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パキスタンのブット元首相が,橋本首相に対して,カラチ東方の大規模工業団地の建設を要請したり,北部地域への道路トンネル建設を要請してから既に10年が経つ。昨日,2008年12月27日,10万人の人々が,南部シンド州にある彼女の墓を取り囲んで,その一周忌を悼んだ。裸足で400キロ歩いて墓を訪れたという25歳の男性は足にできたマメを指さし,「受難したリーダーからの贈り物だ」,と語ったと言う。
ブット元首相が生存していれば,インド,パキスタンの情勢は変わっただろうか。政治情勢はどう転んだか分からないが,アジアでもパイオニアとして挑み,「アジアの隼」,の小説の冒頭の場面にもなったハブコ火力発電所の民営化にも熱心であった。おそらく,当時の欧米の支援を受けて,もう少し開発も進んでいたかも知れない。ザルダリ大統領は墓前で,「殺人者は彼女の理念を葬ることはできなかった」,と述べたという。
インドのシン首相が,三軍の長を呼んで会議を持った,という情報で,1万のパキスタン軍の精鋭が,西部から東部へ移動したという。ザルダリ大統領は,インドとの対立は政治で解決する,と明言しているが,一つ一つのトップ達の行動が,緊張感を煽っている。今度は,インドの閣議が,時も時,国境未確定のカシミールのインダス上流で,330MWのキシャンガンガ水力の推進を決定し,パキスタンを緊張させている。
今日の報道はパキスタン側のもので,パキスタンのニールム川の水力プロジェクト(注6)の上流に位置するインドのキシャンガンガ水力プロジェクト(注7)に関するもの。この金曜日,2008年12月26日,インドは閣議を開いて,インド実行支配カシミールIHK(注8)のガンジス川(注9)に,330MWのシャンガンガ水力プロジェクト(注7)を承認した。
キシャンガンガ水力プロジェクト(注7)の計画では,ムザファラード地区(注15)近辺でジェルム川(注21)本流に合流する支流ニールム川(注20)の水を分水して,インド実行支配カシミールIHK(注8)領域内のバンディポーラ地区(注22)近辺のウラー湖(注23)に分流させる計画である。これにより,ウラー湖(注23)の水位を上げ,毎秒52トンの水を下流に流して,480MW,ウリ水力(注26)に便益を与えるものだ。
何処がどうなっているのか,詳しい地図がないのでよく分からなかったので,あり合わせの地図でその状況を見てみたので,HP上の地図(注33)を見て欲しい。インド領内の分流計画が,支流ニールム川沿いのパキスタン領の灌漑や,計画中のニールム-ジェルム水力(注6)にマイナスの影響を与えるのだ。そこで,どちらのプロジェクトが先行するかで,水利権の行く手に影響が出る。真っ向からの対立である。
早くプロジェクトを実施した方に水利権を与える,と書いたのは,1960年に成立したインダス水条約IWT(注10)である。なぜその様に書いたのか,私はメコンの歴史を思い出す。ラオス,ベトナム,カンボジアが戦争に追われている間に,タイは急激な経済成長を遂げ,多くの水利権やインフラ建設を成し遂げた。そのことが,1990年初めのメコン委員会の文書作りで,結局事後承認,という形をとった。
1960年のインダス河は,誰がどの様に開発して行くか,資金も乏しく,先が見えなかったのだろう。どちらでも良いから早く経済成長を遂げて水資源開発を実施した方に権利を与える,これは中国の,裕福になれるなら早くなれるものからなれ,と言う考え方と同じだったと思う。それが今日の水紛争を生んでいるが,テロに関わる政治紛争を,水紛争で火に油,などという愚行に発展しないように,祈るのみ。
(注) (1) http://my.reset.jp/adachihayao/index081213B.htm,(2) Kuwait,(3) Saudi Arabia,(4) Abu Dhabi,(5) OPEC (Organization of the Petroleum Exporting Countries),(6) Neelum-Jhelum hydropower project,(7) Kishanganga hydropower project,(8) Indian-held Kashmir (IHK),(9) Ganges River,(10) Indus Water Treaty (IWT),(11) Jhelum river,(12) Union Ministry of Water Resources,(13) Line of Control (LoC),(14) Neelum valley,(15) Muzaffaraabd district,(16) Indian Home Minister