2008年12月31日水曜日

インドネシアの原子力に不安

HPは下記ドメインです。写真地図など見て下さい。
http://my.reset.jp/adachihayao/index.htm

今から7時間ぐらい前の日経ネットのニュース,住友商事が100%出資するタンジュンジャティB石炭火力発電所を,2,000億円を投じて2012年までに,出力を2倍の2,640MWに引き上げる計画という。この地点の第一期工事は,当時混乱したIPPの発電所建設で,メガワティ大統領が住友商事に懇請して実現したもので,今日の記事を読むと,設備のリース,と言う形をとっているようだ。それでよいのかな。

インドネシア政府は,2020年にも,4,000MWの原子力発電所を運転開始する計画で頑張っている。東南アジア各国,今政治は混乱しているが,段階を踏んで進めようとしているタイ,それにベトナムなどと比較して,商業的な交渉を優先して進めているインドネシアである。今日の記事は,近隣諸国の新聞記者達のグループが,フランスに招待されて,その感想を記者の立場から書いたものだ。

フランスは全電力の75%近くが原子力発電で賄われている,原子力先進国だ。原子力メーカーのアレバは有名で,米国企業に先駆けてインドの原子力開発に先手を打っている。ここまで原子力に頼っている国に招待されて,記者達もその偉容に驚いたことだろう。所内を案内されるときに,物々しい防護服を着せられて,恐れを感じた,と書いている。

彼が書いた記事の最後は,次の言葉で結ばれている。「発電所を去るとき,私は複雑な気持ちであった。確かに原子力発電は一つの解決手段ではある。しかし,いろいろなインドネシアにおける災害を考えるとき,人間の侵す誤りについて,大きな危惧を感ぜざるを得ない。」,と。我々日本人も,今から38年前の1970年,初めて原子の灯で運営された大阪万博を知っている。未来の希望に満ちた時代であった。

新幹線も原子力発電所も,大事故もなくここまで来ていることを思うと,良かった,と思う反面,余りにもボーンヘッドが大事故を引き起こしていることに思いを致す。新幹線をあのような頻度で動かすなど日本人の得意技,と思っているのに,あの尼崎の福知山線のような,ボーンミスでしかも悲惨,美浜の配管の事故だって,設備としてはもっともプリミティブなところでミスを犯している。

大切な根幹には,確実な資源が注ぎ込まれているが,副次的な設備で手を抜いてしまうことに,大いに反省がある。原子炉は点検がしっかり行われているのに,配管は手が抜けていた。新幹線はしっかり管理されているが,ローカル線では思わぬ事故が起こってしまう。世界に技術を誇って歩いてきたのに,あのような事故が起こると,日本も一緒か,と思われるところが,ODAに携わっていて恥ずかしく思うところだ。

本文

●フィリッピン,エネルギー省,西パラワンの深度探査,承認

フィリッピンのエネルギー省DOE(注1)は,オットーエナージ(注2)のパラワン南西部(注3)原油ガスブロックにおける2010年8月までの超深水委託井戸(注4)の掘削提案に対して,これを承認した。これは,9,000平方kmをカバーする契約55SC(注5)に対する第3次作業プログラムである。DOE(注1)によると,第2次分は,2009年までの見通しで探査活動が,発注される予定である。

DOE(注1)は,3次元弾性派探査(注6)を行い,2009年にその解析,2010年にそれを実証するための掘削を行う,としている。オットーエナージ(注2)は,オーストラリア企業のBHP(注7)と,契約55SC(注5)の60%を提供する条件付き合意を行っている。オットーエナージ(注2)とBHP(注7)の共同運営の合意は,政府の許可と合弁の手続きが完了してから行われる。

フィリッピン証券市場(注8)届けられたところによると,契約55SC(注5)に15%の権利を持っているトランスアジアEDC(注9)は,探査作業の第2次と第3次を取り替えるべく,DOE(注1)に申請している,としている。それは,第1次の掘削を,2009年8月5日の契約であったものを,2010年5月に変更できるようにするため,と説明している。それはリグの設置見通しが,2010年前半まで不確定だから,と言っている。

契約55SC(注5)の範囲は,ボルネオの沖合(注11)南西部とフィリッピンの北東の権利が接近している。レイエス・エネルギー長官(注12)は,エネルギー的に独立するための原油とガスの探査には,これから投資を続ける,と言明している。もしこれが成功した暁には,フィリッピンは莫大な利益が期待できると。結局,議会からインドネシアと比べて探査の投資意欲が足りない,と批判されたばかりと言うことである。

(注) (1) Department of Energy (DoE),(2) Otto Energy Limited,(3) southwest Palawan basin,(4) ultra-deep water commitment well,(5) Service Contract 55 (SC),(6) 3D (three dimensional) seismic survey,(7) BHP Billiton Petroleum Pty Limited (BHP Billiton) ,(8) Philippine Stock Exchange,(9) Trans-Asia Oil and Energy Development Corporation,(11) offshore Borneo,(12) Energy secretary Angelo T. Reyes,(12)

