピンのオッサンに梅田まで引っ張り出されて,更に遅れてしまった。土曜日の梅田は,大変な賑わいである。紀伊国屋の店頭,新刊図書には,オバマ大統領候補に関する書籍が並んでいた。伝記などは,他の大統領より,相当面白いのではないか,と思いますね。自分で犬に例えて,雑種だ,と,ちょっとはずれると大騒動になりそうな微妙な発言をしていたから。
梅田阪急の大きなテレビ画面に眼が行くと,GM幹部の専用機が,何処そこまで行くにの,乗り合い飛行機であれば8万円で行くのに,自家用ジェットを飛ばすから190万円かかっている,その飛行機を売り飛ばさなければ支援をしない,とか,一部の取締役が破産を検討している,破産をしなければ,政府の資金注入の法案が,議会が通ることは困難だ,と言っている。日本の銀行への公的資金の注入のときには,どの程度の罰則があったのか,もう国民は全部忘れてしまったようだ。
自動車産業が,衰退の方向に行くのかどうか。一昨日夜,昨日の測量作業とか,電力の旧友達が集まっていたので,自動車産業の行く先,電気自動車なのか,燃料電池なのか,いずれにしても電力に帰ってくる,と言う話をしていて,電気自動車で全部,電力に跳ね返ったらKWは幾らになるのか,目算していた。調べてみると約8,000万台ですね。一つ1KWとすると,8,,000万KW,でかい。と思ったけれど,自動車の熱効率は一桁台%らしいですね。電気的な損失は少ないから,全部電気自動車に変わっても,2,000万KWも自動車に当てれば十分ではないか。自動車産業って案外小さいエネルギーのシェアーですね。
さて,中国雲南省からインド東部へ使節団。コルカタ(注1)はインドの東部である。コルカタ(注1)の北にはアサム(注2)があり,その東北,アルンチャルプラデシュ(注3)州があって,中国と国境を接しているが,国境線は不確定である。アルンチャルプラデシュ(注3)州に中国の戦車と見まがうブルドーザーが押し寄せてきて,水力発電所を造り居座る,という悪夢を見るインドの高官達は,夜も眠れないのではないか,と言うのは,私の推測である。日本はインパールに達せず退却したが,中国はミャンマーの北部に水力の礎を築き,インパールを通過して,インド東部の首都,コルカタ(注1)に入ってきた。
中国雲南省(注4)の商業使節団は,インドの水力をBOT方式(注7)で開発したと思っている,勿論,このような水力プロジェクトへの機器供給にも関心を持っている,と語っている。その他,雲南省(注4)の特産品であるお茶や煙草についても言及している。インドのブディア商工会議所会頭(注6)は,通商のための雲南コルカタ回廊(注8)の構築して,すべての分野で国際レベルの交流を図りたい,と答えている。
具体的な水力開発にまで話が及ばなかったようだが,インドにとって,中国に水力プロジェクトののBOTを渡す有利性があるかどうか。あるとすれば資金調達面と言うことになる。インドとして,これからアルンチャルプラデシュ(注3)州の水力開発を進めることになっているが,大規模なプロジェクトは国際入札で進める必要がある。このとき当然,中国企業も参加してくる可能性は高い。国境未確定区域での中国のブルドーザーは,印d高官の夢の中では,砲塔を高く掲げた戦車に見えるに違いない。
本文
●インド,中国雲南省調査団,コルカタで,通商協議
コルカタ(注1)はインドの東部である。コルカタ(注1)の北にはアサム(注2)があり,その東北,アルンチャルプラデシュ(注3)州があって,中国と国境を接しているが,国境線は不確定である。アルンチャルプラデシュ(注3)州に中国の戦車と見まがうブルドーザーが押し寄せてきて,水力発電所を造り居座る,という悪夢を見るインドの高官達は,夜も眠れないのではないか,と言うのは,私の推測である。日本はインパールに達せず退却したが,中国はミャンマーの北部に水力の礎を築き,インパールを通過して,インド東部の首都,コルカタ(注1)に入ってきた。
2008年11月19日,水曜日,インドのコルカタ(注1)に現れたのは,中国雲南省(注4)の商業使節団で,率いるのは,中国海外通商委員会CCPITのリジアショウ委員長(注5)である。この中国雲南省(注4)の商業使節団は,水力開発とインフラのプロジェクトに関心を示しているという。やはりブルドーザーの世界である。CCPITのリジアショウ委員長(注5)は,インドのブディア商工会議所会頭(注6)と,合意書に署名した後,会見。
中国雲南省(注4)の商業使節団は,インドの水力をBOT方式(注7)で開発したと思っている,勿論,このような水力プロジェクトへの機器供給にも関心を持っている,と語っている。その他,雲南省(注4)の特産品であるお茶や煙草についても言及している。インドのブディア商工会議所会頭(注6)は,通商のための雲南コルカタ回廊(注8)の構築して,すべての分野で国際レベルの交流を図りたい,と答えている。
具体的な水力開発にまで話が及ばなかったようだが,インドにとって,中国に水力プロジェクトののBOTを渡す有利性があるかどうか。あるとすれば資金調達面と言うことになる。インドとして,これからアルンチャルプラデシュ(注3)州の水力開発を進めることになっているが,大規模なプロジェクトは国際入札で進める必要がある。このとき当然,中国企業も参加してくる可能性は高い。国境未確定区域での中国のブルドーザーは,印d高官の夢の中では,砲塔を高く掲げた戦車に見えるに違いない。
(注) (1) Kolkata,(2) Assam,(3) Arnachal Pradesh,(4) Yunnan,(5) Li Jiashou, leader of the China Council for the Promotion of International Trade (CCPIT),(6) Indian Chamber of Commerce and Industry President Sanjay Budhia,(7) build-operate-transfer (BOT),(8) Kunming-Kolkata Economic Corridor,(9)
●フィリッピン,4つの大企業,マニラ配電の需要供給下に
マニラ電力Meralco(注9)は,ルソン系統(注10)の需要の7割を占めているが,電力改革によるオープンアクセスの原則によって,需要家がMeralco(注9)から離れていくことに神経質になっている。それでなくても,過去の電力料金徴収の不合理を追求されたり,最近では,サンミゲール社による株式取得などで,大いに揺れている。一方で,確実に伸びる需要と売り上げで,相変わらず,解体されて行く電力事業体の中でも,その存在は大きくなってきている。
マニラ電力Meralco(注9)の内部資料によると,少なくとも4つの製造企業が,再びMeralco(注9)の供給下に帰ってくることが期待されている。それは,共和セメント(注11),TDK(注12),共和アサヒ(注13),ウイット(注14)で,これらに対しては消費者選択プログラム(注17)が適用されて,国家電力NPC(注17)の低い時間制料金(注15)が適用される。この消費者選択プログラム(注17)は,自家発電が出来るだけMeralco(注9)から電力を買うように準備されたものである。既に13企業が加入して,その需要は52MWに達している。
現在,燃料費の価格の下げなどの影響で,国家電力NPC(注17)の卸売り料金が下げており,昨年9月の料金KWh当たり4.92ルピーであったものが,2008年9月時点で3.56ルピーとなっている。それはERC(注18)が,KWh当たり0.71ルピーのの消費者への返還を求めたことにもよる。
(注) (9) Manila Electric Company (Meralco),(10) Luzon grid,(11) Republic Cement,(12) TDK,(13) Republic Asahi,(14) Wyeth,(15) time-of-use rate,(16) National Power Corporation (NPC),(17) Customer Choice Program (CCP),(18) Energy Regulation Commission,(19)
