HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
ムンバイのテロ事件は一応の段落を迎えたが,タイの騒乱はまだ先が見えない。12月末まで続くことを見越した経済予測も出ている。このままではタイの経済が潰れるだけでなく,その波及は,ラオスやカンボジア,更にはベトナム,ミャンマーも含めたメコン河流域の経済にまで,影響が及ぶ可能性があるし,それが長期化すれば,アジアのエネルギー最前線に及ぶ影響は大きい。
この,2008年12月4日に,ブミポン国王の演説が予定されている,先日亡くなったお姉さんのことで,国民へのお礼なのであろう。そこで,今最高裁判所が動いている。タクシン派政党の追放を審議する法廷で,12月3日までには結審しなければならない。それは,ブミポン国王の演説の中に,それを入れなければならないからだ。国王は,立憲君主制を尊重する。国民は,国王には絶対に恥を欠かせない,判断に従うはずだ。
タクシン派を非合法とし,それを国王が追認して,軍部もそれに従う。タクシン派を除いた国王の意志による暫定政権を造って総選挙を行い,新しい政権を選ぶ,その様な道筋が見えてくるが,都市部と地方に分極したタイ国民,特に農村部に住む有権者が,タクシン派抜きの総選挙に,静かに従うかどうか,ブミポン国王は悩んでいることだろう。国王も高齢だ,タイの国民も国王を尊崇するなら,迷惑をかけないようにしたらどうか。
この混乱の中でも,エネルギーのテクノクラートは頑張っている。民営化を阻止された国家電力EGAT(注2)は,今や唯一の電力企業で,すべての民間開発の引き取り手を務めている。国際進出のためのEGATインターナショナル(注1)を組織したのはいつであったであろうか。既にラオスでは,関西電力(注13)と組んで,260MW,ナムニエップ水力(注12)の2015年運転開始に向かって走っている。
今日の記事では,スマトラ(注3)のジャンビ県(注11)に,インドネシア政府の認可の元,石炭の探査と生産の権利を獲得した。調査はこれからで,2009年2月に開始し,6ヶ月後に結論を出すという。現地の情報によると,石炭は良質で,埋蔵量は2億トンを超している。EGATインターナショナル(注1)は,可能性調査の結果が良ければ,現地にも発電所を造りたい,と言っている。
タイは,天然ガスへの依存度が70%近くに達し,2008年7月のような原油の高騰に襲われると,天然ガスも吊られて上がり,発電経済が崩壊しかねない。そのために,以前より,石炭火力を建設すべく,奔走しているが,マモーの国産石炭で大きな被害を被ったことがトラウマとなって,石炭火力建設を許さない。それでも,EGATは石炭火力を進めることで,立地の選定に苦慮している。スマトラの石炭は,この一部にも使われる。
それにしても,タイの人々の民衆力はこんなに強かったか。政府建物を包囲しているだけなら,余り国際的な影響は出ないが,彼等も学習したのか,或いは現政府が執務室を空港へ移したのが悪かったのか,国際空港の機能を奪えば,どれほど被害が大きいか,学んでしまった彼等は,今後の市民運動の重要な武器を握ったことになる。あれほど自由だったバンコク国際空港も,これからは厳重な警戒の元に置かれるだろう。
別件,京都議定書後の温室効果ガス削減の枠組み(ポスト京都)をめぐる議論が,この2008年12月1日,明日からポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)で始まる。新興国側と先進国の動き,新政権に移行する米国の出方,中国などの反発でCOP14の交渉が決裂する可能性はなさそうだが,絞り込み作業の先送りは,来年以降の交渉を厳しいものにさせそうだ,と報道されている。
(注) (1) Egat International Co (Egat Inter),(2) Electricity Generating Authority of Thailand,(3) Sumatra,(4) portfolio,(5) Egco Group Plc,(6) Ratchaburi Electricity Generating Holding Plc,(7) Egat governor Sombat Sarntijaree,(8) Prutichai Chonglertvanichkul, acting managing director of Egat Inter,(9) Inter Mining and Energy Co,(10) a memorandum of understanding,(11) Jumbi province,(12) Nam Ngiep hydropower plant,(13) Japan-based Kansai Electric,(14) Laotian government,(15) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081122D.htm,(16) Kalimantan,(17)
本文
●タイ,EGAT,インドネシアで,炭坑権利取得
タイは騒乱の続く中,まもなく,2008年12月3日に,タクシン党に対する審判が下って,12月4日にもブミポン国王の演説があるという。おそらく現政権は降りることになるだろうが,選挙を行うのか,生き残った他の政党で新政権を組むのか,大きな曲がり角に来ている。クーデターの可能性のあった軍部は,どちらかと言えば反タクシンの発言をしているので,内閣は替わるのだろう。その中でEGATが戦っている。
