2009年2月22日日曜日

パキスタンのニールムジェルム水力着工


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

パキスタンのこの水力プロジェクトは,969MW,国境未確定の中でのまさにパキスタンの問題をすべて包含したような,複雑なプロジェクトである。インダス河の上流であるから,インドとの問題もあり,それに対する中国の意図も働いて,難しく動いたプロジェクトである。でも,決め手になったのは,イスラム諸国の資金支援であった。

昨年,2008年12月13日付本HP(注15)では,突如,中東諸国,クウエート,サウジアラビア,アブダビ及びOPECが,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクトへの融資を発表した,と報じている。パキスタンは,既にこのプロジェクトの建設費の一部として,電気料金に上乗せ,中国が300百万ドル,既に約束している,と書いている。

今日の記事。969MWのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)の目玉工事である47kmのトンネル工事が,アザド・ジャム・カシミールのムザファラバード(注6)の近くで,掘削を開始した。このトンネルの意味するところは,ニールム川(注7)の水をジェルム川(注8)のチャッタル・カラス(注9)付近に分水することである。アフザル所長(注10)とイスラム銀行IDB(注11)の代表が立ち会って,最初の発破がかけられた。

私は考えるが,石油火力,石炭火力,天然ガス火力,或いは原子力発電もそうかな,殆どのエネルギー資源は有限である。だから,人類にとっては,もし電力が必要ないならば出来るだけ遅く開発した方が,人類のためだと思う。でも水力資源は違う,水力発電所は一日でも早く発電すれば,それだけ人類が受け取るエネルギーは大きくなる。太陽光も風力もそうだが,これは量的に問題にならない。

電力会社は,一旦着工したら出来るだけ早く発電したい,それは注ぎ込んだ資本の問題であって,この私の言う人類のエネルギー資源の価値としての水力発電所の話とは違う。このインダス河の膨大なポテンシャルを,手を拱くばかりで開発できないと言うことは,今そこに降ってくる雨,流れている水が,全く無駄に流れている状態を長引かせるだけだ。

このようなときに思い出すのは,1992年,メコン本流で,ビエンチャン直上流の低パモンダム計画を審議していたメコン総会の会場の情景である。可能性調査に入りたい,と言うメコン委員会事務局の提案に,ベトナム代表,カンボジア代表,ラオス代表まで,それぞれ反対の演説を行った。大勢は事務局案破棄である。最後に立ったタイのシン代表は,ここにメコン本流のエネルギー資源が永久に閉ざされたと言う,涙の演説であった。

パキスタンのこの水力プロジェクト,969MW,水路トンネルが47kmと言うとんでもない計画だが,これが各勢力が複雑に絡み合って,資金の大部分は,同じ回教徒勢力の中東の資金,またこれを動かした中国の政治的意図,最初の資金を出して,工事を中国企業に落札させた外交力,これらが重なり合って,この難しいプロジェクトを着工に持っていった。まだ5年はかかるだろうが,人類のために成功を祈りたい。

本文

●パキスタンのニールム-ジェルム水力が掘削開始

Excavation of a 47km-long network of tunnels, one of the main works for the 969-megawatt Neelum Jhelum Hydroelectric Project (NJHEP), has started at the project site near Muzaffarabad in Azad Jammu and Kashmir.(注3冒頭引用)

昨年,2008年12月13日付本HP(注15)では,突如,中東諸国,クウエート,サウジアラビア,アブダビ及びOPECが,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクトへの融資を発表した,と報じている。パキスタンは,既にこのプロジェクトの建設費の一部として,電気料金に上乗せ,中国が300百万ドル,既に約束している,とも。

969MW,21億ドル,パキスタンのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)については,25kmの水路トンネルを有する流域変更プロジェクトで,インドとの間に微妙な問題が横たわっている。1960年のインダス水条約には,ニールム川の開発に関して,先に建設,運転開始に成功した側が,ニールム川の開発優先権を持つ,と書かれている。今や情勢は変化,需要も大きく,資金調達も手が届くところまで来た,とも。

