2008年11月2日日曜日

ミャンマーの中国のプレゼンス

HPは下記ドメインです。
アフリカ,中東,南米,再生可能エネルギーの最前線もあり。
http://my.reset.jp/~adachihayao/index.htm

今日は連休の中日にも関わらず長文記事3発で,随分時間がかかった。しかし,ミャンマーに於ける中国の動きや,中国の最近の石炭事情が詳しく見れて,有益だった。

リビアの最高指導者カダフィ大佐がロシアを訪ね,エネルギーと武器の相談をしている。今日の朝日新聞で,米国がリビアにミサイルを撃ち込んだとき,イタリアの外務大臣が事前にカダフィを隠れ家から逃がした,と書いてあった。今,リビアと対岸のイタリアの間にはガスパイプラインがあるが,これはその結果か。今日のロシアでの会談は,このパイプラインをロシアまで延ばす計画も含まれている。エネルギーを巡る国際情勢も,なかなか不可思議。

さて今日の記事,ミャンマーに関するもの2件であるが,一般的な中国企業のミャンマー内での動きは,今までも伝えられてきたが,非常に印象が強かったのは,ラムリー島(注24)の話である。この半島みたいな島は,ヤンゴンから直線で北東へ360km,アラカン山脈(注25)を超えなければならないから,おそらく海路しか接近できないのだろう。ベンガル湾に突き出た島で,バングラデシュとの国境に近い。このラムリー島(注24)が,中国がミャンマーの軍事政権からエネルギー資源を引き出そうとしている拠点なのである。

なかなかここまで行って記事を書いてくれるメディアはいないが,今日の記事は,AOW幹部のカイン氏(注26)のもので,人権や環境を扱うNGOもここまで行くのには大変だっただろう。彼の報告では,ラムリー島(注24)は,シンガポールほどの島で40万人が住んでいるという。地形から見ても,津波や台風の災害をまともに受けたところだろう。中国人が来てから,村人の生活は一変したという。住民は中国人を憎んでいると言う。

工事は乱暴に行われ,濁水や有毒な薬品も気にせず,村民がベンガル湾への出口として使っていたチャインワ川(注28)を全く使用不能にした。詳しいことは記事に任せる。ミャンマー軍事政権の独裁を利用して,中国企業のミャンマー内での活動には,何の規制もないと言う。この海外での中国企業が行う事業の規制がないと言うことは,現在国際的にも問題になっており,さすがに北京は,環境技術アカデミーCAEP(注29)がこの点を2008年9月半ばの報告の中に書いている。

なお,このラムリー島(注24),アジアタイムスはチャウピュー島(注11)と呼んでいるが,中国企業CNOOC(注28)がラムリー島(注24)に目を付けたのは,海の深度である,と言う点だ。中国はここに大型港湾の建設を考えているに違いない。現在,中国への原油の70%がマラッカ海峡(注5)を通過しているが,米国によってブロックされる可能性のあるルートを,シュエガスパイプライン(注4)で迂回しようというものである。

インドとタイも,ミャンマー軍事政権に対して,中国に近い姿勢を示しているが,欧米は厳しく,最近では,「知的制裁(注6)」,と称して,軍事政権の中核にある個人の資産凍結を標的にしている。ある専門家の推定では,ミャンマー軍事政権は,ガスによって年間35億ドルを手にしているという。要するにラムリー島(注24)は,現在ではベンガル湾などの天然ガスの集積地で,雲南省まで送るシュエガスパイプライン(注4)の起点であるが,このパイプラインを増設して,中東からのLNGや原油をこのラムリー島(注24)に運ぶという構想らしい。