EGAT(注2)の子会社,EGATインター(注1)は,インドネシア政府から,スマトラ(注3)にて,石炭探査及び石炭採掘の権利を認可されたが,これはEGATインター(注1)の海外に於ける発電のポートフォーリオ(注4)を強化することになる。EGATインター(注1)は,EGCO(注5),ラチャブリ(注6)に続く国内3番目の株式上場発電企業である。
EGAT(注2)のソンバット総裁(注7)は,「今回の案件は,タイの将来の電力需給を満たすことを確実にするために,我が売り上げと発電設備の成長を保証するための我々のやり方だ。また更に,EGATインター(注1)は,フィリッピンの電源設備が資金不足に陥っている中で,その電源設備の300~600MWを確保することに成功することを望んでいる。」,更なる海外活動の見通しを述べた。
EGATインター(注1)のプルティチャイ社長代行(注8)によると,今回のスマトラ(注3)に於ける石炭権利は,18万ライ,または2万9000ヘクタールをカバーしている。この案件のEGATインター(注1)の株式持ち分は90%で,残りは,タイ鉱山企業の国際鉱山エネルギー(注9)が持っており,この2企業が,炭坑を共同開発することで,昨日,協定(注10)を交わしている。
探査作業と可能性調査は,2009年2月に開始し,また6ヶ月間に亘り,ビジネスプランを策定するための市場調査を行う予定である。EGATインター(注1)のプルティチャイ社長代行(注8)は,調査の結果,経済的に可能と判断されれば,石炭を地元企業に販売し,また一部をタイへ輸出する,計画という。インドネシア政府から受けている現段階の権利は,ジャンビ県(注11)の1万5,500ライまたは2,500ヘクタールである。
現地の調査によると,ジャンビ県(注11)の石炭埋蔵量は,高度の質を誇る22億トンとされている。金融危機にも関わらず,石炭価格は現状維持に近く,地域の高い需要を反映して,昨年,2007年のトン当たり80~85ドルに対し,70~75ドルである。プルティチャイ社長代行(注8)によると,EGATインター(注1)は,調査の結果が良ければ,現地での発電所建設も視野に入れているという。
EGATインター(注1)の他のプロジェクトは,2015年完成を目指すラオスの,260MW,ナムニエプ水力(注12)で,これは,関西電力(注13)とラオス政府(注14)の共同プロジェクトである。なお,EGAT(注2)のソンバット総裁(注7)は,2015年以降,タイは,2,800MWの石炭火力建設を目指しており,この発電所には,今回案件の石炭も一部として利用する考えであると,表明している。
インドネシアの石炭については,最近では,2008年11月22日付本HP(注15)で扱っている。インドネシアの石炭埋蔵量は930億トンである。インドネシアの石炭はスマトラ(注3)とカリマンタン(注16)に分布している。インドネシアの石炭は,硫黄分と窒素酸化物が少なく,廃棄部分も少なく,それにインドネシアの石炭は露天掘りが多く,経済的である。国内的にも,既設ディーゼル,7,753MWを石炭に変える計画が進む。
(注) (1) Egat International Co (Egat Inter),(2) Electricity Generating Authority of Thailand,(3) Sumatra,(4) portfolio,(5) Egco Group Plc,(6) Ratchaburi Electricity Generating Holding Plc,(7) Egat governor Sombat Sarntijaree,(8) Prutichai Chonglertvanichkul, acting managing director of Egat Inter,(9) Inter Mining and Energy Co,(10) a memorandum of understanding,(11) Jumbi province,(12) Nam Ngiep hydropower plant,(13) Japan-based Kansai Electric,(14) Laotian government,(15) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081122D.htm,(16) Kalimantan,(17)
●インド,グリーン開発で,1,500億ドル計画
インドの気候変動への取り組みを書いた記事は少ない。先日も,私の読者から,インドの再生可能エネルギーへの取り組みを取り上げてくれ,とメールを貰ったことがある。一度,2008年9月29日付本HP(注17)で,今テロで苦しんでいるムンバイのグリーンビルディングの記事を取り上げたが,余りパッとしなかった。今日の記事は珍しいが,これもシンガポールから入った記事である。
記事の元になった報告書は,国際規模の銀行HSBC(注18)のもので,インドの気候変動への目玉は,バイオ燃料,風力,石炭クリーン化(注19)の3本が柱で,2008~2017年の10年間に,1,500億ドルが投入されるとしている。報告書は,「インドの気候変動分野への投資機会」(注20)と題し,2008年7月に出された,「インドの気候変動対策への国家計画」(注21)の政策で,これを切っ掛けに投資が動く,と期待されている。
2008年11月27日付の報告書では,現在の金融危機の元でも,インドの気候変動への反応は,長期的視野に立った成長分野と見ている。インドは,世界の中でも,中国,米国,ロシアに続いて4番目に大きな温暖化ガス排出国で,人口一人当たりにすると,米国が20トン,オーストラリアが28トンに対して,インドは僅かに2トンである。