Reference
Philippines
●081120A Philippines, Manila Bulletin
4つの企業,マニラ配電の需要供給下に
4 industrial firms shifting to Meralco
http://www.mb.com.ph/BSNS20081120141409.html
India
●081120B India, siliconindia
中国雲南省調査団,コルカタで,通商協議
Chinese team interested in hydropower, infrastructure projects in India
http://www.siliconindia.com/shownews/49001
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
天野山の測量作業で帰りが遅くなって,更新が一日遅れになってしまいました。また今日は,フィリッピンのオッサンに梅田まで引っ張り出されて,更に遅れてしまった。土曜日の梅田は,大変な賑わいである。紀伊国屋の店頭,新刊図書には,オバマ大統領候補に関する書籍が並んでいた。伝記などは,他の大統領より,相当面白いのではないか,と思いますね。自分で犬に例えて,雑種だ,と,ちょっとはずれると大騒動になりそうな微妙な発言をしていたから。
梅田阪急の大きなテレビ画面に眼が行くと,GM幹部の専用機が,何処そこまで行くにの,乗り合い飛行機であれば8万円で行くのに,自家用ジェットを飛ばすから190万円かかっている,その飛行機を売り飛ばさなければ支援をしない,とか,一部の取締役が破産を検討している,破産をしなければ,政府の資金注入の法案が,議会が通ることは困難だ,と言っている。日本の銀行への公的資金の注入のときには,どの程度の罰則があったのか,もう国民は全部忘れてしまったようだ。
自動車産業が,衰退の方向に行くのかどうか。一昨日夜,昨日の測量作業とか,電力の旧友達が集まっていたので,自動車産業の行く先,電気自動車なのか,燃料電池なのか,いずれにしても電力に帰ってくる,と言う話をしていて,電気自動車で全部,電力に跳ね返ったらKWは幾らになるのか,目算していた。調べてみると約8,000万台ですね。一つ1KWとすると,8,,000万KW,でかい。と思ったけれど,自動車の熱効率は一桁台%らしいですね。電気的な損失は少ないから,全部電気自動車に変わっても,2,000万KWも自動車に当てれば十分ではないか。自動車産業って案外小さいエネルギーのシェアーですね。
さて,中国雲南省からインド東部へ使節団。コルカタ(注1)はインドの東部である。コルカタ(注1)の北にはアサム(注2)があり,その東北,アルンチャルプラデシュ(注3)州があって,中国と国境を接しているが,国境線は不確定である。アルンチャルプラデシュ(注3)州に中国の戦車と見まがうブルドーザーが押し寄せてきて,水力発電所を造り居座る,という悪夢を見るインドの高官達は,夜も眠れないのではないか,と言うのは,私の推測である。日本はインパールに達せず退却したが,中国はミャンマーの北部に水力の礎を築き,インパールを通過して,インド東部の首都,コルカタ(注1)に入ってきた。
中国雲南省(注4)の商業使節団は,インドの水力をBOT方式(注7)で開発したと思っている,勿論,このような水力プロジェクトへの機器供給にも関心を持っている,と語っている。その他,雲南省(注4)の特産品であるお茶や煙草についても言及している。インドのブディア商工会議所会頭(注6)は,通商のための雲南コルカタ回廊(注8)の構築して,すべての分野で国際レベルの交流を図りたい,と答えている。
具体的な水力開発にまで話が及ばなかったようだが,インドにとって,中国に水力プロジェクトののBOTを渡す有利性があるかどうか。あるとすれば資金調達面と言うことになる。インドとして,これからアルンチャルプラデシュ(注3)州の水力開発を進めることになっているが,大規模なプロジェクトは国際入札で進める必要がある。このとき当然,中国企業も参加してくる可能性は高い。国境未確定区域での中国のブルドーザーは,印d高官の夢の中では,砲塔を高く掲げた戦車に見えるに違いない。
本文
●インド,中国雲南省調査団,コルカタで,通商協議
コルカタ(注1)はインドの東部である。コルカタ(注1)の北にはアサム(注2)があり,その東北,アルンチャルプラデシュ(注3)州があって,中国と国境を接しているが,国境線は不確定である。アルンチャルプラデシュ(注3)州に中国の戦車と見まがうブルドーザーが押し寄せてきて,水力発電所を造り居座る,という悪夢を見るインドの高官達は,夜も眠れないのではないか,と言うのは,私の推測である。日本はインパールに達せず退却したが,中国はミャンマーの北部に水力の礎を築き,インパールを通過して,インド東部の首都,コルカタ(注1)に入ってきた。
2008年11月19日,水曜日,インドのコルカタ(注1)に現れたのは,中国雲南省(注4)の商業使節団で,率いるのは,中国海外通商委員会CCPITのリジアショウ委員長(注5)である。この中国雲南省(注4)の商業使節団は,水力開発とインフラのプロジェクトに関心を示しているという。やはりブルドーザーの世界である。CCPITのリジアショウ委員長(注5)は,インドのブディア商工会議所会頭(注6)と,合意書に署名した後,会見。
中国雲南省(注4)の商業使節団は,インドの水力をBOT方式(注7)で開発したと思っている,勿論,このような水力プロジェクトへの機器供給にも関心を持っている,と語っている。その他,雲南省(注4)の特産品であるお茶や煙草についても言及している。インドのブディア商工会議所会頭(注6)は,通商のための雲南コルカタ回廊(注8)の構築して,すべての分野で国際レベルの交流を図りたい,と答えている。
具体的な水力開発にまで話が及ばなかったようだが,インドにとって,中国に水力プロジェクトののBOTを渡す有利性があるかどうか。あるとすれば資金調達面と言うことになる。インドとして,これからアルンチャルプラデシュ(注3)州の水力開発を進めることになっているが,大規模なプロジェクトは国際入札で進める必要がある。このとき当然,中国企業も参加してくる可能性は高い。国境未確定区域での中国のブルドーザーは,印d高官の夢の中では,砲塔を高く掲げた戦車に見えるに違いない。
(注) (1) Kolkata,(2) Assam,(3) Arnachal Pradesh,(4) Yunnan,(5) Li Jiashou, leader of the China Council for the Promotion of International Trade (CCPIT),(6) Indian Chamber of Commerce and Industry President Sanjay Budhia,(7) build-operate-transfer (BOT),(8) Kunming-Kolkata Economic Corridor,(9)
●フィリッピン,4つの大企業,マニラ配電の需要供給下に
マニラ電力Meralco(注9)は,ルソン系統(注10)の需要の7割を占めているが,電力改革によるオープンアクセスの原則によって,需要家がMeralco(注9)から離れていくことに神経質になっている。それでなくても,過去の電力料金徴収の不合理を追求されたり,最近では,サンミゲール社による株式取得などで,大いに揺れている。一方で,確実に伸びる需要と売り上げで,相変わらず,解体されて行く電力事業体の中でも,その存在は大きくなってきている。
