2008年11月18日火曜日

ミャンマーは更にダム開発加速

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ミャンマーのダム開発は恐ろしいペースで進んでいる。内外からの批判の声も聞こえる中,中国紙がこれを総括した記事を載せてきた。それは中国だけでなく,周辺諸国,タイ,インド,バングラデシュまでも巻き込んだもの,として書いているが,まさに国際的な争奪戦の様相を呈してきている。これは,ミャンマーにとってチャンスと見るか,外国の収奪と見るか,大いに意見の分かれるところである。

経済成長の初期には,自国の持てる水力資源を全力で開発することは,今までのアジアでも,日本,タイ,インドネシア,ベトナムなどで見ているし,これらの国では自国の水力は,殆ど開発し尽くした。私の意見は,経済発展するならばまず自国の資源を開発して欲しい,自国の資源を有効に開発した国だけが,原油やガスなどの国際エネルギー資源を使う資格がある,と思うが,ミャンマーの場合はこれが当てはまるかどうか。

この記事と時を同じくして,カレン族の厳しい状況が報告されている。特にサルウイーン河(注18)のダム開発では,カレン族が直接の影響を受ける地理的関係にある。対話が出来る状況であればよいが,記事によると,軍事政権との紛争で,50万人が山に逃げ込んで生活しており,教育はおろか,医療も受けられない状況と聞く。サルウイーン河(注18)のダム開発は彼等の生活確保に向かって,格好のプロジェクトなのであるが,対話が出来ないと言うことは,開発側にとっても残念な状態だろう。

私は,おそらくミャンマーの水力開発は,周辺諸国がミャンマーの天然ガスを睨みながら投資してくる状況のもと,今しかチャンスがないのではないかと言う気がする。だから,最近は中国も,国内で海外プロジェクトに対する基準の見直しの雰囲気があり,もう少し開発地元の住民を巻き込んだ方向に転換することが要請されることになると思う。その様な開発手順の改善を図って,この好機を,国民として生かすべきではないか,と思う。

今日の記事のポイント。ミャンマー政府は新たに15の水力プロジェクトの推進を決定した。ミャンマー政府は,水力開発を政策の基礎に置くことに決定して以来,6つの水力発電所を完成し,22のプロジェクトが,現在進行状態にある。新たな15の水力プロジェクトは,第一電力省(注1)が,SPDCの委員長,タンシュエ将軍(注2)が主宰するSPIC(注3)の承認を受けて,推進するものである。これらの規模は,48MW~2,800MWで,7つの地区と県に配置されている。

この15のうち7地点は,カチン州(注4)にあって,そのうち6地点は,規模が1200MWを超える。また,残りの8地点は,サガイン(注5),マンダレー(注6),マグウエー(注7),バゴ(注8)の各地区と,ラキン(注9)及びシャン(注10)の各州,に分散している。これらのプロジェクトがすべて完成した時点では,これらの全設備出力は,13,847MWに達する。

(注) (1) Ministry of Electric Power-1,(2) Senior-General Than Shwe, Chairman of the State Peace and Development Council,(3) Special Projects Implementation Committee,(4) Kachin state,(5) Sagaing,(6) Mandalay division,(7) Magway division,(8) Bago division,(9) Rakhine,(10) Shan,(11) Zawgyi-2,(12) Zaungtu,(13) Thaphanseik,(14) Monechaung,(15) Paunglaung,(16) Yenwe,(17) Tachilek,(18) Thanlwin River,(19) Tar-hsan,(20) MDX Group Co Ltd,(21) Hutgyi,(22) Electricity Generating Authority of Thailand,(23) Tanintharyi River,(24) Yeywa hydropower project,(25) Myitnge River,(26) Yunnan Machinery and Equipment Import and ExportCo Ltd,(26) Upper Paunglaung,(27) Farsighted Investment Group Co Ltd,(28) Gold Water Resources Ltd,(29) Upper Thanlwin,(30) China Power Investment Corporation,(31) Ayeyawaddy river,(32) Maykha river, (33) Malikha river,(34) National Hydroelectric Power Corporation Ltd,(35) Htamanthi,(36) Shwesayay,(37) Italian-Thai Development Public Co. Ltd,(38) British Virgin Island,(39) Windfall Energy Services Ltd,(40) Tanintharyi division,(41)

