2008年11月17日月曜日

インド北東域の送電線計画

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ワシントンでの金融サミットの余韻がまだニュースの大きな部分を占めている。日本も一生懸命やったようだが,日本の一つの意図は,中国をどの様に世界金融の調整の場に引っ張り出すか,と言うことであったのだろう。日本のIMFへの10兆円の拠出も,中国からの拠出を誘って表舞台に引き出そうとしたが,中国は静かに日本を見守るだけだったようだ。国内で57兆円に上る景気浮揚策で手は打った,と言うことで,国際舞台での表だった貢献の義務はない,と言いたげだ。

私が注目しているのは,今度の世界金融危機で,もし中国が大きな打撃を受けた場合は,アジアを中心に世界中で動いている中国プロジェクトが一挙に減速した場合に受ける影響の大きさだ。旧ソ連が経済破綻で行き詰まったときに,世界中のプロジェクトから手を引いていった。小さな影響だったが,旧ソ連が一手に引き受けていたカンボジアの測水システムが,一挙に動かなくなって,メコン委員会が慌てた一幕があった。

じっとニュースに目をこらしていると,オーストラリアの鉄鉱石で異変が起こり始めているようだ。「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」,と言うメルマガで,西オーストラリアのピルバラ地方から中国向けに送られていた鉄鉱石が,中国の鉄鋼生産を20%削減の影響で大きな影響を受けて,オーストラリア政府が救済に乗り出した,と言うもの。ミャンマーやカンボジアやラオスから,今中国が手を引くと,とんでもないことになる。勢いに乗って手を広げてきた中国の海外事業がどうなるか,眼を凝らしていよう。

さて,今日の記事は新興国の一方の雄,インドの北東部の話である。インドの北東地域は,水力とガスの包蔵を持っていて,電源としてのポテンシャルが高く,この地域で得られる電力を,電力需要の高いデリーなどの北地域へ送電するには,ネパールとバングラデシュが微妙に接しかけている狭いインド領,シッキムを通過しなければならない。素人目には,送電線ぐらいは何とかなるだろう,思うが,実際はなかなか難しいところがある,と現地のJBICの人から聞いたことがある。今日の記事は,この狭窄部の送電線のプロジェクトの計画について,報道されている。

入札に出されるのは二つの送電線プロジェクトで,いずれも40万ボルト交流送電線,ボンガイガオン(注9)ーシリグリ(注10)間と,プルニア(注11)ービハルシャリフ(注12)間で,特にこのシリグリ(注10)は,シッキム(注13)の一番狭いところに位置する町である。入札は2段階に分けられ,最初は資格審査を通過した企業に対して,次に資金調達能力が審査されることになっている。

また,同じ北地域の東より,すごいプロジェクトを進めている。1,500MW,ティパイムック多目的ダム(注31)は,ロックフィルダムの高さが168mであり,発電と洪水調節を兼ねている。マニプール(注32)とミゾラン(注33)の県境にあり,下流はブラマプトラ(注34)本流である。太平洋戦争で有名なインパール(注35)は,ティパイムック多目的ダム(注31)の東北方向,ミゾラン(注33)の県都である。昔,世界銀行のチャンドラン氏が,洪水の水をビルマにたたき落とす計画がある,と言っていたのは,この辺りの話かな。

この地域の開発を担当するNEEPCO(注36)がこのティパイムック多目的ダム(注31)計画を進めており,今回,環境森林省(注37)がコメントを付してNEEPCO(注36)に申請を返した。コメントの内容は,ダムが壊れたら(注38)どうなるか,の評価が行われていない,と言うのである。前にこのプロジェクトを調査した中央水資源委員会(注39)がある程度の予測を行っており,5mから10mの水位上昇が,下流の都市で起こる,と計算している。