今日の記事。969MWのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)の目玉工事である47kmのトンネル工事が,アザド・ジャム・カシミールのムザファラバード(注6)の近くで,掘削を開始した。このトンネルの意味するところは,ニールム川(注7)の水をジェルム川(注8)のチャッタル・カラス(注9)付近に分水することである。アフザル所長(注10)とイスラム銀行IDB(注11)の代表が立ち会って,最初の発破がかけられた。

ニールム-ジェルム水力プロジェクト(注5)は,パキスタンにとって極めて重要なプロジェクトで,安価な電気を電力不足で苦しむ中央グリッドへ送り込むわけである。イスラム銀行IDB(注11)と中東諸国が,既にその資金調達に合意している。このプロジェクトの工事は,中国企業,中国ゲゾウバ(注13)と中国機会輸出入(注14)の組むコンソーシアムに発注された。

アクセス道路,事務所建物,コントラクターとコンサルタントのキャンプ建物などの準備工事は,既に昨年,2008年に開始しており,本格工事はまずトンネルから始まった。総事業費は1,300億ルピー,約16.5億ドル相当,であり,完成に暁には,年間51.5億KWhの電力が,中央グリッドへ流れ込むことになる。完成時期は書いてないが,トンエルの長さから見て,5年はかかるだろう。

(注) (1) 090222A Pakistan, thenews.com,(2) Excavation work for hydropower project starts,(3) http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=163663,(4) Saturday, February 21, 2009, By By our correspondent , LAHORE:,(5) 969-megawatt Neelum Jhelum Hydroelectric Project (NJHEP),(6) Muzaffarabad in Azad Jammu and Kashmir,(7) Neelem river,(8) Jhelum river,(9) Chattar Kalas,(10) NJHEP General Manager Hasnain Afzal,(11) Islamic Development Bank (IDB),(12) Middle Eastern donors,(13) China Gezhouba Group Company,(14) China Machinery Import & Export Corporation,(15) http://my.reset.jp/adachihayao/index081213B.htm,(16) 

●インドのタタ電力は大規模プロジェクトには挑戦せず

Tata Power Ltd, India's largest private sector utility, will not bid for any more large power projects as raising funds is proving difficult given current market conditions, a senior official said on Friday.(注18冒頭引用)

インド最大の民間電力事業者,タタ電力(注20)のアグラワダ常務取締役(注21)が,ある会議出席の合間に語ったところであるが,タタ電力(注20)は,最近の市場動向を考えると,大きな資金調達を要する大規模電力プロジェクトへの入札参加は,差し控える,と発言している。一つのプロジェクトに2000億ルピーも要するような資金調達は困難だ,と述べている。4,000MW規模石炭火力を言っているのだろう。

インドは,2012年までに,新規電源,78,000MWを建設する計画である。現在のインドは,ピークで16%の電力が不足しており,4000MWの大規模石炭火力を9つ建設する,との計画を持っている。タタ電力(注20)は,インド西部のかかるプロジェクトの一つを抱えており,その総事業費は,1,700億ルピー,約34億ドル相当,である。

しかし,最近のインド東部に於けるプロジェクトへの入札は参加しておらず,ライバルであるリライアンス電力(注22)が落札してきている。アグラワダ常務(注21)は,収益の分かれ目は,最近高くなってきており,タタ電力(注20)はプロジェクト選定で慎重になっている,現在,6,000MW相当を工事中であり,その完成に集中したい,と言っている。タタ電力(注20)の現在の設備は,2,300MWである。

世界の金融危機の中で,このアジア第3位の経済規模を持つインドは,規模の大きい債務に苦闘しており,銀行貸し出しに慎重な姿勢を示していて,インフラは,その成長のレールからはずれてきている。

(注) (16) 090222B India, Economic Times,(17) Tata Power says not to bid for large plants,(18) http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Tata-Power-says-not-to-bid-for-large-plants/articleshow/4162593.cms,(19) 20 Feb 2009, 1921 hrs IST, REUTERS,MUMBAI,(20) Tata Power Ltd,(21) Executive Director Banmali Agrawala,(22) Reliance Power,(23) (35) www.tataprojects.com/hydro.htm

バングラデシュが電力のマスタープランを発表

These days Bangladesh media is busy with energy reporting. Almost all the dailies are publishing some analytical reports everyday on the prevailing crisis situation of energy and suggesting options to confront and mitigate the crisis. (注25冒頭引用)