この記事が最後に結んでいる文章(注22)はうまく訳せないが,おそらくこういうことだろう。今中国が享受している通商の利益は,言うなれば誘惑の悪魔だけがその帰結を知っている,と言うことか。ミャンマー軍事政府が,本当に禅譲でなく民主化へ進んでしまうならば,はっきり言って,中国の権益が守られる保証はないであろう。最近の台風被害で,被災者を救おうとしないミャンマー軍事政権に対して,ミャンマー沖に,救済のためとはいえ,米国とフランスの軍艦が待機したことは,記憶に新しい。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0806.htm,(2) http://www.atimes.com/,(3) EarthRights International and Arakan Oil Watch,(4) Shwe Gas pipeline,(5) Strait of Malacca,(6) "smart sanctions",(7) EarthRights International,(8) Arakan state,(9) the Shwe Gas project,(10) Sagaing division,(11) Kyaukpyu Island,http://my.reset.jp/~adachihayao/08110101.jpg,(12) China Petroleum and Chemical Corporation, or Sinopec,(13) China National Petroleum Corporation (CNPC),(14) Myanmar Oil and Gas Enterprise (MOGE) ,(15) the gigantic 7,100-megawatt Tasang Dam on the Salween river in Shan state,(16) Kachin state,(17) N'Mai Hka,(18) Mali Hka,(19) Irrawaddy river,(20) he Five Principles of Peaceful Coexistence,(21) the UN Security Council,(22) more visible commercial interests are for now better served by the devil it knows.,(23) http://www.ipsnews.net/,(24) Ramree Island,(25) Arakan Range, (26) Jockai Khaing, director of Arakan Oil Watch (AOW),,(27) China National Offshore Oil Company (CNOOC),(28) Chaing Wa Creek,(29) the Chinese Academy for Environmental Planning (CAEP),(30)

本文

●ミャンマーに於ける中国の足音,更に高まってくる

ミャンマーのエネルギー資源への中国の怒濤のごとき進撃については,2008年6月に,このHPでも再三取り上げている(注1)。6月19日には,「ミャンマーの新規ダム計画,数千人の移住を伴う」,また6月10日には,「ミャンマー,サルウイーンのダム建設,反政府派を水没へ」などである。これまではいずれも,各地のプロジェクトの環境グループによる批判であったが,今日のアジアタイムス(注2)は,これを総括的に取り扱っている。長文であるが,要点を拾ってみよう。

欧米がミャンマー軍事政権に対して厳しい制裁を課している中で,中国のミャンマーの資源を標的としたミャンマー軍事政権への外交的な連携をより鮮明にしてきている。環境グループ(注3)の報告書によると,69の中国企業が,水力,鉱業,原油,ガスの分野でミャンマー全土に亘って少なくとも90のプロジェクトを推進中という。特徴的なものは,エネルギーと資源で,水力ダムとシュエ,ガス,パイプライン(注4)で,シュエガスパイプライン(注4)はミャンマー全土を南北に縦断して,地理的に閉ざされた雲南省へ通ずるものだ。

現在,中国への原油の70%がマラッカ海峡(注5)を通過しているが,米国によってブロックされる可能性のあるルートを,シュエガスパイプライン(注4)で迂回しようというものである。インドとタイも,ミャンマー軍事政権に対して,中国に近い姿勢を示しているが,欧米は厳しく,最近では,「知的制裁(注6)」,と称して,軍事政権の中核にある個人の資産凍結を標的にしている。ある専門家の推定では,ミャンマー軍事政権は,ガスによって年間35億ドルを手にしているという。

環境団体アース,ライト,インターナショナル(注7)が確認したところでは,特に中国によるミャンマーの原油ガス田の開発が最近盛り上がっており,アラカン州(注8)のシュエ,ガス,プロジェクト(注9)とサガイン地区(注10)の新規ブロックなど,21のプロジェクトが進行中である。注目すべきは,アラカン州(注8)沖のチャウピュー島(注11)を中東から雲南省へのシュエ,ガス,パイプライン(注4)の中継基地に想定して開発していることである。このシュエ,ガス,パイプライン(注4)については,既に中国企業(注12)とミャンマー政府が契約しており,更にこれと並行したパイプラインも構想があり,中継基地の建設で,中国企業CNPC(注13)とミャンマーのMOGE(注14)が調査を行っている。

同じく環境団体アース,ライト,インターナショナル(注7)の報告では,ダムプロジェクトも進展しており,特に電力を雲南省へ送る目的で,サルウイーン河,シャン州の7,100MWタッサン,ダム(注15)の他,カチン州(注16)のマイカ川(注17),マリカ川(注18),イラワジ河(注19)などを含め,総出力は13,360MWに達する。また,金や翡翠などについても,中国企業が入っており,欧米の制裁とのギャップを埋めている。