P Chidambaram,(17) Baramulla district,(18) India’s Water Resources Minister Saifuddin Soz,(19) India-Pakistan Indus Commission,(20) Neelum tributary,(21) Jhelum River,(22) Bandipora district,(23) Wullar Lake,(24) run-of-the-river,(25) National Hydro-Electric Corporation,(26) Uri hydroelectric project,(33) http://my.reset.jp/~adachihayao/081227A01.htm
本文
●インドの閣議,キシャンガンガ水力,承認,パキスタン紙
インドとパキスタンの緊張が続く中,インダス河水系の水の問題でも紛争が続く。2008年12月13日付本HP(注1)にある通り,パックオブザーバーは,突如,中東諸国,クウエート(注2),サウジアラビア(注3),アブダビ(注4)及びOPEC(注5)が,大規模融資,775百万ドルを,パキスタンのインダス上流,国境未確定,パキスタン実質支配のアザドカシミール,ニールム川の水力プロジェクト(注6)への融資を発表している。
今日の報道はパキスタン側のもので,パキスタンのニールム川の水力プロジェクト(注6)の上流に位置するインドのキシャンガンガ水力プロジェクト(注7)に関するもの。この金曜日,2008年12月26日,インドは閣議を開いて,インド実行支配カシミールIHK(注8)のガンジス川(注9)に,330MWのシャンガンガ水力プロジェクト(注7)を承認した。(ガンジス川と言う表現に疑問あり,インダスではないか)
インダス水条約IWT(注10)によると,この地域の開発については,先にプロジェクトを完成した方が水の権利を有する,と書いてある。その意味については,私の解釈を後で開陳するが,とにかく,このインダス水系ジェルム川(注11)などについてはそう言う規定になっていて,パキスタンのニールム-ジェルム水力(注6)が先か,その上流のインドのキシャンガンガ水力プロジェクト(注7)が先か,先陣争いをしている。
パキスタンの水資源省(注12)は,パキスタンが,960MW,15億ドル,ニールム-ジェルム水力(注6)を中国企業に発注して,早期完成を目指している,と言っている。デリー側とイスラマバード側は,ここ数年,このダムの問題について,現在議論を中止している。パキスタン側の主張は,このインドのプロジェクトが,支配境界線LoC(注13)をまたぐニールム-ジェルム水力(注6)に影響を与えるだけではない,と言っている。
それは,ニールム渓谷(注14)とムザファラード地区(注15)の133,209ヘクタールの農地に影響を与える,と言っている。しかしインド側は,衛星写真を分析した結果,パキスタンは影響を誇張している,と主張している。閣議後,インドのチダムバラム内相(注16)は,キシャンガンガ水力プロジェクト(注7)は極めて重要で,パキスタンの反対があるが,閣議は決定を強行した,と言っている。
また,インダス水条約IWT(注10)の元で,水使用権でインドを有利にし,バラマムーラ地区(注17)の灌漑の能力を大きく向上する,と言っている。インドのソズ水資源相(注8)は,2008年8月に,インド・パキスタン・インダス委員会(注19)で農地の問題を話し合ったが,パキスタン側は10万ヘクタールに影響すると言っているが,我々は,影響が小さいと言うことを証明している,と言っている。
キシャンガンガ水力プロジェクト(注7)の計画では,ムザファラード地区(注15)近辺でジェルム川(注21)本流に合流する支流ニールム川(注20)の水を分水して,インド実行支配カシミールIHK(注8)領域内のバンディポーラ地区(注22)近辺のウラー湖(注23)に分流させる計画である。これにより,ウラー湖(注23)の水位を上げ,毎秒52トンの水を下流に流して,480MW,ウリ水力(注26)に便益を与えるものだ。
キシャンガンガ水力プロジェクト(注7)は計画変更されて,流れ込み方式(注24)で,出力は同じ330MWとなっている。工事費は,223.9億ルピアであったものが,364.2億ルピアに増大しているが,これは,厳しい流砂と,地質の悪さ及び支配境界線LoC(注13)に接近しているというリスクを考慮した結果という。工費節約の観点から,起業のNHPC(注25)は,12%地元卸をゼロとするよう,政府に申し入れた。
