2008年12月14日日曜日

インダスのニールム川に火花散る

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

今は,2008年12月14日午後2時,今から数時間前,現地時間13日深夜,インド軍の戦闘機が2度にわたってパキスタンの領空を侵犯,インドがイスラム過激派の拠点を空爆する可能性がある中,緊張が走った。ラホール周辺では軍の部隊の大規模な移動が地元住民に目撃されたという。インド側から,不注意で侵犯した,との連絡が入ったようだ。パキスタンは,迎撃の容易あるも事態の悪化は望まない,とメッセージを発した。

ムンバイのテロ事件に関して,パキスタン政府は,インド側が,「実行組織」,と名指しした北部カシミールを拠点とするイスラム過激派組織,「ラシュカレ・タイバ」,のモハマド・サイード最高指導者を自宅軟禁しているが,インドが証拠を示さない限り,3ヶ月で解放するとしている。インド側は,被疑者のインドへの引き渡しを要求しているが,パキスタンはそれには応じない構えである。毎日新聞などの報道である。

このような情勢の中,2008年12月13日,昨日,パキスタン現地紙,パックオブザーバーは,突如,中東諸国,クウエート(注22),サウジアラビア(注23),アブダビ(注24)及びOPEC(注25)が,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクトへの融資を発表した。

969MW,21億ドル,パキスタンのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)については,25kmの水路トンネルを有する流域変更プロジェクトで,インドとの間に微妙な問題が横たわっている。パキスタンは,既にこのプロジェクトの建設費の一部として,電気料金に上乗せして資金調達を急いでいるが,それも21億ドルの半分の見込みで,今回の775百万ドルは大金である。中国が300百万ドル,既に約束している。

1960年に,インダス河の水について,インダス水条約(注28)には,ニールム川(注22)の開発に関して,先に建設,運転開始に成功した側が,ニールム川(注22)の開発優先権を持つ,と書かれている。当時は,ニールム川(注22)にダムを造ることは,実際問題,困難であったので,その様な取り決めになったのであるが,今や情勢は変化,需要も大きく,資金調達も手が届くところまで来た。

このニールム川(注22)の上流は,ジャムアンドカシミールでインド実効支配の領域となる。インドはここに,400MW,流れ込み式,キシャンガンガ水力プロジェクト(注26)を建設中で,今日の記事によると,60%程度まで進捗しているという。インドの旗振り役は,例のミャンマーの天然ガス獲得に走っているラメッシュ副大臣である。パキスタン側が,資金調達に目処を付けて,一挙にインドと競争できる立場に立った。

二つのプロジェクトが両立するのかどうか,地図を片手に調べているが,もう一つ位置がはっきりしない。ただ近くには,最近,中国企業が関心を示しているコハラ水力があり,またパキスタン側のニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)は,中国企業が施工することで契約が成立している。国境未確定地域の微妙な中での先陣争い,中国が絡み,イスラムが絡み,まさに火花が散っている。

(注) (18) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081205A.htm,(19) Mangla dam,(20) Neelum river,(21) Neelum-Jhelum hydropower project,(22) Kuwait,(23) Saudi Arabia,(24) Abu Dhabi,(25) OPEC (Organization of the Petroleum Exporting Countries),(26) Kishanganga hydropower project,(27) Ministry of Water and Power,(28) Indus Waters Treaty,(29) paisa,(30) supplier credit,(31) China Gezhouba,(32) CMEC China,(32) Neelum-Jhelum Hydroelectric Project Company,(33)

本文

●フィリッピン,ファーストジェン,405百万ペソ,植林事業へ

最近話題を賑わせているのは,ロペス財閥のファーストジェンFGC(注1)の関連会社であるEDC(注2)で,2008年10月24日付本HP(注4)では,世界銀行のIFC(注3)から41億ペソのローンを獲得した,との報道。また,2008年12月11日付本HP(注5)では,EDC(注2)の地熱,既にその60%を手中,また水力はファーストジェン水力FGHPC(注6)の株式の60%を手中,としてグリーン化に一役買う姿勢。

今日の記事。ファーストジェン(注1)は,クリントン,グローバル,イニシャティブ(注8)の一環としてのコミュニティ植林運動CBFM(注9)で5,000ヘクタールの植林に着手した。10年間に405百万ペソを投入する計画である。FGC(注1)自身,その地熱発電所関連の30万ヘクタールの流域面積の森林地帯を有し,その地熱発電のためにも,この植林は重要な意味を持つ。

EDC(注2)のロペス会長(注10)は,このCBFM(注9)プロジェクト,別名,ビニ(注11)の発進に当たり,「EDC(注2)の中核である地熱エネルギーを確保するための地下貯留水を涵養する必要がある。」,とその趣旨を説明している。FGC(注1)ーEDC(注2)は,地熱発電に於いて,フィリッピン最大の企業であり,世界でも第2位に位置する。EDC(注2)のアキノ社長(注12)も,1980年以来の環境貢献の続編,と言っている。

