2009年2月23日月曜日

中国の送電網先進技術が海外進出を狙う


HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

知的送電網の話から始まって,送電網の問題が,年末から今年にかけて多い。私のHPへのアクセスを分析していると,中国のUHV送電網や米国の景気刺激策に出てくる送電線強化で,多くの人が関心を持っていることが分かる。今,私のページの冒頭に出ているオバマ大統領の演説を良く聴くと,彼は,3,000マイルの送電線を強化して地方に散らばる再生可能エネルギーを集めてくる,と言っている。知的送電網もアクセスが多い。

知的送電網とは,今までの世界の議論を総合して,更に突っ込むと,次のようなことになるのかな。幹から枝まで統一のとれた網の目で,電力を運ぶだけでなく情報も運ぶもの,電源のあるところと電力需要のあるところを時間軸で詳細に把握しているもの,需要の中身は家庭の中の冷蔵庫などの機器類にまで侵入して情報を集めるもの,それと見た目にスマートで,テロに屈しない強い構造,これが知的送電網の定義だ。

また,私の2008年12月24日付け本HP(注36)にあるように,鈴木篁氏の水力開発論(注38)の中では,西澤潤一氏(注39)の,「直流送電では1万km送電が可能で東京からナイアガラの滝は勿論ビクトリアの滝まで入る」,を参照しながら,世界中の水力資源を総て活用する事が出来,その総発生エネルギー量は,少なくとも当分の間,全世界の電力需要を賄って余りある,としている。

今日の記事は,世界の多くの企業は,出費を削減して世界金融危機を乗り切る構えだが,中国最大の公共事業体は,送電線の分野で数十億ドルの金額を注ぎ込もうとしている。中国国家送電網SGC(注5)は,2009年1月に,100万ボルト送電線の商業運転を開始したが,これは米国の76万5000ボルトの送電線を越える力強さを持っている,と書き出している。

記事の中でも,日本がこの技術を有している,と書き,しかし日本ではこれを商業化するほどその必要性に迫られていないことを挙げ,実用化しようとしているのは中国で,この実績を踏まえれば,将来は世界市場に打って出る,と広言している。そうして,その対象として,インド,ブラジル,南アフリカなどの可能性を挙げている。

また,中国の当面の目的は,中国北部の石炭火力による電力,中国南西部の水力発電による電力を,長躯,北京や上海に送ることだが,この記事の中には,実際にはアフリカからブラジルまでの距離を,送電線で送ることが出来る,と西澤潤一氏(注39)や鈴木篁氏の水力開発論(注38)の世界の包蔵水力開発論に通ずる議論も出てくる。

オバマ大統領の送電線は,再生可能エネルギーを集めてくる,という少し矮小化された送電網強化論であるが,それでも,中国と米国が,送電網強化を叫んでいることは,世界的にも漸次広がってきて,ちょっとした議論になるのではないか。中国と米国は大まかで,ここに日本の知的送電網の概念やグーグルの意図が入ってくると,しばらく話題が盛り上がるかも知れない。

(注)(36) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081224.htm,(37) http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/,(38) http://homepage2.nifty.com/w-hydroplus/info4.htm#Label48,(39) http://tech.braina.com/2008/1217/other_20081217_001____.html,(40)

本文

●中国の送電網先進技術が海外進出を狙う

As companies abroad slash spending to ride out a global slump, China's biggest utility is pouring money into the multibillion-dollar field of electric power transmission. State Grid Corp. says it began operation in January of a 1 million-volt commercial power line, which is much more powerful than the 765,000-volt systems used in the United States and elsewhere.(注3冒頭引用)

中国の超高圧長距離送電線への圧巻は,2009年2月9日付本HP(注33)の,「中国,四川から上海への超高圧送電線,2010年に向け突貫」,の記事であった。元々は日本などの技術なのだが,日本は,地理的にも制度的にも,数千kmに及ぶ送電プロジェクトは,ない。昔,シベリアからの電力輸入を画した人がいたけれど,実現していない。世界的な長距離送電線の有用性を主張した人は,日本にもいる。

