2009年2月13日金曜日

インドネシアの中国ローンで利上げ要求


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中国の金融路線で,何か動いているのではないか,という見方が,内外のメディアで囁かれている。一昨日,2009年2月11日,インドネシアで,電源開発,10,000MWのクラッシュプログラムに対して,中国資金を積極導入,これを主導したカラ副大統領が欧州にある間に,ユドヨノ大統領が閣僚を引き連れてPLN本社に乗り込み,資金調達の今後について議論したことは,報告した。

PLNのモクタール総裁は,今日,そのトラブルの一面を明らかにした。10,000MW,総額80億ドルのうちの外貨分,USドル分,14.8億ドルは,中国銀行グループによって,インドネシア政府保証付きで,2008年にPLNとの間で合意され,一部は既に支出されている。ところが,残りの部分について,中国銀行グループから,利子率の変更を伴う再交渉を要求されている。インドネシア政府は困惑,今,政府内で対応が検討されているという。

今日の宮崎正弘氏のメールマガジンを読んだ上での話だが,宮崎氏によると,中国の金融路線で大きな方向転換があったのではないか,としている。確かに,今年初め,世界金融危機が明らかになり始めて,中国は内需拡大に転換した,として,もう2度と米国などの資産を欲しがらないぞ,と言う感じの転換を行って,温家宝首相が欧州各国を回って,それを喧伝した。

しかし,その後の中国の資源獲得への金融戦略は,再び激しさを増しており,宮崎氏によると,米国債購入を止めると,中国元の高騰を招いて再び輸出に影響が出るため,米国債購入を再開した,と,ファイナンシャル・タイムズが伝えているという。この中国の金融路線転換と,インドネシアへのローンの再交渉とが,どの様に結びつくのか,難しいが,中国が全体的な見直しを行い,それがインドネシアへの資金にも影響する,かどうか。

いずれにしても,インドネシアが,10,000MWのクラッシュプログラムを発想したときは,中国へこれほど依存するとは思っていなかったはずだ。それが中国の積極的な支援を受けて,思いの外,開発が円滑に行き始めたので,PLNは自信を深めていたところであった。モクタール総裁も言っているように,中国資金が円滑だったから,プロジェクトも円滑に進みかけていたので,これからの中国の出方が,大いに開発に影響してくる。

今日は,インドネシアの他,タイが,電源開発長期計画PDPを見直して,経済減速を織り込んで,電源開発のスピードを調節し始めた,という記事が注目を引く。最初に影響を受けるのは,ラオスの水力で,2024年までの計画だが,輸入電力を,13,244MWであったものを,5,036MWに減らしている。これは,過去の報道にもあったように,ラオスの水力の建設費の高騰も,影響しているのだろう。

本文

●タイの経済の落ち込みで,EGATは電源投資を減額へ

一昨日,2009年2月11日,エネルギー省による,国家電源開発計画PDP(注1)の見直し案に対する公聴会が開かれた。経済が落ち込む中,国有電力公社EGAT(注2)は,電力需要の低下によって,この先15年間で,4,600億~1兆6,500億バーツ,の節約が可能になる。エネルギー省のポーンチャイ次官(注3)は,この値は,世界金融危機を受けて改訂される2009~2024年のPDP(注1)に基づくもの,と説明している。

この節約分は,巨額の投資を必要とするラオスの水力投資の減少によるものである。しかし,ポーンチャイ次官(注3)は,もし国内の石炭火力と原子力開発が遅れる場合は,再度,ラオスの水力の促進を考える必要があるかも知れない,としている。改訂PDP(注1)案では,輸入電力で,13,244MWであったものを,5,036MWに減らしている。

同じように,現在検討中の原子力発電についても,2020~2021年に投入するものとして,半分の,2,000MWとしている。全体としては,現在の発電設備,17,500MWに対して,15年後の設備は,26,000MWとしている。新たに加わった電源は,チャナ天然ガス火力(注4)の増設,2013年,700MWを1,500MWに,バンパコン火力(注5)増設800MWで合計1,600MW,南部の火力で2020年に,800MW,としている。

