2008年11月19日水曜日

パキスタンのダムになお異論

HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーもあり。
温暖化最前線も始めました,下のHPから見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

オバマ次期米大統領の地球温暖化問題に関するビデオ演説が話題になっている。このHPのユーチューブにもまもなく出ると思われるが,「米国が精力的に交渉に参加し,国際協調の新しい時代へと世界を導いていくことを確約する。」,としている。彼のポイントは,「京都議定書に代わる2013年以降の新たな国際的枠組みの合意」,であって,京都議定書に参加とは一言も言っていない。

私も,地球温暖化の問題や再生可能エネルギー問題は,私の柄でもない,と思って無視してきたが,世界のエネルギーを論ずるときに,この二つから目をそむけては通れなくなってきた。そこで,温暖化(注23)と再生可能(注24)で,最新の世界の論調を紹介すべく,努力している。またコメントなど下さい。しかし私自身は,再生可能エネルギーで地球を救うのは無理で,原子力と水力で対応すべきと思ってはいる。

朝日新聞が,連載のコラムで,クリーンカーを取り上げているが,電気自動車と燃料電池車の大きな流れを解説している。バイオは論外としても,この二つの流れは,両方ともエネルギー源が別個に必要なことには触れようともしないので,少し不満である。プラグインカーなど電気自動車は必ず大規模な発電所が必要だし,燃料電池も水素を創り出すエネルギー源は,と聞かれると,発電所に行かねばならない。結局,地球温暖化対策は,発電所をクリーンにする必要から逃れられない。

原子力は,住民さへ納得してお金があれば何処でも出来るが,水力はそうは行かない。そういう意味で,残されたヒマラヤ近辺の大規模水力開発は,人類最後の戦い,と言ってきた。インドもさることながら,パキスタンの大規模水力も重要である。インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。

2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。

今日は,このザルダニ大統領の積極策に対して,反論が出ている。国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5),としている。パキスタンも前途多難。

タルベラダム(注3)の悲劇については,私のHP(注21)に解説されている。その中,「そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。」。

(注) (23) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsCD.htm,(24) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsRE.htm,(25)

(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)

本文

●パキスタン,議論の続いたバシャダムの進捗について

インダス(注7)上流,ディアマーバシャダム(注1)の着工決定については,本HPで,2008年10月20日(注19)で述べている。2008年,今年の4月に,ドイツのラメイヤーの詳細設計が完成した記事がある。このインダス川の上流に建設される大規模なダム計画,バシャダイムラープロジェクト(注1)は,ダムの高さ281m,水没人口25,000人,資金調達を待たずに当時の大統領は着工を命令している。北京を訪れたザルダニ大統領が,中国の支援を取り付けてきたばかりである,と報告している。この着工決定に対する反対論の投稿である。

国家経済会議上級委員会ECNEC(注2)は,126億ドル,ディアマーバシャダム(注1)の,2016年完成に向けて,プロジェクトを発進させることを決定した。パキスタンは,タルベラダム(注3)の高さ485フィートの記録の上に,また新しい世界記録に挑戦する。それは世界最高のRCC(注4)ダムである。驚いたことに,パキスタン政府は,タルベラダム(注3)が,世界でもっとも厳しい事故を起こしたダムであることを忘れている(注5)。

世界銀行の報告書は,バシャ(注6)ダムサイトが,インダス(注7)上流の狭い峡谷にあって不安定な地震地帯であり,安全上大きな問題がある,としている。パキスタンでのダムの議論は古いが,もっとも問題になったのは,ムシャラフ前大統領(注8)のとき,彼の軍事独裁政権が,インダス河(注7)の一連のダム建設を提案したときで,バシャ(注6)ダムについては,ムシャラフ前大統領(注8)の「2020年水資源構想」(注9)とWAPDA(注10)の「2025年開発構想」(注11)の二つの提案が議論のきっかけであった。