今日の記事。世界の多くの企業は,出費を削減して世界金融危機を乗り切る構えだが,中国最大の公共事業体は,送電線の分野で数十億ドルの金額を注ぎ込もうとしている。中国国家送電網SGC(注5)は,2009年1月に,100万ボルト送電線の商業運転を開始したが,これは米国の76万5000ボルトの送電線を越える力強さを持っている。

それは,超高圧送電線(注6)と呼ばれていて,遠く離れた水力発電所と都市区域を結ぶ,例えばブラジルからアフリカまでも結ぶ能力を持っている。SGC(注5)のル・ジアン副総裁(注7)は,電力産業の歴史に於ける画期的な事業だ,と言っている。これは,中国が経済発展を続ける中で,北京政府の野望,安価な商品の生産国から,人類を益する技術の創造者となるための,一つの成果である。

マッキインゼーのアジア太平洋コンサルタントグループのデビッド・ス氏(注8)は,中国の企業群は,着々と技術開発の梯子を登り続けており,彼等は,単なるコストの競争だけでは,その持続性に欠ける,と言うことを理解している,と言っている。今ここに,強力な送電線技術は,石炭火力発電所を石炭生産地に建設できるようにして,北京などの都市群の大気汚染を,改善することに成功するだろう。

中国国家送電網SGC(注5)は,世界では余り知られていないが,2007年の収入が1,330億ドルに達して,フォーチューンの格付け500社(注9)の中で24位にランクされている,世界有数の企業の一つである。世界不況の中で多くの企業が賃金カットや経費削減に取り組んでいる中,中国国家送電網SGC(注5)は,生き生きとして資金を注ぎ込んでいる。

中国国家送電網SGC(注5)は,中国全土32省のうちの26省を横断する大規模な送電網を運用し,更に発展を続けている。2009年1月には,フィリッピンの送電網運用事業を,39億ドル,25年間の契約に署名している。超高圧送電線(注6)の売り込みは,専門家によると,長距離送電に於ける効率にあるという。KWと言う電力は,電圧と電流の積であリ,同じKWを送るのに,高い電圧では少ない電流で良く,損失も少ない。

この技術開発で,送電設備の面で中国は世界的な競争力を持つことになり,工業調査企業のグルドン報告書(注10)によると,2015年には1400億ドル売り上げの企業に発展するだろう,と言っている。ロシア,日本,イタリーなども超高圧の実験的使用は実績があるが,商業的運用までは到達していない。米国のAEP社(注11)は,200万ボルト送電に試験的に成功したが,一般的に使用する計画はない。

欧州では,それぞれ異なった需要で,電力企業への訴訟が多く,強力な送電線建設の障害になっている。中国国家送電網SGC(注5)は,北京や上海など東部の都市群と,南西部の水力発電所及び北部の石炭火力を,超高圧送電線で結ぶために,この先,3,4年で,1000億元,約146億ドル相当,を費やす,と言っている。SGC(注5)は,成功の暁には,その技術を海外へ売り込むと言っている。

この場合,幾つかの機器は,ドイツのシーメンス(注12)とスイスのABB(注13)から供給されているが,殆どの必要な機器は国内の100以上の企業から供給されているという。チェン・メンロン国際副主任(注14)は,国際市場でこの技術を分かち合いたい,特に,インド,ブラジル,南アフリカなどが対象となるだろう,と言っている。

(注) (1) 090223A China, forbes,(2) Chinese utility tries to join electricity pioneers,(3) http://www.forbes.com/feeds/ap/2009/02/21/ap6079438.html,(4) By JOE McDONALD , 02.21.09, 12:14 PM EST,(5) State Grid Corp.,(6) "ultra-high voltage" transmission systems,(7) State Grid vice president, Lu Jian,(8) David Xu, director of McKinsey & Co.'s Asia-Pacific power consulting group,(9) Fortune magazine's Global 500 list,(10) Goulden Reports,(11) American Electric Power Inc. in Columbus, Ohio,(12) Siemens AG of Germany,(13) Switzerland's ABB Ltd,(14) Cheng Mengrong, deputy director-general of State Grid's international department,(15) Shanxi province,(16) Hubei province, (17) Sichuan province,(18) Jiangsu province,(19) company's executive vice president, Shu Yinbiao,(20) Richard Lordan, technology director for power delivery for the Electric Power Research Institute, a utility-supported U.S. group,(21) McKinsey's Xu,(22) (31) http://www.bpovia.com/blog/wp-content/uploads/2008/11/yongdian.jpg,(32) www.skyscrapercity.com/showthread.php?p=31444946,(33) http://my.reset.jp/~adachihayao/index090209D.htm,(34) 