マニラ電力Meralco(注9)の内部資料によると,少なくとも4つの製造企業が,再びMeralco(注9)の供給下に帰ってくることが期待されている。それは,共和セメント(注11),TDK(注12),共和アサヒ(注13),ウイット(注14)で,これらに対しては消費者選択プログラム(注17)が適用されて,国家電力NPC(注17)の低い時間制料金(注15)が適用される。この消費者選択プログラム(注17)は,自家発電が出来るだけMeralco(注9)から電力を買うように準備されたものである。既に13企業が加入して,その需要は52MWに達している。
現在,燃料費の価格の下げなどの影響で,国家電力NPC(注17)の卸売り料金が下げており,昨年9月の料金KWh当たり4.92ルピーであったものが,2008年9月時点で3.56ルピーとなっている。それはERC(注18)が,KWh当たり0.71ルピーのの消費者への返還を求めたことにもよる。
(注) (9) Manila Electric Company (Meralco),(10) Luzon grid,(11) Republic Cement,(12) TDK,(13) Republic Asahi,(14) Wyeth,(15) time-of-use rate,(16) National Power Corporation (NPC),(17) Customer Choice Program (CCP),(18) Energy Regulation Commission,(19)
Reference
Philippines
●081120A Philippines, Manila Bulletin
4つの企業,マニラ配電の需要供給下に
4 industrial firms shifting to Meralco
http://www.mb.com.ph/BSNS20081120141409.html
India
●081120B India, siliconindia
中国雲南省調査団,コルカタで,通商協議
Chinese team interested in hydropower, infrastructure projects in India
http://www.siliconindia.com/shownews/49001
2008年11月20日木曜日
ラオス南部のダムでカンボジア苦境
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
金融危機のG20会議が終わって,麻生首相もAPEC会議でペルーに向かう。世界の視点が南米に向く中,中国の胡錦濤(フー・チン・タオ)国家主席主席も,コスタリカ,キューバと立ち寄って,ペルーに入る。コスタリカは,最近になって台湾と国交断絶した経緯と,キューバは旧来の友好国であるが,ニッケルの資源狙いもあるという。インドはAPECに入っていない。
明日は天野山で,旧友達と測量作業の約束で,更新が遅れる。先日の測量はまさに絶好の秋日和であったが,春とか秋でこのような週は本当に一回しかないような気がする。もう明日は冬の寒い日の測量になってしまう。秋や春の絶好の一週間を捕まえて測量が出来たときは,本当に人生得をしたような気になる。今年はもう北の故郷,但馬は雪に埋もれていそうだ。車にチェーンを積んでいるが,最近は一度も履いたことがない,もう面倒くさくて,それもスノータイヤを履くほど,山には行かない。木曽では30cmぐらいの新雪でも,何のためらいもなく走っていたのに。
寒い話から,熱いラオスの南の話。コーンの滝の発電への利用は,随分昔から話し合われていた。当時は,この国境地帯に観光を中心としたカジノを造る計画があって,そこに100MWぐらいの流れ込み式の発電所を,と言う話があった。それからも,時々,どうですかね,と言う話はあったが,図面を見せて貰うと,コーンの滝は,一本の流れではなくて,無数の支流に分かれて,滝に注ぎ込んでいる。
今日のプノンペンポストは,ラオスが進めるドンサホン水力(注6)が話題の中心。240~360MW規模で考えられているらしい。問題にしているのは,国際環境グループIR(注3)などの環境NGOであるが,今回の取り上げ方は,従来と少し異なって,プロジェクトの影響そのものよりは,カンボジア政府やラオス政府の行動に対する批判で,最後は厳しくメコン河委員会事務局(注1)の姿勢をついている。
それと,環境グループとしてはどうかと思うが,カンボジア側に何の便益のないことを,反対の理由に挙げている。環境グループというのは,普通はこういう言い方をしない。あくまで河川環境への影響を問題にする。ところが今回は,カンボジア政府は何をしているのか,と言う論調の中に,カンボジアにはメリットがないプロジェクトだから,反対すべきだ,というようなニュアンスで,違和感を感ずる箇所がある。
厳しくメコン河委員会事務局(注1)の姿勢をついている点は,まさにその通りであるが,周囲の関係者,環境グループも含めて,メコン河委員会事務局(注1)の役割を過小に評価してきた付けが回ってきた感じである。事務局長は,いつでも加盟国によって首をすげ替えられるし,中国が行動を起こしても,加盟国に入っていないから何も出来ない。メコン河委員会事務局(注1)に同情を禁じ得ない。
今更,あなたの責任だ,と言ってみても解決できない。一時は,メコン委員会も環境NGOの一つ,と勘違いしかねない場面もあった。面白いのは,ワシントンのクロニン氏(注18)が,MRC(注1)が各国代表を集めて調整に当たるべきだが,カンボジアとラオスの問題については,中国政府が調整の役を果たす考え方もある,もし誰も出来なければ,その方法しかないであろう,と。そこまで言うか,と言う感じではある。
今日はこの他,重要なニュースがあり,インドの国有企業のBHEL(注21)は,仏アレバ電力(注23)のインドの子会社であるアレバインド(注22)と,原子炉の製造で合弁企業を立ち上げる。また北京レビューが中国内陸部への外国資本の進出を説いている。インドのヒマチャルプラデシュでは,州の立場として流れ込み式の水力のみに限定する,と言っている。ベトナムは,主要な水力開発終了宣言である。
本文
●ラオスの南のダムは,環境フォーラム,下流に被害
ライスのダム開発が,だんだんと南,下流に進んで来るに従って,カンボジア界隈がうるさくなってきた。ラオスの北の山の中のメコン流では,カンボジアも何も言わなかったが,眼の前に迫ってくると,言わざるを得ないと言うことか。北からはラオスの開発,東からはベトナムの開発,とカンボジアをどんどん取り囲んでくる。しかし,カンボジア政府は静かである。批判しているのは,環境グループだ。しかも矛先はメコン河委員会事務局(注1)に向けられてきた。
プノンペンポストの長文の記事である。2008年11月15日(注2)で解説したバンコクの環境フォーラムの流れであろう。ラオス南部で開発されるラオスのダムが,カンボジアには何の利益ももたらさないのに,影響は大きいが,メコン河を制御する国際的な力が全く働いていない。国際環境グループIR(注3)は,2008年9月に出した報告書(注4)で,この問題を論じている。
特に問題にしているのは,600MW,セコン第4水力(注5)と,240~360MW,ドンサホン水力(注6)である。ドンサホン水力(注6)は,国境のコーンの滝(注7)の近くで,漁業に大きな影響をもたらすだろう。また他のダムで,下流の漁業に影響のあるプロジェクトとして,セコン第5水力(8),ナムコン第1水力(注9)を挙げている。
IR(注3)の報告書(注4)の矛先は,ラオスとカンボジアの政府の調整機能が働いていないことに向けられている。カンボジアNGOのギサン(注10)によると,ドンサホン水力(注6)について,カンボジア政府は,ラオス政府から何も通知を受けていないと言い張っている。いずれにしても,国境プロジェクトで,両国政府間の調整がない,と言うのはおかしい,と言っている。