HSBC(注18)の報告書によると,投資予測は,11のテーマに対して,7.6兆ルピー,約1,500億ドル相当,で,その内訳は,石炭クリーン化(注19)に対して1.7兆ルピー,風力に対して1.34兆ルピー,バイオ燃料に対して1.47兆ルピーとしている。この投資の結果,2018年以降は,二酸化炭素の排出抑制は,4.8億トンに達するものと予測されている。
(注) (17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index080929C,(18) HSBC,(19) clean coal,(20) "India's climate investment opportunities revealed",(21) India's National Action Plan on Climate Change,(22)
●インド,水力開発,地方電化で優先資金獲得
国家予算等で動かす電力分野への資金投入が,問題にされている記事である。中央政府は,銀行の融資対象としての優先度の中に,地方電化と水力発電を含めることで,見直す決定をした。既に関係閣僚会議(注22)の,電力セクター見直しのための小委員会は,技術的な問題から,財務省によってトーンダウンされていた。ここで,凍結されていた2兆ルピーを動かすことが期待されている。
一方銀行は,農業や中小企業の優先度の高いプロジェクトへのローンの40%を負担することを要請されている。新しい提案は,1件位1億ルピーを超えない範囲で,銀行が,地方電化,独立系統の電源,小水力などへの融資を行うことが好ましい,としている。計画委員会(注23)は,提案はインフラ重視で,その勧告を,財務省とインド貯蓄銀行(注24)に来月までに報告書を付けて提出する,としている。
地方電化は,UPA(注25)政府の重点政策の一つで,BNプログラム(注26)の項目の一つである。このプログラムは,地方インフラ,住居,道路,通信,給水など,の構築を目的としている。財務省は,優先度について明確な基準を求めているが,政府はこのため小委員会を設け,送配電線も含めた電力セクターの優先度を協議することになっている。
小委員会はアルワリア計画委員会次席(注28)が指揮し,アンデラプラデシュ(注29),アッサム(注30),マハラシュトラ(注31),オリッサ(注32),ウッタルプラデッシュ(33)の各州の電力大臣がメンバーに入っている。財務省当局は,電力,道路,航空,など多くの優先度への要請が来ており,全部は無理だが,特別の優先度はやむを得ない,としている。銀行側は,電力セクターに,既に大きな融資残高を持っている。
銀行の電力セクターの融資残高は,全インフラ分の50%に当たるが,実際の準備金は6,000億ルピーで,電力セクターの必要額は,第11次五カ年計画(注34)で10兆ルピーを超す規模である。一旦銀行が,この電力セクターの提案を受け入れると,すべて融資残高で賄うことが出来る。11月7日現在の合計貸し出しは27兆ルピーで,30%伸びとすれば,10兆ルピーが,優先プロジェクトへ回せることになる。
(注) (22) group of ministers (GoM),(23) Planning Commission,(24) Reserve Bank of India (RBI),(25) United Progressive Alliance (UPA) ,(26) United Progressive Alliance (UPA),(27) Bharat Nirman programme,(28) Planning Commission deputy chairman Montek Singh Ahluwalia,(29) Andhra Pradesh,(30) Assam,(31) Maharashtra,(32) Orissa,(33) Uttar Pradesh,(34) Eleventh Five Year Plan (2007-12),(35)
Reference
Thailand
●081129A Thailand, Bangkok Post
EGAT,インドネシアで,炭坑権利取得
Egat gets mining approval in Indonesia
http://www.bangkokpost.com/291108_Business/29Nov2008_biz34.php
India
●081129B India, Economic Times
インド,グリーン開発で,1500億ドル計画
India green spending could reach $150 bn by 2017
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/India_green_spending_could_reach_150_bn_by_2017/articleshow/3769920.cms
●081129C India, Economic Times
インド,水力開発,地方電化で優先資金獲得
Hydro projects, rural power to get priority funds
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Hydro_projects_rural_power_to_get_priority_funds/articleshow/3771328.cms
0 件のコメント:
コメントを投稿