2009年2月28日土曜日

中国の2030年はグリーン経済を達成と


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

昨夜,梅田で,電力の旧友と飲んでいて,揚水発電所を上手に使う方法で議論していて,LNGより石炭で揚水した電気の方が安いのではないか,と口を滑らした途端,全員から,アダチさん,何を言っているのか,と,こぼれる水力の水を使った後で優先的に使うのはLNGだ,と言い出した。その様なことはなかろうと,よく話を聞いてみたら,LNGの船が入ってきて,タンクが一杯だったらどうするか,と詰問された。

LNGのタンクはそんなにぎりぎりなのか,と思って調べていたら(注43),日本はそれぞれの企業がバラバラで,LNG備蓄については全く国家政策がないと言うことを知った。それに比べれば,欧州などは,地下タンクを利用したりして,地域の協力がまだ円滑に行っているようだ。原油の備蓄は早くから問題になっていたが,LNG船が到着して慌てふためく姿を想像して,ダムじゃあるまい,もっと造れと,少しおかしくなった,ごめんなさい。

日経の記事で,2009年2月26日のオバマ大統領の予算教書に含まれている環境政策の部分が解説してあったが,2020年に2005年比で温暖化ガス15%削減,の方針の下,排出量取引制度を導入し政府が企業に排出枠を販売して8年間で6,457億ドル,約63兆円相当の国庫歳入を目指すという。これは,政府は再生可能エネルギーへの補助を行えば,排出権がその分政府に転がり込む,と言う理屈か。

このことは今まで日本でも行っていたのですかね,私は不勉強か,この話は初めてのような気がする。地球温暖化取引は,国際的な枠組みの下に,国内でのサブ市場があるはずだから,その国内市場で政府が排出権を取得し,国内企業に売るというのか,或いは国際市場で売りに出して利益を得ようと言うのか。その時,原子力や大規模水力をどのよいに扱うのか,依然として小間物で取引するのか,よく見ておこう。

今日の収録した記事は,いずれもグリーン,フィリッピン政府のアロヨ大統領の強い意向が目に見えてくる。フィリッピンの再生可能エネルギーは,オバマ政権より前の話であるから,アロヨ大統領としては,オバマの先を行っている,という感覚もあるのだろう,随分力が入っている。ミンダナオの小さな45MWの水力の現場,それも民間企業のプロジェクトに駆けつけて,再生可能エネルギーの宣伝に,これ努めている。

中国の記事は,国際的なコンサルタント,マッキンゼーが書いた報告書の内容で,中国の,政府,産業界,学会の100人の専門家のインタービューによる,中国経済のグリーン化のポテンシャルを論じたものだ。ここでも,電気自動車の大量生産によって,原油輸入量を,2030年には今の30~40%削減できる,としている。少し控えめの数字のような気がするが,もっと大々的に考えればよいのに,と思う。

昨夜も友人との話題に出たのだが,電気自動車に変えれば当然,発電所は何を焚くのか,と言う話になってくる。同じ化石燃料を使ったとしても,発電所の効率は,40%~60%あるのに対して,現在のガソリン自動車の効率は10%程度という。まるでそれこそ石油をどんどん漏らしながら自動車が走っている,と言う光景に繋がる。中国の場合は,発電は原子力と水力を大量に投ずるが,それでも石炭はなかなかはずせない。

だから考えなければいけないのは,中国の場合は,ガソリン自動車を電気自動車に変えるのはよいが,実はガソリンから石炭に自動車の燃料が変わった,と言うような事態になりかねない。局地的な大気汚染などの環境問題には,電気自動車はある程度貢献するが,地球温暖化抑制には,それほど貢献できないという可能性がある。そこまで考えていてくれるのかな。自動車1億台としたら,1億KWの石炭火力が必要,これは困る。

(43) http://www.e.u-tokyo.ac.jp/cirje/network/EPM06/documents/EPM06_chap5.pdf,(44) www.kajima.co.jp/.../ex/kawagoe-fire-lng.html,(45) 

本文

●フィリッピンの電力の10%は水力で賄うことが可能である

フィリッピンは,昨年,2008年11月,再生可能エネルギー法案を可決(注29)して鼻息は荒い。オバマ大統領の当選直前の法案成立だから,アイディアとしてはオバマ政権の前を行っているつもりだ。他の東南アジア諸国は,フィリッピンの再生可能エネルギーの行く末をじっと睨んでいる。私も,フィリッピンの電源開発への意欲がないことを批判の材料にしているが,今日はフィリッピンの水力がどうなって行くのか,見てみたい。

今日の記事。再生可能エネルギー法(注5)が施行されると共に,水力開発に視点が集まり,フィリッピン全土の電力供給の10%を水力発電で賄うことが可能,との見通しが持たれている。水力発電は,化石燃料と違って,基本的に,二酸化炭素(注30)や有害なガスを発生しない。マラカニアン発表(注6)は,再生可能エネルギー法(注5)の成立で,輸入化石燃料からの離脱への追求の軌道に乗った,と見られている。

化石燃料は,国土の大気汚染と地球温暖化の弊害を持つと考えられている。地熱発電,水力発電,他の国産資源の開発による電源の増大は,フィリッピンの輸入燃料への依存を著しく減少させてきた。フィリッピン政府は,同様の趣旨で,地方電化への努力の中で,太陽光発電,小水力発電,風力発電,バイオマスなどの再生可能エネルギー資源を開発してきた。

エネルギー省(注8)は,バイオマス,小水力発電,太陽光発電,風力発電は,エネルギー源多様化の中で,再生可能エネルギーの重要な部分を占めており,平均割合は,27.5%に達していると。特に水力と地熱発電は,国産発電資源の割合を高めている。以前からアロヨ大統領(注9)は,エネルギー確保の問題は,地熱,国産原油ガス,太陽光,波力,バイオ燃料を含めてた,国産及び再生可能エネルギーの開発を必要としていると。

マラカニアン報告(注6)は,再生可能エネルギー開発を盛り上げることが,政府のエネルギー確保戦略の中の重要な要素をなしている,と表現している。

(注) (1) 090228A Philippines, pia.gov.ph,(2) Hydropower can supply 10% of RP's electricity requirements, say,(3) http://www.pia.gov.ph/default.asp?m=12&r=&y=&mo=&fi=p090226.htm&no=32,(4) officials by T. Villavert Manila (26 February),(5) Renewable Energy Law,(6) Malacanang press report,(7) Department of Energy Biomass,(8) DOE,(9) President Arroyo,(10) (26) http://www.geni.org/globalenergy/library/energy-issues/philippines/index_chart.html,(27) (29) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081127A.htm,(30) carbon dioxide,(31) 

●アロヨ大統領が水力現場を視察してクリーエネルギーに関心表明

木曜日,2009年2月26日,アロヨ大統領(注15)はミンダナオに飛んだ。そこで,フィリッピンの電力供給を強化するために,私は,クリーン・エネルギー資源の開発を強く望む,と演説している。マラカニアン報告によると,大統領(注15)は51.2億ペソ,42.5MWのシブラン水力プロジェクト(注28)の現場を訪ね,クリーン・エネルギーの開発は,電力問題を扱う中で,地球の持続的天然資源の開発の重要性を強調した。

アロヨ大統領(注15)は,この2009年10月運転開始予定のクリーンエネルギー,アボイテス系列のHEDCORのプロジェクト(注16)は,水力の経済的便益だけでなく,環境に優しく,地球温暖化抑制への動機付けになる,と語っている。また,発電所現場に立ち寄って,ダバオデルスール(注17),特にバゴボ-タガバワ地区(注18)への明確な便益を讃えた。

HEDCOR(注16)のロンキジョ社長(注19)はアロヨ大統領(注15)に説明,このプロジェクト(注28)は,25年間の事業運営に亘って,1,100人の地元民雇用と7億ペソの税収入をもたらす,と。また,建設費,150百万ペソの道路4kmが使用に供されると。他に,アポ山自然公園(注20)内の植林,流域保護のため,50百万ペソのHEDCOR(注16)の基金が設けられると。それよりも,環境に優しいことを強調。

(注) (10) 090228B Philippines, newsinfo.inquirer,(11) Arroyo favors clean energy sources,(12) http://newsinfo.inquirer.net/inquirerheadlines/nation/view/20090227-191326/Arroyo-favors-clean-energy-sources,(13) Philippine Daily Inquirer First Posted 06:24:00 02/27/2009,(14) Filed Under: Alternative energy, Electricity Production & Distribution,STA. CRUZ, DAVAO DEL SUR?,(15) President Gloria Macapagal-Arroyo,(16) Aboitiz-owned Hedcor project,(17) Davao del Sur,(18) Bagobo-Tagabawa communities,(19) Rene Ronquillo, Hedcor president and chief operations officer,(20) Mt. Apo Natural Park,(21) run-of-river hydro plants,(22) Sibulan Hydropower Plant B,(23) Barangay Sibulan,(24) Sta. Cruz, Davao del Sur,(25) Mindanao grid,(26) (27) http://www.flickr.com/photos/kitoy/3310338005/,(28) R5-billion, 42.5-megawatt Sibulan hydropower project (SHP) in Barangay Sibulan, Sta. Cruz, Davao del Sur,(29) 

●中国は2030年までにグリーン経済を確立することが出来ると

世界的に活動するコンサルタント企業のマッキンゼイ(注35)が,マクロな視点から,中国経済のグリーン化について,政府,産業界,学会などの専門家100人のインタービュ調査によりまとめた報告書の概要記事である。この報告書は,エネルギーと環境を主宰にしたもので,中国は将来数十年で,「グリーン経済(注36)」,を確立するポテンシャルを有している,としている。

中国は2030年までに,商業的には適用可能であるが,現時点では広く理解されてなく展開されていない技術への投資を通して,原油輸入量を30~40%,石炭需要を40%,温暖化ガス排出を50%,それぞれ削減することが期待できる。「中国のグリーン経済への脱皮(注39)」,と題して,今から,2030年の間,基本的な改革達成のためのグリーン技術(注37)を効果的に展開するため,毎年,1.5~2兆元が必要としている。

年間ベースで,エネルギー確保のために,中国全体のGDPの1.5~2.5%の投資が必要と。例えば,次の20年間に広範に電気自動車(注40)採用,大量生産することによって,2030年に於ける原油輸入を,30~40%削減することが出来る。また,原子力,風力,太陽光,水力などのクリーンエネルギー技術(注37)を開発して,発電への石炭依存を,現在の81%から34%に減らすことが出来る。

また,ビルや工場の広範なエネルギー効率改善技術(注41)の投入,工場の廃棄物や副産物の再利用の活発化,によって中国は,2030年には,電力と石炭需要を10%削減することが可能である。中国は過去15年で,経済の炭素効率(注38)を改善してきた実績がある。政府と民間の協力で,過去15年間,二酸化炭素と他の温暖化ガスを,毎年GDP当たり49%削減した実績あり,これは米国で1.7%,ドイツで2.7%であったものだ。

(注) (31) 090228C China, chinadaily,(32) China can build 'green economy' by 2030,(33) http://www.chinadaily.com.cn/bizchina/2009-02/26/content_7516870.htm,(34) By Zhao Tingting (chinadaily.com.cn),Updated: 2009-02-26 17:08 Comment) PrintMail,(35) McKinsey & Company,(36) green economy,(37) clean energy technologies,(38) carbon efficiency,(39) Transforming China into a "green economy",(40) electric vehicles,(41) energy efficiency improvement technologies,(42) http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/48/843e8ae600a2253d665bc609b69ada49.jpg,(43)

参考資料

フィリッピン

●090228A Philippines, pia.gov.ph
フィリッピンの電力の10%は水力で賄うことが可能である
Hydropower can supply 10% of RP's electricity requirements, say 
http://www.pia.gov.ph/default.asp?m=12&r=&y=&mo=&fi=p090226.htm&no=32
●090228B Philippines, newsinfo.inquirer
アロヨ大統領が水力現場を視察してクリーエネルギーに関心表明
Arroyo favors clean energy sources 
http://newsinfo.inquirer.net/inquirerheadlines/nation/view/20090227-191326/Arroyo-favors-clean-energy-sources

中国

●090228C China, chinadaily
中国は2030年までにグリーン経済を確立することが出来ると
China can build 'green economy' by 2030
http://www.chinadaily.com.cn/bizchina/2009-02/26/content_7516870.htm

2009年2月27日金曜日

フィリッピンの電力需要は下方修正か


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フィリッピンのレイエス・エネルギー長官が,フィリッピン経済の伸びの鈍化を懸念し,フィリッピン・エネルギー計画や長期電源開発計画を見直して,下方修正する作業に入る,と言っている。エネルギー計画や長期電源開発計画,それは一体何を指すのか,元々その様な基本計画がフィリッピンにあるのか,とぶつぶつ言いながら調べてみると,思うとおり,殆ど具体性のあるものはない。

今日,2009年2月27日,の日本の経済見通しは厳しく,日経によると,1月の鉱工業生産は10%減,有効求人は0.67倍,など,容易に底が見えない状況を報じている。フィリッピンも日本も,報道は誠に暗いが,下降傾向に早くも変化が訪れていることを,私は感ずる。日経は,企業の在庫調整に進む兆しが見えると報じているし,NY原油が終値バレル45.22ドルと言うのは,3日続伸であり,35ドル台だったものが急反発している。

もう一つ注目すべき記事は,ビジネスアイ(注40)の,「素材が反転か,中国目覚め,鉄鋼底打ち手応え」,である。中国鉄鋼最大手,宝山鋼鉄が2009年1月末にブラジルからの鉄鉱石輸入を約4カ月ぶりに再開すること,建設関係を中心に需要回復の兆候が出てきたと言うのである。中国の需要回復に刺激され,下落を続けていた各種鉄鋼関連の国際市況も上向き始めた,と言うのである。 

最近,中国の海外資金に異変が生じている,インドネシアやパキスタンの電力開発投資を渋っている,と書いてきたが,中国の資金の資源への投資はこの環境の中でも,驚異的な活動を行っている。宮崎正弘氏のコメントであるが,上海証券新聞が2月24日,中国投資公司(CIC)が2008年度に100億ドルの利益を出した,と伝えたことが書かれている。国内はともかく,中国が資源を買いあさる限り,経済に影響が出る。

フィリッピンのレイエス・エネルギー長官の悲観的な見方で,電源開発計画を見直す,というのは,少し悲観的すぎる,と言うよりは,私の言いたいことは,電源開発というのは10年単位の長い話で,半年ぐらいの景気の落ち込みで電源開発を修正したりすると,途端に後悔せざるを得ない局面が出てくるだろう,と言うこと。電力やエネルギー開発,少なくともマスタープランは,10年平均曲線ぐらいで捉えるべき,と長官に言いたい。

フィリッピンの電源計画,需給予想は,今日もトランスコのHPに出ているが,ルソン系統は,今日,2009年2月27日午前11時58分で,ピーク需要が,6434MW,設備は,対応できる供給力が,8,022MWで,1,288MW余っている状態,しかし,ビサヤス系統は,ピーク1,115MWで供給力を越えており,ミンダナオは,ピーク1,060MWで,予備力は僅かに,301MWである。ちょっとゆっくりするか,と言う状況ではないでしょう。

長期計画は,エネルギー省のHPに出ているが,この忙しいときに,2006年作成のものをまだ持ち歩いている精神が気にくわない。数字は既に陳腐化しており,インディカティブ,と書いてある電源も,現実味が全くない。競争市場に持って行けば,政府が手を出さなくても,民間企業が競争して投資してくれる,と言うのは間違いで,電力,特に電源は,投資企業が先を見ながら競争で発電所を造るには,視野が余りにも長すぎるのである。

(注) (40) http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200902270014a.nwc

本文

●フィリッピンのエネルギー省がエネルギー計画を見直しへ

The demand crunch 不足 wrought 仕上げ by the global economic recession has prompted the Department of Energy (DoE) to revisit the Philippine Energy Plan, with it indicating that the close of supply-demand gap for power supply may slip to later periods. The existing Power Development Program (PDP) anticipated new capacity to be on stream starting 2011, but as demand drops, supply is seen getting stretched for several years. (注3冒頭引用)

フィリッピンに長期電源開発計画はあるのか,改めて調べてみても,JICAが手がけたものしか見つからない,NAPOCORの中に,2006年に見直したものがあるが,これはJICAが実施したマスタープランの内容,殆どそのままだろう。とにかく電力改革に一生懸命で,競争市場さへ造れば,電源は何とかなる,と言う構え。今日の記事を見ても,レイエス・エネルギー長官には,将来需給への関心は少ない。

今日の記事。世界金融危機がもたらした需要の減退により,電力需給の逼迫は遠のき,エネルギー省DOE(注5)のエネルギー計画(注6)の見直しが急がれている。現在の電力開発計画PDP(注7)は,新しい電源の投入は2011年としているが,需要の減退で,その時期は数年延びるだろう。レイス・エネルギー長官(注8)は,ある地域では,電力需要が伸びず,供給力は安定していると。

短期的には,電力を多く使う半導体産業は縮小の方向にあると,そうしてこのことは,新規電源や設備の必要時期を遅らせている。投資意欲の減退があり,積極的な開発は,新たな資本流入の時期を待って,延期されるだろうと。ルソン系統(注10)については,電源拡充の必要がある時期は送れるが,ビサヤスとミンダナオ系統(注9)については,相変わらず需給に厳しいものがあると。

このことは,発電企業にも同じ雰囲気の中にあり,プロジェクトの実施時期を見直している。例えばルソン島では,景気後退の悲惨な結果を受けて,特別経済区(注11)で事業運営を縮小,ある企業は停止しているものが出ている。ただ,ビサヤス系統(注9)は別で,ある地区では輪番停電を行っているところがあり,電源の投資計画が動いている。

(注) (1) 090227A Philippines, Manila Bulletin,(2) DoE to review energy plan as slump dampens demand,(3) http://www.mb.com.ph/BSNS20090226149084.html,(4) By MYRNA M. VELASCO,(5) Department of Energy (DoE),(6) Philippine Energy Plan, (7) Power Development Program (PDP),(8) Energy Secretary Angelo T. Reyes,(9) Visayas and Mindanao grids,(10) Luzon grid,(11) special economic zones,(12) 

インドネシアのプルタミナへの補助金を大幅カットへ

The government will be forced to dig deeper into its pockets for fuel subsidy allocations after a House of Representatives’ commission agreed Wednesday to give state oil and gas firm PT Pertamina greater cuts for distributing subsidized fuels.(注14冒頭引用)

水曜日,2009年2月15日,インドネシア国会の委員会(注16)が,国有石油ガス企業プルタミナ(注17)の配送部分の補助金を大幅にカットすることに同意した結果,政府は,補助金予算を大幅に下げることになった。エビタ担当総局長(注18)によると,正確な数字はまだ分からないが,配送のコストが高く,最初に想定していたように,全部の燃料に対する補助金総額は,32兆ルピア,約26億ドル相当,になるだろうと語った。

新しい制度では,プルタミナに対して固定費を採用することになる。以前から,アルファ(注19)と呼ばれていた支払いは,MOPS(注20)に対する%で計算されてきた。最初は,2009年に対して,アルファ(注19)はMOPS(注20)の8%に設定されていた。エビタ担当総局長(注18)は,現在の低い原油価格で考えると,このアルファ(注19)設定では,プルタミナ(注17)は苦しいだろう,と語っている。

新しい制度では,リッター当たり,563.57~571.89ルピアの間の固定値に設定されることになる。この幅は,インドネシア原油価格ICP(注21)の価格バレル当たり45~60ドルを基礎に置いている。この値は昨年設定された,587~685ルピアに比べ高くないが,%から見ると事実上高くなる。2008年の原油価格は,今年の予想,バレル45~60ドルに比べ遙かに高い。以下省略。

(注) (12) 090227B Indonesia, The Jakarta Post,(13) Pertamina Govt braces for higher fuel subsidy,(14) http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/26/govt-braces-higher-fuel-subsidy.html,(15) Alfian , THE JAKARTA POST , JAKARTA | Thu, 02/26/2009 8:54 AM,(16) House of Representatives’ commission,(17) PT Pertamina,(18) Energy and Mineral Resources Ministry’s director general for oil and has Evita H. Legowo,(19) alpha,(20) MOPS (Mean of Platts Singapore daily oil price traded),(21) Indonesian Crude Price (ICP),(22) (39) http://i16.photobucket.com/albums/b3/dave_win/Balikpapan/KilangPertamina.jpg,(40) 