EDC(注2)は,5つの地熱発電所区域,9,500ヘクタールに,740万本の植林をしてきた。これは,1980年代初頭より続けてきた自然林の保護の上積みになる,と説明している。熱帯林再生プロジェクトの意義が大きいのは,フィリッピンで生き残り,利用価値が高いと思われるフィリッピン固有の希少種の保護と連なるところにある,と。EDC(注2)は,環境保護に貢献する企業としての評価を勝ち取るのだ,と。

この植林プログラムは,環境天然資源省DENR(注13),国際保護(注14),観光気候変動対策省DTCCP(注15),WWF(注16),教育省(注17)などが協賛するものである。それにしても,つい先日まで,資金不足に悩んでいたEDC(注2)は,環境と気候変動対策に関連づけて,地熱と水力の発電企業としての位置づけを,本格的に売り出す方針のようだ。そこに資金が集まる,と観測したか。

(注) (1) Lopez-controlled First Gen Corporation,(2) Lopez-controlled Energy Development Corp. (formerly PNOC-EDC),(3) International Finance Corp,(4) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081024A.htm,(5) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081211A.htm,(6) First Gen Hydro Power Corp,(7) Pantabangan-Masiway hydroelectric power complex,(8) Clinton Global Initiative.,(9) community-based forest management (CBFM) project,(10) EDC Chairman Oscar M. Lopez,(11) Binhi,(12) EDC President and Chief Executive Officer Paul A. Aquino, (13) Department of Environment and Natual Resources,(14) Conservation Interantional,(15) Department of Tourism Climate Change Panel,(16) World Wildlife Fund,(17) Department of Education,(18)

●パキスタン,ニールムジェールム水力,中東から775百万ドル

インドとパキスタンの関係が,2008年12月4日のムンバイのテロを切っ掛けに,犯人の引き渡し問題の他に,インダス河の水を巡っての論争,2008年12月5日付本HP(注18)のように,今日,ますます先鋭化してきている。互いに宗教問題が絡んできているわけであるが,パキスタンからマングラダム(注19)があるニールム川(注20)の水力開発が,領土未確定問題も影響して,白熱化している。

969MW,21億ドル,パキスタンのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)に対して,中東諸国,クウエート(注22),サウジアラビア(注23),アブダビ(注24)及びOPEC(注25)が,大規模融資,775百万ドルを行うことになった。このニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)は,パキスタンにとっては,インドとの対抗上,政治的に極めて重要な水力プロジェクトなのである。

もしこのニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)の発進と完成が遅れれば,インドのキシャンガンガ水力プロジェクト(注26)が先行し,インドがニールム川(注22)の開発優先権を主張するからである,と叫んでいるのは,パキスタン水電力省(注27)の高官である。ニールム川(注22)の上流で,インド支配地域に入ると,キシャンガンガ川と呼ばれて,インドが,400MW,キシャンガンガ水力プロジェクト(注26)を立ち上げている。

インダス水条約(注28)には,ニールム川(注22)に関して,先に建設,運転開始に成功した側が,ニールム川(注22)の開発優先権を持つ,と書かれている。パキスタン政府は,既に電力料金の中に,KWh当たり10パイサ(注29)を,ニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)分として加算しており,その額は10億ドルに達する見込みとしている。

パキスタン側の話では,中東諸国,クウエート(注22),サウジアラビア(注23),アブダビ(注24)及びOPEC(注25)は,1ヶ月内に328百万ドルを調達し,残りを近い将来,準備し供与するとしている。また,施工に当たる中国企業は,300百万ドルを,サプライヤークレジット(注30)する。インドは既に,60~65%工事が進捗しているにもかかわらず,パキスタン側は,進んでいない。

ニールム-ジェルム水力プロジェクト(注21)の工事発注は,既に2007年3月9日に,中国ゲゾウバ(注31)とCMEC中国(注32)の合弁に行われている。ニールム-ジェルム水力プロジェクト会社NJHPC(注32)は既に創立を終わって,株式上場している。堂々たる真っ向勝負,と言うことだが,このテロの最中に宗教対立が鮮明になってきた,インダス戦争の激化である。

(注) (18) http://my.reset.jp/~adachihayao/index081205A.htm,(19) Mangla dam,(20) Neelum river,(21) Neelum-Jhelum hydropower project,(22) Kuwait,(23) Saudi Arabia,(24) Abu Dhabi,(25) OPEC (Organization of the Petroleum Exporting Countries),(26) Kishanganga hydropower project,(27) Ministry of Water and Power,(28) Indus Waters Treaty,(29) paisa,(30) supplier credit,(31) China Gezhouba,(32) CMEC China,(32) Neelum-Jhelum Hydroelectric Project Company,(33)

参考資料

フィリッピン

●081213A Philippines, Manila Bulletin
ファーストジェン,405百万ペソ,植林事業へ
First Gen puts P405 M in forest project
http://www.mb.com.ph/BSNS20081213143375.html

パキスタン

●081213B Pakistan, pakobserver
ニールムジェールム水力,中東から775百万ドル
Neelum-Jhelum project Kuwait, S Arabia, Abu Dhabi ensure $ 775m funding
http://pakobserver.net/200812/13/news/topstories03.asp

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