中国のミャンマー軍事政権に対する外交姿勢だが,1954年の有名な,「平和共存のための5原則(注20)」,が今でも基本と考えられ,政経分離の考え方に近い。中国は安全保証理事会(注21)で拒否権を使ってミャンマーを守ってきたが,最近では民主化への圧力を強めている。しかし中国が,現在築きつつあるミャンマーとの経済関係を壊すような急激なミャンマーの政治の変化を求めていないことは確かである。民主化を求める中国の姿勢は,民主化後の勢力が,中国の権益を守ることを前提に,話をしているのだろう。誰がミャンマーの政治を握ろうとも,中国の安価な機械類,技術ノウハウ,低利で長期の借款などは,ミャンマーにとって手放せない。

この記事が最後に結んでいる文章(注22)はうまく訳せないが,おそらくこういうことだろう。今中国が享受している通商の利益は,言うなれば誘惑の悪魔だけがその帰結を知っている,と言うことか。ミャンマー軍事政府が,本当に禅譲でなく民主化へ進んでしまうならば,はっきり言って,中国の権益が守られる補償はないであろう。最近の台風被害で,被災者を救おうとしないミャンマー軍事政権に対して,ミャンマー沖に,救済のためとはいえ,米国とフランスの軍艦が待機したことは,記憶に新しい。

(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0806.htm,(2) http://www.atimes.com/,(3) EarthRights International and Arakan Oil Watch,(4) Shwe Gas pipeline,(5) Strait of Malacca,(6) "smart sanctions",(7) EarthRights International,(8) Arakan state,(9) the Shwe Gas project,(10) Sagaing division,(11) Kyaukpyu Island,http://my.reset.jp/~adachihayao/08110101.jpg,(12) China Petroleum and Chemical Corporation, or Sinopec,(13) China National Petroleum Corporation (CNPC),(14) Myanmar Oil and Gas Enterprise (MOGE) ,(15) the gigantic 7,100-megawatt Tasang Dam on the Salween river in Shan state,(16) Kachin state,(17) N'Mai Hka,(18) Mali Hka,(19) Irrawaddy river,(20) he Five Principles of Peaceful Coexistence,(21) the UN Security Council,(22) more visible commercial interests are for now better served by the devil it knows.

●ミャンマー沖合,西の島,今や中国のエネルギー根拠地へ

この前のアジアタイムス(注2)の記事とよく似たタイトルだが,内容は少し違うようだ。このIPS(注2)の記事は,深くミャンマーの現地に入り込んだ環境或いは人権団体が,中国企業とミャンマー軍事政権が推進しているプロジェクトの実情を報告している。ミャンマーの西南の沖合,など報道関係者でもなかなか入っていけないところで,どんどん入っていって,報告書を書く環境団体に,その意味では敬意を払う。

さて記事は,やはりミャンマー沖合の島の話から始まっている。先ほどのアラカン州(注8)沖のチャウピュー島(注11)は,この記事のラムリー島(注24)の北端にあって,ラムリー島(注24)の中に含まれているようだ。ヤンゴンから直線で北東へ360km,アラカン山脈(注25)を超えなければならないから,おそらく海路しか接近できないのだろう。ベンガル湾に突き出た島で,バングラデシュとの国境に近い。このラムリー島(注24)が,中国がミャンマーの軍事政権からエネルギー資源を引き出そうとしている拠点なのである。ここまで言って,この記事にある内容をもたらしたのは,AOW幹部のカイン氏(注26)である。

ラムリー島(注24)は,シンガポールほどの島で40万人が住んでいるという。地形から見ても,津波や台風の災害をまともに受けたところだろう。中国人が来てから,村人の生活は一変したという。住民は中国人を憎んでいる。中国企業CNOOC(注28)がラムリー島(注24)目を付けたのは,海の深度である。カイン氏(注26)は,CNOOC(注28)が,国際的な基準である環境調査を全く実施せず,工事に着手したという。

工事は乱暴に行われ,濁水や有毒な薬品も気にせず,村民がベンガル湾への出口として使っていたチャインワ川(注28)を全く使用不能にした。詳しいことは記事に任せる。ミャンマー軍事政権の独裁を利用して,中国企業のミャンマー内での活動には,何の規制もないと言う。この海外での中国企業が行う事業の規制がないが,さすがに北京は,環境技術アカデミーCAEP(注29)がこの点を2008年9月半ばの報告の中に書いている。

2006年にミャンマー軍事政権が得たガス売却収入は21.6億ドルでこれはミャンマーの輸出の50%を占めている。また2008年には35億ドルの収入があると見られている。中国はミャンマーを国連の場で支えている,これが中国とミャンマー軍事政権の相互依存だ,と言っているミャンマーの知識人もいる。武器も供与されている。この知識人は次のように結んだ。「軍事政権は中国へ国を開いた,それは軍事政権が北京を必要としているからだ。」,と。