●インドネシア政府が石炭の最低料金を設定へ

To complement the recent enactment of the new mining law, the government is preparing to introduce a coal pricing index which will set the minimum selling prices required for producers.Energy and Mineral Resources Ministry Purnomo Yusgiantoro said Tuesday that a government team was working out how to formulate the index which will be used as the coal prices benchmark. (注24冒頭引用)

インドネシアの,昨年,2008年12月,国会で承認された鉱業法の影響については,2009円2月14日付本HP(注36)でも扱ったが,このときは,石油ガス企業の問題で,国内企業を優遇する内容を議論した。今日の記事では,石炭価格の統制を考えている記事で,変動する石炭価格の中で,如何にして政府の歳入を守るか,に重点が置かれている。

今日の記事。新しい鉱業法(注26)の施行を完成するために,インドネシア政府は,石炭価格指標(注37)を設定する準備に入っている,この指標(注37)は,生産企業に対する最低売炭価格を指示するものである。プルノモ・エネルギー大臣(注27)は,火曜日,2009年2月24日,政府は,石炭価格の標準として使用するための指標をどの様に設定するか,作業を行っているところである,と語った。

その日,オーストラリアとの第3次鉱業会議OZIMINE20009(注28)を主宰した大臣(注27)は,この石炭価格指標(注37)で,年次毎に異なる石炭生産量に対して,政府の歳入を最適化することを狙っている,と語っている。このOZIMINE20009(注28)には,80社以上のオーストラリアの鉱業企業が参加していた。プルノモ・エネルギー大臣(注27)は,この石炭価格指標(注37)は,法律(注29)の派生規則として設定すると。

プルノモ・エネルギー大臣(注27)は,この石炭価格指標(注37)は,既存のICI(注30)やBJI(注31)など世界的な指標を参考にすると。バンバン担当総局長(注32)は,石炭価格指標(注37)は,月ごとに変化し,最低の売炭価格を基礎とする予定だ,と言っている。即ち,石炭生産企業は,この石炭価格指標(注37)より安く売ることは出来ない,勿論,カロリー値(注33)や契約場所によって違うが,生産企業には有利だろうと。

バンバン担当総局長(注32)は,石炭価格指標(注37)は,石炭からの政府歳入の確保に資するとしている。昨年,2008年11月のセミナーで,バンバン担当総局長(注32)は,指標に従わない石炭企業には制裁を課すことになろうと。また,インドネシアの石炭生産の80%以上を占めていた所謂,PKP2B(注34)で知られる第一世代の石炭契約は,実際には価格が規制されてきている,と言っている。

しかし,このような規制は,地域政府が行った石炭契約KP(注35)には適用されてきていない。バンバン担当総局長(注32)は,このような石炭契約KP(注35)が問題なのだ,と言っている。この石炭価格指標(注37)は,2009年10月に設定され,直ちに施行されると。この派生的な規則は,石炭や金属の国内の生産企業にも適用されると。

プルノモ・エネルギー大臣(注27)は,多くの投資企業は,この派生的な規則の内容に関心を持っており,事業運用の実際は,規則の内容によると。長い間議論が続いた鉱業法(注26)は,昨年,2008年12月に国会を通過,現在,鉱業法(注26)を有効にするための4つの運用規則の作成に取りかかっている。

(注) (22) 090227C Indonesia, The Jakarta Post,(23) Govt to regulate minimum coal selling prices,(24) http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/25/govt-regulate-minimum-coal-selling-prices.html,(25) Alfian , The Jakarta Post , Jakarta | Wed, 02/25/2009 1:53 PM | Business,(26) mining law,(27) Energy and Mineral Resources Ministry Purnomo Yusgiantoro,(28) 3rd Australian Mining Exhibition and Conference (OZMINE 2009),(29) Law No. 4/2009 on coal and mining,(30) Argus's Indonesian Coal Index (ICI),(31) Barlow Jonker's index and the Global index.,(32) Bambang Setiawan, director general of coal, mineral, and geothermal at the ministry,(33) calorific values,(34) acronym PKP2B,(35) mining contract (KP),(36) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090214D.htm,(37) coal pricing index,(38) http://www.leighton.com.au/verve/_resources/LAS_LoaJananCoalMine09.jpg,(39)

参考資料

フィリッピン

●090227A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのエネルギー省がエネルギー計画を見直しへ
DoE to review energy plan as slump dampens demand
http://www.mb.com.ph/BSNS20090226149084.html

インドネシア

●090227B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのプルタミナへの補助金を大幅カットへ
Pertamina Govt braces for higher fuel subsidy
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/26/govt-braces-higher-fuel-subsidy.html
●090227C Indonesia, The Jakarta Post
インドネシア政府が石炭の最低料金を設定へ
Govt to regulate minimum coal selling prices
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/25/govt-regulate-minimum-coal-selling-prices.html

2009年2月26日木曜日

米国エネルギー長官が揚水発電開発主唱


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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

オバマ大統領が50分間に亘って国会演説を行ったが,その中の,エネルギー自給を主張する下りでは,次のように報じられている。大統領は,国内の二酸化炭素排出量の上限を設け,再生可能エネルギーの生産を促進する法案を可決するよう議会に求めた。予算案では,風力・太陽光発電、バイオ燃料やクリーン・コール(環境調和型の石炭利用)および低燃費の国産車の普及に年間150億ドル拠出することが盛り込まれると。

数年前に,3万KWの海水揚水発電所が,実験的に沖縄で,Jパワーと通産省の協力で完成した。一応,実験の役割を終えたこの揚水発電所の始末について相談を受けたことがあったが,その時,私は,その揚水発電所の周囲に巨大な風力と太陽光発電を造って,揚水発電所の上部池に水を貯めておけばよい,いわば,出力不安定な再生可能エネルギーのバッテリーにすれば,と提案したが,誰も分かってくれなかった。

これは,その揚水発電所が30,000MWと小規模で,しかも,建設費が既に目的を終えて償還済み,と考えた場合,即ちそこに揚水発電所が既にあると考えた場合は,損失を考えてもバッテリーより安くつくのではないか,と思ったわけである。一般には,揚水は大規模にして資本の負荷を軽くし,揚水には石炭火力や原子力など,燃料費の安いもので揚水して,電力需要がピーク時にあるとき発電する,と言う理論である。

米国のチュー・エネルギー長官が,急に,再生可能エネルギー開発のためには揚水発電所が欠かせない,と言い始めたから大変だ。これに悪のりした感じで乗っていったのが,米国水力発電協会NHAのシオッチ専務理事である。揚水発電所への投資を促すため,免税措置などの優遇政策を,エネルギー法案の中に盛り込むよう,ロビー活動を始めるという。

揚水発電所は,私の感じでは,揚水するための原資を石炭火力と考えた場合は,規模として,1,000MWぐらいなければ,ピーク供給力として優位性を保てない,と思っている。だから,そのレベルの規模に匹敵する再生可能エネルギー開発が頭の中になければ,チュー・エネルギー長官のような発言は出来ない。まあ,彼はそれ以上の規模の再生可能エネルギー開発を,頭の中に描いているのであろう。

それともう一つ問題は,設備が2重に必要になる,と言うことである。風力が1,000MWあれば揚水も1,000MW必要で,1,000MWの需要を満たすために,2,000MWの設備が必要になる,これは発電経済ではもっとも避けたいケースである。オフピークに水を上げてピークに発電する,と決まっていれば,設備は2重になっていない。それにしてもとにかく,揚水発電所の損失を入れれば,とても高い電気になってしまう。

オバマ大統領の発言の中で,3,000マイルの送電線を新規に建設して,各所に散らばる再生可能エネルギーを集めて回るという。何処に何があるか,いつ電気があるのか,を知るために,知的送電網の発想が出てくるわけだが,余れば貯めておいてくれる,必要であれば風が吹いていなくても電気を送ってくれる揚水発電所は,オバマ政権の政策の中では,魅力的に映るのだろう。まあ,やれと言うならやりますよ,と言うところか。

本文

●パキスタンのAJK州首相がニールムジェールム水力からロイヤリティ徴収と

Azad Jammu and Kashmir (AJK) Prime Minister, Sardar Yaqboob, has said that the Pakistan government would furnish a royalty to AJK in lieu of the Neelum-Jhelum hydropower project. Yaqoob was talking to the media after visiting the head office of the City District Government Karachi (CDGK) at Civic Centre on Tuesday.(注3冒頭引用)

国境未確定地域のカシミール,その中でもパキスタン実行支配区域のアザド・ジャム・カシミール地域AJK(注4)には,そのインダス河上流に,969MW,流域変更を伴う大規模水力プロジェクト,ニールムジェールム(注6)があって,2009年2月22日付本HP(注8)にあるように,中東の資金を中核に,中国企業も加わって,着工に踏み切った。また,パキスタンには,憲法上,水力便益の地元配分が規定されている。

今日の記事。アザド・ジャム・カシミール地域AJK(注4)を統治する州政府のヤクブーブ首相(注5)は,パキスタン政府はAJK(注4)に対して,ニールムジェールム水力(注6)のロイヤリティを支払うべきだ,と主張した。また,このベースとなるものは,マングラダム(注7)で,このロイヤリティは,AJK(注4)州政府の大きな拠り所になっていると,その額は,年間,13億ルピーである。

ニールムジェールム水力(注6)は,約1,000MWであり,AJK(注4)全体としては,8,000~12,000MWのポテンシャルを持っている。

(注) (1) 090226A Nepal, thenews,(2) AJK to get royalty from Neelum-Jhelum hydropower project’,(3) http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=164458,(4) Wednesday, February 25, 2009,By By our correspondent ,Karachi,(4) Azad Jammu and Kashmir (AJK),(5) Azad Jammu and Kashmir (AJK) Prime Minister, Sardar Yaqboob,(6) Neelum-Jhelum hydropower project,(7) Mangla project,(8) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090222A.htm,(9) 

●米国水力協会NHAがエネルギー長官の揚水発言に拍手

The following is a statement from National Hydropower Association executive director Linda Church Ciocci on comments by Energy Secretary Steven Chu at the Center for American Progress Clean Energy Project's Building the New Economy event in Washington, D.C., yesterday:"The National Hydropower Association welcomes Secretary Chu's comments about the integral role pumped-storage technology must play in our national plan to expand our clean-energy resources and integrate variable renewable-energy resources into the transmission grid. (冒頭引用)

米国水力発電協会NHA(注13)のシオッチ会長(注14)は,昨日,2009年2月23日,ワシントンの米国クリーエネルギービル)注16)で行われたエネルギー関係のイベントに於けるチュー・連邦政府エネルギー長官(注15)の発言に注目し歓迎している,それは,揚水発電(注17)は系統に於いて重要な役割を果たすべきで,クリーンエネルギー拡大と,変動の激しい再生可能エネルギー(注18)を円滑に送電網に乗せる役割だ,と。

シオッチ会長(注14)は続けて,長官(注15)が指摘したように,現在に於ける米国全土のエネルギー貯留設備は限られており,その設備の殆どは,20,355MWの揚水発電所(注17)である,今後,計画されている莫大な風力発電や太陽光発電のことを考えると,揚水発電の容量を増やすことは,高い優先度を持っている,としている。NHA(注13)の揚水発電委員会は,この重要な設備の拡大について,検討を行っている,と。

我々は,エネルギー産業全体の活動として,揚水発電(注17)の理解を拡大し,すべての米国人のためである確実な政策を生み出すために,連邦政府及び議会に対して,支援を求めたい,と。我々の目指すゴールの一つは,新規の揚水発電プロジェクト(注17)に対する投資企業への意欲の醸成と,早急な開発への助勢であると。現在,連邦政府は,揚水発電(注17)を拡大する構想は持っていない。

NHA(注13)は,揚水発電開発(注17)への動機を高めるための,投資に際しての租税免除やその他の助成措置の政策化を,主唱するものだ,と。チュー長官(注15)に言っていることは正しい,我々米国は,再生可能エネルギー(注18)開発を開始するためにも,揚水発電所(注17)を開発する必要がある,と。

また別のエネルギー貯留の新技術の開発も必要であるが,揚水発電(注17)は既に十分完成した技術であるから,開発を行うべきだ。我々は,長官(注15)や政府のスタッフに,揚水発電(注17)への積極的な投資を助成する政策の実現を,促すものである,と。これは同時に,雇用など景気刺激策の一環をなすものだ。NHA(注13)は,チュー長官(注15)に協力して,揚水発電(注17)への積極的な投資を実現するよう,努力する,と。

(注) (9) 090226D Power, renewableenergyworld,(10) NHA applauds Secretary Chu's comments on pumped storage,(11) http://www.renewableenergyworld.com/rea/partner/national-hydropower-association-3340/news/article/2009/02/nha-applauds-secretary-chus-comments-on-pumped-storage,(12) Washington, DC (February 24, 2009) ?,(13) National Hydropower Association,(14) executive director Linda Church Ciocci,(15) Energy Secretary Steven Chu,(16) Center for American Progress Clean Energy Project,(17) pumped-storage,(18) renewable-energy,(19) 


参考資料

ネパール

●090226A Nepal, thenews
ネパールのAJK州首相がニールムジェールム水力からロイヤリティ徴収と
AJK to get royalty from Neelum-Jhelum hydropower project’
http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=164458

●090226D Power, renewableenergyworld
米国水力協会NHAがエネルギー長官の揚水発言に賛意
NHA applauds Secretary Chu's comments on pumped storage
http://www.renewableenergyworld.com/rea/partner/national-hydropower-association-3340/news/article/2009/02/nha-applauds-secretary-chus-comments-on-pumped-storage

2009年2月25日水曜日

インドネシア問題など中国資金の政策に異変が


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

インドネシアが積極的に進める電源開発,特に,10,000MW石炭火力クラッシュプログラム(注9)については,苦しいジャワバリ系統(注15)の需給緩和のために,よく頑張っている,と評価してきたが,ダムと石炭火力は任しておけ,と言う中国が,この殆どの発電所を引き受けることになって,インドネシアは喜んだものの,公害など,二の次にした電源確保に,やや批判も出てきていた。

しかし,少しぐらつき始めたのは,今月に入って,2009年2月11日(注56)の,「インドネシアのPLN,電源で中国の支援が必要」,の記事で,中国が約束の80億ドルの支出に滞りが出ていること,更に,2009年2月13日(注57)の,「インドネシア,中国が資金支援で,利子率上げを主張」,として,明らかに中国の姿勢に変化が出てきたことが明確になり,大統領以下,慌てていることが明らかになってきた。

今日の記事。インドネシアのムルパティ航空(注5)と中国の航空機製造企業シアン(注6)の間の航空機契約問題が,PLN(注59)のエネルギー開発計画(注7)に遅れをもたらすことになりそうだ。プルノモ大臣(注8)は,月曜日,2009年2月23日,ムルパティ航空(注5)の契約問題が,PLN(注59)の10,000MWクラッシュ・プログラム(注9)を遅らすかも知れない,それはプログラム(注9)が大きく中国の銀行群に依存しているから,と。

中国は,米国の経済落ち込みで輸出が大打撃を受けて,大きく国内需要に方向転換する,と世界に宣言した。ところが,ここ一月余りの中国の動きには,目を見張るものがある。最大の注目は豪州の鉱業企業リオティントへの200億ドル近い出資で,豪政府は何らかの規制をかけようとしている。その他,中国国家開発銀行によるロシア政府系石油会社への資金貸与とその見返りなど,世界が注目している。RD(注59)を引用する。

「世界は中国を必要としている。そして中国はこの立場を利用し,過去の投資や買収で犯した過ちを繰り返すことなく,将来性のある有利な買収を進めようとしている。中国が資源国の原料生産企業を狙っていることは疑う余地もないが,平常時には政治上の制限などでそれが難しかった。しかし金融危機という非常時の今,中国は世界第3の経済大国の影響力をもって行動を開始している,と記事は分析している(翻訳・編集/津野尾)」。

私は,上の記事からも,国内需要もさることながら,今が買い時と悟った中国金融が大きく舵を取り始めた,と見る。そこに,膨大な支援を約束されたインドネシアとパキスタンの問題があると思う。パキスタンのザルダリ大統領は,上海で足止めされ,インドネシアは,カラ副大統領が身を挺して獲得してきた80億ドルを棚上げされようとしている。

おそらく,「過去の投資や買収で犯した過ち」,というのは,インドネシアのカラ副大統領やパキスタンのザルダリ大統領に約束した莫大な石炭火力と水力ダムの問題も含むだろう。元々は,中国国内企業の海外進出を図るための莫大な投資の積もりであったが,もっとやらなければならないことがあるはずだ,と誰かが言い始めたのであろう。インドネシアの80億ドル,パキスタンに至っては100億ドルを越す約束になりそうだった。

今が中国にとっても山場で,世界の今や価値の下がった資源を買いまくって,一段落ついたら,再び支援を再開するものと思うが,それが半年ぐらいはかかる,と予測すれば,被害を受けるのは,一刻も早く発電にこぎ着けたいインドネシアであり,政権維持のためにも,バシャダムなどの早期着工を願うパキスタンにとっては,耐えられない時間だろう。

なお,パキスタンについては,日本と米国が動き始めていることに,注意しよう。また今日は,ベトナムに関して,原子力開発の具体的な日取りと,電力制度改革に関するEVNの抵抗,などを拾っているので,本文を見てください。

(注) (59) http://www.recordchina.co.jp/group/g28828.html,(60)

本文

●ベトナムの原子力開発は4月にも国会へ上程へ

The first nuclear power plant project in Vietnam will be kicked off in 2015 and will become operational in 2020. Director of the Vietnam Nuclear Energy Institute Vuong Huu Tan talks more about the project. Vietnam is taking the first steps to build its first nuclear power plant. Why is the country aiming at nuclear power and what will be the scale of the first plant? (注33冒頭引用)

ベトナムの原子力開発計画が記事になるのは,昨年,2008年5月13日(注49)の,「原子力発電所開発が視野に入ってきた」,の記事以来である。制度的には進めていますよ,と言う姿勢であるが,技術的な内容については,勿論海外技術陣任せである。ただベトナムのすごいところは,既に2地点が具体的に決まっていること,これはタイでは真似の出来ないところである。

今日の記事。ベトナム最初の原子力発電所は,2015年に着工し,2020年に運転開始の予定である,として,ベトナムエネルギー研究所VNEI(注37)のブオン・フ・フー部長が,詳細な開発への日程を語っている。記者の一問一答である。ベトナムに於ける原子力発電の必要性は高まっている,それは,水力と火力には限界があり,近隣国からの輸入もその供給力の確保とはほど遠い,そうなれば原子力発電しかない,と。

原子力開発にとって甚だ好ましい環境は,政府のトップがその開発を支えていてくれることだ。ベトナム7政府は,その最初の原子力発電所の規模は,4,000MWで,場所はベトナム南部,ニン・トウアン県(注40)のフオック・ディン(注38)とビン・ハイ(注39)である。運転開始は2020年。どの様な問題点が,との質問に,多くの難関あり,人材,資金,インフラ,その他で,すべての問題を研究し解決すべく努力していると。

原子力発電所を動かすためには,200~250人のスタッフが必要,これらは,火力運転員や研究施設の訓練で養成してゆく,まだ運転開始まで10年以上の日時がある。原子力産業分野の人材開発は,教育訓練省(注41)が担当するが,その全体計画は,今年,2009年初めにも政府へ提出される。原子力技術の選択は重要だが,専門家は,軽水炉型(注50)に関心を持っている。今,専門家達がその選定指針を作成している。

多くの海外の技術を研究しているが,ウエスティングハウスWH(注43)が候補に挙がっている,それは日本やフランスで実績を持っているからだが,しかし現段階では,幅を広げて研究している。政府は国会に対して,最初の原子力発電所の投資計画書を,2009年4月に提出しなければならない。2009年2月15日に,第2回目の委員会が開かれた。ベトナム原子力協会VNPA(注44)とエネルギー研究所ESTI(注45)が主管する。

2009年3月15日に,第2回の協議会を開催する。国家審査委員会(注51)は,作業部隊の報告を聞いて決定し,投資計画書を,4月に国会に上程する。国会承認と同時に,政府は的確な担当部署を選んで,プロジェクト形成と協力グループを選定する。プロジェクト形成までに2年が必要だろう。2015年工事開始となるよう,国際入札やコントラクターの選定を行う。2020年運転開始は,国の絶対目標である。

ターンキー(注52)の制度をとるが,全面的に海外企業に依存するわけではない。例えば韓国の例を見ると,2次的な仕事で最初の資金の20%は国内企業が担当している。韓国はベトナムにとってよいモデルで,彼等は,1987年に原子力発電所を開発し,1995年には既に技術の供給者となっていた。

ベトナムの原子力開発は,2020年までに,4000MWの計画である。ニン・トウアン県(注40)に二つのサイトが準備されており,一つは,ニン・フオック地区のフオック・ディン村(注47),他の一つは,ニン・ハイ地区のビン・ハイ村で,いずれも,2,000MWタービンを設置する予定である。

(注)(33) 090225A Vietnam,.vietnamnet,(34) Nuclear power project to be submitted to NA in April,(35) http://english.vietnamnet.vn/interviews/2009/02/831639/,(36) 00:23' 24/02/2009 (GMT+7),Mr. Vuong Huu Tan.,VietNamNet Bridge ?,(37) Director of the Vietnam Nuclear Energy Institute Vuong Huu Tan,(38) Phuoc Dinh,(39) Vinh Hai,(40) Ninh Thuan province, (41) Ministry of Education and Training,(42) National Assembly,(43) Westinghouse’s AP 1000 technology,(44) Vietnam Nuclear Power Association,(45) Energy Science and Technology Institute,(46) Ninh Thuan province,(47) Phuoc Dinh commune in Ninh Phuoc district,(48) Vinh Hai commune in Ninh Hai district,(49) http://english.vietnamnet.vn/biz/2008/05/782673/,(50) light water nuclear power plant,(51) state evaluation council,(52) turn-key,(53) 

●ベトナムの電力改革でEVNは反対の立場を表明

The electricity price will increase on March 1, 2009, while the capability of the Electricity of Vietnam (EVN) to settle electricity shortages remains unclear. Meanwhile, EVN has expressed concerns that a strong reform of EVN would make electricity shortages more serious and make it more difficult to ensure energy security. (注25冒頭引用)

ベトナムの電力改革については,過去を見てみると,多くの不毛の議論が行われている。電力不足と電気料金の問題が,この議論に密接に絡んでくる。電力料金は上げたが,電力不足解決への決め手はなく,ましてや電力改革への糸口にも達していないのが現状だ。フィリッピンとは目と鼻の先にありながら,これほど議論の内容が違うのか,と国と国の違いを実感する記事である。

最近の議論を見てみると,2009年1月6日(注53)に,「ベトナム,電気料金値上げ案,政府へ提出」,2008年12月7日(注54)に,「ベトナム,産業通商省,広範な電力改革を意図」,2008年12月3日(注55)に,「ベトナム通産省,電気料金システム競争原理導入を提案」,2008年8月16日(注56)に,「ベトナムへの電力投資,独占企業EVNの存在が問題に」,と議論が続くが,今日の記事でもトンネルは抜けていない。

今日の記事。ベトナムの電力料金値上げは,2009年3月1日に実施されるが,電力危機に対応すべきEVN(注27)の機能は見えてこない。依然としてEVN(注27)は,EVN(注27)の改革は,電力不足を更に深刻化し,ネルぎー確保はますます困難となる,と主張し続けている。産業通商省(注28)のド・フー・ハオ副大臣(注28)は,電力産業改革のプロジェクトは,既に政府に提出済みである,と言っている。

ハオ副大臣(注28)は,EVN(注27)が,発電,送電,配電のすべての設備を握っており,すべての投資企業は,まずEVN(注27)と交渉しなければならない,まずEVN(注27)の持つ発電所を切り離すことが,緊急の課題だ,と言う。計画によると,EVN(注27)は,発電所から電気を買って配電企業に卸売りすることになり,EVN(注27)は最早,配電企業の一部,と呼ばざるを得ない。

これに対してEVN(注27)のディン・クワン・チ副総裁(注29)は,改革は電力生産と配電に,問題を引き起こす,EVN(注27)こそが,発電所をもっとも競争力のある状態で運用できる唯一の組織だ,と言っている。計画では,送電部門を独立させることになっているが,ディン・クワン・チ副総裁(注29)は,送電企業だけでは,資金を集められない,システムの拡張もままならない,と。

更にディン・クワン・チ副総裁(注29)は,EVN(注27)を分割してしまうと,高いIPPの電気を誰が買うのか,今でこそ,EVN(注27)が自分で持つ安価な水力とプールすることによってIPPの電気を吸収している,としている,他の国の例を見てみるとよい,改革は即,エネルギー確保の困難を経験しているではないか,と。

それでもなお専門家は,ベトナムの電力の競争市場を創出するために,改革を急ぐべきだ,と言っている。ハオ副大臣(注28)は,EVN(注27)の改革は絶対である,とし,しかし段階を踏む必要があり,実際の電力競争市場を持つのは,2024年以降だ,と言っている(なんだ,やらないと言うことか)。ハオ副大臣(注28)も,送電部門が独立すると,資金調達が難しくなる,と認めて,年10億ドルの資金をどうするか,と言っている。

専門家はこれに対して,適切な利益を確保すれば,資本は問題ないと。ファム・ドウイ・ヒエン教授(注30)は,数年間電力を研究しているが,EVN(注27)は多くの問題を抱えている,EVN(注27)は,改革するとエネルギー確保は難しいと言っているが,現状のEVN(注27)でもエネルギーは確保できていないではないか,と言っている。

他の専門家の多くも,ヒエン教授(注30)に近い意見で,国家のエネルギー確保を一公社に任せるべきではない,現在の状況の中で,電力監督庁(注31)と産業通商省(注32)が,エネルギー確保に責任を持つべきで,将来はベトナムとして,もっと強力な指導官庁を組織すべきだ,と主張している。(民営化なのかその逆行を言っているのか,全然分からない状況だ,混乱の上に混乱)。

(注) (23) 090225B Vietnam, english.vietnamnet,(24) EVN does not want reform,(25) http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/02/831540/,(26) 16:58' 23/02/2009 (GMT+7) VietNamNet Bridge ? ,(27) Electricity of Vietnam (EVN),(28) Deputy Minister of Industry and Trade Do Huu Hao,(29) Deputy General Director of EVN Dinh Quang Tri,(30) Prof Pham Duy Hien, former Head of the Da Lat Nuclear Research Institute,(31) Electricity Regulatory Authority,(32) Ministry of Industry and Trade,(33) (53) http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/01/822435/,(54) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081207A.htm,(55) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081203A.htm,(56) http://english.vietnamnet.vn/reports/2008/08/798976/,(57) 

●インドネシアの航空機中国契約問題がPLN開発計画に影響

A contract row between state airline PT Merpati Nusantara and China’s Xi’an Aircraft Industry may cause delays for a key PLN energy program. Energy and Mineral Resources Purnomo Yusgiantoro said Monday that the Merpati contract problem could delay the state power firm’s 10,000 MW crash program, which largely depends on finance from Chinese banks.(注3冒頭引用)

インドネシアが積極的に進める電源開発,特に,10,000MW石炭火力クラッシュプログラム(注9)については,苦しいジャワバリ系統(注15)の需給緩和のために,よく頑張っている,と評価してきたが,ダムと石炭火力は任しておけ,と言う中国が,この殆どの発電所を引き受けることになって,インドネシアは喜んだものの,公害など,二の次にした電源確保に,やや批判も出てきていた。

しかし,少しぐらつき始めたのは,今月に入って,2009年2月11日(注56)の,「インドネシアのPLN,電源で中国の支援が必要」,の記事で,中国が約束の80億ドルの支出に滞りが出ていること,更に,2009年2月13日(注57)の,「インドネシア,中国が資金支援で,利子率上げを主張」,として,明らかに中国の姿勢に変化が出てきたことが明確になり,大統領以下,慌てていることが明らかになってきた。

今日の記事。インドネシアのムルパティ航空(注5)と中国の航空機製造企業シアン(注6)の間の航空機契約問題が,PLN(注59)のエネルギー開発計画(注7)に遅れをもたらすことになりそうだ。プルノモ大臣(注8)は,月曜日,2009年2月23日,ムルパティ航空(注5)の契約問題が,PLN(注59)の10,000MWクラッシュ・プログラム(注9)を遅らすかも知れない,それはプログラム(注9)が大きく中国の銀行群に依存しているから,と。

プルノモ大臣(注8)の国会(注10)への報告によると,中国の銀行群,中国銀行(注11),中国開発銀行(注12),中国輸出入銀行(注13)は,インドネシア政府に対して,ムルパティ航空(注5)と中国の航空機製造企業シアン(注6)の間の航空機契約問題の解決を,PLN(注59)のエネルギー開発計画(注7)への資金支出の前に解決するよう,助けてくれ,と要請してきたことを明らかにした。

プルノモ大臣(注8)は,これはPLN(注59)の資金が人質になったと言うことだ,と表現した。2006年,ムルパティ航空(注5)は,シアン(注6)との間で,15機のシンゾウ60型航空機(注14)を,1機1400万ドルで購入し,資金は中国輸出入銀行(注13)のソフトローンを使うことになった。2008年に2機が入ったところで,ムルパティ航空(注5)は経営危機に陥り,残りの航空機の購入を一時中断した。

プルノモ大臣(注8)は,中国の投資企業が,ムルパティ航空(注5)の失敗を,PLN(注59)のエネルギー開発計画(注7)への融資中断の理由に使っている,と言っている。10,000MWクラッシュ・プログラム(注9)は,全国,特に年率7%で需要が伸びているジャワバリ系統(注15)の需給緩和のため,2006年にスタートした。中国銀行群は,利率の上げを要求して来ており,今までに,14.8億ドルを支出したに留まっている。

プルノモ大臣(注8)は,この問題は両国の国際調停の場への訴訟になる可能性があり,一方で,突然,政治問題化して来た,と言っている。鉱工業エネルギー省(注8参照)は,ムルパティ航空(注5)と共に,この0,000MWクラッシュ・プログラム(注9)の利子率と支出問題で,中国側との交渉団を編成した。プルノモ大臣(注8)は,ムルパティ航空(注5)問題が,その理由なのか,私はそうでないことを願う,と言っている。

国有企業省SOE(注16)も,ムルパティ航空(注5)問題を解決するための,副大臣級の,ガオル氏(注17)を団長とする交渉団を編成したが,早急に解決する期待は薄い。ムルパティ航空(注5)のバンバン社長(注18)は,依然,財政危機で8機の購入にとどめたいと言ったことがある。SOE(注16)のサイド次官(注9)は,今回の問題だけでムルパティ航空(注5)が破産に至ることは,見たくもないと。

サイド次官(注9)は,ムルパティ航空(注5)は契約を破棄したのではない,何となれば,この契約は株主が同意して発効することになっており,まだ株主は合意していないと。ムルパティ航空(注5)は,他の国有企業と従業員の給与で,3兆ルピアの債務がある。1,300人の従業員にレイオフをとらせており,その費用は2,230億ルピアに達する。現在,資産運用企業PPA(注20)により,資金改革を実施中だ。

国有企業省SOE(注16)のジャリル大臣(注21)は,この二つの問題がリンクしているという見方は間違っていると,PLN(注59)は独自の立場で中国側と交渉すべきだ,ムルパティ航空(注5)側も,そう言うつもりで交渉に当たる,と主張している。

(注) (1) 090225D Indonesia, The Jakarta Post,(2) Merpati row may delay PLN 10,000 MW program,(3) http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/24/merpati-row-may-delay-pln-10000-mw-program.html,(4) Alfian , THE JAKARTA POST , JAKARTA | Tue, 02/24/2009 9:24 AM | Business,(5) PT Merpati Nusantara,(6) China’s Xi’an Aircraft Industry,(7) PLN energy program,(8) Energy and Mineral Resources Purnomo Yusgiantoro,(9) 10,000 MW crash program,(10) House of Representatives (DPR) Commission VII,(11) Bank of China,(12) China Development Bank,(13) China Export Import Bank,(14) Xinzhou-60 aircraft,(15) Java-Bali system,(16) State Ministry of State Enterprises,(17) Sahala Lumban Gaol,(18) Bambang Bhakti, Merpati’s president director,(19) Said Didu, the secretary to the SOE minister,(20) Asset Management Company (PPA),(21) Sofyan Djalil, the SOE minister,(22) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090221D.htm,(23) (56) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090211B.htm,(57) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090213D.htm,(58) PLN,(59) 

参考資料

ベトナム

●090225A Vietnam, english.vietnamnet
ベトナムの原子力開発は4月にも国会へ上程へ
Nuclear power project to be submitted to NA in April
http://english.vietnamnet.vn/interviews/2009/02/831639/
●090225B Vietnam, english.vietnamnet.
ベトナムの電力改革でEVNは反対の立場を表明
EVN does not want reform
http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/02/831540/

インドネシア

●090225D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの航空機中国契約問題がPLN開発計画に影響
Merpati row may delay PLN 10,000 MW program
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/24/merpati-row-may-delay-pln-10000-mw-program.html

2009年2月24日火曜日

パキスタンのザルダリ大統領の孤独な中国訪問


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

麻生首相が,オバマ大統領と会談するためワシントンへの機上にある。そのワシントンでは,米国務省のウッド報道官代行が,2009年2月23日のの記者会見で,米国,アフガニスタン,パキスタンの3カ国による外相会談を,2009年2月26日,麻生オバマ会談終了後に,ワシントンで開く方向だとの予定を明らかにした。このとき,パキスタンのザルダリ大統領は,一人,三峡ダムの上を歩いている。

アフガニスタンについては,オバマ大統領の最大の公約である派兵の問題がある。アフガニスタンに踏み込むために絶対に必要なのは,パキスタンの協力である。中国が米の派兵についてどの様な発言をしているか,よく分からないが,中国を向きっぱなしのパキスタンを,何とか米国の方へ引き戻さなければならない。日本のODAが重要な役割を持っているという。日本政府が東京で,パキスタン支援国会議開催の準備に入ったとか。

パキスタンのザルダリ大統領は,就任直後,中国を訪問して,インダス河のダム開発,インドに対抗するために中国の協力を求めた。なかなか具体的な話にならなかったが,ザルダリ大統領は湖錦濤主席に,何度でも中国に来る,3ヶ月に一度は北京へ足を運ぶ,と約束した。今3ヶ月後,北京訪問を打診したが,クリントン在中中で会えない,と冷たくあしらわれた。

なぜ冷たくあしらわれるのか,大統領も分からないが,3ヶ月に一度,と言う約束を自分自身に守るために,ドウラニWAPDA総裁をつれて,上海など中国沿岸部の経済視察の目標で,無理矢理中国へ入国し,北京に近づかずに,三峡ダムを訪れて,人間はやろうと思えば何でも出来る,と三峡ダムの偉大さを讃えている。大統領が来ているから,仕方ないので,三峡公司の社長が,WAPDA総裁と水力技術協力の覚書に署名した。

中国は,パキスタンのダム開発が,莫大な資金を必要としていることに,改めて気がついているのではないか。バシャダムなどへの協力を約束をしたが,まだ具体的な動きはない。先日の,969MWニールムジェルム水力,7億ドルのうち,3億ドルだけコミットして,中国企業を送り込んだ。その先は見えていない。インドネシアの石炭で80億ドルを約束したが,26億ドルしか出さず,インドネシアが困っている。しばらく注視したい。

今日は,インドのウッタラカンド州の水力の話が注目を引いた。インド北辺,人類最後の挑戦の主要舞台の一つである。話の中に,400MW,600MWのプロジェクトがごろごろ出てくるので驚いてしまう。ガンジス川に流れ込むヤムナ川,トンス川,バギラティ川,などが主要な開発の舞台である。中央政府とのきしみもあるようだが,この際,地図や写真で,ウッタラカンド州を見ておこう。

本文

●パキスタンのザルダリ大統領が三峡を見て自国もと

President Asif Ali Zardari on Sunday said Pakistan has a lot of potential in the hydropower generation and it can secure its future in energy sector by building new dams.Talking to media persons here after the visit to the world痴 largest Three Gorges Dam, he said: 鏑ooking at this dam gives the realisation that humans can accomplish any task if they have desire, will and determination.(注3冒頭引用)

北京から,クリントン国務長官が来ているから会えないよ,と言われながら,年に3度は中国へ来ると約束した,と中国へ押しかけ,南の工業地帯視察に目的を切り替えたパキスタンのザルダリ大統領(注5)の動きである。日曜日,2009年2月22日,ザルダリ大統領(注5)は,パキスタンは莫大な包蔵水力を有しており,これらのダムの建設により,パキスタンはエネルギーを確保することが出来る,と語った。

世界最大の三峡ダム(注7)を視察した後,ザルダリ大統領(注5)はメディアを前にして,このダムは,人類はもしそれをやり遂げると決意したら,必ず実現できる,と言うことを示している,と語った。また,このようなプロジェクトがパキスタンで出来るなら,それは,人々への,また次の世代への大きな奉仕になるだろうと。前回来たときに,3ヶ月に一度は中国を訪れると,中国人民に約束した,これがその約束の実行だ,と。

ザルダリ大統領(注5)は,三峡プロジェクト公司(注6)社長の案内でダムを見て回り,発電所の運転制御室も訪ねた。三峡ダム施設(注7)は,ダム,水力発電所,船渠からなっている。貯水池の面積は,632平方km,完成には17年を要し,現在は中国の電力需要を果たすのに,重要な役割を果たしている。大統領(注5)は現場を訪ねる前に,展示室で資料見たり,質問を行っていた。出力,22,500MW,長江(注11)中流にある。

ザルダリ大統領(注5)は記録帳に,私の三峡ダム訪問は記憶に残る大きな経験だ,これは中国人民とそのリーダー達の勝利だ,と書き残した。なお,事前に,大統領(注5)立ち会いの下,WAPDAのドウラニ総裁(注8)と三峡プロジェクト公司リ社長(注6)の間で,中国が,パキスタンの水力開発に対して,技術的な支援を行う,との覚書に署名した。

(注) (1) 090224A Pakistan, thenews,(2) Zardari visits Three Gorges dam in China,(3) http://www.thenews.com.pk/top_story_detail.asp?Id=20504,(4) Monday, February 23, 2009,YICHANG, China:,(5) President Asif Ali Zardari,(6) president of China Three Gorges Project Corporation,(7) Three Gorges Hydropower Complex,(8) Chairman Wapda Shakeel Durrani,(9) President of China Three Gorges Project Corporation Li Yong誕n,(10) Yangtze River,(11)

●インドのウッタラカンドが120MWビャシ水力など工事を再開

With the hydropower sector in the state taking a beating following the suspension of three major hydel projects, the Uttarakhand government is now pulling out all the stops to revive the stalled power plants.To begin with, Chief Minister BC Khanduri tomorrow will lay foundation stone for the 120-Mw Vyasi hydel project on the river Yamuna in Dehradun, which has been gathering dust for the past two decades.(注13冒頭引用)

この機会に,インドのウッタラカンド州を見ておこう。包蔵水力豊富で,インド北辺水力人類最後の戦いの重要な地域である。2000年11月9日に,ウッタルプラデシュから独立しているので,古い地図に出てなくて苦労する。州面積は,5万1,125平方km,人口は848万人,州都はデラドゥン(注14),世界遺産 ナンダ・デヴィ国立公園がある。ガンジス川の支流が多く走っており,ヤムナ(注17),バギラティ(注22)などがある。

今日の記事。ウッタラカンド州(注12)政府は,長い間棚上げされていた3つの主要な水力プロジェクトを,急遽再開することで動き始めた。その始まりとして,明日,2009年2月24日,カンドウリ州政府首相(注16)は,20年間も凍結されていた,120MW,デラドウンのヤムナ川にあるビャシ水力プロジェクト(注17)の定礎式(注33)の臨むことになった。

ビャシダム(注17)の工事は,州営企業であるUJVNL(注18)によって,事業費75.8億ルピー,約153億ドル相当,にて開発される。年間発生電力量は,4.3838億KWhで,年間収入は,10.529億ルピーである。ビャシ水力プロジェクト(注17)は,昨年,2008年7月,UJVNL(注18)に発注された,420MWのラキワール-ビャシ水力総合プロジェクト(注19)の一部である。

ラキワール-ビャシ水力総合プロジェクト(注19)は,デラドウンの西を南北に流れるバギラティ川(注22)にある,480MWのパラ・マネリ水力プロジェクト(注20)と,381MWのバイロンガティ水力プロジェクト(注21)の鍵となるダムの損失を回復するためのプロジェクトである。この二つのプロジェクトは,州政府による環境上の判断から,1ヶ月前に,中断された。

この州政府の突然の決定,ラキワール-ビャシ水力総合プロジェクト(注19)をUJVNL(注18)に発注することになったのは,突然中央政府が,このプロジェクトを,詳細設計(注24)を実施したNHPC(注23)の手に渡す,と言い始めたからだ。また,ウッタラカンド州(注12)政府の動きを察して,中央政府は,金曜日,2009年2月20日,NTPC(注25)の,600MW,ロハリ・ナグパラ水力を中止した,アグロワール専門家(注26)の反対で。

もう一つの中断中のプロジェクト,トンス川(注27)のデラドゥン(注14)に位置する,600MWのキシャウ水力プロジェクト(注27)があるが,この10年間棚上げされてきた,この多目的プロジェクト(注34)を再開することを検討している。このために,UJVNL(注18)と,詳細設計(注24)を手がけたテリー水力発電公社THDC(注28)との合弁による推進を検討中である。UJVNL(注18)のプラサド総裁(注29)は,同意している。

(注) (11) 090224C India, business-standard,(12) Uttarakhand to revive stalled hydel projects,(13) http://www.business-standard.com/india/news/uttarakhand-to-revive-stalled-hydel-projects/01/09/349861/,(14) Shishir Prashant / Dehradun February 23, 2009, 1:02 IST,(15) Uttarakhand,(16) Chief Minister BC Khanduri,(17) 120-Mw Vyasi hydel project on the river Yamuna in Dehradun,(18) Uttarakhand Jal Vidyut Nigam Ltd (UJVNL),(19) 420-Mw integrated Lakhwar-Vyasi project,(20) 480-Mw Pala Maneri,(21) 381-Mw Bhaironghati,(22) river Bhagirathi,(23) NHPC,(24) detailed project report (DPR),(25) NTPC’s 600-Mw Lohari Nagpala dam site,(26) GD Agrawa,(27) 600-Mw Kishau on the river Tons in Dehradun,(28) Tehri Hydro Power Corporation (THDC),(29) Yogendra Prasad, chairman of UJVNL,(30) http://www.indochannel.jp/travel/area/uttaranchal_index.html,(31) http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Oasis/4781/photos_india.htm,(32) Below is the image at: tehri.nic.in/rsvy_new/Map.htm,(33) foundation stone,(34) multi-purpose project,(35) 

参考資料

パキスタン

●090224A Pakistan, thenews
パキスタンのザルダリ大統領が三峡を見て自国もと
Zardari visits Three Gorges dam in China
http://www.thenews.com.pk/top_story_detail.asp?Id=20504

インド

●090224C India, business-standard
インドのウッタラカンドが120MWビャシ水力など工事を再開
Uttarakhand to revive stalled hydel projects
http://www.business-standard.com/india/news/uttarakhand-to-revive-stalled-hydel-projects/01/09/349861/


2009年2月23日月曜日

中国の送電網先進技術が海外進出を狙う


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

知的送電網の話から始まって,送電網の問題が,年末から今年にかけて多い。私のHPへのアクセスを分析していると,中国のUHV送電網や米国の景気刺激策に出てくる送電線強化で,多くの人が関心を持っていることが分かる。今,私のページの冒頭に出ているオバマ大統領の演説を良く聴くと,彼は,3,000マイルの送電線を強化して地方に散らばる再生可能エネルギーを集めてくる,と言っている。知的送電網もアクセスが多い。

知的送電網とは,今までの世界の議論を総合して,更に突っ込むと,次のようなことになるのかな。幹から枝まで統一のとれた網の目で,電力を運ぶだけでなく情報も運ぶもの,電源のあるところと電力需要のあるところを時間軸で詳細に把握しているもの,需要の中身は家庭の中の冷蔵庫などの機器類にまで侵入して情報を集めるもの,それと見た目にスマートで,テロに屈しない強い構造,これが知的送電網の定義だ。

また,私の2008年12月24日付け本HP(注36)にあるように,鈴木篁氏の水力開発論(注38)の中では,西澤潤一氏(注39)の,「直流送電では1万km送電が可能で東京からナイアガラの滝は勿論ビクトリアの滝まで入る」,を参照しながら,世界中の水力資源を総て活用する事が出来,その総発生エネルギー量は,少なくとも当分の間,全世界の電力需要を賄って余りある,としている。

今日の記事は,世界の多くの企業は,出費を削減して世界金融危機を乗り切る構えだが,中国最大の公共事業体は,送電線の分野で数十億ドルの金額を注ぎ込もうとしている。中国国家送電網SGC(注5)は,2009年1月に,100万ボルト送電線の商業運転を開始したが,これは米国の76万5000ボルトの送電線を越える力強さを持っている,と書き出している。

記事の中でも,日本がこの技術を有している,と書き,しかし日本ではこれを商業化するほどその必要性に迫られていないことを挙げ,実用化しようとしているのは中国で,この実績を踏まえれば,将来は世界市場に打って出る,と広言している。そうして,その対象として,インド,ブラジル,南アフリカなどの可能性を挙げている。

また,中国の当面の目的は,中国北部の石炭火力による電力,中国南西部の水力発電による電力を,長躯,北京や上海に送ることだが,この記事の中には,実際にはアフリカからブラジルまでの距離を,送電線で送ることが出来る,と西澤潤一氏(注39)や鈴木篁氏の水力開発論(注38)の世界の包蔵水力開発論に通ずる議論も出てくる。

オバマ大統領の送電線は,再生可能エネルギーを集めてくる,という少し矮小化された送電網強化論であるが,それでも,中国と米国が,送電網強化を叫んでいることは,世界的にも漸次広がってきて,ちょっとした議論になるのではないか。中国と米国は大まかで,ここに日本の知的送電網の概念やグーグルの意図が入ってくると,しばらく話題が盛り上がるかも知れない。

(注)(36) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081224.htm,(37) http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/,(38) http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info4.htm#Label48,(39) http://tech.braina.com/2008/1217/other_20081217_001____.html,(40)

本文

●中国の送電網先進技術が海外進出を狙う

As companies abroad slash spending to ride out a global slump, China's biggest utility is pouring money into the multibillion-dollar field of electric power transmission. State Grid Corp. says it began operation in January of a 1 million-volt commercial power line, which is much more powerful than the 765,000-volt systems used in the United States and elsewhere.(注3冒頭引用)

中国の超高圧長距離送電線への圧巻は,2009年2月9日付本HP(注33)の,「中国,四川から上海への超高圧送電線,2010年に向け突貫」,の記事であった。元々は日本などの技術なのだが,日本は,地理的にも制度的にも,数千kmに及ぶ送電プロジェクトは,ない。昔,シベリアからの電力輸入を画した人がいたけれど,実現していない。世界的な長距離送電線の有用性を主張した人は,日本にもいる。

今日の記事。世界の多くの企業は,出費を削減して世界金融危機を乗り切る構えだが,中国最大の公共事業体は,送電線の分野で数十億ドルの金額を注ぎ込もうとしている。中国国家送電網SGC(注5)は,2009年1月に,100万ボルト送電線の商業運転を開始したが,これは米国の76万5000ボルトの送電線を越える力強さを持っている。

それは,超高圧送電線(注6)と呼ばれていて,遠く離れた水力発電所と都市区域を結ぶ,例えばブラジルからアフリカまでも結ぶ能力を持っている。SGC(注5)のル・ジアン副総裁(注7)は,電力産業の歴史に於ける画期的な事業だ,と言っている。これは,中国が経済発展を続ける中で,北京政府の野望,安価な商品の生産国から,人類を益する技術の創造者となるための,一つの成果である。

マッキインゼーのアジア太平洋コンサルタントグループのデビッド・ス氏(注8)は,中国の企業群は,着々と技術開発の梯子を登り続けており,彼等は,単なるコストの競争だけでは,その持続性に欠ける,と言うことを理解している,と言っている。今ここに,強力な送電線技術は,石炭火力発電所を石炭生産地に建設できるようにして,北京などの都市群の大気汚染を,改善することに成功するだろう。

中国国家送電網SGC(注5)は,世界では余り知られていないが,2007年の収入が1,330億ドルに達して,フォーチューンの格付け500社(注9)の中で24位にランクされている,世界有数の企業の一つである。世界不況の中で多くの企業が賃金カットや経費削減に取り組んでいる中,中国国家送電網SGC(注5)は,生き生きとして資金を注ぎ込んでいる。

中国国家送電網SGC(注5)は,中国全土32省のうちの26省を横断する大規模な送電網を運用し,更に発展を続けている。2009年1月には,フィリッピンの送電網運用事業を,39億ドル,25年間の契約に署名している。超高圧送電線(注6)の売り込みは,専門家によると,長距離送電に於ける効率にあるという。KWと言う電力は,電圧と電流の積であリ,同じKWを送るのに,高い電圧では少ない電流で良く,損失も少ない。

この技術開発で,送電設備の面で中国は世界的な競争力を持つことになり,工業調査企業のグルドン報告書(注10)によると,2015年には1400億ドル売り上げの企業に発展するだろう,と言っている。ロシア,日本,イタリーなども超高圧の実験的使用は実績があるが,商業的運用までは到達していない。米国のAEP社(注11)は,200万ボルト送電に試験的に成功したが,一般的に使用する計画はない。

欧州では,それぞれ異なった需要で,電力企業への訴訟が多く,強力な送電線建設の障害になっている。中国国家送電網SGC(注5)は,北京や上海など東部の都市群と,南西部の水力発電所及び北部の石炭火力を,超高圧送電線で結ぶために,この先,3,4年で,1000億元,約146億ドル相当,を費やす,と言っている。SGC(注5)は,成功の暁には,その技術を海外へ売り込むと言っている。

この場合,幾つかの機器は,ドイツのシーメンス(注12)とスイスのABB(注13)から供給されているが,殆どの必要な機器は国内の100以上の企業から供給されているという。チェン・メンロン国際副主任(注14)は,国際市場でこの技術を分かち合いたい,特に,インド,ブラジル,南アフリカなどが対象となるだろう,と言っている。

(注) (1) 090223A China, forbes,(2) Chinese utility tries to join electricity pioneers,(3) http://www.forbes.com/feeds/ap/2009/02/21/ap6079438.html,(4) By JOE McDONALD , 02.21.09, 12:14 PM EST,(5) State Grid Corp.,(6) "ultra-high voltage" transmission systems,(7) State Grid vice president, Lu Jian,(8) David Xu, director of McKinsey & Co.'s Asia-Pacific power consulting group,(9) Fortune magazine's Global 500 list,(10) Goulden Reports,(11) American Electric Power Inc. in Columbus, Ohio,(12) Siemens AG of Germany,(13) Switzerland's ABB Ltd,(14) Cheng Mengrong, deputy director-general of State Grid's international department,(15) Shanxi province,(16) Hubei province, (17) Sichuan province,(18) Jiangsu province,(19) company's executive vice president, Shu Yinbiao,(20) Richard Lordan, technology director for power delivery for the Electric Power Research Institute, a utility-supported U.S. group,(21) McKinsey's Xu,(22) (31) http://www.bpovia.com/blog/wp-content/uploads/2008/11/yongdian.jpg,(32) www.skyscrapercity.com/showthread.php?p=31444946,(33) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090209D.htm,(34) 

●中国はチベットの牧草地減退で2030年までに回復を計画

China's chief economic planner Friday announced that the country aims to revive the degraded pasture and harness rat pest in Tibet by 2030. It is the government's latest goal in the fight against global climate change and to protect the ecology of Tibet, which covers more than 1.2 million square kilometers. (注24冒頭引用)

金曜日,2009年2月20日,中国の経済計画の主任は,中国は2030年までに,チベットの牧草地帯を蘇らせる計画だ,と発表した。中国政府の最近の目標としていることは,世界的な気候変動と戦い,120万平方kmのチベットの環境を守ることであると。水曜日,2月18日,中国政府閣議(注26)は,チベット南西部の環境保護計画を打ち出した。

発改委NDRC(注27)の発表内容は,チベットの環境保護への努力は極めて重要で,その内容は,地球の温暖化と戦い,中国の環境上の安全を確保し,チベットの経済社会開発を保護することだ,としている。チベットの気温上昇は,1061年から2007年の10年間で,摂氏0.32度に達し,この値は,世界や中国全体の平均よりも高い。土地浸食防止,生物多様性を保護し,農村地域でのクリーンエネルギー使用の促進を狙っていると。

また,チベットの農村に於ける,水力発電,メタンガス発電,太陽光発電の使用を促進すると。また,自然草原の保護,森林火災の予防,沼沢地の保護,強風や嵐に対抗するための森林ベルトの育成,牧草地の砂漠化防護,などが含まれる。地方政府は,環境保護と経済開発のバランスをとる必要があると。また,農民や牧夫達の生活環境を向上し,収入を確保する必要があると。

NDRC(注27)のチベット担当副主任プ・キオン氏(注28)によると,80億元,約12億ドル相当の予算は,2009年から2010年に,チベットの農民や牧夫のための,インフラの改善,特に,家庭水需要,電気,道路,通信,に費やされると。詳細は詳細は発表されていないが,水曜日の閣議決定は,地球規模気候変動に対抗して,チベット自治区(注29)の自然環境を保護する計画が承認されたと言うことだ。

また地方政府に対しては,チベットの環境保護に優先度を与え,生態系の安全を確保し,南西部の自治区の農民や牧夫の生活環境を向上することを目標とせよ,と。チンハイ-チベット高原(注30)は重要な要素で,チベットは特殊で多様性に富んだ生態系を持っている,世界の生態環境に与える地球気候変動に直面することへの対策が必要だ,と。特に中国は,草原の砂漠化を防ぐことに重点を置くと。

(注) (22) 090223B China, dailymailnews,(23) China aims to curb pasture degradation in Tibet by 2030,(24) http://dailymailnews.com/200902/22/news/dmchinawatch04.html,(25) BEIJIN,(26) State Council, China's Cabinet,(27) National Development and Reform Commission (NDRC),(28) Pu Qiong, deputy director of the NDRC in Tibet,(29) Tibet Autonomous Region,(30) Qinghai-Tibet Plateau,(31) (34) www.danmex.org/html-en/pic-detail.php?pic_id=3,(35) harness rat pest,(36) 

参考資料

中国

●090223A China, forbes
中国の送電網先進技術が海外進出を狙う
Chinese utility tries to join electricity pioneers
http://www.forbes.com/feeds/ap/2009/02/21/ap6079438.html
●090223B China, dailymailnews
中国はチベットの牧草地減退で2030年までに回復を計画
China aims to curb pasture degradation in Tibet by 2030
http://dailymailnews.com/200902/22/news/dmchinawatch04.html

2009年2月22日日曜日

パキスタンのニールムジェルム水力着工


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

パキスタンのこの水力プロジェクトは,969MW,国境未確定の中でのまさにパキスタンの問題をすべて包含したような,複雑なプロジェクトである。インダス河の上流であるから,インドとの問題もあり,それに対する中国の意図も働いて,難しく動いたプロジェクトである。でも,決め手になったのは,イスラム諸国の資金支援であった。

昨年,2008年12月13日付本HP(注15)では,突如,中東諸国,クウエート,サウジアラビア,アブダビ及びOPECが,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクトへの融資を発表した,と報じている。パキスタンは,既にこのプロジェクトの建設費の一部として,電気料金に上乗せ,中国が300百万ドル,既に約束している,と書いている。

今日の記事。969MWのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)の目玉工事である47kmのトンネル工事が,アザド・ジャム・カシミールのムザファラバード(注6)の近くで,掘削を開始した。このトンネルの意味するところは,ニールム川(注7)の水をジェルム川(注8)のチャッタル・カラス(注9)付近に分水することである。アフザル所長(注10)とイスラム銀行IDB(注11)の代表が立ち会って,最初の発破がかけられた。

私は考えるが,石油火力,石炭火力,天然ガス火力,或いは原子力発電もそうかな,殆どのエネルギー資源は有限である。だから,人類にとっては,もし電力が必要ないならば出来るだけ遅く開発した方が,人類のためだと思う。でも水力資源は違う,水力発電所は一日でも早く発電すれば,それだけ人類が受け取るエネルギーは大きくなる。太陽光も風力もそうだが,これは量的に問題にならない。

電力会社は,一旦着工したら出来るだけ早く発電したい,それは注ぎ込んだ資本の問題であって,この私の言う人類のエネルギー資源の価値としての水力発電所の話とは違う。このインダス河の膨大なポテンシャルを,手を拱くばかりで開発できないと言うことは,今そこに降ってくる雨,流れている水が,全く無駄に流れている状態を長引かせるだけだ。

このようなときに思い出すのは,1992年,メコン本流で,ビエンチャン直上流の低パモンダム計画を審議していたメコン総会の会場の情景である。可能性調査に入りたい,と言うメコン委員会事務局の提案に,ベトナム代表,カンボジア代表,ラオス代表まで,それぞれ反対の演説を行った。大勢は事務局案破棄である。最後に立ったタイのシン代表は,ここにメコン本流のエネルギー資源が永久に閉ざされたと言う,涙の演説であった。

パキスタンのこの水力プロジェクト,969MW,水路トンネルが47kmと言うとんでもない計画だが,これが各勢力が複雑に絡み合って,資金の大部分は,同じ回教徒勢力の中東の資金,またこれを動かした中国の政治的意図,最初の資金を出して,工事を中国企業に落札させた外交力,これらが重なり合って,この難しいプロジェクトを着工に持っていった。まだ5年はかかるだろうが,人類のために成功を祈りたい。

本文

●パキスタンのニールム-ジェルム水力が掘削開始

Excavation of a 47km-long network of tunnels, one of the main works for the 969-megawatt Neelum Jhelum Hydroelectric Project (NJHEP), has started at the project site near Muzaffarabad in Azad Jammu and Kashmir.(注3冒頭引用)

昨年,2008年12月13日付本HP(注15)では,突如,中東諸国,クウエート,サウジアラビア,アブダビ及びOPECが,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクトへの融資を発表した,と報じている。パキスタンは,既にこのプロジェクトの建設費の一部として,電気料金に上乗せ,中国が300百万ドル,既に約束している,とも。

969MW,21億ドル,パキスタンのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)については,25kmの水路トンネルを有する流域変更プロジェクトで,インドとの間に微妙な問題が横たわっている。1960年のインダス水条約には,ニールム川の開発に関して,先に建設,運転開始に成功した側が,ニールム川の開発優先権を持つ,と書かれている。今や情勢は変化,需要も大きく,資金調達も手が届くところまで来た,とも。

今日の記事。969MWのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)の目玉工事である47kmのトンネル工事が,アザド・ジャム・カシミールのムザファラバード(注6)の近くで,掘削を開始した。このトンネルの意味するところは,ニールム川(注7)の水をジェルム川(注8)のチャッタル・カラス(注9)付近に分水することである。アフザル所長(注10)とイスラム銀行IDB(注11)の代表が立ち会って,最初の発破がかけられた。

ニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)は,パキスタンにとって極めて重要なプロジェクトで,安価な電気を電力不足で苦しむ中央グリッドへ送り込むわけである。イスラム銀行IDB(注11)と中東諸国が,既にその資金調達に合意している。このプロジェクトの工事は,中国企業,中国ゲゾウバ(注13)と中国機会輸出入(注14)の組むコンソーシアムに発注された。

アクセス道路,事務所建物,コントラクターとコンサルタントのキャンプ建物などの準備工事は,既に昨年,2008年に開始しており,本格工事はまずトンネルから始まった。総事業費は1,300億ルピー,約16.5億ドル相当,であり,完成に暁には,年間51.5億KWhの電力が,中央グリッドへ流れ込むことになる。完成時期は書いてないが,トンエルの長さから見て,5年はかかるだろう。

(注) (1) 090222A Pakistan, thenews.com,(2) Excavation work for hydropower project starts,(3) http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=163663,(4) Saturday, February 21, 2009, By By our correspondent , LAHORE:,(5) 969-megawatt Neelum Jhelum Hydroelectric Project (NJHEP),(6) Muzaffarabad in Azad Jammu and Kashmir,(7) Neelem river,(8) Jhelum river,(9) Chattar Kalas,(10) NJHEP General Manager Hasnain Afzal,(11) Islamic Development Bank (IDB),(12) Middle Eastern donors,(13) China Gezhouba Group Company,(14) China Machinery Import & Export Corporation,(15) http://my.reset.jp/adachihayao/index081213B.htm,(16) 

●インドのタタ電力は大規模プロジェクトには挑戦せず

Tata Power Ltd, India's largest private sector utility, will not bid for any more large power projects as raising funds is proving difficult given current market conditions, a senior official said on Friday.(注18冒頭引用)

インド最大の民間電力事業者,タタ電力(注20)のアグラワダ常務取締役(注21)が,ある会議出席の合間に語ったところであるが,タタ電力(注20)は,最近の市場動向を考えると,大きな資金調達を要する大規模電力プロジェクトへの入札参加は,差し控える,と発言している。一つのプロジェクトに2000億ルピーも要するような資金調達は困難だ,と述べている。4,000MW規模石炭火力を言っているのだろう。

インドは,2012年までに,新規電源,78,000MWを建設する計画である。現在のインドは,ピークで16%の電力が不足しており,4000MWの大規模石炭火力を9つ建設する,との計画を持っている。タタ電力(注20)は,インド西部のかかるプロジェクトの一つを抱えており,その総事業費は,1,700億ルピー,約34億ドル相当,である。

しかし,最近のインド東部に於けるプロジェクトへの入札は参加しておらず,ライバルであるリライアンス電力(注22)が落札してきている。アグラワダ常務(注21)は,収益の分かれ目は,最近高くなってきており,タタ電力(注20)はプロジェクト選定で慎重になっている,現在,6,000MW相当を工事中であり,その完成に集中したい,と言っている。タタ電力(注20)の現在の設備は,2,300MWである。

世界の金融危機の中で,このアジア第3位の経済規模を持つインドは,規模の大きい債務に苦闘しており,銀行貸し出しに慎重な姿勢を示していて,インフラは,その成長のレールからはずれてきている。

(注) (16) 090222B India, Economic Times,(17) Tata Power says not to bid for large plants,(18) http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Tata-Power-says-not-to-bid-for-large-plants/articleshow/4162593.cms,(19) 20 Feb 2009, 1921 hrs IST, REUTERS,MUMBAI,(20) Tata Power Ltd,(21) Executive Director Banmali Agrawala,(22) Reliance Power,(23) (35) www.tataprojects.com/hydro.htm

バングラデシュが電力のマスタープランを発表

These days Bangladesh media is busy with energy reporting. Almost all the dailies are publishing some analytical reports everyday on the prevailing crisis situation of energy and suggesting options to confront and mitigate the crisis. (注25冒頭引用)

滅多に取り上げないバングラデシュの電力事情であるが,2008年10月8日付け本HP(注33)で,地質の専門家が書いた,とされているが,短い文章で,バングラデシュのすべての電力問題を総括していて,実に要領がよい。我々もこのような文章を書きたいものだと思う。彼は地質だから,おそらく石炭の調査をやっていて,煮え切らない,踏ん切りの悪いエネルギー官僚に業を煮やして,この記事を書いたのだろう,と書いた。

このとき私は,次のように書いて結んでいる。曰く,バングラデシュのエネルギー問題は,国際的に孤立している。津波にやられ,毎年洪水に見舞われて,経済的に疲弊したバングラデシュ。水力がほとんどないので,私も余り取り上げていないので可哀相。もう石炭火力は中国に任す,と決めた日本やJパワーであるが,この記事を読んで,もう一踏ん張り,バングラデシュの石炭にチャレンジして上げませんか,と。

今日の記事は長文で,今ここで全文を紹介することは出来ない。最初の部分だけを紹介するが,時間のあるとき,或いはバングラデシュの仕事に関係する人は,読んでみてください。まず,ここ最近,バングラデシュのメディアは,エネルギー報告に関して極めて多忙である。最近のエネルギー危機やそれにタイする対策の提案,など,殆ど毎日,新聞などが取り上げている。

2009年2月17日のある記事では,チョウドリ・エネルギー担当首相顧問(注27)の話を取り上げている。政府は,将来20年間の電力系統マスタープランPSMP(注27)を見直して,発電の新しい資源のを設定し,2021年までに,20,000MWの電力供給を可能にする,としている。現在の発電設備は,4,000MWなので,20,000MWに引き上げるためのは,12年間で4倍の拡張が必要である。

野心的な計画ではあるが,大きな変革が必要であろう。ハッシーナ首相(注34)の選挙公約にもあるとおり,この目標のレベルまで発電設備を上げるためには,石炭と水力の焦点を当てる必要がある。政府の計画では,2011年までに5,000MWへ,2013年までに7,000MWへ,更に,2015年までに8,000MWに,2020年までに20,000MWへ,となっている。

このマスタープランPSMP(注27)の見直しを行ったのは,米国大手コンサルタントのNEXANT(注28)で,BPDB(注29),PGCB(注30)が協力,2006年6月のバングラデシュ工学技術BETS(注31)の台本が元となっている。そのサマリーは,「バングラデシュに於ける電力改革」(注32)の政府の報告書に組み込まれている。この報告書は,制度問題に焦点を当てた改革の筋書きを基本的に論じている。以下,省略。

(注) (23) 090222C Bangladesh, energybangla,(24) Bangladesh Power System Master Plan Review,(25) http://www.energybangla.com/index.php?mod=article&cat=SomethingtoSay&article=1533,(26) Engr. Khondkar Abdus Saleque.Friday, 02.20.2009, 08:25pm (GMT),(27) Dr.Tawfique Elahi Chowdhury Energy Sector advisor to the Prime Minister Sheikh Hasina,(27) Power system Master Plan (PSMP),(28) Nexant,(29) BPDB,(30) PGCB Ltd,(31) Bangladesh Engineering & Technology Services,(32) Power System Reforms in Bangladesh,(33) http://my.reset.jp/adachihayao/index081008.htm,(34) Prime Minister Sheikh Hasina,(35) 

参考資料

パキスタン

●090222A Pakistan, thenews.com
パキスタンのニールム-ジェルム水力が掘削開始
Excavation work for hydropower project starts
http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=163663

インド

●090222B India, Economic Times
院dのタタ電力は大規模プロジェクトには挑戦せず
Tata Power says not to bid for large plants
http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Tata-Power-says-not-to-bid-for-large-plants/articleshow/4162593.cms

バングラデシュ

●090222C Bangladesh, energybangla
バングラデシュが電力のマスタープランを発表
Bangladesh Power System Master Plan Review
http://www.energybangla.com/index.php?mod=article&cat=SomethingtoSay&article=1533

2009年2月21日土曜日

インドネシアの電源早期着工計画が資金難


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

クリントン国務長官は,今日はもう既に北京に入っている。前のクリントン政権は,インドネシアのワヒッド政権に非常に冷たかったと言う。大統領がワシントンに入っても,クリントン大統領は,会おうともしなかったようだ。東ティモール問題などで人権が問題になっていた頃だ。それだけに,インドネシアとしては,ヒラリーのジャカルタ入りには,相当の歓迎ぶりである。

そのインドネシアで,電源開発計画が大きく揺れている。クラッシュプログラム,と称して,ジャワ島内外の石炭火力10,000MWを2010年までに完成させるべくスタートしたが,カラ副大統領の肝いりで,中国の資金が,石炭火力に全面的に協力する姿勢で,80億ドルがコミットに近い約束をして,殆どの石炭火力のコントラクターに中国企業が入っていった。

ところが,先日も報告したように,中国が資金支援を棚上げにしそうな情勢で,ユドヨノ大統領が慌ててPLNに乗り込み,善後策を協議した,国内銀行を使えと。中国は80億ドルを約束しながら,26億ドルでストップ,これ以上は金利を上げなければ協力できない,と言っている。中国が全面的に協力する,と言うので,設計は少々雑で環境問題があっても,中国に寄りかかる姿勢で来たのに,2010年より大きくずれ込む可能性。

また,インドネシアは積極的である。第2次の早期着工計画,ファースト・トラック・プログラムを打ち上げて,大統領令をこれから発するところだが,2014年を目指して再び10,000MWを目指す。今度は,地熱,水力などの再生可能エネルギーを重視するという。それに,70%は民間資金IPP頼りである。2014年運転開始だから,今年,2009年に着工しなければならないものもある。その一つが,チソカン揚水発電計画1,000MWである。

チソカン揚水発電については,JBIC初め世界銀行やADBも資金支援を行う姿勢にある,とプルオノ総局長は述べている。チソカンをもっと早くやって居れば,随分電力危機も救われたのに,と思うが,プルオノ総局長は,20億ドルという建設費に参っている。ダムが二つあるから仕方がないか,と言っているが,大間違いだ,幾ら高くても,20億ドルはちょっとひどい。

私の推測するところ,2008年7月頃の時点で,誰かが慌てて,20億ドルに上げたのだろう,あのころは皆が大変にショックを受けていた。私は,2008年7月の事業費は,今は半額で行けると思う。1,000KWの揚水は,10億ドル以下でなければ成り立たない。だから私は,今こそ皆,プロジェクト形成に走れ,と言いたいのだ。今仕込めば,絶対に円滑に調査にはいることが可能だ,今こそプロが動くときだ。

今日の記事はいずれも大切だった。ベトナムのソンラ水力のRCCのクラックの問題は,更に発展してきているようだ。タイのマモー火力は,炭坑を開発して更に20年間動かそうとしている。パキスタンのザルダリ大統領は,北京がヒラリーが来るのでいそがしい,と言っているのに押しかけて,ダムと原子力発電所の支援を要請する。中国の水力の原価の話も面白い,同じ電気は同じ値段で,と言っているが,真理かな。

本文

●ベトナムのソンラダムの亀裂は問題ないと(注37)

A crack on the Son La hydropower plant’s dam. Several cracks have appeared but a senior construction official has said they will not affect the construction. Ten cracks found in the main dam of a hydropower project in Son La Province have not affected the project’s safety, the project owner Electricity of Vietnam (EVN) confirmed in an official report Thursday.(注37)

ソンラダムのコンクリートの亀裂については,2009年2月14日付本HP(注50)で報じられており,流れと直角の方向で,亀裂の長さは31.5m,幅が1mm,深さが一番深いところで6m,とされていた。当事者は,問題なく工事は続行,とその方針を伝えているが,問題は少し大ききなって聞いたのか,今日も詳しく報じられている,写真も貼付されている。

プロジェクトの担当者は,亀裂は1本ではなくセベラルだ,と報じている,一般にセベラルと言うのは5本以上を言う。建設工事には影響はない,と言っている。企業者のEVN(注40)は,亀裂は10本で,プロジェクトの安全には問題ない,と発表している,ただ格好悪いだけだと。亀裂は,長さ方向,高さ方向にも発生しており,最初の発見は,昨年,2008年8月であった。

亀裂10本は,最も長い亀裂は,97.3mで,最も短いものは8m,幅はいずれも,0.5mm,深さは,4~6.5mである。貯水には問題ない,今後とも観測を続ける,と調査報告書には書かれている。設計者のスイス籍コレンコ(注41),工事を監督するSMEC(注42),日本工営(注43),Jパワー(注44),によると,コンクリート内部の熱と外気温の差から生まれる熱応力が原因だ,と言っている。

あるコンクリートの専門家が記者に語ったところによると,規模の大きいブロックのコンクリート打設ではよく起こる問題で,設計コンサルタントが事前に効果的な工法を説明していなかったのではないか,と言っている。EVN(注40)は,これ以上亀裂が生じないよう,,コンサルタントが対策を講じている,と言っている。建設省のル・クワン・フン主任(注45)の前回報告書では,プロジェクトの安全には問題ない,と書かれている。

ソンラ水力プロジェクト(注39)は,ベトナム北部の山岳地帯,紅河の支流ダ川(注46)に建設されている多目的ダム(注51)で,首都ハノイから北西360kmの位置にある。総事業費は,42兆ドン,約24億ドル相当,で,出力規模2,400MW,年間発生電力量94億KWh,ダムの形式は,RCC型(注46)で,今のところ出力規模に於いて,東南アジア最大である。

洪水吐は右岸にあって,8門のゲートと12門の底部ゲートがあり,洪水調節を行う。発電所は,ダム下流の河川敷内に設ける。グエン・タン・ドウン首相(注47)は,財務省に指示して,ソンラ県(注48)に対して,1兆ドン,約57百万ドル相当,の支出を行い,土地の買い取りと住民に対する保証を行うべく準備中である。

(注) (36) 090221A Vietnam, thanhniennews,(37) EVN’s official report says dam safe despite cracks,(38) http://www.thanhniennews.com/education/?catid=4&newsid=46286,(39) Son La hydropower plant,(40) Electricity of Vietnam (EVN),(41) Colenco,(42) SMEC,(43) Nippon Koei,(44) Jpower,(45) Le Quang Hung, head of the Ministry of Construction’s State Bureau for Construction Quality Inspection.,(46) Da River, the main tributary of the Red River,(46) roller-compacted concrete dam,(47) Prime Minister Nguyen Tan Dung,(48) Son La Province,(49) http://www.thanhniennews.com/society/?catid=3&newsid=46,(50) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090214A.htm,(51) multipurpose project,(52) 

●タイのイタルタイなどがEGATの石炭入札で落札

The contractors Italian-Thai Development Plc (ITD) and Nawarat Patanakarn Plc (NWR) have won bids to operate coal mines to supply the Electricity Generating Authority of Thailand (Egat).The two mines' total coal supply is estimated at 95 million tonnes for contracts worth 36.68 billion baht over nine years. (注63)

2009年2月1日付け本HP(注72)で,タイのEGAT,マモーの石炭生産で,許認可取得,890億バーツ,と報じられていた少なくとも,既存の石炭火力は,何としても永続させたい,とのEGAT(注68)の切なる願いである。EGAT(注68)への石炭供給入札で,イタリアンタイITD(注66)とナワラットNWR(注67)が,石炭鉱山事業で,落札した。両者で,石炭9,500万トン,事業費は366.8億バーツである。

NWR(注67)は石炭5,000万トン,166.8億バーツ,ITD(注66)は石炭4,500万トン,200億バーツで,採掘は来月から始まり,供給は,2010~2018年である。ソンバットEGAT総裁(注69)は,マモー石炭火力(注70)は,現在の石炭鉱山は2,3年で尽きるが,今回の2つの新たな石炭契約で,更にその耐用年数を20年延ばすことが出来る,と言っている。マモー石炭火力(注70)は2,400MWで,年1,000万トンの石炭が必要。

ソンバットEGAT総裁(注69)によると,マモー石炭火力(注70)は,水力に続いて安価な電源である,電気料金を安く保つために,この2400MW,年間発生電力量180億KWhの発電所の存続が必要である,と言っている。因みに,KWh当たり単価は,ガスが1.27バーツ(3.55セント),石炭が0.83バーツ(2.32セント),ディーゼルが4.85バーツ(13.57セント),水力がラオスからの輸入を除いて0.40バーツ(1.12セント)である。

EGAT(注68)は,将来,更に他の石炭鉱山の開発入札を検討している。ソンバットEGAT総裁(注69)によると,電力消費は,涼しい天候と経済危機のために,2009年1月は13%の落ち,2月の第1週は10%の落ちを記録している。

(注) (61) 090221B Thailand, istockanalyst,(62) Ital-Thai, NWR Win Egat Bid,(63) http://www.istockanalyst.com/article/viewiStockNews/articleid/3054603,(64) Thursday, February 19, 2009 5:55 PM,(65) (Source: Bangkok Post)By Yuthana Praiwan, Bangkok Post, Thailand,(66) Italian-Thai Development Plc (ITD),(67) Nawarat Patanakarn Plc (NWR),(68) Electricity Generating Authority of Thailand (Egat),(69) Egat governor Sombat Sarntijaree,(70) Mae Moh coal-fired power plant,(71) Lampang,(72) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090201A.htm,(73) 

●パキスタンのザルダニ大統領が中国へ水力協力要請へ(注28)

Pakistan's Asif Ali Zardari is visiting China, his second since becoming president, with plans to promote mutual economic and trade relations. Pakistani Foreign Ministry spokesman, Abdul Basit, said in Islamabad on Thursday that Zardari's 4-day visit beginning on Friday, Feb. 20, is part of his quarterly visit regime to China to explore economic cooperation, Press TV reported late Thursday from Islamabad. (注29)

パキスタンは,インドに攻められながら,自らもダム開発を進めるべく準備中であるが,資金的,技術的にも中国の支援を頼りにしている。ザルダリ大統領(注28)は,昨年,2008年,就任早々に北京を訪問し,ダム建設への支援の約束を取り付けているが,なかなか具体的な支援に広がらないところに,焦りが見える。パキスタンにとって,今や中国が唯一の頼りである。

パキスタンのザルダリ大統領(注28)は,第2回目の北京訪問に旅立つ。目的は,経済通商の推進計画についてである。バシット外務報道官(注32)は,ザルダリ大統領(注28)が,金曜日,2009年2月20日,に出発,4日間の中国訪問を行うが,これは年4度の定期的な経済協議の一つである,と。今回,ザルダリ大統領(注28)は,産業の中心地,上海など(注34)を訪問し,農業,科学技術など,視察する予定である。

北京駐在のカン大使(注33)は,自由貿易協定への署名を求めており,更にザルダリ大統領(注28)自身は,水力開発への支援を確認することを視野に入れている,と言っている。消息筋は,今回は純粋な経済目的で,政治的な交渉は視野に入っていない,北京の上層部とは,クリントン国務長官(注35)の北京訪問で,会えない可能性が強い,と報じている。しかし少なくとも,大統領(注28)は商務長官には会うつもりだ。

前回のザルダリ大統領(注28)の訪中では,パキスタンの行き詰まった電力不足に対応するため,中国が二つの原子力発電所の建設に,新たな支援を行う,との合意がある。パキスタンは,既に中国支援原子力発電所が動いており,更に一つが現在工事中である。

(注) (27) 090221C Pakistan, presstv,(28) Zardari begins China visit,(29) http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=86201&sectionid=351020401,(30) Fri, 20 Feb 2009 02:20:27 GMT,(31) Pakistani President, Asif Ali Zardari,(32) Pakistani Foreign Ministry spokesman, Abdul Basit,(33) Pakistani Ambassador to China, Masood Khan,(34) Wuhan, the capital of Hubei province, Yichang and Shanghai,(35) US Secretary of State, Hillary Clinton,(36) (73) https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhNwvhd0CFb38NQSp2_7JupHQSCZ2D5Gc0cmChr-FaqVjihaT1TDq1mf3t7M8ahh0QnCHf8o57CldVI8gDIegQYCi4obEWWLnFHqe4Pnw9K7p3W-skPTNDrI_pLIE4gJBBxZrkcxLcShrc/s400/071219-pakistani-nuclear.jpg (74)

●インドネシアのPLNは第2次電源開発で失敗か(注2)

State-owned electricity company PT Perusahaan Listrik Negara is likely to only be capable of increasing national electricity generating capacity by about 2,000 megawatts as part of the second stage of its expansion program, instead of 3,000 MW as originally planned, a top Energy Ministry official said on Thursday. This is due to lack of funding and technical limitations, with the rest of the work possibly left for the private sector to do.

インドネシアの電源開発は,中国の支援を受けて,順調に入っているはずだったが,ここに来て中国側の態度が変化し,ユドヨノ大統領(注18)以下,苦慮しているようである。これについては,2009年2月13日付本HP(注20)で報じられたとおりである。インドネシアのクラッシュプログラム,所謂,緊急プロジェクト計画(注5)は,2010年までの第1次がこの障害に遭遇,2014年までの第2次についても問題が起こっている。

木曜日,2009年2月19日,エネルギー関係省高官の話によると,国有電力公社PLN(注4)は,早期着工計画(注5)第2次分の最初の計画としていた,3,000MWについて,2,000MWとせざるを得ない,としている。理由は,資金不足と技術的限界,と言っており,出来ない部分は,民間セクターにお願いせざるを得ない,としている。

インドネシア政府は,第2次の早期着工計画(注5)を,今年,2009年にスタートさせる計画である。この第2次計画は,全国に亘る99プロジェクトで,2014年までに完成させる計画である。その半分以上は,地熱発電(注20)と水力発電を含む再生可能エネルギー(注21)を想定している。全部完成すれば,10,000MWで,第1次分,10,000MWと併せて,新規20,000MWとなる予定である。

この第2次分,10,000MWのうち,3,000MWはPLN(注4)が実施し,残りの,7,000MWはIPP(注22)に期待している。プルオノ電力総局長(注8)は,今のところPLN(注4)は,2,000MWを予定しており,ムワラ・タワール天然ガス火力(注6)とチソカン揚水(注7)であり,サブローン(注23)は,この二つのプロジェクトについては確保されている,と語っている。

プルオノ電力総局長(注8)によると,西ジャワ州(注24)のチソカン揚水(注7)の工事費は20億ドルであり,ダムが2つ必要なので高くつく,と。PLN(注4)は需要の60%を満たしているのみである。揚水発電所は,オフピークの電力で揚水し,ピーク時にこれを発電する仕組みである。チソカン揚水(注7)については,JBIC(注10),世界銀行(注11),ADB(注12)など国際的な融資機関から,コミットを受けている。

第2次の緊急プロジェクト計画(注5)の他の地点については,PLN(注4)に検討を指示しており,民間企業にも参入を要請する方向である。この大統領令は現在準備中である。また,IPP(注22)に対する販売料金の基準については,省令で決めるべく検討中で,近いうちに成案となるであろう,と。第1次については,頼りにしていた中国資金が暗礁に乗り上げており,2010年完成の予定は,ずれ込む可能性があると。

PLN(注4)によると,資金難から第1次の完成は2012年にずれ込むが,ジャワの3つの発電所,1,000MWは,2009年内に完成する,それは,中部ジャワ州(注25)のレンバン火力(注13)と西ジャワ州(注24)の,ラブアン火力(注14)とインドラマユ火力(注15)である。中国政府は,第1次分の石炭火力に対して,80億ドルを約束していたが,現在までに20億ドルが具体化しただけで,残りは棚上げされている。

このことに関して,ムルヤニ財務大臣(注16)とマリ貿易大臣(注17)が,北京を訪問する予定になっている。PLN(注4)は現在,自己資金で第1次分の残りを進めている。ユドヨノ大統領(注18)は,2009年2月10日,中国の撤退に備えて国内銀行の動員を考えるよう,PLN(注4)に指示している。現時点では,PLN(注4)は,全国需要の60%を供給するのが精一杯である。

(注) (1) 090221D Indonesia, thejakartaglobe,(2) PLN May Possibly Miss Target For Second ‘Fast-Track’ Scheme,(3) http://www.thejakartaglobe.com/business/article/10497.html,(4) PT Perusahaan Listrik Negara (PLN),(5) fast-track program,(6) gas-fired Muara Tawar plant,(7) Cisokan pumped-storage hydro scheme,(8) Jacobus Purwono, the Energy and Mineral Resources Ministry’s director general of electricity,(9) Pumped-storage schemes,(10) Japan Bank for International Cooperation,(11) World Bank,(12) Asian Development Bank,(13) Rembang power plant,(14) Labuan power plant,(15) Indramayu power plant,(16) Finance Minister Sri Mulyani Indrawati,(17) Trade Minister Mari Pangestu,(18) President Susilo Bambang Yudhoyono,(19) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090213D.htm,(20) geothermal,(21) renewable resources,(22) independent power producers,(23) Subloan,(24) West Java Province,(25) Central Java Province,(26) http://blogs.yahoo.co.jp/tknaito/51593370.html,(27) (74) http://mproprovider.files.wordpress.com/2008/05/picture-3002.jpg。(75)

●中国は水力発電所の料金を値上げへ(注53)

Vice Director of the National Development and Reform Commission (NDRC) Zhang Guobao has told a forum on Sustainable Development of Hydropower that China intends to raise the price of hydropower, according to a February 19 report in Caijing magazine. The price adjustment would change a long-standing policy to set the price of hydropower lower than that of thermal power.(注54)

2009年2月19日付の雑誌カイジン(注57)によると,発改委NDRC(注60)のザン・グオバオ副主任(注55)は,水力持続的開発(注56)のフォーラムで,水力発電所の電気料金を値上げする意向を報じた。水力の単価は,長い間,火力より低く抑えられてきた。ザン・グオバオ副主任(注55)は,この単価が水力開発の障害になってきた,それは歴史的な理由からである,と語っている。

2008年末に於ける水力設備は,170,000MWで,2008年の水力の発生電力量は,5,630億KWh,全電力の16.4%を占めている。長期に亘ってNDRC(注60)は,原価プラス利益として,水力の単価を低く抑えてきた。しかし内部では,水力の運転経費は少ないが最初の投資が大きいことで,いろいろな批判も出ていた。ザン・グオバオ副主任(注55)は,これを修正しなければ,水力開発に影響が出ると。

三峡ダムの元所長ル・ヨウメイ(注58)は,現在,水力の単価は,KWh当たり,0.2~0.3元,約2.90~4.38セント相当,で,これに対して火力は,0.4~0.5元,約5.85~7.31セント相当,で両者がバランスしているとは言えない,と言っている。ザン・グオバオ副主任(注55)は,同じ製品は同じ値段,と言う原則から言えば,火力と水力の単価は同一にすべきだ,と。

これにより増加する費用は,売電単価に反映すべきだが,送電網企業と発電企業の関心に影響して,水力の単価は,複雑な困難を伴う。更に詳しい議論については,注59を見られたし。

(注) (52) 090221E China, china.org,(53) China to raise price of hydropower official,(54) http://www.china.org.cn/business/highlights/2009-02/20/content_17309377.htm,(55) Vice Director of the National Development and Reform Commission (NDRC) Zhang Guobao,(56) Sustainable Development of Hydropower,(57) Caijing magazine,(58) ex-general manager of the Three Gorges Project Development Corporation Lu Youmei,(59) http://www.caijing.com.cn/2009-02-19/110071498.html,(60) National Development and Reform Commission (NDRC),(61) 

参考資料

ベトナム

●090221A Vietnam, thanhniennews
ベトナムのソンラダムの亀裂は問題ないと
EVN’s official report says dam safe despite cracks
http://www.thanhniennews.com/education/?catid=4&newsid=46286

タイ

●090221B Thailand, istockanalyst
タイのオタルタイなどがEGATの石炭入札で落札
Ital-Thai, NWR Win Egat Bid
http://www.istockanalyst.com/article/viewiStockNews/articleid/3054603

パキスタン

●090221C Pakistan, presstv
パキスタンのザルダニ大統領が中国へ水力協力要請へ
Zardari begins China visit 
http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=86201&sectionid=351020401

インドネシア

●090221D Indonesia, thejakartaglobe
インドネシアのPLNは第2次電源開発で失敗か
PLN May Possibly Miss Target For Second ‘Fast-Track’ Scheme
http://www.thejakartaglobe.com/business/article/10497.html

中国

●090221E China, china.org
中国は水力発電所の料金を値上げへ
China to raise price of hydropower official
http://www.china.org.cn/business/highlights/2009-02/20/content_17309377.htm


2009年2月20日金曜日

ベトナムの電源開発の遅れはなぜ


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

今日は真剣に取り組みすぎて,随分大変だった。途中でどれかのニュースを省略しようとしたが,どうしても出来なかった。私は,エネルギー開発,と言うテーマーに絞っているつもりで,原油ガスの探査とか,石炭の埋蔵量とか,水力のダム開発とか,原子力開発とか,エネルギー源に関するものは網羅するつもりでいる。特に今日の,ベトナムの電源開発とか,インドの東部のガスとか,ネパールのダムとか。

しかしその中で邪魔になるのは,フィリッピンなどの発電資産の買収だ。出来上がったものを買収するなどと言うのは,世間に何のプラスも生まないし,まさしくゼロサムゲームだから,出来るだけ無視するが,フィリッピンの発電所の買収劇には参ってしまう。時間の無駄だ,と思いながら,毎日毎日,買収の話ばかりで,何も造ろうとしない,だんだんと苛立って,むしゃくしゃして来る。

ベトナムはどうしたのだろう。最近電気料金を上げたが,状況は一向に改善されない。私も,EVN総裁の頃に昔よく知っていたハイさんは,将来首相になる人だから,と周りの人が気を遣っていた。工業大臣に上り,更に今日のニュースでも,副首相として重要な発言を行っている。彼の発言は,詳しく内情を説明していないが,その言葉の中に,何となくベトナムの問題点が浮き彫りにされているのか。

ベトナムには,水力,火力を含めて沢山のプロジェクトが進行中である。昔は私もベトナムの殆どのプロジェクトを知っていたが,今では,水力も火力も,私には耳慣れないプロジェクトばかりである。と言うことは,ベトナムは一生懸命,プロジェクトの形成に頑張ってきたと言うことで,昔,我々が知っていたプロジェクトの多くは完成している。

今日は,産業通商省が,2006~2015年の電源開発計画の進行状況を報告書にして説明している。すべてのプロジェクトが,1年,2年と遅れて来ている。ベトナムはあれだけ一生懸命電源開発を行ってきたにもかかわらず,厳しい電力不足に見舞われている,まだまだ脱却できそうにない。一つは,出力が不安定な水力発電が大きな部分を占めていることにもあるが,今日のハイさんの言葉は,別の見方だ。

ハイさんは,電気料金を上げても,電力不足への対症療法にはならないと言っている。彼は,投資計画省が奮起すべきだ,と檄を飛ばしている。彼は8つの法案,と言っているが,この8つの法案を整備しなければ,公社事業も民間の発電事業も,投資が集まらない,と言っている。と言うことは,多くのプロジェクトの遅れが,投資企業への対策に問題がある,と言うことだ。もう少しここを突っ込む必要がある。

本文

●ベトナムのプロジェクト遅れに電力不足深刻

ベトナムの電力不足の真因は何か,おそらく投資環境の問題で,電気料金による資本回収にも問題があるのだろう。EVNの総裁で,末は首相だ,と言われてきたハイさんは,もう副首相に上り詰めて,ウイキペディアにもその名前が出ている。ハイさんの言っていることが,おそらく核心をついているのだろう。詳しくは書いてないが,要するに,資本を動員するために,ハイさんは,8つの法案を準備せよ,と言っている。

ベトナムの一連の電源プロジェクトが,6ヶ月から1年の遅れを出している。この結果,現在から2011年まで,毎年,21~31%の電力が不足巣Rことになる。産業通商省MIT(注1)は,国家電源開発計画,2006年~2015年(計画6)(注2)に於ける開発の状況に関する報告書を出して,プロジェクト実施の遅れに対して警告を発した。

全国系統の中で,今年,2009年,15の発電所プロジェクト,出力合計3,393MWが運転開始すると期待されていた。しかし,MIT(注1)は,このうち8つの発電所プロジェクトが遅れており,年内に運転開始されるべき,966MWが不足し,ベトナム全部の28%の設備を追加する必要が生じている。ビナコミン(注4)の進めるマオケ第1火力プロジェクト,220MWは,2011年完成で,計画より2年遅れである。

遅れている他の8つの中には,150MWのバンメ第2水力プロジェクト(注5),86MWのブオンツアサ水力(注6),180MWのドンナイ第3水力1及び2号機(注7),以上はいずれもベトナム電力EVN(注8)の投資によるものだが,他に,300MWのハイフォン火力第2.1(注9)がある。また遅れは,2010年及び2011年に運転開始が予定されているプロジェクトの中にも出てきている。

リラマの投資による,600MWのブンアン第1.1火力(注10)と,ビナコミン(注4)の投資による,220MWのマオケ第2火力(注11)は,予定は2010年のところ,2012年となる。更に,ペトロベトナムの,750MWのノンチャッチ第2ガスタービン(注12)は,2011年の予定が2012年になる。3つの発電所はいずれも大規模で,深刻な電力不足を招き,2010年には全国で,1,570MW不足,全電力の31%に相当する。

2011年には,計画6(注2)によると,14の新規発電所,5,401MWが必要である。しかし,MIT(注1)の調査では,600MWのモンドウオン第2.1火力(注13)及び,600MWのブンアン第1火力(注14)に1年の遅れがでている。この2つのプロジェクトの遅れで,2011年には22%の電力婦sくの見込みである。

同じように,2012年には,6,554MWの新規電源が必要だが,2つのプロジェクトに遅れがでる。それは,600MWのチャビン火力(注15)と,600MWのニソン第2.1火力(注16)である。これらの遅れは,慢性的なベトナムの電力不足を続けることになるが,効果的な対策は見つかっていない。MIT(注1)のドフハオ副大臣(注17)は,その日暮らし(注20)だとして,生産できたものはすべて消費してしまう状態を言っている。

今しばらくは,ベトナム系統では,4,000~5,000MWの予備力が必要である。2009年2月17日の記者会見で,MIT(注1)は,8.92%の電気料金値上げを発表した。ホアンチュンハイ副首相(注17)は,この値上げは電源開発促進に繋がらない,政府は計画投資省MPI(注19)に2009年5月までに資本再編成の8つの法案を準備するよう指示しており,これが現在の電力投資上の問題を刑欠出来る,と言っている。

(注) (1) Ministry of Industry and Trade,(2) national program on power development for 2006-2015 (program 6),(3) Mao Khe 1 Thermopower Plant,(4) Vinacomin,(5) Ban Ve 2 hydropower plant,(6) Buon Tua Sah hydropower plant,(7) Dong Nai 3 hydropower plant,(8) Electricity of Vietnam,(9) Hai Phong Power Plant 2.1,(10) Lilama-invested 600MW Vung Ang 1.1 power plant,(11) Vinacomin’s 220 MW Mao Khe 2 plant,(12) PetroVietnam’s 750 MW Nhon Trach 2 gas turbine project,(13) 600MW Mong Duong 2.1 power plant,(14) 600MW Vung Ang 1 thermopower plant,(15) 600 MW Tra Vinh thermopower,(16) 600 MW Nghi Son 2.1,(17) Deputy Minister of Industry and Trade Do Huu Hao,(18) Deputy Prime Minister Hoang Trung Hai,(19) Ministry of Planning and Investment,(20) live from hand to mouth,(21) 





●フィリッピンの地熱発電所をアボイテスが引き取り

アボイテス電力が,先日のアンボクラオ水力の改修工事着手の報道に続いて,地熱への具体的な動きを始めた。いずれも,再生可能エネルギーに関連した動きだが,なかなか電源の新規開発には及んでこない。他の国の今日の報道と比較してください,情けない。アボイテス電力(注64)は,289MWのティウイ地熱発電所と458.53MWのマクバン地熱発電所(注65)の引き取りの準備に入り,2009年代2四半期に引き取り完了,と。

アボイテス電力(注64)のパレデス副社長(注67)によると,既にティウイ及びマクバン地熱発電所(注65)の40%に相当する事前払い(注68)は手元にあると。80億ペソは現金で保有しており,手付け金(注69)は5月に支払う,残りの60%分は,7年間に漸次支払う,と。間もなく,3ヶ月以内に設備を引き取る,と言っている。

PSALM(注7)は,昨年,2008年7月,ティウイ及びマクバン地熱発電所(注65)は,446.89百万ドルでアボイテス電力(注64)が落札した,と公表している。PSALM(注7)は,NPC(注71)を通して,投資意欲を刺激するため,400MWの電力引き取りを,契約に付け加えている。アボイテス電力(注64)のアボイテス上級副社長(注72)は,ティウイ及びマクバン地熱発電所(注65)に問題あるものの,関心は維持している,と。

アボイテス電力(注64)は以前から,ティウイ及びマクバン地熱発電所(注65)について,NPC(注71)がシェブロン(注73)都交わしている上記供給契約(注75)の存在と,JCPC(注74)の未解決の認可問題に,引っかかっている。しかしこれは,急騰して来た石炭市場価格と密接な関連があるので,再交渉の必要がある,と見ている。

(注) (64) Aboitiz Power Corporation (AP),(65) 289 megawatt (MW) Tiwi and 458.53 MW Makban geothermal power plants,(66) Tiwi-Makaban power plant,(67) AP senior vice president Stephen Paredes,(68) upfront payment,(69) downpayment,(70) Power Sector Assets and Liabilities Management Corporation (PSALM) ,(71) National Power Corporation (Napocor),(72) AP senior vice-president for power generation group Luis Miguel Aboitiz,(73) Chevron geothermal unit,(74) JCPC,(75) steam supply contract,(76)

●ネパールのアッパーカルナリ水力の工事がGMRで再開

インドの企業が一斉に,ネパールの水力開発に入っているが,円滑に言っているのかどうか,余り報道もなく心配していた。マオイストの政権入り,しかも与党の主流にいることから,地方の治安の問題は解決している,と考えてきたが,まだ問題は残っているようだ。昨日の記事で,インドのメノン外務次官(注40)が,ネパールのダハール首相と長く話し込んだ。

インドのメノン外務次官(注40)は,2日間のネパール訪問を終えて,水曜日,2009年2月18日,カトマンズを去るに当たり記者会見,ネパール西部に於けるインド企業GMR(注39)の,日曜日以来,地元住民の妨害によりストップしていた工事を再開した,すべての障害は取り払われた,と語った。GMR(注39)は,2008年,300MWのアッパーカルナリ水力(注41)の開発を落札したが,住民が知らされていないと,妨害していた。

アッパーカルナリ水力(注41)プロジェクトは,3つの地区,アチャム(注42),ダイレキ(注43),サーケット(注44)に跨っているが,これらの地区はすべて強力なマオイスト党(注45)の支持者である。先週,これらの地元住民が,自分たちの要求に応えないならば工事を妨害する,との書面が出され,これが障害になっていた。地元新聞は,この妨害でGMR(注39)は,1日1,000万ネパールルピー,約623,800ルピー相当損失と。

GMR(注39)は,治安確保に関して,地区ののチーフに書面を提出していたようだ。昨年,2008年,メノン外務次官(注40)が,クケルジー外相と共にネパールを訪問した際,複数のインド有力企業(注47)から,治安と地元雇用に問題のあることを,事前に通知していた。

(注) (39) GMR Energy,(40) Indian Foreign Secretary Shivshankar Menon,(41) 300 MW Upper Karnali hydropower project,(42) Achham district,(43) Dailekh district,(44) Surkhet district,(45) Maoist party,(46) Indian External Affairs Minister Pranab Mukherjee,(47) United Telecom, Dabur Nepal and Nepal Lever,(48)

●インド政府はKGのガスよりも西海岸に注目

インドの東海岸の天然ガス,KG流域(注22)は,リライアンス(注21)によって事業化されていて,その供給先や契約で,いろいろと紛争が起きてきているが,今日の報道では,インド政府が,東のガスの方がよいのではないか,と言っている。東にガスがあるのかよ,と言いたいところで,あるならあるで手を早く打てばよいのに,とも思う。でも,賦存量や技術的な問題については,まだ書かれる問題ではないようだ。

今日の記事。石油省高官の話として,中央政府は,リライアンス(注21)が事業化しているKG流域(注22)の天然ガスが十分でないので,供給量を最大にするために,西海岸の豊富なガスに切り替えることを視野に入れているという,しかし,この突然の出来事について,詳しいメカニズムなどはまだ表に現れていない。

リライアンス(注21)のKG-D6ガス田(注37)のガスの主成分は,メタン(注36)で,石油化学製品やLPG(注27)には使えない。しかし,西海岸のボンベイ大陸棚(注23)で,国有企業及びその合弁企業が運営するパンナ(注24),ムクタ(注25),タプティ(注26)各ガス田は,量も豊富で,石油化学製品とLPG(注27)にも使うことが出来る。

リライアンス(注21)のKG-D6ガス田(注37)のガスは,カロリーが低く,8,100kcal/SCM(注31)であり,エタン(注28),プロパン(注29),ブタン(注30)を含んでいない。その高官は,国としてよりよい天然ガスを得るために,単なる燃焼だけではない他にも利用できる西海岸のガスに,KG-D6ガス田(注37)のガスから転換を図るべきだ,と言っている。

専門家によると,西海岸のガスは,エタン(注28),プロパン(注29),ブタン(注30)を含んでいて,カロリーも,10,000kcal/SCM(注31)以上あると。価格もこのカロリーによって違ってくる。高官筋は,リライアンス(注21)のKG-D6ガス田(注37)のガスは,政府のガス使用政策(注38)に基づいて販売される,と。デオラ石油相は国会の委員会で,リライアンス(注21)のKG-D6ガス田(注37)のガスは,2009年4月に供給開始と。

そのガス,日4,000万立方mMMSCMD(注33)は,既設の肥料工場,LPG施設,発電所の不足分を補うと。最終決定は,まだ時間がかかるが,肥料への補助金削減,電力とLPGの生産増強によって,原油への依存の軽減や環境への影響を考慮して決定されると。このガスは,過程や運輸セクターに対するCNG(注35),PNG(注34)にも供給されるだろうと。

(注) (21) Reliance Industries,(22) Krishna-Godavari (KG) basin,(23) Bombay High,(24) Panna,(25) Mukta,(26) Tapti,(27) liquefied petroleum gas (LPG),(28) C2H6 (ethane),(29) C3H8 (propane),(30) C4H10 (butane),(31) kcal per standard cubic meter (SCM),(32) petroleum & natural gas minister Murli Deora,(33) million metric standard cubic metre per day (MMSCMD),(34) piped natural gas (PNG),(35) compressed natural gas (CNG),(36) methane (CH4),(37) KG-D6 field,(38) gas utilisation policy,(39) 

●中国のCRパワーが中国南部で火力発電所建設

中国南部に於けるCRパワー(注48)の,開発への活躍を詳細に伝えている。中国で第6番目の発電企業CRパワー(注48)は,中国の南西部,広西荘自治区(注49)で,火力発電所を建設することになった。CRパワー(注48)は,中国の輸入石炭の60%を消費している中国南部での急速な事業拡大を目指していることを示唆した。地方政府によると,CRパワー(注48)は既に発改委NDRCC(注50)の承認を受けている。

CRパワー(注48)は,南部中国で最大規模となる,それぞれ1000MWを4機の石炭火力発電プロジェクトを計画している。第1段階は,1000MW機2機の超臨界石炭発電機器(注63)で,76.52億元という莫大な投資である。このプロジェクトは,年間で,362.8万トンの石炭を必要としている。この石炭は,中央部の河南省(注51)の石炭で,ピンディンシャン石炭(注52)とイイマ石炭(注53)から買ってくる。

CRパワー(注48)の拡大計画は止まらない。2008年10月,20億元,南西部中国の雲南省(注55)シシュアンバンナ県(注54)の地方自治体と,水力プロジェクト開発で合意している。雲南省(注55)政府とも以前に,開発に関する包括的な合意に達している。既に,ヌー川(注56)とホンヘ川(注57)で,水力プロジェクトの準備に入っている。ランサン-メコン・サブリージョン計画LMSECP(注58)にも入っている。

中国南西部は今や,急速な電力産業の発展を続けている。広西荘自治区(注49)は,2008年12月に,5つの送電線建設,69km,176百万元,の認可を受けている。広西荘自治区(注49)の投資額は,付属設備も含め,全部で6億元に達し,これらは,2009年5月に完成する。今月,広西送電公社(注59)は,南寧(注61)の送電線工事を開始する。

送電線は,広西荘自治区(注49)の省都南寧(注61)のユンジン送電プロジェクト(注60)で,31.6億元を要し,完成の暁には,広西荘自治区(注49)の変圧器容量は,294万KVAに達し,送電線の延長は,998kmに達する。

(注) (48) China Resources Power Holdings Co., Ltd. (CR Power, SEHK: 0836),(49) Guangxi. 広西荘自治区,(50) National Development and Reform Commission of China,(51) Henan 河南省,(52) Pingdingshan Coal (Group) Co., Ltd.,(53) Yima Coal Mining Group,(54) Xishuangbanna Prefecture,(55) Yunnan Province,(56) Nu River,(57) Honghe River,(58) Langcangjiang-Meikong Sub-regional Economic Cooperation Program,(59) Guangxi Power Grid Company,(60) Yunjing Power Transmission and Transformation Project,(61) Nanning,(62) USD 1 = CNY 8.63,(63) ultra supercritical coal-fired generation set,(64) 

参考資料

ベトナム

●090220A Vietnam, vietnamnet
ベトナムのプロジェクト遅れに電力不足深刻
Electricity shortage remains serious as projects going slowly
http://english.vietnamnet.vn/biz/2009/02/829956/

フィリッピン

●090220B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの地熱発電所をアボイテスが引き取り
Aboitiz Power sets Tiwi, Makban plants takeover
http://www.mb.com.ph/BSNS20090219148477.html

ネパール

●090220C Nepal, thaindian.com
ネパールのアッパーカルナリの工事がGMRで再開
GMR trouble in Nepal resolved Menon
http://www.thaindian.com/newsportal/world-news/gmr-trouble-in-nepal-resolved-menon_100156723.html

インド

●090220D India, Economic Times
インド政府はKGのガスよりも西海岸に注目
Govt may swap RIL’s KG basin gas with rich west coast output 
http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Govt-may-swap-RILs-KG-basin-gas-with-rich-west-coast-output/articleshow/4152538.cms

中国

●090220E China, tradingmarkets
中国のCRパワーが中国南部で火力発電所建設
CR Power to Build Thermal Power Plant in South China
http://www.tradingmarkets.com/.site/news/Stock%20News/2182101/

2009年2月19日木曜日

ネパールとインドが今後の開発計画で協議


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

今日の話題は,東京電力の復調と原発要員不足に備える1,000人規模の新卒使用計画か。電力だけがなぜ好調なのか,各企業の操業停止や設備廃止などで,需要も影響を受けていると思われるが,おそらく急激なエネルギーを含めた資源価格の下落が,電力を救っているのだろう。資料不足で確実には分からないが,電力料金調整が,急激な資源価格下落について行っていないのではないか。

今日の政府の地球温暖化会議で,電気事業連合会の森本宜久副会長が,「大幅な省エネの進展を前提とした大規模な設備投資はできない」,と言い切って,1990年比で4%程度の温暖化ガス削減は難しい,と言い切っている。批判を浴びそうだが,原子力発電所の稼働も上がってくると考えると,もう少し謙虚に発言してはどうか,と誰かに言われている。

麻生首相のサハリン訪問でサハリン2のLNGが大いに盛り上がっている。ここでLNG関連の数字を整理しておこう。日本の2008年の年間LNG輸入量は6,680万トン,世界の40%を占める。輸入の内訳は,インドネシアが1,360万トン(300万トンに減らすと言われている),マレーシアが1,330万トン,オーストラリアが1,210万トン,カタールが880万トン,ブルネイが640万トン,サハリン600万トン,UAEが560万トン,オマン360万トン

インドの外務次官がカトマンズを訪問,ネパールのダハール首相,プラチャンダと,インドの開発協力について話し合っている。目玉は,プラチャンダーの打ちだした,10年間で10,000MWの水力開発だ。その後,一向に進んだ話がないが,首相公邸で1時間に亘って話し合われた中には,具体的な地点名も出てきている。昨日は,アッパータマコシの話題で,インドと中国の企業が,大挙してネパールにいることが分かる。

おそらく,大規模プロジェクトは,今こそ仕込むチャンスではないかと思われる。ダムの事業費,電気機器も含めて,昨年,2008年半ばの価格よりも半減に近い減り方をしているのではないか。昨年時点では,何を仕掛けても事業費が高くてどうしようもなかった。今は,どのプロジェクトでも採算ベースに入ってくるのではないか,特にネパールなどはそうだ。

資金調達難,将来の見通しが不透明,などがプロジェクトを仕掛ける邪魔をしている,と皆考えているだろうが,プロジェクトは立ち上げるときが最も重要で,ある程度立ち上がってしまえば勢いで走り出す。車でも,信号待ちからダッシュするのが一番難しい。今なら,軽くアクセルを踏むだけで走り始める。ネパールは,日本から見ると大変だろうが,日本工営やJパワーは経験豊富,どんどん引っ張るべきだ。

本文

●タイのラチャブリ電力が2009年の拡張計画で128百万ドル

タイ最大の民間発電会社ラチャブリRATK(注1)の2009年の活動計画が報じられている。水曜日,2009年2月18日,RATK(注1)は,2009年に,既存及び新規のプロジェクトに,450億バーツ,約128百万ドル相当,の投資を行う計画を発表した。その説明文書によると,持続的エネルギー分野への参入として,タイ北部のペッチャブン県(注2)の風力プロジェクト(注10)に,11.1億バーツを投資するという。

この風力プロジェクト(注10)は,設備出力60MW,年間発生電力量125GWh,2011年運転開始,の計画である。タイの民間企業再生可能エネルギーREC(注3)が,この42.7億バーツの資本の74%を持っている。RATK(注1)は,ラオスに,ホンサ・リグナイト火力(注4),ナムグム3水力(注5),セピアン・セナムノイ水力(注6)の3つのプロジェクトを持っている。更に,ベトナムやインドネシアのプロジェクトも,視野に入れている。

RATK(注1)の資本は,国有電力EGAT(注7)が45%,タイ最大の石炭企業バンプBANP(注8)が15%,保有している。タイ証券市場SETI(注9)の今日の0347GMT株価は,0.6%ダウンの39.25バーツ,なおその時のSETI(注9)指数は,0.4%ダウンである。1ドルは,35.24バーツ。

(注) (1) Ratchaburi Electricity Generating Holding RATC.BK,(2) Phetchabun province,(3) Renewable Energy Corporation,(4) Hongsa lignite power plant,(5) Nam Ngum 3 hydropower plant,(6) Xe-Pian Xe-Namnoy hydropower plant project,(7) Electricity Generating Authority of Thailand (EGAT),(8) Banpu BANP.BK,(9) Thai stock index .SETI,(10) wind power project,(11) 

●フィリッピンの石炭で20ブロックを民間セクターへ

フィリッピンに石炭があるのかね、と言いながらまとめたのは、2009年2月9日付本HP(注14)である。セミララ島、カガヤン渓谷,ミンダナオなどが上げられ,ミンダナオでは,9億トンの包蔵が見積もられている。この時点のNEDO報告では,この記事にあるセブ南部の記述はない。炭質は,発熱量,3,900~5,200 Kcal/kg,とされて,余り良くない。セブ南部は良質,と書かれている。これが前回の大要。

今日の記事。エネルギー省(注11)によって,およそ20ブロックが,フィリッピン・エネルギー契約ラウンドPECR(注12)の次のラウンドとして,民間開発に委ねられる。エネルギー・オフィスは,石炭事業契約COC(注13)への応札のプロセスなどに関するガイドラインを作成中である。オカ・エネルギー省次官(注15)は,この石炭事業契約COC(注13)に続いて,他のエネルギー資源,原油やガスについても踏み出す,と言っている。

次官(注15)は,我々は石炭を発進させた,ガイドラインが出来ればすぐに発表し,15日程度を経て,3月には実際の石炭への行動に移る,と言っている。この政府の国内石炭の包括的な開発の意図は,近い将来,その需要が増える,との期待に基づいている。油田ブロックの入札が終われば,今年のラウンドは終了するが,次は地熱開発に移ることになる。

ここ数年の石炭の価格上昇は,国内石炭の増産を後押ししている。事実,現在計画中の石炭火力の殆どは,国内石炭を使用する設計になっている。実際には国内炭は量的に厳しく,現在の石炭火力は,殆ど,中国,インドネシア,オーストラリアからの輸入で賄われている。もう一つのディレンマは,国内石炭の質で,他の国の石炭に比べて,低質である。

世界的な燃料のクリーン・エネルギー資源への転換の流れの中でも,石炭は,安定したエネルギーとして,エネルギー・ミックスの中での役割が期待されている。有毒ガスの噴出を少なくするために,開発企業は,クリーン・石炭技術(注16)に期待が集まっている。

(注) (11) Department of Energy (DoE),(12) Philippine Energy Contracting Round (PECR),(13) coal operating contracts (COCs),(14) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090209A.htm,(15) Energy undersecretary Ramon Oca,(16) clean coal technologies,(17) 

●ネパール首相とインドの外相が今後の開発計画で協議

その後のインドとネパールの関係,二国間の開発協力はどうなっているのか,関心を持っていたところである。2009年2月17日,インドのメノン外務次官(注17)は,ネパールのダハール首相(注18)をバルワタール(注19)の首相公邸を訪ね,暫時懇談した。タパ首相補佐官(注21)によると,2008年9月のダハール首相(注18)の初めてのインド訪問の際に話し合われた主要な二国間プロジェクトについて,約1時間,協議された。

また,2008年11月の,インドのムケルジ外相(注20)がネパール訪問のときの約束も話題となった。このときの,ネパールのヤダブ外相(注22)との間の16項目の進捗状況が検討された。主要な項目は,ネパールの,10,000MW水力10年内開発構想と,問題を抱えたテライ(注30)の法令を回復する点であった。ネパール側は,インドの公私に渡る企業の投資環境整備を約束した。

ダハール首相(注18)は,メノン外務次官(注17)に対して,インドが支援を約束しているナウムレ水力プロジェクト(注23)の進捗について質問した。ネパール側から,何か障害があるなら言ってくれ,と言ったが,メノン外務次官(注17)は,今,両サイドがこのラプティ(注24)のダム建設について,協議を進めている,と答えている。また,コシ堤防(注25)と送電線の問題も,支援を約束した。

タパ首相補佐官(注21)によると,新規送電線は,まもなく,ムザファルプール(注26)とビハール(注27)の間に建設される,また,東西ハイウエー(注28)の損傷箇所は,3月末までに修復される,と説明されている。その午後には,メノン外務次官(注17)は,コイララ前首相(注29)をその自宅に訪ねて,現在の政治環境について,状況を探った。

コイララ前首相(注29)は,現況を説明した後,娘のスジャタ(注31)から,最近のダハール首相(注18)の無責任な発言は,政治混乱を招く恐れがある,とのコメントを聞いた。この議会の重鎮は,政治勢力の意見の一致,協力,統一が緊要,との意見を述べた。

(注) (17) Indian foreign secretary Shiv Shankar Menon,(18) Prime Minister Pushpa Kamal Dahal ‘Prachanda’,(19) Baluwatar,(20) Indian Foreign Minister Pranab Mukherjee,(21) Hira Bahadur Thapa, PM’s foreign policy advisor,(22) Foreign Minister Upendra Yadav,(23) Naumure hydro-project,(24) Rapti,(25) Koshi embankments,(26) Muzaffarpur,(27) Bihar,(28) East-West Highway,(29) former Prime Minister Girija Prasad Koirala,(30) Tarai,(31) Sujata Koirala, daughter of the veteran leader,(32)

●インドネシアのプルタミナがナツナガス田で政府補償を要求

インドネシア,リアウ諸島(注33)のナツナガス田(注34)のインドネシア政府とエクソンモビル(注35)の長年に亘る紛争については,2009年1月21日付本HP(注32)で解説し,インドネシア政府にとって,エクソンモビル(注35)の探査権は,2005年に失効していた,との判断を示したいた。ここの天然ガス包蔵量は16兆立方フィートと言われ,プルタミナ(注35)主導の政府方針が,確認されている。

今日の記事。水曜日,2009年2月18日,原油ガス規制機関BPミガス(注36)は,ナツナガス田(注34)の開発資金調達に関して,プルタミナ(注35)が,政府保証(注37)を要求していることを明らかにした。BPミガス(注36)のプリヨノ総裁(注38)が語ったところによると,必要投資額が,400億ドルという莫大なため,プルタミナ(注35)だけでは調達困難で,政府の協力が必要,と言っていると。

タングー天然ガス田(注39)でインドネシア政府がBPミガス(注36)に出したような,信用できるレター(注40)の発行を求めている。プルタミナ(注35)は現在,ナツナガス田(注34)の開発に関わるパートナーを捜しているが,その候補として,シェブロン(注41),エクソンモビル(注35),ステートハイドロ(注42),CNPC(注43),シェル(注44),ペtロナス(注45),ENIスパ(注46)の名前が挙がっている。

プルタミナ(注35)は,ナツナガス田(注34)少なくとも40%以上の主導多数の資本を望んでおり,その事業運営者となる希望である。

(注) (32) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090121E.htm、(33) Riau Islands,(34) Natuna-D Alpha block,(35) ExxonMobil,(35) PT Pertamina,(36) BP Migas,(37) government guarantee,(38) BP Migas president R Priyono,(39) Tangguh gas field,(40) trustee letter,(41) Chevron,(42) Total,(43) StatoilHydro,(44) CNPC,(45) Shell,(46) Petronas,(47) ENI Spa.,(48)

参考資料

タイ

●090219A Thailand, Bangkok Post
タイのラチャブリ電力が2009年の拡張計画で128百万ドル
Thai Ratchaburi to spend $128 mln on 2009 expansion
http://www.reuters.com/article/rbssUtilitiesElectric/idUSBKK41601520090218

フィリッピン

●090219B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの石炭で20ブロックを民間セクターへ
20 coal blocks offered to investors
http://www.mb.com.ph/BSNS20090218148387.html

ネパール

●090219C Nepal, thehimalayantimes
ネパール首相とインドの外相が今後の開発計画で協議
Follow-up push to bilateral commitments
http://www.thehimalayantimes.com/fullstory.asp?filename=6a1Za0zko2am8&folder=aHaoamW&Name=Home&dtSiteDate=20090218

インドネシア

●090219E Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのプルタミナがナツナガス田で政府補償を要求
Pertamina asks for government guarantee for Natuna
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/18/pertamina-asks-government-guarantee-natuna.html


2009年2月18日水曜日

ネパールのアッパータマコシ水力を456MWに


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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

昨日,2009年2月17日付,アフリカ,カメルーンの情報(注37)を流しましたが,この中で,英豪大手リオ・ティントが,この世界金融危機の中で,カメルーンの1,000MW水力開発とアルミ精錬工場に元気,というのは,おそらく中国の資源外交のせいではないか,と思われます。今日の日経は,中国の資源会社がオーストラリアでの権益拡大で攻勢をかけている,と報じられている。中国は当然,アフリカの資源に接近。

先日も書いたが,中国は,金融危機が言われていた頃に,国内需要に転換,として80兆円相当を超す内需拡大政策に走ろうとしたわけだが,つい最近に,再び海外資源への投資に,大きな挑戦を仕掛けてきている。このリオティントは,まさしくその兆しを示しているが,内需拡大がどれほど経済にとって大変なのか,瞬時に気がついたに違いない。今こそ手持ち外貨を,資源に注ぎ込むべき,と悟ったに違いない。

昨年,2008年7月に,原油が最高値に達して,鉄鋼材料の不足なども追いかけて,世界中のプロジェクトの建設費がパンクしていった。報道されたのは特に,ラオスの水力が悲鳴を上げて,タイとの買電交渉を再度行うとか,1年延期するとか報道された。私たちも,あるプロジェクトで随分悩んだが,おそらく落ちつくのではないか,と考えていたのが,今年になって,需要減退から,プロジェクトのコストが下がり始めた。

ネパールのアッパータマコシ水力(注29)が,309MWを,周辺の水を取り込んで,456MWに拡張する,と言う報道がなされたのは,今年の1月である。この水力は,カトマンズの北東,中国との国境に近い辺境で,ネパールが,出来るだけ自己資金で開発しようと頑張っているプロジェクトである。プラチャンダー首相の,10年間で10000MW開発,の先頭を切るプロジェクトだ。今参加しそうな企業はインドと中国である(注38)。

ノルウエーのコンサルタントなどが,その拡張の追加予算として80億ルピーを見積もったのに対して,ネパールのNEAが疑問を持ち,自ら精査に当たって,結論は30億ルピーとした。400億ルピーは約5億ドルに相当する。この拡張分は電気機器が大きな部分を占めるから,2008年ベースで見積もったコンサルタントの試算は,NEAによって,半分以下に評価されたことになる。私は,NEAは正しい,と言う予感だ。

私は,世界が不況で縮こまっているが,開発プロジェクトについては,今が動くチャンスではないか,と言う気がする。プロジェクトのコストが低いことは需要も少ない,と仰るだろうが,需要はもっと4,5年先の話だから,今こそ,プロジェクトを仕込む商売の人は,世界に飛び出すべきだ,今不景気だと言って内にこもると,後れをとること確実である。今こそ,明日にでも,東南アジア,アフリカへ,プロジェクト形成に飛び出すべきだ。

訂正,昨日,クリントン国務長官がお参りしたのは,靖国でなくて,明治神宮でした,ごめんなさい。


(注) (37) http://my.reset.jp/~adachihayao/iindex3newsAF.htm,(38) Larsen & Toubro Limited (India),Hindustan Construction Co. Ltd. (HCC),India - Tundi Construction (Pvt.) Ltd., Nepal, Joint Venture,China Gezhouba Group Company Limited (China),.China Railway 15 Bureau Group Corporation (China) - China CMIIC Engineering Corporation (China) Joint Venture ,Sinohydro Corporation (China),.China International Water & Electric Corporation (CWE) (China) ,China Anneng Construction Corporation (CACC) (China) Joint Venture ,

本文

●フィリッピンのアンボクラウ水力の改修が進む

SNアボイテス-ベンクエット(注4)は,ベンクエット県(注3)のボコッド(注2)に位置するアンブクラオ水力発電所(注1)の改修を,昨日,2009年2月16日,開始した,と発表した。2008年7月,PSALM(注5)は,入札で最高額の325百万ドルを提示したSNアボイテス電力(注7)に,175MW,アンブクラオ及びビンガ水力発電所(注6)を引き渡した。

SNアボイテス電力(注7)のルビオ社長(注8)は,我々は誇りに思っている,PSALM(注5)との売却合意に基づく我々の義務に則り,アンブクラオ水力発電所(注1)の改修に取りかかった,これは,近い将来,ルソン系統(注13)に再生可能エネルギーを供給する大きな貢献だ,と語っている。この改修工事は,2008年に土木工事を開始し,今月,2009年2月に電気機器の設置工事に入る。

SNアボイテス電力(注7)は,シンガポールの持株会社を通じたノルウエー籍のSN電力(注9)と,アボイテス資本ベンチャー(注11)の子会社であるアボイテス電力(注10)とのコンソーシアムである。SNアボイテス電力(注7)は,改修工事の工期を2年間としており,2010年に完成の予定である。SNアボイテス電力(注7)によれば,改修工事は,ノルウエー人のバッセルド・プロジェクトマネージャー(注12)に率いられた専門家によっている。

改修工事は,NPC(注14)から引き継がれた敷地内で行われており,SNアボイテス電力(注7)としては,特に近傍の地域に混乱を与えていない。SNアボイテス電力(注7)によれば,工事の開始に先立って,担当の地方自治体と相談して,必要な手続きを行って,すべての許可を既に得ている,と説明している。

(注) (1) Ambuklao Hydroelectric Power Plant,(2) Bokod,(3) Benguet,(4) SN Aboitiz Power-Benguet Inc.,(5) Power Sector Assets and Liabilities Management Corp.,(6) Ambuklao and Binga Hydroelectric Power Plants,(7) SN Aboitiz Power,(8) SN Aboitiz Power chief executive Emmanuel Rubio,(9) SN Power of Norway,(10) Aboitiz Power,,(11) Aboitiz Equity Ventures,(12) project director Rolf Baaserud,(13) Luzon grid,(14) National Power Corp.,(15) (36) www.cityofpines.com/ambuklao.html

●フィリッピンの議会報道官が原油規制緩和法の見直しを視野

石油各社から無視されて,ノグラレス議会報道官(注15)は,昨日,2009年2月16日,改めて,フィリッピン政府が申し渡しているように,石油規制緩和法(注16)の議会による見直しを示唆したが,これは,国内の主要な石油各社の財務状況を,検査すると言うことを意味する。ノグラレス議会報道官(注15)は,議会は,もし国の利益に反すると思うときは,石油規制緩和法(注16)も含めて,見直し,修正,撤回の権限を持つ,と言っている。

石油規制緩和法(注16)の修正は,そんなに強引な手法でもない,と。グラレス議会報道官(注15)は,燃料価格の矛盾は,政府の経済回復への努力を阻害している,と嘆いている。これは,世界の原油価格が下がっている現状で,石油製品の値下げの要求に応じない石油各社への不満から出たコメントである。議会(注17)は,このような状況の中で,石油各社への監視の権限を持っている,と。

世間の批判は,石油各社が競争でなくカルテルを組んでいるかのごとき動きをしていることで,これは価格を統一して,選択の余地のない消費者に損害を与えている,と言うものだ。グラレス議会報道官(注15)の警告は,議員達に指示されているが,石油各社は無視している。議会リーダーのディフェンサー議員(注18)も,次の議会の開会のときに,この問題を扱う,と言っている。これは多くの議員(注19)によって支持されている。

マラカニアンから石油各社の財務状況を懸念する声に対して,グラレス議会報道官(注15)は,石油規制緩和法は,競争を生んで価格の下落に繋がるはずだ,と言っている。エネルギー省(注20)の統計では,2009年2月12日のドバイ原油の価格は,1月のレベルで安定している。この週末の石油各社(注21~24)の燃料リッター当たりの価格は,ディーゼル0.25ペソ,無鉛ガソリン0.50ペソ,エタノール混合0.75ペソ,上げている。

PTT(注27)は,そのまま価格を維持する,と言っているが,他の石油各社は,その意図を明確にしていない。グラレス議会報道官(注15)は,政府の権限に対して,賢明な措置を執るように期待している,と言っている。

(注) (15) House Speaker Prospero Nograles,(16) oil deregulation law,(17) Congress,(18) Majority Leader Arthur Defensor,(19) Deputy Speaker Eric Singson, Reps. Rodolfo Plaza (NPC, Agusan del Norte), Vincent Crisologo (NP, Quezon City), Ferjenel Biron (Lakas, Iloilo) and Oscar Malapitan (NP, Caloocan City),(20) Department of Energy,(21) Pilipinas Shell Petroleum Corp.,(22) Chevron Philippines Inc.,(23) Petron Corp.,(24) Total (Philippines) Corp.,(25) unleaded gasoline,(26) ethanolblended gasoline,(27) PTT Philippines Corp.,(28) 

●ネパールのNEAがアッパータマコシ水力増設を視野

ネパールのアッパータマコシ水力プロジェクトUTHEP(注29)については,2009年1月29日付本HP(注35)で取り上げている。UTHEP(注29)の役員会は,30億ルピーを加えて,増分出力,147MWを得ることで合意した。新規規模の電力量は,年間2,247GWhに対して,元の309MWの計画では,1,777GWhであった。他の流域から水を導入することによって,拡張可能になった,と記している。

ネパール電力庁NEA(注28)の特別委員会は,アッパータマコシ水力プロジェクトUTHEP(注29)は,現在の309MWの設備から,30億ルピーを投入すれば,456MWに拡張することが出来る,との結論を出した。456MWに向かってプロジェクトを推進する,と言うことだ。2週間前に,ノルウエーのコンサルタントのJV(注30,31)が,NEA(注28)にプロポーサルを提出している。

このプロポーサルでは,309MWに147MW増設するために,追加で80億ルピーが必要,としていた。以前より,309MWプロジェクトは,320億~330億ルピーとされてきたので,456MWに対しては,410億ルピーが必要,と言うことである。これに対してNEA(注28)は,一週間前に8人からなる特別委員会を組織,コンサルタント提出のプロポーサルの検討に入った。

委員会は,30億ルピーが適当との結論を出した模様である。情報によれば,委員会は,国際市場で物価が下落しており,コンサルタントの提案よりは費用は少なくなる,と判断したようだ。土木,機器,一般経費について,著しく価格が低下している,としている。NEA(注28)の委員会は,UTHEP(注29)の役員会に,今週中に報告書を提出し,資金調達完了を目指す考えである。

アッパータマコシ水力プロジェクトUTHEP(注29)のシュレスタ・プロジェクト・マネージャー(注32)は,資金調達が遅れているため,まだ建設工事は始まっていない,と言っている。309MWから456MWへの拡張は,2機のタービンを増設することになる。雇用者準備基金EPF(注33)は,120億ルピーを供与することになっていて,ネパール政府資金での最大規模の水力プロジェクトになる。

(注) (28) Nepal Electricity Authority (NEA),(29) Upper Tamakoshi Hydro Electricity Project (UTHEP),(30) M/S Norconsult As,(31) Lahmeyer International GmbH,(32) Mrigendra Bahadur Shrestha, project manager of the UTHEP,(33) Employees’ Provident Fund,(34) www.nea.org.np/eng.php,(35) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090129B.htm,(36) 

参考資料

フィリッピン

●090218A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのアンボクラウ水力の改修が進む
Rehabilitation of Ambuklao power plant under way
http://www.manilastandardtoday.com/?page=business5_feb17_2009
●090218B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンの議会報道官が原油規制緩和法の見直しを視野
Oil deregulation review sought
http://www.mb.com.ph/MAIN20090217148306.html

ネパール

●090218C Nepal, kantipuronline
ネパールのNEAがアッパータマコシ水力増設を視野
Upgradation cost down
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?&nid=180742



2009年2月17日火曜日

インドネシアと日本のLNG契約減


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
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13時5分の日経速報は,中川財務大臣の辞意表明を報じた。でも,ぐでんぐでんになって記者会見に臨むなんて,すごい豪傑ですね。どうだろう,上司が,ぐでんぐでんになって,どうしても大事な会議に出る,と言い張ったら,どうだろう,体を張って止めるだろうか。止めるのではないか,と思うけれど,そうかこの機会に貶めるか,など考えることもあるかも知れない。付き添いの局長は,今,もっとひどい目に遭っているだろう。

テレビが,クリントン国務長官の靖国神社参拝を報じている,ゴメン,靖国ではなかった,伊勢神宮だった。それにしても,拉致家族と会うなど,日本へのプレゼンが驚くほど派手である。東条英機など,A級戦犯の遺灰を太平洋に撒いてしまったのは,日本人がすぐ東条神社とか神社を造るのに秀でているから,もし造ったら,うるさいからと言うのが理由だった。伊勢神宮も結構,対米戦では活躍した神社だ。

今日のニュースの主題は,インドネシアのエネルギー資源である。どんどん生産量が落ちてゆく原油で,インドネシア国会が神経質になっており,これを受けたインドネシア政府も,資源ナショナリズムへ走っている。生産が落ちているのは,外国企業がしっかり生産をやらないからだ,と言う主張で,外国企業の尻を叩くと共に,国有のプルタミナへの移管を早めたい考えだ。

日本の,中部電力,関西電力,九州電力など6社のLNGが問題になっている。従来このグループは,年間1,197万トンと言う膨大なLNG供給をインドネシア政府と交わしており,その契約が2011年3月に切れる。インドネシア政府は,それを一気に300万トンまで落とすと言うことで,先日来日したカラ副大統領も,強硬に削減を表明してきた。日本は,タンカー90船がまだ来ていない,と訴訟の構えをである。

日本は,世界のLNGの40%を使用している,またインドネシアは,1,361万トンのLNGを輸出,世界の20%のシェアーである。サハリンなどもあるが,厳しい情勢だ。金曜日,2009年2月13日,大阪で予備的な合意書に署名が行われ,インドネシア側は,これで日本のクレームは解消された,としているが,利潤の大きいタンカーによる運搬で,インドネシア船か,日本船か,でまた揉めている。

裏には,インドや中国の急激な発展があり,中国がミャンマーの60兆立方フィートの膨大なガス包蔵を一手に納めンと,ミャンマー軍事政権に膨大な支援を行っていることは,このHPでも何度も報じてきたが,日本の国策企業や商事会社などが,奮闘している様も,時々目にするニュースである。市場を重視してきた日本のエネルギー取得のやり方は,中国などに押されて,少し修正の方向に行くのか。

本文

●ベトナム政府はソンラダムの移住に対して1兆ドンを準備

ベトナムが国運をかけるソンラ水力プロジェクト(注11),2400MW,最近は2,3,このHPでも扱っている,いまや最盛期なのであろう。2009年2月14日付本HP(注1)では,高さ138mのRCC型コンクリートダムをうち上がり中だが,長さ31mの亀裂が起きて問題となっている。また,2009年2月8知日付け本HP(注2)では,10万人の移住遅れで,国会議員団が現地調査に入っている。今日はその対策の記事である。

この金曜日,2009年2月13日,グエン・タン・ドウン首相(注3)は,ベトナム北部ソンラ県(注4)の巨大水力プロジェクトの建設による数千の関係住民への補償として,1兆ドン,約1億ドル相当,の支出を,財務省(注5)に命じた。グエン・タン・ドウン首相(注3)は,EVN(注6)に対して,ベトナム開発銀行(注7)の支出を,予定に従い,サイトの抜開や移住への住民の補償に遅れを来さぬよう,指示した。

全部で,20,206世帯,95,862人が,北部3県,ソンラ県(注4),ライチャウ県(注8),ディエンビエン県(注9)から,282カ所の新規住居地区と23の地方自治体(注10)に移住することになっている。移住は,来年,2009年6月までに完了する予定である。ソンラ水力プロジェクト(注11)の工事は,2005年12月に開始され,総事業費は,25億ドルと試算されている。イメージなどVNCOLD(注12)にあり。

ソンラ水力プロジェクト(注11)は,6機のタービンで,出力2,400MW,年間発生電力は,94.29億KWhで,2012年に完成する計画である。貯水池の面積は,224平方km,総貯水容量は,92.6億トンである。このソンラ水力プロジェクト(注11)は,莫大な電力を生むだけでなく,北部地域の少数民族の生産構造と生活環境の改善を助けるものとして,ベトナムにとっては重要なプロジェクトと位置づけられている。

(注) (1)http://my.reset.jp/~adachihayao/index090214A.htm,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090208A.htm,(3) Prime Minister Nguyen Tan Dung,(4) Son La Province,(5) Ministry of Finance,(6) Electricity of Viet Nam,(7) Viet Nam Development Bank,(8) Lai Chau Provinve,(9) Dien Bien Province,(10) communes,(11) Son La hydropower plant,(12) http://www.vncold.vn/En/Web/Content.aspx?distid=344,(13)

●インドネシアの原油ガス企業が2009年に140億ドル投資

インドネシアは,生産が落ちている原油生産を,どの様に盛り上げるか,政府を上げて大きな関心事になっている。それは国会で度々問題となり,特に外国企業への風当たりが強く,資源ナショナリズム台頭の大きな要因となっている。2009年2月11日付け本HP(注24)にあるとおり,カラ副大統領が,原油ガスで海外企業に支配させない,と大きく見得を切ったばかりである。この記事はそれに関連する。

インドネシアの原油ガス企業は,今年,2009年の投資総額を,140億ドルと提案しているが,これは,先月,2009年1月,に計算された131.5億ドルよりもおよそ15%増となっている。先月の試算は,大部分の203の契約保持者から出された業務計画と予算提案書WP&B(注13)に基づいたものであった。より多くの提案書が提出されたのは,原油ガス規制機関BPミガス(注14)の発言が元である。

BPミガス(注14)のルティフ計画担当副会長(注15)が,日曜日,2009年2月15日,業務計画と予算提案書WP&B(注13)はコントラクターの業務と予算を示すもので,実施に際しては,BPミガス(注14)の証承認得る必要がある,と述べたことによる。昨年,2008年1月~10月の投資額は115億ドルであった。副会長(注15)は,業務計画は石油事業運営(注16),予算は事業予算(注17)と呼ぶ,と言っている。

ルティフ計画担当副会長(注15)によると,投資が増えたことは,2009年の政府の生産目標,日960,000バレルの目標達成に貢献するだろう,しかしこの目標は,2008年の実績,日978,000バレルを下回っている。BPミガス(注14)のプリヨノ会長(注18)は,2009年の生産目標が低いのは,米国第2の石油企業の地元子会社シェブロン(注19)の原油生産が落ちたことが大きな理由だ,と言っている。

シェブロン(注19)の原油生産は,全インドネシアの40%に相当するが,生産落ち込みは油井の老朽化が原因,と。プリヨノ会長(注18)は,シェブロン(注19)は,日400,000バレルを生産しているので,この生産が落ちると,これを補うものがない,と言っている。最近のシェブロン(注19)のスマトラのドウリ(注20)とミナス(注21)の契約区域では,2008年の生産実績は,日405,000バレルである。

この値は,政府の目標である日408,000バレルより少なく,2007年の実績,日425,000バレルに遙かに及ばない。プリヨノ会長(注18)は,投資は,探査よりも生産工場に重点を置くべきだ,として,探査は,昨年,2008年,良い結果を出した,と。2008年と比べての2009年の見通しを聞かれて,もっと多くのボーリングと他の他の探査活動に期待している,と述べている。

BPミガス(注14)のハムザ外事担当部長(注22)は,業務計画と予算提案書WP&B(注13)について,2008年とはその作成法で少し異なる,として,前は,支出承認AFE(注23)とWP&B(注13)は別途に扱ったが,これを今年からは同時に協議する,これによって承認が早くなる,と言っている。WP&B(注13)は監査資料として重要,それは,資金回収,利益配分,租税の減速が盛られているからだ。

資金回収は,極めて投資の刺激に重要なメカニズムで,このメカニズムの中で,政府は,探査期間に油田のコントラクターが費やした費用を回収できるのは,セクターの投資を増強して,そのブロックの生産が始まってからのみ,改修できるのである。

(注) (13) Work Program and Budget (WP & B),(14) BPMigas,(15) Achmad Luthfy, BPMigas deputy chair for planning,(16) “Petroleum Operation”,(17) “Operating Cost”,(18) BPMigas Chair Priyono,(19) PT Chevron Pacific Indonesia,(20) Duri,(21) Minas,(22) BPMigas external division head Amir Hamzah,(23) Authorization for Expenditure (AFE),(24) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090211A.htm,(25) 

●インドネシアが日本とLNG輸出で契約を延長

インドネシアは,日本へのLNG輸出を大幅に減らす,と言う話は前からあり,カラ副大統領来日の折もそれに言及している。私のメモを見ると,今回日本企業6社の現状契約は,年1,197万トンで,これを300万トンに減らすと言うから,インパクトは大きい。日本は,世界のLNGの40%を使用している,またインドネシアは,1,361万トンのLNGを輸出,世界の20%のシェアーである。サハリンなどもあるが,厳しい情勢だ。

インドネシアと日本は、金曜日,2009年2月13日,LNG(注25)購買契約の10年間延長契約の予備合意書を交換した。この予備合意書署名は大阪で行われたが,BPミガス(注26)のプリヨノ会長(注27)によると,本契約は後ほど行われる。2011年~2020年までで,参加した日本の企業は,中部電力(注28),関西電力(注29),九州電力(注30),日本製鉄(注31),大阪ガス(注32),東邦ガス(注33)の6社である。

今回コミットしたと契約全量は,10年間で2,500万トン,東カリマンタン(注34)のボンタンLNG施設(注35)から供給される。ボンタンLNG施設(注35)のガスは,トータル(注36)が運用しているマハカム・ブロック(注37)から供給される。この署名式には,国有原油ガス公社プルタミナ(注38)とインペックス(注39)が出席している。

10年のうち最初の5年間は,LNG年供給量200万トンがCIF(注40)で,100万トンがFOB(注41)で持ち込まれる。後半の5年間は,全部で年2百万トンに減り,100万トンがCIF(注40),残りの100万トンがFOB(注41)である。プルタミナ(注38)は,供給解決合意書DRA(注42)に署名したが,この結果,日本企業から出ていた契約違反クレームは,なくなった,とプリヨノ会長(注27)は述べている。

前から日本企業6社は,2010年までに90船の契約不足を訴えてきた。プリヨノ会長(注27)によると,このLNGの75%は,インドネシア企業によって運搬される,と言っている。日本企業は前から,50%はインドネシア企業で,残りは日本のLNGタンカーで,と合意している,と言っている。プリヨノ会長(注27)は,インドネシアは十分なLNG運搬能力を持っている,プルタミナ(39)が入札を行うことになっている,と言っている。

プリヨノ会長(注27)によると,LNG運搬は事業として有利で,1日3万ドルを得ていると。また,プルノモ大臣(注43)は,ガスの殆どは輸出に回っているので,政府としては輸出を減らし,国内供給を増やすべく検討している,と主張している。今回の合意書が正式に契約書になった段階で,現在の25年間の契約は,2010年に破棄される。現状の契約は,日本が毎年1,200万トン供給を受けることになっていた。

(注) (25) liquified natural gas (LNG),(26) BPMigas,(27) BPMigas chairman R. Priyono,(28) Chubu EPC,(29) Kansai EPC,(30) Kyushu EPC,(31) Nippon Steel Co, Ltd,(32) Osaka Gas Co, Ltd,(33) Toho Gas Co, Ltd.,(34) East Kalimantan,(35) Bontang LNG plant,(36) Total Indonesia,(37) Mahakam block,(38) PT Pertamina,(39) Inpex Corporation,(40) CIF (Cost Insurance Freight),(41) FOB (Free on Board),(42) Deliverability Resolution Agreement (DRA),(43) Minister of Energy and Mineral Resources Purnomo Yusgiantoro,(44) 

参考資料

ベトナム

●090217A Vietnam,vietnamnews
ベトナム政府はソンラダムの移住に対して1兆ドンを準備
Ministry allocates VND1 trillion for those relocated by Son La dam
http://vietnamnews.vnagency.com.vn/showarticle.php?num=01SOC160209

インドネシア

●090217B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアの原油ガス企業が2009年に140億ドル投資
Oil, gas firms to invest $14b in 2009
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/16/oil-gas-firms-invest-14b-2009.html
●090217C Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアが日本とLNG輸出で契約を延長
LNG RI signs deal with Japan on gas sales extension
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/14/lng-ri-signs-deal-with-japan-gas-sales-extension.html