また,1993年に完成したベトナム,セサン川(注11)のヤリフォール水力(注12)について,ラッタナキリ県(注13)のネットワーク(注14)は,ベトナムのダム計画は設計が悪くまた周辺との話し合いを行っていない,と批判している。特に,メコン河委員会事務局(注1)が,調整に役割を何も果たしていない,と嘆いている。
1995年に成立したメコン下流4カ国によりメコン合意(注15)は,各国が協力して,建設的で互いに便益を共有する手法で,メコン河の持続的な開発,,水利用,運用を行う,ことを約束している(注16)。しかしながら,メコン河委員会事務局(注1)は全く何もしていない。特にIR(注3)のミドルトン氏(注17)は,全くメコン河委員会事務局(注1)が調整の機能を果たしていない,と断じている。
ドンサホン水力(注6)の問題については面白い発言がある。ワシントンのクロニン氏(注18)は,MRC(注1)が各国代表を集めて調整に当たるべきだが,カンボジアとラオスの問題については,中国政府が調整に役を果たす考え方もある,もし誰も出来なければ,その方法しかないであろう,と。そこまで言うか,と言う感じではある。
(注) (1) Mekong River Commission,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081115D.htm,(3) International Rivers,(4) Impacts of Rapid Dam Development in Laos,(5) Sekong 4 dam,(6) Don Sahong (240-360mw) project,(7) Khone Falls,(8) Sekong 5,(9) Nam Kong 1,(10) Ngy San, deputy executive director of the NGO Forum on Cambodia,(11) Sesan river,(12) Yali Falls dam,(13) Ratanakkiri province,(14) Sesan-Srepok-Sekong (3S) Protection Network,(15) Mekong Agreement,(16) "promote in a constructive and mutually beneficial manner the sustainable development, utilisation, conservation and management of the Mekong River Basin",(17) Carl Middleton, Mekong program coordinator for International Rivers,(18) Richard Cronin, head of the Southeast Asia program at the Henry L Stimson Centre in Washington, DC,(19)
●インド,重電メーカーBHEL,原子力開発で,仏のアレバと技術提携
インドの原子力開発について,企業の動きが激しくなってきた。米国が経済ミッションを送り込む(注1)など,米国とフランス,更にはロシアなどが動いており,日本メーカーは,それぞれの合弁でその組み合わせの中に入って行くのだろう。今日は,具体的な動きがあった。それも副大臣ラメッシュ(注20)による発表であるから,彼の采配の感じもする。
国有企業のBHEL(注21)は,仏アレバ電力(注23)のインドの子会社であるアレバインド(注22)と,原子炉の製造で合弁企業を立ち上げるべく,協議中である。副大臣ラメッシュ(注20)によると,施設はフィンランドに造成されるという。BHEL(注21)は26%の株式を持つことになろう。この合弁会社は,欧州型加圧水炉(注24)で目指すサイズは1,600MWである。
(注) (19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081016A.htm,(20) Minister of State for Power Jairam Ramesh,(21) State-run Bharat Heavy Electricals Ltd,(22) Areva T&D India,(23) French Areva Power,(24) European Pressurised Reactors (EPR),(25)
●北京レビュー,外国資本は,これから内陸への投資を
北京レビューは,現在外国資本が,海港から遠いために手を拱いている中国中部の各省への投資の拡大を呼びかけている。その中には,電力の開発も含まれている。各省が示す発展へのロードマップがあるが,それらの各省とは,安徽省,河南省, 河北省,湖南省,江西省である。
いずれも,中国中部には,製造業の巨大な推進力があり,安価な労働力と低廉な土地価格,それに各省の推進重視の政策によって,プロジェクトや投資事業や経営事業などで,ビジネスは内陸部に向かっている。外国資本は,今や内陸部に目を向けており,また,大小の都市の連なる大消費地のポテンシャルも持っている。各省の内情を,概略説明している。
Reference
Vietnam
●081119A Vietnam, vnbusinessnews
EVN,主要な水力プロジェクトは,2008年内に終了
Major power projects almost done
http://www.vnbusinessnews.com/2008/11/major-power-projects-almost-done.html
Pakistan
●081119B Pakistan, thepost
パキスタン政府,代替エネルギー開発で,オースリーと協力
Govt to get Austrian expertise in alternative energy projects
http://thepost.com.pk/BizNewsT.aspx?dtlid=192794&catid=7
●081119C Pakistan, regionaltimes
経済省,パキスタンの水力投資は,外資に絶好の機会
‘Hydropower projects offer sound investment opportunities’
http://regionaltimes.com/18nov2008/moneynews/hydro.htm
Malaysia
●081119D Malaysia, thestar
TBN,フルテネンガルに,250MW水力を,2013年までに
TNB to build another hydroelectric plant in Terengganu
http://thestar.com.my/news/story.asp?file=/2008/11/18/nation/20081118170742&sec=nation
Laos
●081119E Laos, phnompenhpost
環境フォーラム,ラオスの南のダムは,下流に濁水被害
Lao dams muddying the waters
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008111822733/National-news/Lao-dams-muddying-the-waters.html
India
●081119F India, siliconindia
ヒマチャルプラデシュ,水力は流れ込み式のみ,環境考慮
Himachal Pradesh favours agency to develop Himalayan states
http://www.siliconindia.com/shownews/48944
●081119G India, Economic Times
重電メーカーBHEL,原子力開発で,仏のアレバと技術提携