●インド,大規模火力プロジェクトUMPP,5社が応札

先日から問題となっていた第4次の大規模火力計画UMPP(注12),4,000MW,ティラヤ火力(注13),結局5社が,この月曜日,見積もりを提出した。5社は,NTPC(注14),リライアンス(注15),ランコ(注16),ジンダール(注16),スターライト(注17)である。予定が1年遅れで,総工事費は,1800億ルピーと想定されている。見積もりを検討の上,2009年1月半ばにも,最終選定を終える。

発注主体となっている電力融資公社PFC(注19)は,この金融危機の最中,5社の入札を受け取った,2週間後には結論を出したい,としている。最終的に,UMPP(注12)としては初めて最低保証金12億ルピーの払い込みで,手続きを終える。最初は11社が,第1次選定に参加したが,最終的には5社となった。ランコ(注16)はマレーシアのゲッティング(注20)と組むことになった。

前回のクリシュナパットナム火力(注21)では3社,ササン火力(注22)では10社,ムンドラ火力(注23)は6社の入札があり,ムンドラ火力(注23)はタタ電力(注24)が,後の二つはリライアンス(注15)が,それぞれ勝ち取っている。今回のティラヤ火力(注13)は何度も延期された経緯を持っている。投資額は,1600億~1800億ルピーで,資本は30%,債務は70%と考えられており,政府も資金調達に支援の手を伸ばしている。

(注) (12) ultra mega power project (13) Tilaiya Ultra Mega Power Project (UMPP) in Jharkhand,(14) government-owned NTPC,(15) Anil Ambani Group company Reliance Power,(16) Lanco Infratech,(17) Jindal Power,(18) Sterlite Energy,(19) Power Finance Corporation (PFC),(20) Malaysia-based Genting Sanyen Power Sdn Bhd,(21) Krishnapatnam UMPP in Andhra Pradesh,(22) Sasan UMPP (Madhya Pradesh),(23) Mundra (Gujarat),(24) Tata Power,(25)

●原子力発電,フランスはいいが,インドネシアはどうか

原子力発電所でフランスに招かれたジャカルタポストの記者が,素朴な疑問を記事にしている。フランスは電力需要,489TWhの77.4%を原子力に依存している。インドネシアを含めた世界の国々で議論を巻き起こしているが,実際,いつ原子力は安全な手段になるのか,聞きたくなる。ペンリー原子力発電所のアンドレ所長(注25)に話を聞いて厳重な警戒の中,発電所に入ったとき,各国の記者は,脅えていた。

原子力発電所の放射能は一体どれほどのリスクがあるのか?中にはいるときには特別の装備をさせられたが,見学のリーダーは,完全に安全だ,と言っていた。インドネシア政府は,ムリア半島(注26)に,4機,4,000MWの原子力発電所を建設しようとしている。最初の工事開始は2010年初めと考えられている。工事費は70兆ルピアで,半島は火山の傍にあり,一般の反対運動が起きている。

原子力の専門家は,リヒタースケール7.0(注27)の地震にも安全だ,と言っている。フランスのペンリー発電所は,ノルマンディにあり1,300MWの出力で,これは58ある原子力のうちの単なる一つだ。隔離されたところにあり,周辺には人家はない。フランス政府は,原子力に対する信頼感を醸成しようと,多くの見学者を受け入れている。

フランスの原子力発電は,近隣諸国の輸出されている。その会社は,結局,原子力に対する一般の理解を得ることは難しく,しばらくは化石燃料に頼らざるを得ない,という見方をしている。発電所を去るとき,私は複雑な気持ちであった。確かに原子力発電は一つの解決手段ではある。しかし,いろいろなインドネシアにおける災害を考えるとき,人間の侵す誤りについて,大きな危惧を感ぜざるを得ない。

(注) (25) EDF's Penly nuclear power plant managing director Andre Van-Spaandonck,(26) Muria Peninsula, in Central Java,(27) 7.0 Richter scale earthquake,(28)

参考資料

フィリッピン

●081230A Philippines, Manila Bulletin
フィリッピン,エネルギー省,西パラワンの深度探査,承認
DoE approves ultra-deep well oil drilling for West Palawan
http://www.mb.com.ph/BSNS20081230144477.html

インド

●081230B India, Economic Times
インド,大規模火力プロジェクトUMPP,5社が応札
5 power cos submitted bids for UMPP
http://economictimes.indiatimes.com/News/News_By_Industry/Energy/Power/5_power_cos_submitted_bids_for_UMPP/articleshow/3909924.cms

インドネシア

●081230C Indonesia, The Jakarta Post
原子力発電,フランスはいいが,インドネシアはどうか
Nuclear power for France, but not RI
http://www.thejakartapost.com/news/2008/12/30/nuclear-power-france-not-ri.html

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