(注) (41) Karen National Union,(42) Karen Environmental and Social Action Network,(43) ’ Diversity Degraded’ written by ethnic Karen researchers,(44) United Nations Environment Programme,(45) Marty Bergoffen, an American environmental lawyer,(46) Earth Rights International,

本文

●ミャンマー,更に水力発電開発を強調

中国からの報告である。ミャンマー政府は新たに15の水力プロジェクトの推進を決定した。ミャンマー政府は,水力開発を政策の基礎に置くことに決定して以来,6つの水力発電所を完成し,22のプロジェクトが,現在進行状態にある。新たな15の水力プロジェクトは,第一電力省(注1)が,SPDCの委員長,タンシュエ将軍(注2)が主宰するSPIC(注3)の承認を受けて,推進するものである。これらの規模は,48MW~2,800MWで,7つの地区と県に配置されている。

この15のうち7地点は,カチン州(注4)にあって,そのうち6地点は,規模が1200MWを超える。また,残りの8地点は,サガイン(注5),マンダレー(注6),マグウエー(注7),バゴ(注8)の各地区と,ラキン(注9)及びシャン(注10)の各州,に分散している。これらのプロジェクトがすべて完成した時点では,これらの全設備出力は,13,847MWに達する。

SPIC(注3)が設立されてから,6地点の水力発電所が完成しているが,その総出力は,442MWで,それらの地点名は,ゾウジー第2(注11),ザウントウ(注12),タパンセイク(注13),モネチャン(注14),パウンラン(注15),イエンウエ(注16)である。現在進行中の22のプロジェクトが完成すると,設備出力は16,599MWとなる。

ミャンマーの統計によると,2008年4月末時点で,設備出力は,1,690MW,2007~2008年度の発生電力量は66.03億KWhで,2006~2007年度の61.72億KWhより増加した。ミャンマー政府の要請により,タイ,中国,韓国,バングラデシュ,インドなどが水力開発に協力している。タイが協力しているプロジェクトで,シャン(注10)州のタチレック(注17)に位置するサルウイーン河(注18)上の,7,110MW,タッサン水力(注19)は,2007年4月に,ミャンマーとタイのMDX(注20)の合弁で着工したが,この60億ドルの契約は,2006年4月に行われている。年間発生電力量は354,46億KWhである。

もう一つタイの協力するサルウイーン河(注18)上の,600MW,ハッチ(注21)水力は,EGAT(注22)とミャンマー政府に間で2005年12月に着工に合意した。電力量は38.2億KWhである。このプロジェクトは,サルウイーン河(注18)とタニンタリー川(注23)にまたがるもので,2005年6月には基本合意がなされている。これらのプロジェクトの電力の一部は,タイに輸出される。

中国企業の関係した,790MW,ミティンゲ川(注25)上のイエイワ(注24)水力は,2004年に建設で合意されており,年間35.5億KWhの電力を発生する。また雲南のYMEC(注26)の進めるパウンラン上流(注26)水力,FIGC(注27)とGWR(注28)が進めるサルウイーン上流(注29)プロジェクトがある。また,CPIC(注30)は,カチン州(注4)の,イラワジ河(注31)と,マイカ川(注32)とマリカ川(注33)のそれぞれ合流付近に,7地点のプロジェクトを進めているようで,その合計出力は13,360MWと言われている。

インドであるが,今年,2008年9月,NHPC(注34)が,1,200MW,タマンティ水力(注35)と,600MW,シュエザヤ水力(注36)を取り上げ,また,2008年10月には,イタリアンタイ(注37)と英領バージン島(注38)籍のWES(注39)が,600MW水力を,ミャンマー南部のタニンタリ地区(注40)で取り上げている。また,バングラデシュは,自国の電力不足のため,ミャンマー西部及び北西部で,水力開発を行う動きを示している。