滅多に取り上げないバングラデシュの電力事情であるが,2008年10月8日付け本HP(注33)で,地質の専門家が書いた,とされているが,短い文章で,バングラデシュのすべての電力問題を総括していて,実に要領がよい。我々もこのような文章を書きたいものだと思う。彼は地質だから,おそらく石炭の調査をやっていて,煮え切らない,踏ん切りの悪いエネルギー官僚に業を煮やして,この記事を書いたのだろう,と書いた。

このとき私は,次のように書いて結んでいる。曰く,バングラデシュのエネルギー問題は,国際的に孤立している。津波にやられ,毎年洪水に見舞われて,経済的に疲弊したバングラデシュ。水力がほとんどないので,私も余り取り上げていないので可哀相。もう石炭火力は中国に任す,と決めた日本やJパワーであるが,この記事を読んで,もう一踏ん張り,バングラデシュの石炭にチャレンジして上げませんか,と。

今日の記事は長文で,今ここで全文を紹介することは出来ない。最初の部分だけを紹介するが,時間のあるとき,或いはバングラデシュの仕事に関係する人は,読んでみてください。まず,ここ最近,バングラデシュのメディアは,エネルギー報告に関して極めて多忙である。最近のエネルギー危機やそれにタイする対策の提案,など,殆ど毎日,新聞などが取り上げている。

2009年2月17日のある記事では,チョウドリ・エネルギー担当首相顧問(注27)の話を取り上げている。政府は,将来20年間の電力系統マスタープランPSMP(注27)を見直して,発電の新しい資源のを設定し,2021年までに,20,000MWの電力供給を可能にする,としている。現在の発電設備は,4,000MWなので,20,000MWに引き上げるためのは,12年間で4倍の拡張が必要である。

野心的な計画ではあるが,大きな変革が必要であろう。ハッシーナ首相(注34)の選挙公約にもあるとおり,この目標のレベルまで発電設備を上げるためには,石炭と水力の焦点を当てる必要がある。政府の計画では,2011年までに5,000MWへ,2013年までに7,000MWへ,更に,2015年までに8,000MWに,2020年までに20,000MWへ,となっている。

このマスタープランPSMP(注27)の見直しを行ったのは,米国大手コンサルタントのNEXANT(注28)で,BPDB(注29),PGCB(注30)が協力,2006年6月のバングラデシュ工学技術BETS(注31)の台本が元となっている。そのサマリーは,「バングラデシュに於ける電力改革」(注32)の政府の報告書に組み込まれている。この報告書は,制度問題に焦点を当てた改革の筋書きを基本的に論じている。以下,省略。

(注) (23) 090222C Bangladesh, energybangla,(24) Bangladesh Power System Master Plan Review,(25) http://www.energybangla.com/index.php?mod=article&cat=SomethingtoSay&article=1533,(26) Engr. Khondkar Abdus Saleque.Friday, 02.20.2009, 08:25pm (GMT),(27) Dr.Tawfique Elahi Chowdhury Energy Sector advisor to the Prime Minister Sheikh Hasina,(27) Power system Master Plan (PSMP),(28) Nexant,(29) BPDB,(30) PGCB Ltd,(31) Bangladesh Engineering & Technology Services,(32) Power System Reforms in Bangladesh,(33) http://my.reset.jp/adachihayao/index081008.htm,(34) Prime Minister Sheikh Hasina,(35) 

参考資料

パキスタン

●090222A Pakistan, thenews.com
パキスタンのニールム-ジェルム水力が掘削開始
Excavation work for hydropower project starts
http://www.thenews.com.pk/print1.asp?id=163663

インド

●090222B India, Economic Times
院dのタタ電力は大規模プロジェクトには挑戦せず
Tata Power says not to bid for large plants
http://economictimes.indiatimes.com/News/News-By-Industry/Energy/Tata-Power-says-not-to-bid-for-large-plants/articleshow/4162593.cms

バングラデシュ

●090222C Bangladesh, energybangla
バングラデシュが電力のマスタープランを発表
Bangladesh Power System Master Plan Review
http://www.energybangla.com/index.php?mod=article&cat=SomethingtoSay&article=1533

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