2009年2月8日日曜日

ベトナムのソンラ水力の移住難航


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http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

ベトナムのダム開発の中でも,その規模や開発への様々な過程を見ると,そのベトナム政府の悲願で,涙が出そうな気持ちになる。当時,結局我々は何も出来なかったが,日本工営とJパワーが,その設計管理に従事したと聞いて,少し慰められたような気になった。まだこれから大変なようだが,日本政府にも,世界銀行にも見限られ,さすがに中国もベトナムには手を出さない。結局,ベトナム人は自分たちで,地球温暖化と孤独に戦う。

ベトナム北部,ハノイに流れ込む紅河の上流,ソンラ県内。日本工営の資料によると,ダムはRCCタイプで,高さ138m,流域面積43,760平方km,総貯水容量93億トン,出力2,400MW,年間発生電力量9,429GWh,最大使用水量毎秒3,462トン,落差101.6mである。出力規模については,水没移住の関連で,議論が続いたが,今日の記事では10万人,94%が少数民族という。2012年,運転開始を予定している。

多数の少数民族10万人,と言うのは少し変だが,ダムの水没移住に関しては,大統領以下,非常に関心を持って対応している,と言われている。一党独裁だけに,その扱いについては,政府も神経を使っており,大統領や首相も現地を訪れて実情を調査している。今回も,国会議員団の現場調査は尋常ではない,現地に2日間,更に一週間後,4日間も現地に入るという。異例である。

私も,三峡ダムの移住地区を見学したことがあるが,まさに一つの近代的な都市,という感じで,移住地の造成が行われていたが,問題は,従来の生活様式と,移住後の生活様式の狭間をどの様にして埋めるか,と言うことが問題なのであろう。10万人のうち94%が少数民族で,それを新しい近代的な移住地の中に,少数民族の伝統をどう残すか,難しい問題なのであろう。国会議員団は,最後に報告書をまとめるという。

別件,国際協力に関する有識者会議,議長渡辺利夫拓殖大学長,2月9日の会議の後,中曽根弘文外相に報告書を提出するという。内容は,日経によると,民間資金にODAを組み合わせた,「官民パートナーシップ方式」,と呼ばれる枠組み,と書いてある。1997年の通産省の民間資金を公的資金に組み合わせる提案を思い出す。なかなか旨くいかなかったが,今度はどうなるか,特にエネルギー分野。

本文

●ベトナム,ソンラ水力の住民移住に遅れ

ベトナムの北部,紅河の上流,ソンラ水力プロジェクト(注1),1990年代初めは国家威信をかけた大プロジェクトであった。結局,2003年に至って,自らの手で着工に踏み切ったが,今から約1年前,2008年3月4日の私のメモ(注2)を見てみると,時の首相が現場を訪問,激励している。また,ソンラ水力プロジェクト(注1)の設計管理を,日本工営とJパワーが実施し,詳しい報告書がある(注3)。

今日の記事。ベトナム国会(注4)のメンバーが,ソンラ水力プロジェクト(注1)の現場を訪れ,住民移住の実態を視察して,住民の移動が困難に直面して,状態は良くない,とコメントしている。写真(注6)は,ディエンビエンフー県ムオンライ地区に建設されているナムカン移住地区(注5)である。国会調査団の団長は,少数民族委員会のクソールフオック議員(注7)である。2日間の調査は,2009年2月5日に終わった。

この調査には,関係各省庁からも参加した。多くの移住地域を視察した調査団は,ある移住地区ではインフラが不十分であり,かつ,文化や習慣の保全に対して必要な環境が未だ未整備だ,とし,移住民が困難に直面している,と見ている。関係当局は,移住政策の実施に当たって,彼等が直面した障害による問題点を説明している。それに対して国会調査団は,問題点をすぐに政府や国会に報告していない,責任を全うしていない,と。

国会調査団は,更に,2009年2月10日~16日に再び調査を続け,ディエンビエン(注8),ソンラ(注9),ライチュ(注10)各県の移住計画の実施状況を視察し,報告書を国会へ提出する予定である。ソンラ水力プロジェクト(注1)は,2003年着工,2,400MWで,2012年完成の予定。移住人口は,2万世帯,10万人で,94.4%が少数民族である。

(注) (1) Son La hydropower project,(2) http://my.reset.jp/~adachihayao/index3news0803.htm,(3) http://www.n-koei.co.jp/library/pdf/forum15_011.pdf,(4) National Assembly,(5) Nam Can resettlement area, built in Muong Lay town, Dien Bien Province,(6) http://www.saigon-gpdaily.com.vn/National/2009/2/68289/,(7) K’Sor Phuoc, chairman of the Council for Ethnic Minority Affairs,(8) Dien Bien Province, (9) Son La province, (10) Lai Chau province,(11) 21°57'30"N 103°8'42"E. MUONG LAY TOWN.,(12) 

●フィリッピン,配電部門で,資金回収で新ルール

フィリッピン,電力規制委員会ERC(注12)は,配電事業体DU(注13)の間で合意した電力の売買に関して,資金回収を行う規則を改正,公布した。ERC(注12)によると,この規則は,DUs(注13)の間で,再販売のための買電に適用されるものだ,と。この特殊な例とは,あるDU(注13)が,消費者に売るために,他のDU(注13)から電力を買う場合である。

ERC(注12)のゼナイダ総裁(注14)によると,この規則公布の目的は,この再販売される電力が,消費者に適正な価格で売り渡されることである,と。この規則は,新聞紙上へ公告後,15日後より効力を発する。規則によると,ERC(注12)の承認を受けた再売電合意(注15)を行ったDU(注13)は,実際の関連原価をすべて改修する権利が得られる。

しかし,規則は,一般料金(注16)とライフライン料金(注17)は,それが最後のユーザーではないので,この際適用されない,と規定している。一方で,承認されない,または効力のない原価回収は,NPC(注18)の料金か,実際の原価か,どちらか低い方に固定される。電力の引き取り手DU(注19)に課される料金は,発電,送電,許容損失,配電,など,調整過程で許されるものの合計の要素で決められる。

買電したDU(注13)が,需要家に課す小売価格は,買電価格,許容損失,配電供給メータリングなどから構成される。この規則が適用されるDU(注13)の合意はについて,そのDU(注13)の分割料金(注20)が承認されたものである必要がある。これが出来ていないDU(注13)は,未承認の買電協定,と見なされる。現在,承認過程中の買電合意契約は,この新しい規則によって審査される。

(注) (12) Energy Regulatory Commission (ERC),(13) power distribution utilities (DUs),(14) ERC chairperson Zenaida G. Cruz-Ducut,(15) ‘sale for resale agreements’,(16) universal charges,(17) lifeline rates,(18) National Power Corporation (NPC),(19) off-taker DUs,(20) unbundled rates,(21) 

参考資料

ベトナム

●090208A Vietnam, saigon-gpdaily.com
ベトナム,ソンラ水力の住民移住に遅れ
Lack of progress in hydropower project resettlement
http://www.saigon-gpdaily.com.vn/National/2009/2/68289/

フィリッピン

●090208B Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,配電部門で,資金回収で新ルール
For power distribution utilities ERC issues new rules on cost recoveries
http://www.mb.com.ph/BSNS20090207147515.html



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