●中国はチベットの牧草地減退で2030年までに回復を計画

China's chief economic planner Friday announced that the country aims to revive the degraded pasture and harness rat pest in Tibet by 2030. It is the government's latest goal in the fight against global climate change and to protect the ecology of Tibet, which covers more than 1.2 million square kilometers. (注24冒頭引用)

金曜日,2009年2月20日,中国の経済計画の主任は,中国は2030年までに,チベットの牧草地帯を蘇らせる計画だ,と発表した。中国政府の最近の目標としていることは,世界的な気候変動と戦い,120万平方kmのチベットの環境を守ることであると。水曜日,2月18日,中国政府閣議(注26)は,チベット南西部の環境保護計画を打ち出した。

発改委NDRC(注27)の発表内容は,チベットの環境保護への努力は極めて重要で,その内容は,地球の温暖化と戦い,中国の環境上の安全を確保し,チベットの経済社会開発を保護することだ,としている。チベットの気温上昇は,1061年から2007年の10年間で,摂氏0.32度に達し,この値は,世界や中国全体の平均よりも高い。土地浸食防止,生物多様性を保護し,農村地域でのクリーンエネルギー使用の促進を狙っていると。

また,チベットの農村に於ける,水力発電,メタンガス発電,太陽光発電の使用を促進すると。また,自然草原の保護,森林火災の予防,沼沢地の保護,強風や嵐に対抗するための森林ベルトの育成,牧草地の砂漠化防護,などが含まれる。地方政府は,環境保護と経済開発のバランスをとる必要があると。また,農民や牧夫達の生活環境を向上し,収入を確保する必要があると。

NDRC(注27)のチベット担当副主任プ・キオン氏(注28)によると,80億元,約12億ドル相当の予算は,2009年から2010年に,チベットの農民や牧夫のための,インフラの改善,特に,家庭水需要,電気,道路,通信,に費やされると。詳細は詳細は発表されていないが,水曜日の閣議決定は,地球規模気候変動に対抗して,チベット自治区(注29)の自然環境を保護する計画が承認されたと言うことだ。

また地方政府に対しては,チベットの環境保護に優先度を与え,生態系の安全を確保し,南西部の自治区の農民や牧夫の生活環境を向上することを目標とせよ,と。チンハイ-チベット高原(注30)は重要な要素で,チベットは特殊で多様性に富んだ生態系を持っている,世界の生態環境に与える地球気候変動に直面することへの対策が必要だ,と。特に中国は,草原の砂漠化を防ぐことに重点を置くと。

(注) (22) 090223B China, dailymailnews,(23) China aims to curb pasture degradation in Tibet by 2030,(24) http://dailymailnews.com/200902/22/news/dmchinawatch04.html,(25) BEIJIN,(26) State Council, China's Cabinet,(27) National Development and Reform Commission (NDRC),(28) Pu Qiong, deputy director of the NDRC in Tibet,(29) Tibet Autonomous Region,(30) Qinghai-Tibet Plateau,(31) (34) www.danmex.org/html-en/pic-detail.php?pic_id=3,(35) harness rat pest,(36) 

参考資料

中国

●090223A China, forbes
中国の送電網先進技術が海外進出を狙う
Chinese utility tries to join electricity pioneers
http://www.forbes.com/feeds/ap/2009/02/21/ap6079438.html
●090223B China, dailymailnews
中国はチベットの牧草地減退で2030年までに回復を計画
China aims to curb pasture degradation in Tibet by 2030
http://dailymailnews.com/200902/22/news/dmchinawatch04.html

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