ただこのPDP(注1)では,需要予想を,次の5年間,2013年までしか出しておらず,それ以上は予想困難で,再度改訂の必要があろう,と考えている。すべての種類の民間開発プロジェクト,IPP,SPP,VSPP(注6)は,7,500MWであったものを,9,585MWに上げている。しかし,最近のIPPの勝者,ゲコ・ワン・コ発電所(注7),660MWについては,1年遅れの2014年投入としている。

第3次のIPPプロジェクト,2,400MWについても,2017年であったものを,2020年に延期している。エグコ・グループ(注8)のカノム天然ガス火力(注9),800MWも,契約上,2016年となっている。

(注) (1) national power development plan (PDP),(2) Electricity Generating Authority of Thailand (Egat),(3) Pornchai Rujiprapha, permanent secretary of the Energy Ministry,(4) gas-fired Chana plant,(5) Bang Pakong in Bangkok,(6) private power producers (IPP, SPP, VSPP),(7) Gheco-One Co plant,(8) Egco Group Plc,(9) Khanom gas-fired power plant,(10) 

●フィリッピンのNPC,燃料など契約の見直しを迫られる

主として,不明朗な燃料契約を言っているらしい,発電とは関係ないようだ。国有発電公社NPC(注10)は,契約自体を役員会にあげ,また必要ならコントラクターがその支払いの更新を行うなど,これらの事項を確実にするために,,広範な契約事項について見直すことになった。タンピンコNPC総裁(注11)は,この見直しは,レイエス・エネルギー長官(注12)の指示によるもので,検討するために1ヶ月が必要,としている。

タンピンコNPC総裁(注11)は,レイエス・エネルギー長官(注12)から指示された報告書は,来月,2009年3月の第4週に行われるNPC(注10)役員会に上程する,と言っている。また,ブラックリストで揺れている燃料契約のコントラクターがいる,と言っているが,名前は挙げなかった。また,問題があるのはコントラクター側であって,現在,NPC(注10)内部でも検討を行っている,と言っている。

レイエス・エネルギー長官(注12)は,NPC(注10)入札委員会(注13)の刷新を求めており,これはNPC(注10)の入札手続きのクリーナップ作戦の一環である,と言っている。公共事業道路省(注14)で起こっているような不正行為を未然に防ぐため,としている。これは世界銀行から指摘された道路入札問題のことを指している。

NPC(注10)の契約についても,常に噂が絶えず,特に燃料契約の過程で問題が多いとされている。今回指示された報告書は,NPC(注10)の運用や財務について改革を行うために,制度,手続き,人事など,すべての分野に亘って,必要な改革を行う,としている。

(注) (10) National Power Corporation (NPC),(11) NPC President Froilan A. Tampinco,(12) Energy Secretary Angelo T. Reyes,(13) NPC Bids and Awards Committee,(14) Department of Public Works and Highways,(15) 

●インド,NTPCが原子力開発へ参入へ

今日,2009年2月14日,インド最大の発電会社NTPC(注15)は,インド原子力発電公社NPCIL(注16)との間で,合弁事業合意書(注17)に署名するが,これでNTPC(注15)が,原子力発電事業に本格的に乗り出すことになる。これは,インドで初めての原子力開発に関する合弁事業となる。NPCIL(注16)は,インド唯一の原子力発電企業で,現在,4,120MWの原子力発電設備を所有している。

電力省関係筋によれば,この合弁事業は,既に両企業の取締役会の承認を得て,原子力省DAE(注18)と原子力委員会AEC(注19)の了承も得ている,と。今回の覚書は,国有公社PSU(注20)間の合弁事業に道を付けるものだ,と。この提案では,NPCIL(注16)が51%,NTPC(注15)が49%の資本で,2,000MWの原子力発電所を開発するが,具体的な場所については,後ほど決定される。

現在の原子力発電所の建設費は,KW当たり7万~8万ルピー(注21),約1,440~1,650ドル相当,で,規模を,2,000MWとすると,1400億~1600億ルピー,約28.8億~32.9億ドル,が必要となる。これは,同じサイズの火力発電所の33%増しに相当する。NPCIL(注16)は同様の合弁事業をAGENCO(注22)の間でも検討中である。