BHEL, Areva T&D to form JV for manufacturing nuclear reactors
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/BHEL_Areva_TD_to_form_JV_for_manufacturing_nuclear_reactors/articleshow/3719168.cms
China
●081119H China, .bjreview
北京レビュー,外国資本は,これから内陸への投資を
Multinationals Move Inland
http://www.bjreview.com.cn/business/txt/2008-11/18/content_165130.htm
Cambodia
●081119I Cambodia, phnompenhpost
フンセン首相,嵐のため,カムチャイ水力の式典参加せず
PM cancels Kampot trip, citing storm fears
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008111822734/National-news/PM-cancels-Kampot-trip-citing-storm-fears.html
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
金融危機のG20会議が終わって,麻生首相もAPEC会議でペルーに向かう。世界の視点が南米に向く中,中国の胡錦濤(フー・チン・タオ)国家主席主席も,コスタリカ,キューバと立ち寄って,ペルーに入る。コスタリカは,最近になって台湾と国交断絶した経緯と,キューバは旧来の友好国であるが,ニッケルの資源狙いもあるという。インドはAPECに入っていない。
明日は天野山で,旧友達と測量作業の約束で,更新が遅れる。先日の測量はまさに絶好の秋日和であったが,春とか秋でこのような週は本当に一回しかないような気がする。もう明日は冬の寒い日の測量になってしまう。秋や春の絶好の一週間を捕まえて測量が出来たときは,本当に人生得をしたような気になる。今年はもう北の故郷,但馬は雪に埋もれていそうだ。車にチェーンを積んでいるが,最近は一度も履いたことがない,もう面倒くさくて,それもスノータイヤを履くほど,山には行かない。木曽では30cmぐらいの新雪でも,何のためらいもなく走っていたのに。
寒い話から,熱いラオスの南の話。コーンの滝の発電への利用は,随分昔から話し合われていた。当時は,この国境地帯に観光を中心としたカジノを造る計画があって,そこに100MWぐらいの流れ込み式の発電所を,と言う話があった。それからも,時々,どうですかね,と言う話はあったが,図面を見せて貰うと,コーンの滝は,一本の流れではなくて,無数の支流に分かれて,滝に注ぎ込んでいる。
今日のプノンペンポストは,ラオスが進めるドンサホン水力(注6)が話題の中心。240~360MW規模で考えられているらしい。問題にしているのは,国際環境グループIR(注3)などの環境NGOであるが,今回の取り上げ方は,従来と少し異なって,プロジェクトの影響そのものよりは,カンボジア政府やラオス政府の行動に対する批判で,最後は厳しくメコン河委員会事務局(注1)の姿勢をついている。
それと,環境グループとしてはどうかと思うが,カンボジア側に何の便益のないことを,反対の理由に挙げている。環境グループというのは,普通はこういう言い方をしない。あくまで河川環境への影響を問題にする。ところが今回は,カンボジア政府は何をしているのか,と言う論調の中に,カンボジアにはメリットがないプロジェクトだから,反対すべきだ,というようなニュアンスで,違和感を感ずる箇所がある。
厳しくメコン河委員会事務局(注1)の姿勢をついている点は,まさにその通りであるが,周囲の関係者,環境グループも含めて,メコン河委員会事務局(注1)の役割を過小に評価してきた付けが回ってきた感じである。事務局長は,いつでも加盟国によって首をすげ替えられるし,中国が行動を起こしても,加盟国に入っていないから何も出来ない。メコン河委員会事務局(注1)に同情を禁じ得ない。
今更,あなたの責任だ,と言ってみても解決できない。一時は,メコン委員会も環境NGOの一つ,と勘違いしかねない場面もあった。面白いのは,ワシントンのクロニン氏(注18)が,MRC(注1)が各国代表を集めて調整に当たるべきだが,カンボジアとラオスの問題については,中国政府が調整の役を果たす考え方もある,もし誰も出来なければ,その方法しかないであろう,と。そこまで言うか,と言う感じではある。
今日はこの他,重要なニュースがあり,インドの国有企業のBHEL(注21)は,仏アレバ電力(注23)のインドの子会社であるアレバインド(注22)と,原子炉の製造で合弁企業を立ち上げる。また北京レビューが中国内陸部への外国資本の進出を説いている。インドのヒマチャルプラデシュでは,州の立場として流れ込み式の水力のみに限定する,と言っている。ベトナムは,主要な水力開発終了宣言である。
本文
●ラオスの南のダムは,環境フォーラム,下流に被害
ライスのダム開発が,だんだんと南,下流に進んで来るに従って,カンボジア界隈がうるさくなってきた。ラオスの北の山の中のメコン流では,カンボジアも何も言わなかったが,眼の前に迫ってくると,言わざるを得ないと言うことか。北からはラオスの開発,東からはベトナムの開発,とカンボジアをどんどん取り囲んでくる。しかし,カンボジア政府は静かである。批判しているのは,環境グループだ。しかも矛先はメコン河委員会事務局(注1)に向けられてきた。
プノンペンポストの長文の記事である。2008年11月15日(注2)で解説したバンコクの環境フォーラムの流れであろう。ラオス南部で開発されるラオスのダムが,カンボジアには何の利益ももたらさないのに,影響は大きいが,メコン河を制御する国際的な力が全く働いていない。国際環境グループIR(注3)は,2008年9月に出した報告書(注4)で,この問題を論じている。
特に問題にしているのは,600MW,セコン第4水力(注5)と,240~360MW,ドンサホン水力(注6)である。ドンサホン水力(注6)は,国境のコーンの滝(注7)の近くで,漁業に大きな影響をもたらすだろう。また他のダムで,下流の漁業に影響のあるプロジェクトとして,セコン第5水力(8),ナムコン第1水力(注9)を挙げている。
IR(注3)の報告書(注4)の矛先は,ラオスとカンボジアの政府の調整機能が働いていないことに向けられている。カンボジアNGOのギサン(注10)によると,ドンサホン水力(注6)について,カンボジア政府は,ラオス政府から何も通知を受けていないと言い張っている。いずれにしても,国境プロジェクトで,両国政府間の調整がない,と言うのはおかしい,と言っている。
また,1993年に完成したベトナム,セサン川(注11)のヤリフォール水力(注12)について,ラッタナキリ県(注13)のネットワーク(注14)は,ベトナムのダム計画は設計が悪くまた周辺との話し合いを行っていない,と批判している。特に,メコン河委員会事務局(注1)が,調整に役割を何も果たしていない,と嘆いている。
1995年に成立したメコン下流4カ国によりメコン合意(注15)は,各国が協力して,建設的で互いに便益を共有する手法で,メコン河の持続的な開発,,水利用,運用を行う,ことを約束している(注16)。しかしながら,メコン河委員会事務局(注1)は全く何もしていない。特にIR(注3)のミドルトン氏(注17)は,全くメコン河委員会事務局(注1)が調整の機能を果たしていない,と断じている。
ドンサホン水力(注6)の問題については面白い発言がある。ワシントンのクロニン氏(注18)は,MRC(注1)が各国代表を集めて調整に当たるべきだが,カンボジアとラオスの問題については,中国政府が調整に役を果たす考え方もある,もし誰も出来なければ,その方法しかないであろう,と。そこまで言うか,と言う感じではある。