このNHPC(注25)の要求は受け入れられず,結局設計変更して,ダムの高さを,73mから37mに変更し,ダムの工事費を助けるだけでなく,上流のダードシナ部落が,閉じこめられないように,その部落の保護も考慮している。前回の記事では,このキシャンガンガ水力プロジェクト(注7)は60%進捗している,と書かれていたが,今回は触れられていない。
(注) (1) http://my.reset.jp/adachihayao/index081213B.htm,(2) Kuwait,(3) Saudi Arabia,(4) Abu Dhabi,(5) OPEC (Organization of the Petroleum Exporting Countries),(6) Neelum-Jhelum hydropower project,(7) Kishanganga hydropower project,(8) Indian-held Kashmir (IHK),(9) Ganges River,(10) Indus Water Treaty (IWT),(11) Jhelum river,(12) Union Ministry of Water Resources,(13) Line of Control (LoC),(14) Neelum valley,(15) Muzaffaraabd district,(16) Indian Home Minister P Chidambaram,(17) Baramulla district,(18) India’s Water Resources Minister Saifuddin Soz,(19) India-Pakistan Indus Commission,(20) Neelum tributary,(21) Jhelum River,(22) Bandipora district,(23) Wullar Lake,(24) run-of-the-river,(25) National Hydro-Electric Corporation,(26) Uri hydroelectric project,(33) http://my.reset.jp/~adachihayao/081227A01.htm
●中国,第3に規模の龍灘水力,運転開始へ,ロイター
中国は,金曜日,2008年12月26日,全国第3位の規模を持つ龍灘水力発電所(注27)の第1期工事を完了した,と新華社が報じた。この開発によって,過疎山岳地帯の中国西部から,エネルギー不足に悩む沿岸地域に,電力が送られる。この第1期工事は,単機出力700MWの機器7台を持ち,工事を2001年に開始して,2007年に最初の機器が運転開始した。後,第2期分2機の完成を待って,出力6,300MWとなる。
総工事費と全部の完成時期については,報道は触れていない。広西族自治区(注28)と近傍の貴州省を併せて,10町村の8万人以上が移住した。この発電所で,大唐電力(注29)は設備出力,80,000MWとなり,ライバルの華能電力(注30)を抜いてトップとなった。大唐電力(注29)の水力設備は,13,340MWで,主要電力起業5社の中で最大規模となった。
先日,単機出力700MWを26台持つ三峡発電所(注31)が完成したばかりである。第2の規模を誇るシルオドウ水力(注32)は,同じサイズのユニットを18台予定しており,2017年完成を目指している。中国は今,汚れた石炭火力への依存を減らして,出来るだけ水力を開発すべく懸命に戦っているが,環境専門家達は,地域への悪影響を懸念している。
(注)(27) Longtan hydropower station,(28) Guangxi region,(29) Datang Power,(30) Huaneng Group,(31) Three Gorges Power station,(32) Xiluodu hydropower,(33)
参考資料
インド
●081227A India, dailytimes
インドの閣議,キシャンガンガ水力,承認,パキスタン紙
Indian cabinet okays Kishanganga project
http://www.dailytimes.com.pk/default.asp?page=2008%5C12%5C27%5Cstory_27-12-2008_pg7_1
中国
●081227B China, uk.reuters.com
中国,第3に規模の龍灘水力,運転開始へ
China starts running 3rd largest hydropower station
http://uk.reuters.com/article/oilRpt/idUKPEK28002720081226
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