米国,フランス,ロシアとの原子力協力協定を締結後,NPCIL(注16),DAE(注18),NTPC(注15)の間で検討が続けられてきた。この決定は,NTPC(注15)の持っている大規模発電事業への経験を元に,ゴーサインが出たものだ。このたびの,2,000MW原子力発電プロジェクトは,国の計画,2017年までの新規電源開発計画,75,000MWの中の一環である。

(注) (15) NTPC,(16) Nuclear Power Corporation of India Ltd (NPCIL),(17) joint venture (JV) agreement,(18) Department of Atomic Energy (DAE),(19) Atomic Energy Commission (AEC),(20) PSU,(21) Rs 7 - 8 crore per MW,(22) APGenco (Andhra Pradesh Generation Company).,(23)

●インドネシア,中国が資金支援で,利子率上げを主張

一昨日,2009年2月11日の本HP(注26)で,インドネシアのクラッシュプログラム(注24)の資金難が問題になったばかりである。問題は,頼みとする中国政府の資金支援が,遅れて,それが工程にも影響が出てきていて,ユドヨノ大統領が,その解決に自ら乗り出している,と言う記事であった。中国資金の問題点について,PLNモクタール総裁(注25)が,詳細を語っている。

PLNモクタール総裁(注25)は,クラッシュプログラム(注24)の主たる投資国である中国が,ローンの利率を上げるよう提案してきており,クラッシュプログラム(注24)に遅れの可能性がある,と語った。昨年,2008年に合意されたローンについて,中国側の銀行が改訂を求めてきている。モクタール総裁(注25)は,計画が円滑に言っているのは,資金調達が円滑であったからで,これでプロジェクトも遅れる可能性が出てきた,と。

中国のローンは主としてドルの支援である。中国銀行グループは,中国銀行(注27),中国開発銀行(注28),中国輸出入銀行(注29)により構成されて,このコンソーシアムとPLN(注23)が,契約に署名した。その総額は,14.8億ドルであった。モクタール総裁(注25)は,既に一部は支出されているが,残りの分について,中国側から再交渉を申し込まれている,と。他の今後の折衝中のローンについても,再交渉を求められている。

PLN(注23)とインドネシア政府は,中国に対してどの様に返答するか,検討中だ,と。10,000MWのクラッシュプログラム(注24)は,インドネシア政府によって,2006年に,主としてジャワバリ系統(注30)の電力供給力増強のために計画された。全部で35発電所で,そのうち10発電所がジャワバリ内,25発電所が外島である。全部で必要な資金は,80億ドルで,ルピアとUSドルで成り立っている。

モクタール総裁(注25)は,国内銀行も資金調達可能と思う,と述べて,急いで,外貨分については額が大きすぎて困難だろう,と付け加えている。10,000MWのクラッシュプログラム(注24)は,2011年完成予定で,ローンはすべて,政府保証である。

(注) (23) PT PLN,(24) 10,000 megawatt (MW) crash program,(25) president director Fachmi Mochtar,(26) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090211B.htm,(27) Bank of China,(28) China Development Bank,(29) China Export Import Bank,(30) Java and Bali,(31) 

参考資料

タイ

●090213A Thailand, Bangkok Post
タイの経済の落ち込みで,EGATは電源投資を減額へ
Slowing demand means savings for Egat
http://www.bangkokpost.com/business/economics/11473/slowing-demand-means-savings-for-egat

フィリッピン

●090213B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピンのNPC,発電契約の見直しを迫られる
Review of NPC contracts pushed
http://www.mb.com.ph/BSNS20090212147932.html

インド

●090213C India, Economic Times
インド,NTPCが原子力開発へ参入へ
NTPC may enter into N-power biz
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/NTPC_may_enter_into_N-power_biz/articleshow/4114073.cms

インドネシア

●090213D Indonesia, The Jakarta Post
インドネシア,中国が資金支援で,利子率上げを主張
China wants higher interest for PLN projects
http://www.thejakartapost.com/news/2009/02/11/china-wants-higher-interest-pln-projects.html

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