(注) (1) Mekong River Commission,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081115D.htm,(3) International Rivers,(4) Impacts of Rapid Dam Development in Laos,(5) Sekong 4 dam,(6) Don Sahong (240-360mw) project,(7) Khone Falls,(8) Sekong 5,(9) Nam Kong 1,(10) Ngy San, deputy executive director of the NGO Forum on Cambodia,(11) Sesan river,(12) Yali Falls dam,(13) Ratanakkiri province,(14) Sesan-Srepok-Sekong (3S) Protection Network,(15) Mekong Agreement,(16) "promote in a constructive and mutually beneficial manner the sustainable development, utilisation, conservation and management of the Mekong River Basin",(17) Carl Middleton, Mekong program coordinator for International Rivers,(18) Richard Cronin, head of the Southeast Asia program at the Henry L Stimson Centre in Washington, DC,(19)
●インド,重電メーカーBHEL,原子力開発で,仏のアレバと技術提携
インドの原子力開発について,企業の動きが激しくなってきた。米国が経済ミッションを送り込む(注1)など,米国とフランス,更にはロシアなどが動いており,日本メーカーは,それぞれの合弁でその組み合わせの中に入って行くのだろう。今日は,具体的な動きがあった。それも副大臣ラメッシュ(注20)による発表であるから,彼の采配の感じもする。
国有企業のBHEL(注21)は,仏アレバ電力(注23)のインドの子会社であるアレバインド(注22)と,原子炉の製造で合弁企業を立ち上げるべく,協議中である。副大臣ラメッシュ(注20)によると,施設はフィンランドに造成されるという。BHEL(注21)は26%の株式を持つことになろう。この合弁会社は,欧州型加圧水炉(注24)で目指すサイズは1,600MWである。
(注) (19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081016A.htm,(20) Minister of State for Power Jairam Ramesh,(21) State-run Bharat Heavy Electricals Ltd,(22) Areva T&D India,(23) French Areva Power,(24) European Pressurised Reactors (EPR),(25)
●北京レビュー,外国資本は,これから内陸への投資を
北京レビューは,現在外国資本が,海港から遠いために手を拱いている中国中部の各省への投資の拡大を呼びかけている。その中には,電力の開発も含まれている。各省が示す発展へのロードマップがあるが,それらの各省とは,安徽省,河南省, 河北省,湖南省,江西省である。
いずれも,中国中部には,製造業の巨大な推進力があり,安価な労働力と低廉な土地価格,それに各省の推進重視の政策によって,プロジェクトや投資事業や経営事業などで,ビジネスは内陸部に向かっている。外国資本は,今や内陸部に目を向けており,また,大小の都市の連なる大消費地のポテンシャルも持っている。各省の内情を,概略説明している。
Reference
Vietnam
●081119A Vietnam, vnbusinessnews
EVN,主要な水力プロジェクトは,2008年内に終了
Major power projects almost done
http://www.vnbusinessnews.com/2008/11/major-power-projects-almost-done.html
Pakistan
●081119B Pakistan, thepost
パキスタン政府,代替エネルギー開発で,オースリーと協力
Govt to get Austrian expertise in alternative energy projects
http://thepost.com.pk/BizNewsT.aspx?dtlid=192794&catid=7
●081119C Pakistan, regionaltimes
経済省,パキスタンの水力投資は,外資に絶好の機会
‘Hydropower projects offer sound investment opportunities’
http://regionaltimes.com/18nov2008/moneynews/hydro.htm
Malaysia
●081119D Malaysia, thestar
TBN,フルテネンガルに,250MW水力を,2013年までに
TNB to build another hydroelectric plant in Terengganu
http://thestar.com.my/news/story.asp?file=/2008/11/18/nation/20081118170742&sec=nation
Laos
●081119E Laos, phnompenhpost
環境フォーラム,ラオスの南のダムは,下流に濁水被害
Lao dams muddying the waters
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008111822733/National-news/Lao-dams-muddying-the-waters.html
India
●081119F India, siliconindia
ヒマチャルプラデシュ,水力は流れ込み式のみ,環境考慮
Himachal Pradesh favours agency to develop Himalayan states
http://www.siliconindia.com/shownews/48944
●081119G India, Economic Times
重電メーカーBHEL,原子力開発で,仏のアレバと技術提携
BHEL, Areva T&D to form JV for manufacturing nuclear reactors
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/BHEL_Areva_TD_to_form_JV_for_manufacturing_nuclear_reactors/articleshow/3719168.cms
China
●081119H China, .bjreview
北京レビュー,外国資本は,これから内陸への投資を
Multinationals Move Inland
http://www.bjreview.com.cn/business/txt/2008-11/18/content_165130.htm
Cambodia
●081119I Cambodia, phnompenhpost
フンセン首相,嵐のため,カムチャイ水力の式典参加せず
PM cancels Kampot trip, citing storm fears