(注) (23) http://www.ipsnews.net/,(24) Ramree Island,(25) Arakan Range, (26) Jockai Khaing, director of Arakan Oil Watch (AOW),,(27) China National Offshore Oil Company (CNOOC),(28) Chaing Wa Creek,(29) the Chinese Academy for Environmental Planning (CAEP),(30)

●中国の石炭供給は,時に不足,時に余剰,不可解

中国の石炭については,このHPでも2008年7月31日(注30)に取り上げている。当時,中国の専門家が書いた石炭供給への渓谷の最後の言葉は,「中国の石炭不足は,世界経済の中で発展を続ける中国の経済成長を,この重要な時期に挫折させる可能性がある。」,というもので,オリンピックを乗り越えたとはいえ,発電の80%を石炭が担っている中で,昨年の炭坑での犠牲者は4000人に上る,まさに戦争である。

今日の記事はエナージトリビューン(注31)のもので外部から見た中国の石炭事情である。長文である。中国の石炭は不思議な世界だ。ある日中国政府は石炭は余っている,という,また別の日には,石炭火力発電所で7日分しかない,と慌てる。古い炭坑を閉鎖したと自慢していた中国政府は,急にそれを復活しろと指示する。何処が間違っているのだろうか?

ある人は,政府のシンクタンクの保守的な予測姿勢が問題だと言っている。2006年に,発改委NDRC(注32)は石炭余剰を警告,2,734の炭坑が閉鎖された。閉鎖が終わると発改委NDRC(注32)は石炭需要予測を8億トン上方修正,同じようなことを発改委NDRC(注32),2003年に,石炭火力が多すぎるとブレーキをかけた。2,3ヶ月前に政府は石炭4,000万トン不足と報じている。その後豪雪や四川省地震を経て,2.22億トンの石炭増量を指示,合計27億トンとした。

今年,2008年の発電用石炭は15.6億トンである。製鉄が4.96億トン,建設材料が4.32億トン,などである。政府は石炭の増量を促し,石炭火力は15日分を備蓄するよう指示している。2008年夏の不足電力は全国で10,000MW,そのうち広東省が6,000MWであった。輸入は0.49億トンとし,閉鎖した炭坑の復活を指示,2,534の炭坑が2月復活,3月には更に5,300が復活した。四川地震では,199の炭坑が被害を受け,その生産量影響は1.45億トンであった。

問題は,発改委NDRC(注32)の指示する石炭価格で,発電会社が大打撃を受けている。新規に4,247MWの石炭火力が完成したが,動いたのはその37%だけである。中国は2010年までに,発電設備を950,000MWとする計画で,水力が22.3%,210,000MW,火力が74.7%,710,000MW,原子力が1%,9,500MW,風力などが2%,20,000MWと計画している。

石炭価格の上限の制限も問題を起こしている。石炭輸出は,年率83.5%も伸びて,5月にトン132.40ドルであった値段が,110.40ドルに下落している。長期的には中国にとって石炭は主流で,2008年,今年は6.5%伸びで27億トン,2010年には31億トンとなる。因みに,米国の2007年の石炭消費は11億トンである。

中国の石炭産出の根拠地,山西省は,2010年までに昨年,2007年の5.4億トンを,年7億トンとする計画である。山西省は2,700億トンの石炭埋蔵を有し,中国全体の25%を占めている。環境問題が叫ばれているが,いずれにしても中国にとって,ここ数十年は石炭が中国のエネルギーの主流であることは間違いない。

(注) (30) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0807.htm,(31) http://www.energytribune.com/,(32) the National Development and Reform Commission,(33)

Reference

Myanmar

●081101A Myanmar, ipsnews
ミャンマー沖合,西の島,今や中国のエネルギー根拠地へ
China's Thirst for Oil Ignores Environment, Rights
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44534
●081101B Myanmar, Asia Times
ミャンマーに於ける中国の足音,更に高まってくる
China's footprint in Myanmar expands
http://www.atimes.com/atimes/China_Business/JK01Cb02.html

China

●081101C China, energytribune
中国の石炭供給は,時に不足,時に余剰,不可解
China''s Coal Crunch
http://www.energytribune.com/articles.cfm?aid=1004

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