このダムが壊れたときの話はよく言われる話で,被害の詳細を出してもどうしようもないのだが,要するに下流への警戒システムの構築をどうするか,と言う問題で,日本でもダムを造ったときに,下流への警告装置を義務づけているのと同じレベルの話だ,と割り切ってしまえばよいのだが,洪水調節のために造る多目的ダムで,決壊の予想をしろ,と言うのは何ともおかしな話である。

本文

●インド,北東地域を繋ぐ送電網建設,いよいよ具体化

インドの北東地域は,水力とガスの包蔵を持っていて,電源としてのポテンシャルが高く,この地域で得られる電力を,電力需要の高いデリーなどの北地域へ送電するには,ネパールとバングラデシュが微妙に接しかけている狭いインド領,シッキムを通過しなければならない。素人目には,送電線ぐらいは何とかなるだろう,思うが,実際はなかなか難しいところがある,と現地のJBICの人から聞いたことがある。今日の記事は,この狭窄部の送電線のプロジェクトの計画について,報道されている。

電力融資公社PFC(注1)が発注主となって,北東地域から北地域への送電プロジェクトの入札が,多くの国際企業や国内企業の関心を引いている。国際企業としては,韓国電力(注2),イタリアのテルナ(注3),イスラエル電力(注4)などで,国内企業は,リライアンス(注5),タタ電力(注6),RPG送電(注7),GMR(注8)などが関心を示している。

入札に出されるのは二つの送電線プロジェクトで,いずれも40万ボルト交流送電線,ボンガイガオン(注9)ーシリグリ(注10)間と,プルニア(注11)ービハルシャリフ(注12)間で,特にこのシリグリ(注10)は,シッキム(注13)の一番狭いところに位置する町である。入札は2段階に分けられ,最初は資格審査を通過した企業に対して,次に資金調達能力が審査されることになっている。

電力省の担当者の話では,送電に関して国家送電公社(注14)の独占の幅を縮小する目的があり,今回の,全体的には小規模の送電網運営に参画する企業は余り多くないことが懸念されていた。資格審査については,2008年12月4日に応募を締め切り,同日オープンする。電力融資公社PFC(注1)は,このプロジェクトの入札事業のための特別機関,東北送電会社(注15)を創設する。

プロジェクト自体は,全体の一部の区間であるが,北地域への接続で重要な意味を持つ。北東から北への融通電力源としては,今後運転開始される,740MW,トリプラ天然ガス火力(注16),750MW,ボンガイガオン火力(注17),600MW,カメン水力(注18),2,000MW,スバンシリ水力(注19),などがあり,またシッキム(注13)の水力から北地域への輸入も考えられている。

CEA(注20)は,既にスバンシリ下流水力533MW(注21)とカメン水力156MW(注22)の合計689MWの北地域への割り当てを決定している。これらから電力を受け取るのは北地域の諸州,ウッタラプラデシュ(注23),ラジャスタン(注24),デリー(注25),パンジャブ(注26),ハリヤナ(注27),ヒマッチャル(注28),ウッタラカンド(注29),チャンディガール(注30)各州に及ぶ。

(注) (1) Power Finance Corporation (PFC),(2) Korea Electric Power Company,(3) Italian firm Terna SpA,(4) Israel Electric Corporation,(5) Reliance Infrastructure,(6) Tata Power,(7) RPG Transmission,(8) GMR Energy,(9) Bongaigaon,(10) Siliguri,(11)Purnea,(12) Biharshariff,(13) Sikkim,(14) Power Grid Corporation,(15) East-North Interconnection Company,(16) Tripura Gas (740 MW),(17) Bongaigaon thermal power station (750 MW),(18) Kameng hydro power (600 MW),(19) Subansiri hydropower (2000 MW),(20) Central Electricity Authority,(21) Subansiri Lower (533MW),(22) Kameng (156MW) hydropower,(23) Uttar Pradesh,(24) Rajasthan,(25) Delhi,(26) Punjab,(27) Haryana,(28) Himachal,(29) Uttrakhand,(30) Chandigarh,(31)