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2008111822734/National-news/PM-cancels-Kampot-trip-citing-storm-fears.html
2008年11月19日水曜日
パキスタンのダムになお異論
HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
オバマ次期米大統領の地球温暖化問題に関するビデオ演説が話題になっている。このHPのユーチューブにもまもなく出ると思われるが,「米国が精力的に交渉に参加し,国際協調の新しい時代へと世界を導いていくことを確約する。」,としている。彼のポイントは,「京都議定書に代わる2013年以降の新たな国際的枠組みの合意」,であって,京都議定書に参加とは一言も言っていない。
私も,地球温暖化の問題や再生可能エネルギー問題は,私の柄でもない,と思って無視してきたが,世界のエネルギーを論ずるときに,この二つから目をそむけては通れなくなってきた。そこで,温暖化(注23)と再生可能(注24)で,最新の世界の論調を紹介すべく,努力している。またコメントなど下さい。しかし私自身は,再生可能エネルギーで地球を救うのは無理で,原子力と水力で対応すべきと思ってはいる。
朝日新聞が,連載のコラムで,クリーンカーを取り上げているが,電気自動車と燃料電池車の大きな流れを解説している。バイオは論外としても,この二つの流れは,両方ともエネルギー源が別個に必要なことには触れようともしないので,少し不満である。プラグインカーなど電気自動車は必ず大規模な発電所が必要だし,燃料電池も水素を創り出すエネルギー源は,と聞かれると,発電所に行かねばならない。結局,地球温暖化対策は,発電所をクリーンにする必要から逃れられない。
原子力は,住民さへ納得してお金があれば何処でも出来るが,水力はそうは行かない。そういう意味で,残されたヒマラヤ近辺の大規模水力開発は,人類最後の戦い,と言ってきた。インドもさることながら,パキスタンの大規模水力も重要である。インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。
2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。
今日は,このザルダニ大統領の積極策に対して,反論が出ている。国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5),としている。パキスタンも前途多難。
タルベラダム(注3)の悲劇については,私のHP(注21)に解説されている。その中,「そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。」。
(注) (23) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsCD.htm,(24) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsRE.htm,(25)
(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)
本文
●パキスタン,議論の続いたバシャダムの進捗について
インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。
国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5)。
世界銀行の報告書は,バシャ(注6)ダムサイトが,インダス(注7)上流の狭い峡谷にあって不安定な地震地帯であり,安全上大きな問題がある,としている。パキスタンでのダムの議論は古いが,もっとも問題になったのは,ムシャラフ前大統領(注8)のとき,彼の軍事独裁政権が,インダス河(注7)の一連のダム建設を提案したときで,バシャ(注6)ダムについては,ムシャラフ前大統領(注8)の「2020年水資源構想」(注9)とWAPDA(注10)の「2025年開発構想」(注11)の二つの提案が議論のきっかけであった。
ムシャラフ前大統領(注8)は,関係者の説得のために地元に赴いたが,説得は失敗に終わっている。一方で,現政権の連立与党,PPP,ANP,PML(N),JUI(F)は,「カラバーダム反対委員会」(注12)のなのもと,反対運動を展開した。この16の政党などを巻き込んだ闘争は,ただ一つの命題,「これ以上インダスの水を減らさせない」(注13),に対してパキスタン史上最大規模の反対グループでった。
このとき反対運動を主導したPPP(注14)は,今や政権政党であるが,その政治原則と過去の約束を無視して,同じ悪名高き開発構想を採用してきた。貯水池の建設に際して最も重要なことは,1991年の水協定(注15)を基礎に,既得権益を重視し,信頼度の高い余裕のある水供給を行うことにある。これには,水の量の現実を確実に把握することが重要である。
今後の新規ダム建設に関しては,政府はANG報告書(注16)の主張を考慮すべきで,これは,将来の貯水池計画や灌漑計画に対する水の基本量,マングラダム(注18)の湛水及び運用計画,関連組織の役割,その他重要な事項について,包括的な提案を行っている。
過去のタルベラダム(注3)の事故については,私のHP(注21)に解説されている。その土木工事が完成し湛水を開始したのは,1974年7月である。順調に湛水していった7月中旬,右岸の4つのバイパスをテストするため通水試験が行われたが,7月27日,その第2トンネルに異常が起こった。これがパキスタン全土をパニックに陥れた事故の始まりである。
そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。
水を抜いてみると,予想を超える大事故で,第2トンネルの取水口から70mに亘って落盤し,約50万立方mの土砂が下流に流れ出したのである。1974年9月27日から10月4日まで現地で世界の権威を集めて善後策が協議され,修復方法が論じられたが,この会議にはブット首相を始め各大臣が出席した。この修復に要する費用は5900万ドルと見積もられ,世銀を始め関係各国が負担した。1975年5月,再び湛水を開始し,8月7日にはもとの水位に復した。パキスタンのトラウマであろう。
(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)
●フィリッピン,ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング
配電部門と議論になっていた系統損失の電気料金上の取り扱いについて,ERC(注21)は,前回の提案よりも上方修正した上限を,消費者に転化することを認めた。即ち,民間配電企業には8.5%,配電組合(注22)には13%,とすることに決定した。前回の提案は,民間配電企業には8%,配電組合(注22)には11%であった。ERC(注21)は,消費者に回せるのは実際の損失で,この上限を超えない,と説明している。
(注) (21) Energy Regulatory Commission,(22) electric cooperatives,(23)
Reference
Pakistan
●081118A Pakistan, thefrontierpost
議論の続いたバシャダムの進捗について
Bhasha dam controversy
http://www.thefrontierpost.com/News.aspx?ncat=le&nid=830
Philippines
●081118B Philippines, Manila Bulletin
ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング
ERC mulls 8.5% caps on system loss
http://www.mb.com.ph/BSNS20081118141174.html
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
オバマ次期米大統領の地球温暖化問題に関するビデオ演説が話題になっている。このHPのユーチューブにもまもなく出ると思われるが,「米国が精力的に交渉に参加し,国際協調の新しい時代へと世界を導いていくことを確約する。」,としている。彼のポイントは,「京都議定書に代わる2013年以降の新たな国際的枠組みの合意」,であって,京都議定書に参加とは一言も言っていない。
私も,地球温暖化の問題や再生可能エネルギー問題は,私の柄でもない,と思って無視してきたが,世界のエネルギーを論ずるときに,この二つから目をそむけては通れなくなってきた。そこで,温暖化(注23)と再生可能(注24)で,最新の世界の論調を紹介すべく,努力している。またコメントなど下さい。しかし私自身は,再生可能エネルギーで地球を救うのは無理で,原子力と水力で対応すべきと思ってはいる。
朝日新聞が,連載のコラムで,クリーンカーを取り上げているが,電気自動車と燃料電池車の大きな流れを解説している。バイオは論外としても,この二つの流れは,両方ともエネルギー源が別個に必要なことには触れようともしないので,少し不満である。プラグインカーなど電気自動車は必ず大規模な発電所が必要だし,燃料電池も水素を創り出すエネルギー源は,と聞かれると,発電所に行かねばならない。結局,地球温暖化対策は,発電所をクリーンにする必要から逃れられない。
原子力は,住民さへ納得してお金があれば何処でも出来るが,水力はそうは行かない。そういう意味で,残されたヒマラヤ近辺の大規模水力開発は,人類最後の戦い,と言ってきた。インドもさることながら,パキスタンの大規模水力も重要である。インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。
2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。
今日は,このザルダニ大統領の積極策に対して,反論が出ている。国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5),としている。パキスタンも前途多難。
タルベラダム(注3)の悲劇については,私のHP(注21)に解説されている。その中,「そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。」。
(注) (23) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsCD.htm,(24) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsRE.htm,(25)
(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)
本文
●パキスタン,議論の続いたバシャダムの進捗について
インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。
国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5)。
世界銀行の報告書は,バシャ(注6)ダムサイトが,インダス(注7)上流の狭い峡谷にあって不安定な地震地帯であり,安全上大きな問題がある,としている。パキスタンでのダムの議論は古いが,もっとも問題になったのは,ムシャラフ前大統領(注8)のとき,彼の軍事独裁政権が,インダス河(注7)の一連のダム建設を提案したときで,バシャ(注6)ダムについては,ムシャラフ前大統領(注8)の「2020年水資源構想」(注9)とWAPDA(注10)の「2025年開発構想」(注11)の二つの提案が議論のきっかけであった。
ムシャラフ前大統領(注8)は,関係者の説得のために地元に赴いたが,説得は失敗に終わっている。一方で,現政権の連立与党,PPP,ANP,PML(N),JUI(F)は,「カラバーダム反対委員会」(注12)のなのもと,反対運動を展開した。この16の政党などを巻き込んだ闘争は,ただ一つの命題,「これ以上インダスの水を減らさせない」(注13),に対してパキスタン史上最大規模の反対グループでった。
このとき反対運動を主導したPPP(注14)は,今や政権政党であるが,その政治原則と過去の約束を無視して,同じ悪名高き開発構想を採用してきた。貯水池の建設に際して最も重要なことは,1991年の水協定(注15)を基礎に,既得権益を重視し,信頼度の高い余裕のある水供給を行うことにある。これには,水の量の現実を確実に把握することが重要である。
今後の新規ダム建設に関しては,政府はANG報告書(注16)の主張を考慮すべきで,これは,将来の貯水池計画や灌漑計画に対する水の基本量,マングラダム(注18)の湛水及び運用計画,関連組織の役割,その他重要な事項について,包括的な提案を行っている。
過去のタルベラダム(注3)の事故については,私のHP(注21)に解説されている。その土木工事が完成し湛水を開始したのは,1974年7月である。順調に湛水していった7月中旬,右岸の4つのバイパスをテストするため通水試験が行われたが,7月27日,その第2トンネルに異常が起こった。これがパキスタン全土をパニックに陥れた事故の始まりである。
そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。
水を抜いてみると,予想を超える大事故で,第2トンネルの取水口から70mに亘って落盤し,約50万立方mの土砂が下流に流れ出したのである。1974年9月27日から10月4日まで現地で世界の権威を集めて善後策が協議され,修復方法が論じられたが,この会議にはブット首相を始め各大臣が出席した。この修復に要する費用は5900万ドルと見積もられ,世銀を始め関係各国が負担した。1975年5月,再び湛水を開始し,8月7日にはもとの水位に復した。パキスタンのトラウマであろう。
(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)
●フィリッピン,ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング
配電部門と議論になっていた系統損失の電気料金上の取り扱いについて,ERC(注21)は,前回の提案よりも上方修正した上限を,消費者に転化することを認めた。即ち,民間配電企業には8.5%,配電組合(注22)には13%,とすることに決定した。前回の提案は,民間配電企業には8%,配電組合(注22)には11%であった。ERC(注21)は,消費者に回せるのは実際の損失で,この上限を超えない,と説明している。
(注) (21) Energy Regulatory Commission,(22) electric cooperatives,(23)
Reference
Pakistan
●081118A Pakistan, thefrontierpost
議論の続いたバシャダムの進捗について
Bhasha dam controversy
http://www.thefrontierpost.com/News.aspx?ncat=le&nid=830
Philippines
●081118B Philippines, Manila Bulletin
ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング
ERC mulls 8.5% caps on system loss
http://www.mb.com.ph/BSNS20081118141174.html
登録:
投稿 (Atom)