中国の報道で,ミャンマーの水力開発に関する動きの殆どを網羅した内容の記事である。中国,タイ,インド,バングラデシュ,それぞれが自国への電力送電を意図していることは勿論であるが,それを利用してダム開発を進めるミャンマーも,したたか,と言っていいのではないか。そこには,明らかにミャンマーの包蔵する60兆立方フィートとも言われる莫大な天然ガスが絡んでいることも事実だろう。

(注) (1) Ministry of Electric Power-1,(2) Senior-General Than Shwe, Chairman of the State Peace and Development Council,(3) Special Projects Implementation Committee,(4) Kachin state,(5) Sagaing,(6) Mandalay division,(7) Magway division,(8) Bago division,(9) Rakhine,(10) Shan,(11) Zawgyi-2,(12) Zaungtu,(13) Thaphanseik,(14) Monechaung,(15) Paunglaung,(16) Yenwe,(17) Tachilek,(18) Thanlwin River,(19) Tar-hsan,(20) MDX Group Co Ltd,(21) Hutgyi,(22) Electricity Generating Authority of Thailand,(23) Tanintharyi River,(24) Yeywa hydropower project,(25) Myitnge River,(26) Yunnan Machinery and Equipment Import and ExportCo Ltd,(26) Upper Paunglaung,(27) Farsighted Investment Group Co Ltd,(28) Gold Water Resources Ltd,(29) Upper Thanlwin,(30) China Power Investment Corporation,(31) Ayeyawaddy river,(32) Maykha river, (33) Malikha river,(34) National Hydroelectric Power Corporation Ltd,(35) Htamanthi,(36) Shwesayay,(37) Italian-Thai Development Public Co. Ltd,(38) British Virgin Island,(39) Windfall Energy Services Ltd,(40) Tanintharyi division,(41)

●ミャンマー,60年に亘る軍事圧迫,カレン族は厳しい状況に

軍事政権の元で,どうしようもないプレッシャーの中に置かれているカレン族の厳しい状態が報告されている。50万人とも言われる山岳地帯に逃げ込んだ人々は,国家の保護も教育も受けられず,悲惨な状態のようだ。ただこの記事が,このカレン族の実情だけでなく,環境破壊の問題を同時に取り扱っているから,少し次元が違うような気がして,問題の焦点がぼけてくる。問題は50万人のカレン族の生活だろう。

ダムの問題も扱っている。ダム建設をどうするのか。このダム建設をミャンマーの人たちが飛躍の好機と捉えられるような政策が必要だろう。この記事に出てくる機関は,カレン国家同盟KNU(注41)が軍事政権に対抗している同盟,環境問題を論じているのが,カレン環境ネットワークKESAN(注42),KESAN(注42)の作成した報告書(注43),バンコクで開催されたUNEP(注44)のフォーラムで訴えたのはベルゴッフェン弁護士(注45),外国企業のダム開発を訴えるのは,地球国際人権ERI(注46),などである。

(注) (41) Karen National Union,(42) Karen Environmental and Social Action Network,(43) ’ Diversity Degraded’ written by ethnic Karen researchers,(44) United Nations Environment Programme,(45) Marty Bergoffen, an American environmental lawyer,(46) Earth Rights International,

参考資料

フィリッピン

●081117A Philippines, Manila Bulletin
IPP企業に対する重要なNPC条件は,30日以上の燃料確保
IPP administrators required to maintain 30-day fuel buffer
http://www.mb.com.ph/BSNS20081117141091.html
●081117B Philippines, inquirer
PSALM,二つの発電所売却に失敗
Bidding for 2 Napocor plants fails
http://www.inquirer.net/specialfeatures/power/view.php?db=1&article=20081116-172546

ミャンマー

●081117C Myanmar, news.xinhuanet
ミャンマー,更に水力発電開発を強調
Myanmar emphasizes on development of hydropower
http://news.xinhuanet.com/english/2008-11/17/content_10370732.htm
●081117D Myanmar, ipsnews
60年に亘る軍事圧迫,カレン族は厳しい状況に
ENVIRONMENT-BURMA: Conflict Threatens Karen Biodiversity
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44727

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