●インド,1,500MW,ティパイムック多目的,追加環境調査

すごいプロジェクトを進めている。1,500MW,ティパイムック多目的ダム(注31)は,ロックフィルダムの高さが168mであり,発電と洪水調節を兼ねている。マニプール(注32)とミゾラン(注33)の県境にあり,下流はブラマプトラ(注34)本流である。太平洋戦争で有名なインパール(注35)は,ティパイムック多目的ダム(注31)の東北方向,ミゾラン(注33)の県都である。昔,世界銀行のチャンドラン氏が,洪水の水をビルマにたたき落とす計画がある,と言っていたのは,この辺りの話かな。

この地域の開発を担当するNEEPCO(注36)がこのティパイムック多目的ダム(注31)計画を進めており,今回,環境森林省(注37)がコメントを付してNEEPCO(注36)に申請を返した。コメントの内容は,ダムが壊れたら(注38)どうなるか,の評価が行われていない,と言うのである。前にこのプロジェクトを調査した中央水資源委員会(注39)がある程度の予測を行っており,5mから10mの水位上昇が,下流の都市で起こる,と計算している。

このダムが壊れたときの話はよく言われる話で,被害の詳細を出してもどうしようもないのだが,要するに下流への警戒システムの構築をどうするか,と言う問題で,日本でもダムを造ったときに,下流への警告装置を義務づけているのと同じレベルの話だ,と割り切ってしまえばよいのだが,洪水調節のために造る多目的ダムで,決壊の予想をしろ,と言うのは何ともおかしな話である。

(注) (31) 1500MW Tipaimukh multipurpose hydro-electric project in Assam,(32) Mnipur,(33) Mizoran,(34) Brahmaputra,(35) Impahl,(36) North Eastern Electric Power Corporation (Neepco) ,(37) ministry of environment and forests,(38) a dam break scenario,(39) Central Water Commission,(40)

●インド,ヒマチャルプラデシュの水力で,オランダ企業が事情聴取

重要なプロジェクトが,企業と電力省幹部の間の紛争で,泥まみれになっている。プロジェクトは,ヒマッチャルプラデシュ州(注40)キナウル地区(注42)の400億ルピー規模,トーパン-ポワリ-ジャンギ水力(注41)である。プロジェクトを認可されていたのはオランダ企業のブラッケル社(注43)で,論争の相手は電力省のミッタル次官(注44)である。

紛争の原因はよく分からないが,ミッタル次官(注44)が資金力の面からの理由を付けて,ブラッケル社(注43)をプロジェクトから排除しようとしているところから発しているようだ。インドは本当にこれだから困る,このようなことで国の次官を相手に戦わなければならないようになったら,企業としては大変だ。トーパン-ポワリ-ジャンギ水力(注41)は,出力が,460MWと960MWの組み合わせ,巨大プロジェクトである。

(注) (40) Himachal Pradesh,(41) Thopan-Powari-Jangi hydropower project,(42) Kinnaur district,(43) Dutch power major Brakel Corp,(44) Principal Power Secretary Ajay Mittal,(45)

Reference

Philippines

●081116A Philippines, Manila Bulletin
ERC,18の暫定供給契約TSCを承認
ERC okays NPC’s 18 supply contracts
http://www.mb.com.ph/BSNS20081116141019.html

India

●081116B India, telegraphindia
1500MW,ティパイムック多目的,追加環境調査
Neepco asked to study dam break scenario
http://www.telegraphindia.com/1081116/jsp/northeast/story_10115791.jsp
●081116C India, telegraphindia
北東地域を繋ぐ送電網建設,いよいよ具体化
Long queue for Northeast power deal
http://www.telegraphindia.com/1081116/jsp/business/story_10117561.jsp
●081116D India, sindhtoday
ヒマチャルプラデシュの水力で,オランダ企業が事情聴取
Dutch firm wants hearing over controversial project deferred
http://www.sindhtoday.net/south-asia/36416.htm

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