ムシャラフ前大統領(注8)は,関係者の説得のために地元に赴いたが,説得は失敗に終わっている。一方で,現政権の連立与党,PPP,ANP,PML(N),JUI(F)は,「カラバーダム反対委員会」(注12)のなのもと,反対運動を展開した。この16の政党などを巻き込んだ闘争は,ただ一つの命題,「これ以上インダスの水を減らさせない」(注13),に対してパキスタン史上最大規模の反対グループでった。

このとき反対運動を主導したPPP(注14)は,今や政権政党であるが,その政治原則と過去の約束を無視して,同じ悪名高き開発構想を採用してきた。貯水池の建設に際して最も重要なことは,1991年の水協定(注15)を基礎に,既得権益を重視し,信頼度の高い余裕のある水供給を行うことにある。これには,水の量の現実を確実に把握することが重要である。

今後の新規ダム建設に関しては,政府はANG報告書(注16)の主張を考慮すべきで,これは,将来の貯水池計画や灌漑計画に対する水の基本量,マングラダム(注18)の湛水及び運用計画,関連組織の役割,その他重要な事項について,包括的な提案を行っている。

過去のタルベラダム(注3)の事故については,私のHP(注21)に解説されている。その土木工事が完成し湛水を開始したのは,1974年7月である。順調に湛水していった7月中旬,右岸の4つのバイパスをテストするため通水試験が行われたが,7月27日,その第2トンネルに異常が起こった。これがパキスタン全土をパニックに陥れた事故の始まりである。

そうして,8月21日の「魔の日」を迎えるわけである。このとき貯水池は既に99億トンの水を湛え,満水まで僅かに余すところ37億トンであった。8月22日,専門家グループの決断で,全水門を開いて湛水した水を放流することとし,貯水池が空になるまで3週間を要したが,この間下流住民にはダム決壊のデマが流れ,ブット首相自ら国民に訴えた場面もあった。

水を抜いてみると,予想を超える大事故で,第2トンネルの取水口から70mに亘って落盤し,約50万立方mの土砂が下流に流れ出したのである。1974年9月27日から10月4日まで現地で世界の権威を集めて善後策が協議され,修復方法が論じられたが,この会議にはブット首相を始め各大臣が出席した。この修復に要する費用は5900万ドルと見積もられ,世銀を始め関係各国が負担した。1975年5月,再び湛水を開始し,8月7日にはもとの水位に復した。パキスタンのトラウマであろう。

(注) (1) Diamer-Bhasha Dam project,(2) Executive Committee of the National Economic Council ,(3) Tarbela Dam,(4) roller-compacted concrete dam,(5) World Bank Report No 4,(6) Bhasha,(7) Indus,(8) Pervez Musharraf,(9) Mr Musharraf’s Water Vision 2020,'10) WAPDA,(11) Wapda’s Vision 2025,(12) Anti-Thal Canal and Kalabagh Dam Action Committee,(13) ‘No further cut on the Indus’,(14) PPP,(15) water accord 1991,(16) Technical Committee on Water Resources by A.N.G,(17) Abbasi,,(18) Mangla reservoir,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081020A.htm,(20) http://my.reset.jp/~adachihayao/power.htm#power06,(21)

●フィリッピン,ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング

配電部門と議論になっていた系統損失の電気料金上の取り扱いについて,ERC(注21)は,前回の提案よりも上方修正した上限を,消費者に転化することを認めた。即ち,民間配電企業には8.5%,配電組合(注22)には13%,とすることに決定した。前回の提案は,民間配電企業には8%,配電組合(注22)には11%であった。ERC(注21)は,消費者に回せるのは実際の損失で,この上限を超えない,と説明している。

(注) (21) Energy Regulatory Commission,(22) electric cooperatives,(23)

Reference

Pakistan

●081118A Pakistan, thefrontierpost
議論の続いたバシャダムの進捗について
Bhasha dam controversy
http://www.thefrontierpost.com/News.aspx?ncat=le&nid=830

Philippines

●081118B Philippines, Manila Bulletin
ERC,損失電力の,電力料金への反映で,シーリング
ERC mulls 8.5% caps on system loss
http://www.mb.com.ph/BSNS20081118141174.html

0 件のコメント: