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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm
今日のビジネスアイ(注28)は,日本の経済産業省を中心に,「中国,インドなどアジア各国を対象に,世界最高水準の燃焼効率を誇る日本の石炭火力発電の技術支援に乗り出す」,と題して,長文で,大々的な石炭火力への支援を報じている。最近のJICAなどの公開資料で,その積極的な動きに,大いに感ずるところがある。Jパワーが,石炭火力は諦めた,と皮肉っていたが,関係者の努力で,その一角に突破口が開くか。
インドネシアの石炭火力も,曲がり角に来たようだ。インドネシア当局には,まだ石炭火力問題の本質までは論ずる余裕がないみたいで,今は,計画した,10,000MW,クラッシュプログラムの成否に,大統領まで乗り出して,その工程確保と,資金調達難と闘っている。私は,誰か,カラ副大統領に密接して,彼の動きを追え,と唱えてきたが,その早い動きに,振り回されそう。
カラ副大統領は,今日現在オランダのヘーグにいる。カラ副大統領不在であるにもかかわらず,ユドヨノ大統領は,電力公社PLN本社に,関係閣僚を連れて乗り込んで,中国が約束した電源開発への資金供与が円滑に行っていない点を糾弾し,関係者に,中国との再交渉も良いけれど,国内資金の動員も考えよ,と指示している。電源への中国政府資金は,2008年12月23日HP(注17)にもあるよう,カラ副大統領が動かしたものだ。
さて,私の最近のHPを追って貰えば分かるが,カラ副大統領は,先週には実は東京にあった。東京では,LNG契約の確保を狙う日本の官民を前に,インドネシアはこれからは国内需要優先だ,と言って,そのまま,米国へ飛んだ。米国では一連の会談をこなす中で,エクソンモビルの幹部が,おそるおそる,例のセプ油田の拡張の話を持ちかけると,日百万バレルでも生産するか,と皮肉一杯に蹴飛ばして,欧州に向かった。
欧州では,今日の記事になるのだが,オランダで,先方首相を初め,ロイヤルダッチシェルの面々を前に,インドネシアのエネルギー資源は,これからは外国企業の勝手にはさせない,国内企業のプルタミナ優先,を大きく打ちだして,インドネシアの記者団に,長文の報告を書かせた。今やインドネシアは,落ち込んでゆく原油生産に,国会議員が焦り始めて,政府や企業への追求を強めている。
政府と国会の言い分は,海外企業がさぼっているから生産が落ち込むのだ,国有のプルタミナに任せれば,彼等は頑張る,現に,プルタミナの計画は,増える傾向にあるが,シェブロンなどの海外企業が,生産落ち込みを主導している,と言っている。最近の動きの中で,悪者にされているのは,エクソンモビルで,東ジャワのセプ油田で,さんざんな目に遭いながら,やっと生産開始にこぎ着けたが,まだ分からない。
問題は,リアウ諸島の北東端,フィリッピンに近いナツナガス田である。エクソンモビルが,既得権を主張するのに,それを強引に取り上げて,プルタミナ主導への動きを加速させている。ここは16兆立方フィートと言われる巨大な容量を持つが,深海で,インドネシアも,プルタミナの技術だけでは難しいことを知っている。それが,カラ副大統領の欧州巡りと結びついている。
さて,来年,2010年はインドネシアの大統領選挙の年である。カラ副大統領は,既に立候補を宣言しており,前哨戦が始まっている。カラ副大統領が進めている中国との協力プロジェクトを,カラ副大統領が不在中に,ユドヨノ大統領が,閣僚まで引き連れて,PLN本社へ乗り込むのは,極めて異例だろう。カラ副大統領は,かって,中国訪問の後,莫大な資金協力を手にして,「中国の政治体制は素晴らしい。」,と褒め称えた人だ。
(注) (28) http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200902110096a.nwc
本文
●インドネシア,カラ副大統領,原油ガスで海外企業に支配させない
カラ副大統領の動きは激しく,誰か世界を飛び歩く彼に付きっ切りで追っかける必要がある。私の感じでは,カラ副大統領を軸に,インドネシアのエネルギー資源や電力開発が,大きくうねり始めている。カラ副大統領は日本に飛んで,日本へのLNG輸出を牽制し,その足だろう,米国へ飛んだ,泣きつくエクソンを皮肉タップリにやりこめて,今は欧州,ノルウエーにある。直近は,2009年2月9日付本HP(注1)である。
今日の記事,ヘーグ(注5)発信である。訪欧中のインドネシア,カラ副大統領(注3)は,インドネシアは,段階を踏んで地元エネルギー企業の役割を増大する方向で変革の道を歩んでおり,もうこれ以上,我が国のエネルギーを外国企業に支配させることはない,と断言した。即ち,一国の外国企業に,資源を自由にはさせない,インドネシアは自国の資源を管理する権利があり,大統領(注4)もこの考えに同意している,と語った。
カラ副大統領(注3)は,詳しくは説明していないが,エネルギー・プロジェクト,特に原油ガスのセクターでは,世界の殆どの国が,巨大多国籍企業に支配されている,と述べている。例えば,原油分野では,地元企業プルタミナ(注6)の原油生産量は,日115,000~125,000バレルであるが,米国巨大企業シェブロン(注7)は,インドネシアの全原油の45%,日400,000バレルを生産している。
カラ副大統領(注3)は,地元企業を盛り上げるという意味は,外国企業との協力を完全に否定しているのではない,インドネシアはまだまだ,国際的な資金と技術を必要としている,としている。外国企業との協力の好例として,プルタミナ(注6)が主導する大規模ガス田ナツナ・ブロック(注8)に於ける外国企業との協力を挙げている。
カラ副大統領(注3)は,ナツナ・ブロック(注8)に於けるプルタミナ(注6)と外国企業との協力で,今問題となっている米国籍エクソンモビル(注9)の他,候補リストとして,ノルウエーのスタットオイル(注10),中国籍のペトロチャイナ(注11),タイ籍のPTT(注12),オランダ籍のロイヤルダッチシェル(注13),がインドネシア政府の候補リストに上がっている,と説明している。
また,オランダ滞在中のカラ副大統領(注3)は,オランダ籍のロイヤルダッチシェル(注13)のナツナ・ブロック(注8)への参入の条件は,シェル(注13)の持つシンガポールの石油精製設備を,インドネシアのバタム島(注14)に移すことが条件だ,とし,バルケネンデ首相(注15)が,インドネシア参入の戦略を表明していることに,関心を示した。
米国籍エクソンモビル(注9)のナツナ・ブロック(注8)への権利について,カラ副大統領(注3)は,契約は既に2005年に失効している,と。「私は前から言っているように,エクソンモビル(注9)との契約は2005年に失効している。我々は,エクソンモビル(注9)に再交渉の機会を与えたにもかかわらず,エクソンモビル(注9)はその機会を失した。だから今こそ,我々が自国のエネルギー資源を自分で管理し始めるチャンスだ。」,と。
インドネシア政府は,地元企業プルタミナ(注6)が,インドネシアの原油ガス・エネルギー・プロジェクトの主導権を考えるときだ,と示唆してきている。カラ副大統領(注3)の今回の一連の発言は,老朽化した油田で,この5年間,生産が下がり続けている傾向を,インドネシアが再び再活性化しようとしている努力と重ね合わせるものである。今年,2009年のインドネシアの原油生産目標は,日960,000バレルである。
地元原油ガス上流監理のBPミガス(注16)の報告によると,日960,000バレルの目標を達成するために,原油ガス関連の企業は,2009年の生産と探査を併せて,131.5億ドルの投資を提案している。129.5億ドルが生産活動で,新規探査は僅かに,2.0157億ドルである。129.5億ドルの内訳は,37.3億ドルが1,237井の掘削,28.5億ドルが生産設備,47.2億ドルが運転,164億ドルが一般管理,である。
(注) (1) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090209C.htm,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090205B.htm,(3) Vice President Jusuf Kalla,(4) President Susilo Bambang Yudhoyono,(5) HAGUE,(6) PT Pertamina,(7) Chevron Corp.,(8) Natuna block,(9) ExxonMobil,(10) Norwegian-based StatOil,(11) China-based PetroChina,(12) Thailand-based PTT,(13) Netherlands-based Royal Dutch Shell,(14) Batam,(15) Netherlands Prime Minister Jan Peter Balkenende,(16) BPMigas,(17)
●インドネシアのPLN,電源で中国の支援が必要
カラ副大統領(注18)が出席して,盛大に,中国政府との協力協定が署名されたのは,つい先日,昨年,2009年12月23日である。そのHP(注17)に詳しく内容が残されている。この中には,4つの石炭火力発電所が含まれている。カラ副大統領(注18)は,現在欧州を旅行中である。この留守中に,ユドヨノ大統領(注19)が自らPLN(注20)本社を訪ね,中国の発電所支援に問題があることで,懸念を表明している。
ユドヨノ大統領(注19)によれば,国有電力公社PLN(注20)は,未だ,10,000MW,クラッシュプログラム(注21)で,資金難に遭遇している,それは主として,最大の投資国である中国政府の,円滑でない関係(注22)が原因である,と。月曜日,2009年2月9日,ユドヨノ大統領(注19)は,関係閣僚とPLN(注20)幹部に対して,中国との再交渉,国内融資機関との交渉,を含め,解決策の検討を指示した。
PLN(注20)本社を直接訪ねた後で,ユドヨノ大統領(注19)は,10,000MW,クラッシュプログラム(注21)の工事そのものは急速に進捗しているが,資金難から障害に遭遇している,関連閣僚とPLN(注20)幹部に,中国政府に円滑な資金供給の交渉を続けるよう指示した,国内資金の活用については,解決策が見つかっていない,と語っている。他の外国資金の目処はなく,国内資金を検討することが最良の策,としている。
10,000MW,クラッシュプログラム(注21)は,急増する電力需要,特にジャワバリ系統(注23)への対応として,2006年に始まった。35の発電所建設計画で,そのうち10地点がジャワバリ系統(注23),25地点が外島である。これらのうち,32発電所で契約の署名が終わり,その殆どは着工している。PLN(注20)によれば,80億ドルの資金のうち,85%が外部資金,15%がPLN(注20)資金である。
10,000MW,クラッシュプログラム(注21)の責任者であるPLN(注20)のプラトモ氏(注24)によれば,PLN(注20)は既に,17兆ルピア,約14.5億ドル相当,を地元金融機関から,また,20億ドル,その殆どは中国資金だが,の海外資金を確保している,と。また,中国支援の問題点が,プロジェクト互いに作用を及ぼしており,西部ジャワのインドラマユ発電所(注25)は,本来は,今年,2009年に発電開始する計画であった。
PLN(注20)によれば,インドラマユ発電所(注25)を含めた3つのプロジェクト,それぞれ1000MW,が,2009年に運転開始するところ,既に遅れている,と。また,2010年には,7,000MWが発電する予定であるが,2,000MWは,2011,2012年にずれ込む,と。更に将来の需要増を考えて,PLN(注20)は,第2次10,000MW開発プログラム(注26)を準備している。その一部はPLN(注20)プロジェクトだがそれ以外はIPP(注27)だ。
PLN(注20)によれば,第2次10,000MW開発プログラム(注26)の発注は,今年,2009年後半の初期に始まるだろう。10,000MW,クラッシュプログラム(注21)は全部石炭火力であったが,第2次10,000MW開発計画(注26)は,その12%が水力発電,48%が地熱発電,14%がガス火力発電,26%が石炭火力発電,と考えられている。
(注) (17) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081223C.htm,(18) Vice President Jusuf Kalla,(19) President Susilo Bambang Yudhoyono,(20) PT PLN,(21) first 10,000 megawatt (MW) crash program,(22) “unsmooth” partnership,(23) Java-Bali system,(24) Yogo Pratomo,(25) Indramayu,(26) second 10,000 megawatt accelerated program,(27) independent power producers (IPPs),(28)
参考資料
インドネシア
●090211A Indonesia, The Jakarta Post
カラ副大統領,原油ガスで海外企業に支配させない
RI may prefer lead role in oil, gas: Kalla
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/10/ri-may-prefer-lead-role-oil-gas-kalla.html
●090211B Indonesia, The Jakarta Post
インドネシアのPLN,電源で中国の支援が必要
PLN should negotiate with China on funds, or local banks
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/10/pln-should-negotiate-with-china-funds-or-local-banks.html
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